変更契約の可否を判断する方法、変更契約書の記載例、変更契約一覧表

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契約手続き
2007年 シンガポール
契約手続き

官公庁が締結した契約は、契約内容を変更できない場合があります。契約の変更を検討するときは、変更理由だけでなく、最初の契約方式によって判断します。また変更契約書の作成方法などを具体例でわかりやすく解説します。

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変更契約の可否を判断する方法

 

すでに契約を締結した後に、契約内容を変更したいとの要望を受けることがあります。あるいは官公庁側の理由により契約内容を変更したいときがあります。しかし変更契約はすべて可能なわけではなく、変更できない場合があります。変更理由だけでなく、最初に契約したときの契約方式によって変更の可否を判断します。

 

変更契約が可能な場合

変更契約が可能なのは、次の理由に基づく場合です。変更契約の可否について検討するときの必須条件です。

官公庁側が有利になる場合(不利にならない場合)

 

自然災害などの不可抗力で止むを得ない場合(契約の相手方に責任がない場合)

 

さらに上記の理由に加えて、最初に締結したときの契約方式(競争入札や随意契約)によって判断が変わります。

 

競争性のない随意契約(予決令102-4-3)として締結した当初契約は、変更契約が可能です。

 

一般競争入札や少額随意契約で締結した契約は、契約金額が変わらない、あるいは減額する変更のみ可能です。当初の契約方式に影響しない範囲でしか変更できません。

 

例えば台風などの自然災害で商品や材料が滅失し、納品数量を減らさなければならないときや納入期限のみを延長する場合は、変更契約可能です。

 

変更契約が不可能な場合

民間企業同士の契約であれば当事者の合意があれば自由に契約を変更できます。しかし官公庁の契約は、法令により手続きが定められているために制約があります。法令に縛られるところが民間企業と大きく異なるところです。原則として契約方式が変わるような変更は不可能です。

 

当初の契約が少額随意契約のとき、契約金額を増額することで入札対象金額になるときは変更契約できません。増額部分を新たに入札手続きで契約することになります。変更できない理由は、結果的に見ると、入札手続きを回避するために少額随意契約を締結したと看做されてしまうからです。競争入札を逃れるために分割発注した不適切な契約手続きになってしまうのです。会計検査などで指摘されます。それなら次年度で新規に契約し直す方が安全です。

 

もし増額する可能性があるなら、最初から一般競争入札すべきです。少額随意契約は、契約締結した後で増額できないと理解しておきましょう。

 

例えば次のケース(売買契約)です。

 

当初は少額随意契約(160万円以下)と判断

 

当初の契約金額 140万円 ➡ 数量を増額し30万円増額したい ➡ 契約金額が160万円を超えるので変更契約不可

 

30万円増額すると、当初の契約方式(少額随意契約)が競争入札になります。契約方式に影響を与える変更になるので不可能です。

 

それでも追加契約が必要であれば、30万円のみであっても競争入札を実施しなければなりません。当初の少額随意契約と判断したときには、入札を避ける意図がなかったことを明確に証明する必要があるからです。手続きが面倒だからと故意に分割して少額随意契約したのではないという意思表示のために、わずか30万円の契約でも競争入札することになります。かなり面倒な手続きになってしまうのです。このようなことのないよう調達計画は慎重に決定しなければなりません。

 

また一般競争入札の契約を増額するときも、国際入札(政府調達に関する協定)に該当するようであれば変更できません。

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変更契約書の記載例

物品の売買契約を例に、変更契約書の記載方法を解説します。2回変更する場合です。変更理由は次のとおりです。これは不運なケースです。

 

一般競争契約(入札手続き)で、パソコンとモニター60セットを1,200万円で契約、1セット20万円。契約年月日は6月1日、納入期限は12月20日

 

1回目の変更
大型台風が発生し生産工場が被災、部品調達困難で10セット納品不可能となった。

 

2回目の変更
大きな地震が発生し、さらに5セットが生産できなくなった。道路が寸断され納期も延期。

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当初の契約書(原契約書)

 

物品供給契約書

調達物品名 パソコン・モニター 一式
数量 60セット
契約金額 金12,000,000円也

発注者 支出負担行為担当官〇〇省会計課長〇〇と供給者〇〇株式会社 代表取締役社長〇〇とは、上記「パソコン・モニター 一式」(以下「物品」という。)の供給について、上記契約金額をもって次の条項のとおり契約を締結するものとする。

第1条(略)

第4条 物品は、〇〇省〇〇課大会議室に納入するものとする。
第5条 物品の納入期限は、平成30年12月20日とする。

(略)

平成30年6月1日

発注者 支出負担行為担当官
〇〇省会計課長 〇〇〇〇 印

供給者
〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇〇〇 印

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変更契約書(1回目)

(大型台風が発生し生産工場が被災、部品調達困難で10セット納品不可能となった。)

 

変更契約書

発注者 支出負担行為担当官〇〇省会計課長〇〇と供給者〇〇株式会社 代表取締役社長〇〇とは、平成30年6月1日付けで締結した「パソコン・モニター 一式」物品供給契約書(以下「原契約書」という。)について、次のとおり変更契約を締結する。

 

(数量の変更)
第1条 原契約書頭書の「数量 60セット」を「数量 50セット」に変更する。

 

(契約金額の変更)
第2条 原契約書頭書の契約金額「金12,000,000円也」を「金10,000,000円也」に変更する。

 

第3条 その他の条項については、原契約書のとおりとする。

 

上記変更契約の成立を証するため、本変更契約書を2通作成し、発注者、供給者それぞれ1通を所持するものとする。

平成30年8月20日

発注者 支出負担行為担当官
〇〇省会計課長 〇〇〇〇 印

供給者
〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇〇〇 印

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変更契約書(2回目)

(地震が発生し、さらに5セットが生産できなくなった。道路が崩れ納期も1ヶ月遅れる。)

 

変更契約書(第2回)

発注者 支出負担行為担当官〇〇省会計課長〇〇と供給者〇〇株式会社 代表取締役社長〇〇とは、平成30年6月1日付けで締結した「パソコン・モニター 一式」物品供給契約書(以下「原契約書」という。)、平成30年8月20日付けで締結した変更契約書(以下「第1回変更契約書」という。)について、次のとおり変更契約を締結する。

 

(数量の変更)
第1条 第1回変更契約書第1条の「数量 50セット」を「数量 45セット」に変更する。

 

(契約金額の変更)
第2条 第1回変更契約書第2条の契約金額「金10,000,000円也」を「金9,000,000円也」に変更する。

 

第3条 原契約書第5条の納入期限「平成30年12月20日」を「平成31年1月20日」に変更する。

 

第4条 その他の条項については、原契約書および第1回変更契約書のとおりとする。

 

上記変更契約の成立を証するため、本変更契約書を2通作成し、発注者、供給者それぞれ1通を所持するものとする。

平成30年10月20日

発注者 支出負担行為担当官
〇〇省会計課長 〇〇〇〇 印

供給者
〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇〇〇 印

 

変更契約書は、どの部分を変更するのかわかりやすく記述します。特に2回以上変更するときは、過去の契約すべてを冒頭で定義し、どの部分を変更するのか明確にします。最後の条文「その他の条項については、原契約書および第1回変更契約書のとおりとする。」で、過去の契約、変更契約をすべて対象にしています。

 

変更契約を締結するときに、最新の契約書だけ、あるいは当初の契約書だけを対象に考えてしまうとミスします。必ず、過去の契約すべてを含めて変更部分を検討します。

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変更契約一覧表で内容を整理する

変更契約は、2回くらいなら複雑ではありませんが、それ以上になると混乱します。変更回数が多くなると、過去にどの部分を変更したのかわからなくなるのです。変更契約を繰り返す場合は、次のように表形式で変更契約一覧表としてまとめておくと便利です。決裁書類の参考資料にもなります。

 

変更契約一覧表(例)

原契約(〇月〇日締結)第1回変更契約(〇月〇日)第2回変更契約(〇月〇日)
頭書 数量 60セット第1条 数量 50セット第1条 数量 45セット
頭書 契約金額 12,000,000円第2条 契約金額 10,000,000円第2条 契約金額 9,000,000円
第5条 納入期限 平成30年12月20日第3条 納入期限 平成31年1月20日

 

変更契約は、関係者間でどの部分を変更したのか確認しておくことも重要です。お互いに担当者が人事異動で変わることがあります。わかりやすく変更内容を整理しておくと良いです。

コメント

  1. 機械警備委託業務で、宿舎の部屋ごとに同じ種類の警備用機械を取り付ける仕様で入札を行い長期継続契約を締結しました。
    しばらくして、上記契約期間中に、状況が変わり、別の部屋を追加整備することになり、新たに当該部屋に警備用機械を取り付ける方針となりました。
    保安上、別の業者と新たに機械警備委託業務を締結するのは望ましくないことや追加の契約金額が入札金額未満であることから、原契約期間満了までで現業者に一者随契による追加契約にできないかと考えております。

    難しいでしょうか?

    • 矢野雅彦管理人 より:

      コメントありがとうございます、管理人です。

      変更前の契約方式が入札であれば、追加部分を随意契約としても問題ありません。

      おっしゃる通り、別の会社と新たに機械警備委託業務を締結する方が怖いです。

      特に機械警備の追加であれば、当然ながら既存の警備設備との接続が最重要です。万が一、追加部分の契約が別会社になり、複数の会社との機械警備委託契約になれば、次のような問題が生じます。

      ◯緊急時の対応が取れない。それぞれの会社へ連絡しなければならない。

      ◯追加設備との配線が複雑になってしまうため、設備の不具合などがあったときに、責任の所在が曖昧になる。

      つまり、選定理由書を作成し、競争性のない随意契約とするのが最も安全です。機械警備は、全体を統括できる体制が必須です。

  2. 匿名 より:

    分かりやすくご解説くださり、ありがとうございます。いつも参考にさせていただいております。
    官公庁との契約において、官公庁側が有利になる場合(不利にならない場合)に変更契約が可能とご記載いただいておりますが、どの法令のどの条項が根拠となっておりますでしょうか。
    不勉強で恐れ入りますがご回答いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

    • 矢野雅彦管理人 より:

      コメントありがとうございます、管理人です。

      変更契約についての根拠法令はありません。

      官公庁が民間企業と締結する契約は、私法上(対等な立場という意味)の契約です。基本は民法が適用されます。強いて根拠を求めるなら、次の民法における「契約自由の原則」になるでしょう。ただ厳密にいえば「事情変更の原則」ですが、明文化していない「法理」で、とてもややこしいです。

      民法

      第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
      2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

      また最近のことですが、新型コロナの感染対策として、令和2年3月3日に総務省から各地方公共団体へ向けて、次のように変更契約するように通知が発出されています。工期や納期の延長は、通常、官公庁側が不利になるので認められないのですが、例外として変更契約するように指導がなされています。

      「地方公共団体の調達における新型コロナウイルス感染症への対応について」

      「1.工期・納期の見直し、契約金額の変更及び迅速な支払い 新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、受注者から工期又は納期の見直し等の申し出があった場合には、必要に応じ、工期又は納期の見直しやこれに伴い必要となる契約金額の変更等、適切な対応を講じるよう努めること。」

      なお本サイトでは、可能な限り根拠法令を示して解説しているので、「法令が書いてない解説は、逆に会計法令に基づく根拠法令がない」ことの方が多いです。

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