「相見積(合見積)」と「見積もり合わせ」の違いを正しく理解する

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随意契約
イギリス ロンドン

少額随意契約を締結する際の「相見積(合見積)」と「見積もり合わせ」の解説です。この二つは同じような意味で使われますが、官公庁の契約手続きでは、「あいみつ」という言葉を使うと、談合を意味することがあります。正しくは「見積もり合わせ」です。

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会計検査院が「あいみつ」を取るように指摘

官公庁の契約方式の中に「少額随意契約」があります。少額随意契約は、複数(一般的には3社)の見積書を取り寄せて、最も有利な見積金額を提示した相手と契約を締結するものです。複数の見積書を比較することを「見積もり合わせ(みつもりあわせ)」と呼びます。送り仮名は「見積合せ」、「見積り合わせ」、「見積合わせ」など様々です。すべて同じ意味です。

 

最近(2014年頃から)になって、「見積もり合わせ」のことを、「相見積(合見積)」(いずれも「あいみつ」)と呼ぶことが多くなりました。おそらく会計検査院の人たちが、実地検査で「あいみつを取るよう」指摘していることが原因だと思います。私も実際に会計検査院の調査官が「なぜ、あいみつを取らないのですか?」と指摘している場面を何度か目にしています。

 

民間企業同士の取り引きでは、「相見積(合見積)」が問題になることは、ほとんどありません。しかし官公庁では、契約手続き自体が問題になることがあります。

 

それは「相見積(合見積)」が、違法な談合を意味することがあるためです。

 

参考に「見積もり合わせ」については次の記事でも解説しています。

なんと「合見積(相見積)」は違法?「見積もり合わせ」との違い
「合見積(相見積)」と「見積もり合わせ」の違いです。官公庁の契約手続きでは、少額な契約のときに、複数社の見積書を比較して契約の相手方を決定します。ただし、「合見積(相見積)」は注意が必要です。談合に近い違法な手続きになることがあります。

 

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見積書は、誰が取り寄せるものか?

見積書は、契約を締結する前段階で必要になる書類です。民法上は「契約の申し込み」に該当します。(民法第522条)

 

見積書を取り寄せる行為は、契約に関係しています。最初に契約を締結する権限を確認します。

 

契約権限を持っているのは組織の長です。そして官公庁では、契約権限を持つ者を内部規則(委任規則など)で決めています。国の場合は「支出負担行為担当官」と「契約担当官」、実務を担当する部下の補助者(職員)です。地方自治体の場合も考え方は同じです。官職名はそれぞれ違いますが、組織の長から部下の職員へ、契約権限を委任しています。原則として、契約締結権限を持つ者が見積書を取り寄せることになります。

 

理由としては、見積書を取り寄せるときに前提条件を明示するためです。業務内容だけでなく、代金の支払方法や業務実施時期、納入期限や納入場所の説明など、契約手続きの知識が必要になります。見積書を依頼するときの契約条件やその後の契約手続きの理解が必須になるからです。

 

もし前提条件を間違えてしまうと、見積書を比較できなくなってしまいます。複数の見積書を取り寄せたとしても、それぞれの条件が違い、内容がバラバラであれば比較対象になりません。そのため一般的には官公庁側の契約担当者が「仕様書」を作成し、契約内容や契約条件を提示して見積書を提出してもらいます。

 

しかし物品の購入契約など、契約内容が簡単な場合は、商品名だけの見積書で十分です。契約条件は特に必要ありません。そうなると契約担当者だけでなく、誰もが見積書を取り寄せることができます。また多少複雑な契約内容でも、仕様書を作成せずに、口頭で契約条件を伝えたときは、その人しか見積書を取ることができません。どのように口頭で伝えたかは、本人しかわからないからです。

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見積書は、誰が取り寄せたかわからない

そしてもう一つ重要な点が、取り寄せた見積書は、後になって見ても、誰が取り寄せたかわからないことです。

 

例えば、(これは違法になることですが、)あらかじめ特定の民間企業と契約しようとして、形だけ複数社の見積書を比較したようにすることが可能になります。特定の民間企業に対して「おたくと契約するから他社の見積書を取ってくれない?」と依頼してしまうのです。

 

依頼された営業担当者は、自分のグループ会社あるいは下請け会社に対して、見積書を依頼することになります。当然ながら自分の会社よりも不利な内容(売買契約であれば高くなる金額)で提出してもらいます。これは違法な談合行為です。

 

提出された見積書の中で、契約できなかった他社の見積書を「相見積(合見積)」と呼ぶことが多いのです。わかりやすく言えば、当て馬的な見積書(高額な見積書)を「相見積(合見積)」と呼ぶのです。

 

ここがかなり重要で危険な点です。

 

例えば会計検査院の調査官から、「なぜ、あいみつをとらないのですか?」あるいは「あいみつを取ってください」、「あいみつを取らないのは適正ではありません。」と口頭で指摘を受けた場合です。(私は、実際に会計実地検査の会場で何度も目にしました。)

 

「あいみつ」という言葉を使ってしまうと、「契約した会社よりも高い他社の見積書を取り寄せてください」ということを意味します。そうなると契約担当者は、自分では見積書を取れなくなってしまうのです。

 

もし取り寄せた見積書が、本命の民間企業よりも安かったら困ってしまうのです。契約の相手方を決定した後に、他社の見積書を取り寄せて、もし安かったら大変なことになります。契約を解除しなくてはいけません。違約金や損害賠償などの大きなトラブルになります。

 

つまり「あいみつを取ってください」と指摘することは、「契約の相手方へ依頼して、他社の高い見積書を取り寄せてください」と同じ意味になります。当然のことながら価格競争ではない違法な「あいみつ」になります。

 

つまり、契約の相手方から提出された他社の見積書が「あいみつ」になってしまうのです。会計実地検査のときには、契約の相手方以外の他社の見積書「あいみつ」が揃っているので、問題のない契約書類になります。しかし「あいみつ」として取り寄せてしまうと、違法になるリスクが極めて高いのです。そして「あいみつ」は誰が取り寄せたものか、誰にもわかりません。(幸い、私の周りの人たちとは、これらのリスクを常に把握していたので、違法な契約手続きは一切ありませんでした。)

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「あいみつ」は見積書自体を指す、誰がとっても関係ない?

「見積もり合わせ」は、官公庁の契約担当者が、自分で3社へ依頼し、見積書を取り寄せて比較する行為そのものを意味します。見積書を取り寄せて、3社を比較するために「合わせる」のです。イメージとしては、机の上に3社の見積書を並べて、それぞれを比較している姿です。実際に昔は、このように「見積もり合わせ」が行われていました。大きな打合せテーブルの上に3社の見積書を並べて、担当者と係長が意見交換しながら、契約先を決定していました。公正性を確保するために、周りの人たちにも見てもらいながら複数の者で決定していたのです。(2021年現在は、電子入札が増えつつあります。決定までのプロセスがブラックボックスになってしまいました。昔のように公正に決定しているのか見えません。)

 

「見積もり合わせ」は、複数の見積書を比較する行為そのものを意味します。

 

「あいみつ」は、他社の高い見積書を意味します。(単に複数の見積書が揃っていれば良い、誰が見積書を取り寄せても問題ないことを意味します。)

 

契約の相手方でない「不合格となった見積書」を「あいみつ」と呼ぶことが多いのです。(実際には複数の見積書を意味しますが、これは誰が取ったかわからない見積書も含んでいます。)

 

一方「見積もり合わせ」は、不合格となった見積書を指す言葉ではありません。見積書を比較検討する行為自体を指します。

 

多くの場合、「あいみつ」という言葉は、他社の見積書を指すのです。

 

このように「あいみつ」という言葉が怪しく使われているのは、「複数社の見積書があれば良い」という形式主義の指摘が原因です。

 

この考え方からすれば、誰が見積書を取り寄せても問題ないわけです。ときどき民間企業のWEBサイトで「官公庁向けに相見積も用意できます。」という宣伝文句の素敵なサイトを見かけました。まるで談合するかのような、かなり怪しいサイトです。他社の見積書を用意できるという会社は、当然ながら自社よりも高い金額で見積書を用意します。これらは「あいみつさえあれば良い」と言う困った風潮を表しています。

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「あいみつ」が違法になるケース

現在(2021年5月)は、「相見積(合見積)」と「見積もり合わせ」を混同して使っていることが多いです。そして「相見積(合見積)」自体を、「複数社の見積書が揃っていれば良い」と考えている風潮さえあります。

 

しかし本来は、官公庁側の契約担当者が、直接、見積書の提出を依頼して取り寄せ比較する「見積もり合わせ」が正しい契約手続きです。

 

「あいみつ」が違法になるケースは次の通りです。

 

最初から特定の民間企業と契約することを前提に、その企業に対して他社の見積書を提出するよう依頼することです。つまり価格競争をしたように装うことです。「あいみつをそろえる」という言い方をすれば、当然この違法な手続きを意味することになります。見せかけの価格競争は違法になります。

 

公正取引委員会「入札談合等関与行為防止法について」リーフレットでも談合事件であることが明記されています。

「入札談合等関与行為防止法について」リーフレット:公正取引委員会

該当部分を抜粋します。

参考 「公正取引委員会 入札談舎等関与行為防止法について QA2」

 

「入札.競り売りその他競争により相手方を選定する万法」には.どのような契約方法が含まれるのですか。

 

「入札,競り売りその他競争により相手方を選定する方法」には. 一般競争入札及び指名競争入札のほか,随意契約のうち,複数の事業者を指名して見積を徴収し.当該見積りで示された金額だけを比較して契約先を決定する形態のもの(指名見積り合わせ)が含まれます。このような形態の随意契約は, 実質的に競争入札と変わるところがなく,公正取引委員会においても従来から指名見積り合わせに係る事件を入札談合事件の一類型として扱っています。

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なぜ「あいみつ」が横行してしまったのか

違法な「あいみつ(相見積、合見積)」が横行してしまった背景には、現実を無視した契約体制が原因です。

 

官公庁が人員配置を考慮せずに、金額の低い契約までを対象に「見積もり合わせ」するようルール化してしまったのです。

 

本来「少額随意契約」は、事務簡素化を目的にした契約方式です。無理して契約手続きしているなら本末転倒です。それぞれの組織の人員配置に応じて、「見積もり合わせ」が必要な基準額を設定すべきです。公務員の定員削減を進めるなら、同時に「見積もり合わせ」の基準額も引き上げるべきです。電子入札のようなブラックボックスは、不正の温床になるリスクがあります。それよりも、きちんと価格競争できるように基準額を設定すべきなのです。

 

競争入札を実施するための基準額、「見積もり合わせ」を実施するための基準額を引き上げて、無理のない契約体制を確保することが、公平で公正な公的組織です。

 

事務簡素化の目的は、仕事をサボることではありません。余裕を持って公平・公正な事務手続きを行うためのものです。

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