単価契約を必要とする理由、総価契約ができない具体的なケース

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契約手続き
2020年8月 最後の豊島園
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官公庁が締結する単価契約の解説です。なぜ単価契約が必要になるのか、総価契約ができない理由は何なのか、具体例でわかりやすく解説します。契約実務では頻繁に単価契約を締結します。単価契約を正しく理解しておきましょう。

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単価契約とは

 

官公庁の契約手続きのひとつに、単価契約(たんか けいやく)があります。単価契約は、学生時代に教えてもらわなかったので、官公庁で契約担当になって初めて聞く人も多いと思います。言葉のイメージから、単価で行う契約なんだな、ということはわかります。しかし正確に理解している人は少ないはずです。官公庁の契約担当者や営業担当者にとって、単価契約は正しく理解しておきたい契約手続きです。

 

官公庁の単価契約とは、単価で契約するものです。単価契約の反対は、総価契約(そうか けいやく)です。ほとんどの契約は、原則となる総価契約です。単価契約は例外的な扱いといえます。

 

通常の契約は、「単価 × 数量」の総価契約です。しかし契約内容によっては、数量を確定できない場合があります。単価は決定できるが、数量は見込みしかわからない、予定数量しか判明しないことがあるのです。

 

つまり数量が確定できないときに単価契約を締結します。数量が確定できるなら総価契約です。

単価契約 = 数量が未定(予定数量しか表示できない)

 

総価契約 = 単価と数量が決まっていて、契約金額の総額を確定できる

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単価契約の例、なぜ数量を確定できないか

 

例えば、自動車のガソリンや軽油、ボイラーで使用する重油をイメージしてください。ガソリンや重油などは、実際に使う量を事前に決定することはできません。自動車であれば、走行距離により燃料の使用量は異なります。運転方法や渋滞の状況により燃費は変わります。1日だけの契約であれば、ガソリンタンク満タン分(50リッター)で総価契約可能でしょう。しかし1年分の使用量を事前に確定するのは不可能です。

 

ボイラー用の重油も、気候に影響を受けます。例年より寒い日が続けば、重油も多く使います。1年間の使用量を事前に決定することはできません。

 

このように、契約締結前に数量を確定できないときに単価契約を締結します。

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なぜ、単価契約が必要なのか

 

では、なぜ単価契約が必要になるのでしょうか?

原則である総価契約で契約できないのでしょうか?

 

官公庁の契約手続きは、競争入札が原則です。金額の少ない随意契約を締結する場合でも、見積もり合わせが必要です。正式に発注する前に、競争入札を実施したり、見積もり合わせを行って、契約の相手方を選ぶことになります。

 

これらの入札手続きや見積もり合わせには、それなりの期間が必要です。入札手続きであれば2ヶ月以上、少額な見積もり合わせでも最低2週間は必要です。発注前に相手方を選ぶ手続きだけで、かなりの時間と労力が必要になります。

 

例えば、上記のガソリンや重油を総価契約で締結するとしましょう。国民の税金を使う契約手続きなので、公正に相手方(ガソリンスタンド)を選ばなければなりません。もちろん余分に購入することもできません。最低限必要な数量で契約することになります。

 

年間の必要数量を予想して、予定契約金額が競争入札に該当するのであれば、1回の発注が少額でも入札手続きになります。

 

入札手続きを行うのであれば、契約締結までに最低2ヶ月必要です。そうなると3ヶ月以上の単位で契約しないと手続きが間に合いません。4月から6月までの契約を総価契約として締結したとします。次の7月から9月までの契約は、5月ぐらいから入札手続きを始めなくてはいけません。10月から12月までの契約であれば、8月から入札手続きを始めることになります。

 

同じ入札手続きを、数量が確定できないために、年に数回繰り返すことになります。期間が異なるだけの同じ契約なのに、繰り返し入札手続きを行うのは、かなりの負担になります。官公庁側の事務負担も大変ですが、ガソリンや重油を供給するガソリンスタンドにとっても、相当な負担になります。毎回、同じような書類を提出するのは無駄な負担でしかありません。

 

少額な随意契約でも、一年間の数量が確定しないために、複数回に分けて見積もり合わせを行うのは、(官公庁側、民間会社側、双方にとって)かなりの事務負担になります。見積もり合わせを何回も繰り返すのは、効率的ではありません。さらに同じ内容の契約を、複数回に分けて同じ会社と随意契約すれば、業者との癒着や、意図的な入札回避を疑われることにもなります。

 

繰り返し発注する契約について、単価契約を締結せずに、総価契約で分割発注すると、不自然な契約手続きになってしまうのです。単価契約を締結しないと、事務負担が大変になり、不正まで疑われてしまうのです。

 

単価契約を締結すれば、無駄な契約手続きを省くことができます。癒着を疑われるリスクも減ります。年1回(あるいは数年に1回)の契約手続きが可能になるのです。つまり時間のかかる契約手続きを、効率的に実施するために単価契約が認められています。

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単価契約なら、まとめて支払いできる

 

また支出負担行為制度による影響もあります。

 

契約手続きは、会計法令に基づかなければなりません。国が歳出予算を支出するときは、「支出負担行為等取扱規則」に基づいて決議書を作成します。この規則は、支払いするための決議書を作成する方法が定められています。「支出負担行為として整理する時期」は次のように記載されています。

支出負担行為等取扱規則 別表甲号

支出負担行為として整理する時期

物品費の類

購入契約を締結するとき(総価契約)

  請求のあつたとき(単価契約)

 

通常の総価契約であれば、「購入契約を締結するとき」、つまり正式に発注する時点で契約決議書(契約を締結してよいか上層部までの決裁を受ける書類)を作成することになります。ガソリンや重油などの契約を、総価契約として3か月ごとに契約するのであれば、3か月ごとに契約決議書を作成しなければなりません。

 

また(一般的にはあり得ないですが、)単価契約を締結せずに、毎日、正式発注(新規契約)しているということであれば、毎日、契約決議書を作成することになります。極めて煩雑な会計処理になってしまいます。

 

一方単価契約であれば、「請求のあつたとき」に決議書を作成できます。一か月分をまとめて支払うときに、請求書を受領した段階で契約決議書を作成することが可能です。つまり一か月単位(発注頻度が少ない場合は、2ヶ月ごと、あるいは3ヶ月ごともあります。)で契約決議書を作成することができるのです。

 

さらに、代金支払いに必要な決議書の添付書類は、単価契約なら請求書のみです。 総価契約であれば、毎回(発注ごとに)、契約書あるいは請書、見積書などが必要になります。

支出負担行為等取扱規則 別表甲号

必要な主な書類

物品費の類

契約書、請書、見積書( 総価契約)

  請求書(単価契約)

 

実務的には、総価契約を繰り返し行うよりも、単価契約の方が便利で安全なのです。業務負担を考えても、比較にならないほど単価契約の方がメリットが多いです。

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単価契約の根拠法令

国の場合の根拠法令は次のとおりです。

予算決算及び会計令
第八十条 予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。

 

地方自治体は、それぞれの自治体で定めています。参考に東京都と神奈川県の例です。

東京都契約事務規則
第十三条 予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。

 

神奈川県財務規則
第41条
4 予定価格は入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続して行う製造、修理、加工、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。

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単価契約の入札方法

単価契約の場合でも、一般競争入札に該当することがあります。少額随意契約、競争入札などの契約方式の判断は、基本的に予定金額(見積金額)に基づきます。単価契約では、予定単価と1年間の予定数量を見込んだ総額で判断します。

 

例えば国の契約の場合は、予決令第99条第3号により、160万円を超える物品購入は随意契約できません。ガソリンを購入する契約で、予定単価が1 L あたり120円、予定数量が年間16,000Lであれば、年間の支出予定額は192万円です。この場合は、総額である支出予定額で契約方式を判断します。年間192万円であれば随意契約の範囲を超えています。一般競争入札になります。

 

単価で入札を行う場合には、「種類」に注意が必要です。例えば無鉛ガソリン一種類だけの入札であれば、予定価格もひとつの単価を設定し、入札金額も単価同士で比較できます。予定価格以下で落札になります。

 

しかし種類が複数あるときは注意が必要です。ガソリンだけでなく、軽油も一緒に入札することを考えてみましょう。もちろん、ガソリンと軽油を、それぞれ別々に単価で入札することも可能です。しかし落札会社(ガソリンスタンド)が別々になってしまうかもしれません。ガソリンと軽油の契約が別々のガソリンスタンドになるよりも、一箇所のガソリンスタンドを利用できる方が便利です。軽油を買いに行くときに、ついでにガソリンを給油することも多いでしょう。その場合には入札自体を、「単価と数量」の両方を使用して、年間の合計予定金額で落札の判断をします。

複数種類の単価契約の入札例

ガソリン 予定単価1L 140円 予定数量 10,000L 計 1,400,000
軽油   予定単価1L 120円 予定数量 10,000L 計 1,200,000

合計予定金額 2,600,000

この場合、落札の判断は合計予定金額の260万円で判断します。予定数量を固定して入札してもらい、改札時に合計金額を算出します。赤字部分を空欄にして入札書の様式とします。入札時に手書きで金額を書いてもらいます。

 

入札は予定数量に基づく合計予定金額で行います。落札決定後に、1L当たりの単価で契約を締結するわけです。

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単価契約の契約方法、変更契約

上記のように、複数の種類の単価で入札を行った場合は、「合計予定金額」で落札者を決定した後に、予定単価で単価契約を締結することになります。

 

単価契約の契約書を取り交わすときは、一般的に予定数量は記載しません。仮に予定数量に達しなくても、あるいはオーバーしたとしても考慮しない、のが原則です。

 

ただガソリンや、重油、軽油などは、ガソリンスタンドの努力だけでは回避できない影響を受けることがあります。海外から輸入する際に、原産地の価格や輸入経費が、急激に高騰することがあります。契約の相手方の努力だけではカバーしきれない価格変があります。一般的には原油価格の上昇や下降の時には、新聞記事など客観的な事実を基に、契約単価を変更することになります。合理的な理由(誰が見ても止むを得ないと判断する事情)であれば、変更契約可能です。ただし変更契約する場合でも、予定数量を見込んで、予算の範囲内であることが必須です。

 

官公庁が締結する契約では、官公庁側が不利にならない変更契約、あるいは契約の相手方の責に帰さない理由(不可抗力)であれば変更契約可能です。単価契約で単価を変更する際は、変更契約書を正式に取り交わすことになります。

 

また、参考情報ですが、単価契約で発注するときの注意事項が通知されています。

会計事務簡素化のための法令の実施について、単価契約や交換契約に役立つ
官公庁の会計実務で、現在も役に立つ古い運用通知です。請求書に発注書を添付させる単価契約の取り扱い、自動車の交換契約を行う場合の、同種の自動車等の判断、請求書などに検査年月日を記入しておく方法などです。

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