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契約手続き

単価契約を必要とする理由、総価契約ができない具体的なケース

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単価契約で発注している 契約手続き
単価契約で発注している
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官公庁が締結する単価契約の解説です。なぜ単価契約が必要なのか、総価契約ができない理由は何なのか、具体例でわかりやすく解説します。契約実務では頻繁に単価契約を締結します。総価契約と単価契約の違いを理解しましょう。

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単価契約とは

 

官公庁の契約手続きのひとつに、単価契約(たんか けいやく)があります。単価契約は、学生時代に教えてもらえなかったので、官公庁で契約担当になって初めて聞く人も多いと思います。言葉のイメージから、「単価で行う契約なんだな」ということはわかります。しかし正確に理解している人は少ないはずです。官公庁の契約担当者や、官公庁向け営業担当者にとって、単価契約を正しく理解しておくことは必須です。

 

官公庁の単価契約とは、単価で契約するものです。単価契約の反対は、総価契約(そうか けいやく)です。ほとんどの契約は、原則である総価契約です。単価契約は例外的な扱いといえます。

 

通常の契約は、「単価 × 数量」の総価契約です。しかし契約内容によっては、数量を確定できない場合があります。単価は決定できるが、数量は見込みしかわからない、予定数量しか判明しないことがあるのです。

 

つまり数量が確定できないときに単価契約を締結します。数量が確定できるなら総価契約です。

 

単価契約 = 数量が未定(予定数量しか表示できない)

 

総価契約 = 単価と数量が決まっていて、契約金額の総額を確定できる

 

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単価契約の具体例、なぜ数量を確定できないか

 

例えば、自動車のガソリンや軽油、ボイラーで使用する重油をイメージしてください。ガソリンや重油などは、実際に使う量を事前に決定することはできません。

 

自動車であれば、走行距離により燃料の使用量が変わります。運転方法や渋滞の状況により燃費も変わります。2~3日だけ自動車を使うのであれば、ガソリンメーターを見て、心持ち少なめに入れれば、タンク満タン分(50リッター以下)にして総価契約が可能でしょう。しかし1年分の使用量を事前に確定することは不可能です。

 

ボイラー用の重油も、気候に影響を受けます。例年より寒い日が続けば、重油も多く使います。1年間の使用量を事前に決定することはできません。

 

このように、契約締結時に数量を確定できないときに単価契約を締結します。

 

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なぜ、単価契約が必要なのか

 

数量が確定できないときに単価契約を締結することはわかりました。では、なぜ単価契約が必要になるのでしょうか?原則である総価契約で契約できないのでしょうか?

 

官公庁の契約手続きは、一般競争入札が原則です。金額の小さい随意契約を締結する場合でも、見積もり合わせが必要です。契約の相手方は、公平・公正に選ばなければなりません。正式に発注する前に、一般競争入札を実施したり、見積もり合わせを行って、契約の相手方を選ぶことになります。

 

これらの契約の相手方を選ぶ入札手続きや見積もり合わせには、それなりの期間が必要です。入札手続きであれば2ヶ月以上、金額の小さい見積もり合わせでも最低2週間は必要です。つまり発注前に(注文する前に)相手方を選ぶ手続きだけで、かなりの時間と労力が必要になります。

 

例えば、上述の車のガソリンを総価契約で締結するとしましょう。国民の税金を使う契約手続きなので、公平・公正に相手方(ガソリンスタンド)を選ばなければなりません。もちろん余分に購入すれば税金の無駄使いになるため、常に少なめに給油することになります。ガソリンタンクに溢れないよう、最低限必要な数量で契約することになります。

 

年間の予定使用量を見込んで、予定契約金額が競争入札に該当するのであれば、1回の発注が小額でも入札手続きになります。国の会計法令では予決令第99条により年間のガソリン代が160万円を超えれば競争入札になります。月額に換算すれば13万円です。大きな職場では公用車を複数台所有しているので、すぐに該当してしまいます。

 

一般競争入札を行うのであれば、契約締結までに最低2ヶ月必要です。そうなると3ヶ月以上の期間単位で契約しないと手続きが間に合いません。4月から6月までの契約を総価契約として締結したとします。次の7月から9月までの契約は、5月ぐらいから入札手続きを始めなくてはいけません。10月から12月までの契約であれば、8月から入札手続きを始めることになります。

 

 総価契約では、数量が確定できないために、同じ入札手続きを年に数回繰り返すことになります。期間が異なるだけの同じ契約なのに、繰り返して同じ入札手続きを行うのは、かなりの負担になります。官公庁側の事務負担も大変ですが、ガソリンを供給するガソリンスタンドにとっても、相当な負担です。毎回、同じような書類(入札書、入札資格確認書類、委任状など)を提出するのは無駄な負担でしかありません。

 

官用車を数台しか持たない小さな随意契約でも、一年間の数量が確定しないために、複数回に分けて見積もり合わせを行うのは、(官公庁側、民間会社側、双方にとって)かなりの事務負担になります。見積書を依頼したり提出してもらうにも、それなりの時間がかかります。契約期間が違うだけで、契約内容が同じ見積もり合わせを何回も繰り返すのは、効率的ではありません。

 

さらに困ったことに、同じ内容の契約を、複数回に分けて同じ会社と随意契約すれば、業者との癒着や、意図的な入札回避まで疑われてしまうことにもなります。

 

つまり、繰り返し発注する契約について、単価契約を締結せずに、総価契約で分割して発注すると、不自然な契約手続きになってしまうのです。単価契約を締結しないと、事務負担が大変になるだけでなく、不正まで疑われてしまうのです。

 

単価契約を締結すれば、無駄な契約手続きを省くことができます。癒着を疑われるリスクも減ります。年1回(あるいは単年度予算でなければ3年に1回など)の契約手続きが可能になるのです。時間のかかる契約手続きを、発注の都度繰り返す必要がないよう一定期間の単価契約が認められています。

 

 総価契約では、発注の都度、見積り合わせや入札が必要になってしまいます。単価契約なら、一度だけ見積り合わせや入札を実施すれば、一定期間、自由にいつでも発注できるわけです。

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単価契約なら、まとめて支払いできる

 

また支出負担行為制度による影響もあります。契約手続きは、会計法令に基づかなければなりません。国が歳出予算を支出するときは、「支出負担行為等取扱規則」に基づいて決議書を作成します。この規則は、契約代金を支払うための決議書について定められています。「支出負担行為として整理する時期」は次のように記載されています。

 

支出負担行為等取扱規則 別表甲号

支出負担行為として整理する時期

物品費の類

購入契約を締結するとき(総価契約)

請求のあつたとき(単価契約

 

通常の総価契約であれば、「購入契約を締結するとき」、つまり正式に発注する時点で決議書(契約を締結して代金を支払ってよいか、上層部までの決裁を受ける書類)を作成することになります。ガソリンや重油などの契約を、総価契約とするのであれば、発注しようとするたびに決議書を作成しなければなりません。

 

極端な例ですが、(一般的にはあり得ないですが、)単価契約を締結せずに、毎日、電話で注文しているのであれば、毎日、決議書を作成しなければなりません。極めて煩雑な会計処理になってしまいます。決裁する上司も、毎日同じような契約書類が回ってきたら嫌になるでしょう。

 

一方単価契約であれば、「請求のあつたとき」に決議書を作成できます。一か月分をまとめて支払うことにして、請求書を受理した段階で「〇月分」として決議書を作成することが可能になります。つまり一か月単位(発注頻度が少ない場合は、3ヶ月ごと、あるいは6ヶ月などの期間)で決議書を作成することができるのです。

 

さらに、代金支払いに必要な決議書の添付書類は、単価契約なら請求書のみです。 総価契約であれば、毎回(発注ごとに)、契約書あるいは請書、見積書などが必要になります。

 

支出負担行為等取扱規則 別表甲号

必要な主な書類

物品費の類

契約書、請書、見積書( 総価契約)

請求書(単価契約

 

実務的には、総価契約を繰り返し行うよりも、単価契約の方が効率的で安全なのです。業務負担を考えても、比較にならないほど単価契約の方がメリットが大きいです。

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単価契約の根拠法令

 

国の単価契約の根拠法令は次のとおりです。

 

予算決算及び会計令

第八十条 予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。

 

地方自治体は、それぞれの自治体で定めています。参考に東京都と神奈川県の例です。

 

東京都契約事務規則

第十三条 予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。

 

神奈川県財務規則

第41条
4 予定価格は入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続して行う製造、修理、加工、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。

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単価契約の入札方法

 

単価契約の場合でも、一般競争入札に該当することがあります。少額随意契約や競争入札などの契約方式の判断は、1年間(会計年度内に使用する見込数量)の予定金額(見積金額)によります。単価契約では、予定単価と1年間の予定数量を見込んだ総額(税込み)で判断します。

 

例えば国の場合は、予決令第99条第3号により、160万円を超える物品購入は随意契約できません。ガソリンを購入する契約で、予定単価が1 L あたり120円、予定数量が年間16,000Lであれば、年間の支出予定額は192万円です。この場合は、総額である支出予定額で契約方式を判断します。年間192万円であれば随意契約の範囲を超えているので、一般競争入札になります。

 

単価で入札を行う場合には、「種類」にも注意しましょう。例えばレギュラーガソリンひと種類だけの入札であれば、予定価格もひとつの単価を設定し、入札金額も単価同士で比較できます。予定価格の範囲内なら落札になります。

 

単価契約 入札の例

 

予定価格 レギュラーガソリン 1リッターあたり 120円

入札金額 レギュラーガソリン 1リッターあたり 119円 (落札)

 

しかし種類が複数あるときは注意が必要です。レギュラーガソリンだけでなく、軽油も一緒に入札することを考えてみましょう。もちろん、それぞれ別々に単価で入札することも可能です。しかし落札会社(ガソリンスタンド)が別々になってしまうかもしれません。ガソリンと軽油の契約が、別々のガソリンスタンドになると、混乱の原因になります。違う方のガソリンスタンドで入れてしまうかもしれません。当然、同じガソリンスタンドを利用できる方が便利です。発電機用の軽油を買いに行くときに、ついでにガソリンを給油することがあるかもしれません。その場合には入札自体を、「単価と予定数量」の両方を使用して、年間の合計予定金額で落札の判断をします。

 

複数種類の単価契約 予定価格の例

 

予定価格

ガソリン 予定単価1L 140円 予定数量 10,000L 計 1,400,000
軽油   予定単価1L 120円 予定数量 10,000L 計 1,200,000

合計予定金額 2,600,000

 

この場合、落札の判断は合計予定金額の260万円で判断します。予定数量のみを固定して単価と合計金額で入札してもらいます。赤字部分を空欄にして入札書の様式とします。入札時に手書きで金額を書いてもらいます。

 

複数種類の単価契約 入札書の例

 

入札書

ガソリン 単価1L 〇〇円 予定数量 10,000L 計 〇〇〇〇〇〇円
軽油   単価1L 〇〇円 予定数量 10,000L 計 〇〇〇〇〇〇円

合計予定金額 〇〇〇〇〇〇円

 

入札は、予定数量に基づく合計予定金額で行います。合計予定金額以下なら落札になります。落札決定後に、1L当たりの単価で契約を締結するわけです。予定数量は、前年度実績などから想定しますが、実際に購入する量とは異なってきます。数量は過不足のリスクを承知の上で入札するので、実際の数量の増減による調整は行いません。

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単価契約の契約方法、変更契約

 

上記のように、複数の種類の単価で入札を行った場合は、「合計予定金額」で落札者を決定した後に、単価契約を締結することになります。

 

単価契約の契約書を取り交わすときは、一般的に予定数量は記載しません。仮に予定数量に達しなくても、あるいはオーバーしたとしても考慮しません。

 

しかしガソリンや、重油、軽油などは、ガソリンスタンドの努力だけでは回避できない影響を受けることがあります。海外から輸入する際に、原産地の価格や輸入経費が、急激に高騰することがあります。契約の相手方の努力だけではカバーしきれない価格変動があります。原油価格の上昇や下降の時には、新聞記事など客観的な事実を基に、契約単価を変更することになります。合理的な理由(誰が見ても止むを得ないと判断する事情)であれば、変更契約が可能です。ただし変更契約する場合でも、予定数量を見込んで、予算の範囲内であることが必須です。

 

官公庁が締結する契約では、官公庁側が不利にならない変更契約、あるいは契約の相手方の責に帰さない理由(不可抗力)であれば変更契約が可能です。単価契約で単価を変更する際は、変更契約書を正式に取り交わすことになります。

 

また、参考情報ですが、単価契約で発注するときの注意事項が通知されています。

単価契約や交換契約、検査調書を省略した場合の運用通知
 日常の会計実務の中で、意外にも役立つ古い運用通知です。請求書へ発注書を添付させる単価契約の取り扱い、交換契約における同種の自動車等の判断、検査調書を省略した場合の検収年月日の記入方法などです。
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コメント

  1. ナッツ より:

    いつも勉強させていただいております。
    単価契約を締結している健診業務の委託料の履行確認日についてご教示ください。
    本市の財務規則では、委託料の場合、「支出負担行為として整理する時期」は「請求のあったとき」となっています。

    4月健診分の請求書を5月10日に収受した場合の例です。
    ①4月30日を履行確認日として、5月10日に支出負担行為伺書兼支出命令書を起票する。
    ②5月10日を履行確認日として、5月10日に支出負担行為伺書兼支出命令書を起票する。
    ③5月15日(←10日以内で検査をした日)を履行確認日として、5月15日に支出負担行為伺書兼支出命令書を起票する。

    職員間で①~③の意見が分かれております。
    請求書を収受してからでないと実際に給付の内容を確認できないので、個人的には②と考えています。
    ただ、③の場合、請求書収受日は5月10日で、履行確認日が5月15日となり、履行確認後に請求書発行という通常の流れとは異なりますが、単価契約については、許容されるのではとも思います。

    どの考えが正しいのかご教示ください。よろしくお願いいたします。

    • 矢野雅彦 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      契約内容の詳細が不明なので、一般的な回答になります。

      健診業務の委託料の履行確認日は、検診業務を実際に終えた日です。例えば、4月末まで検診できる状態であれば、4月分の履行確認日は4月最終日(土日が検診休みであれば除きます。)になります。

      請求書が到着する前に、契約の相手方から概数を報告してもらうようにします。1日の検診が終えた段階で、概数(最終確認は、締め日に確定します。)をメールなどで送ってもらい、後日、請求書が届いた段階で数量を集計し、確定数字を確認します。

      つまり、履行確認日は、請求書に基づくものではなく、実際の業務完了を確認した日になります。検診人数が多い職場では、当日のキャンセルや、検診項目の変更などで数量が多少変わると思います。日報は概数で報告してもらい、月ごとの集計で確定数を確認するのが安全です。(数が多く、毎日の報告が困難であれば、1週間ごとの報告なども考えられます。)

      請求書に記載されている報告数だけでは、履行の確認には不十分と考えます。請求書だけで払ってしまうと、過大請求などのリスクが避けられません。

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