契約書を取り交わした後に「納期が遅れる」との申し出があったとき

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官公庁で契約実務を担当していると、まれに営業担当者から「納期が遅れそう」との申し出を受けることがあります。すでに契約書を取り交わしているときに、変更契約として処理するのか、契約解除や違約金として処理するのか、など判断に迷います。正しい対応方法について解説します。

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「納期が遅れる」との申し出を受けたとき

 

民間会社と正式な契約書を取り交わした後で、「納期が遅れる」との申し出を受けたとき、対応方法は、次の手順になります。

 

納期が遅れる原因を聞き取り調査する。

原因が不可抗力によるものか、相手方の責任によるものか、責任の所在を判断する。

不可抗力によるときは、納期の遅れによって支障があるか調査する。

相手方の責任による遅れなら「契約解除」や「違約金」などを検討する。

 

まず最初に行うことは、納期が遅れる原因を詳細に聞くことです。原因が、契約の相手方である会社側の責任によるものか、あるいは会社側の責任ではなく、不可抗力によるものか判断しなければなりません。納入期限までに余裕がある時期なら、聞き取り調査を行うときに「関係資料」を一緒に持参してもらいます。関係資料としては納期が遅れる原因を詳細に記した「納入期限延長願い」と、その原因を客観的に証明する新聞記事などの資料です。

 

しかし納期の遅れが判明する時期は、通常、納入期限に近いときですので、時間的に余裕がないタイミングのことが多いです。聞き取り調査を行うときは、可能な限り官公庁側の関係者(契約担当者や上司など)を集めて行います。担当者ひとりで聞き取り調査するのは危険です。後日大きなトラブルになることがあります。担当者の他に上司も入って、聞き取り調査を行います。異常事態なので電話で済ませることはしません。必ず、会社側の担当者や上司にも参加してもらいます。

 

聞き取り調査までに契約実務担当者が行うべきことは、契約書の条文の確認です。債務不履行(履行遅滞)と、契約解除のケースを想定して契約書のコピーを用意します。また、納期が遅れたときに業務に支障があるか関係者と打合せを行います。

 

官公庁側と民間会社側で打合せするときは、双方とも担当者のみでなく上司も一緒に打合せします。打合せのときに「持ち帰って上司と相談します」ということにならないよう、契約についての決定権のある立場の人に参加してもらいます。万が一、弁護士が同席するようであれば、かなりまずい事態が想定されるので、官公庁側も弁護士へ依頼し、立ち会ってもらいます。

 

納期が遅れる原因が、「不可抗力かどうか」を双方で確認します。

 

不可抗力のケースは次の場合です。

 

自然災害(地震、津波、大雪、大雨、台風、火災等)

公共交通機関の障害(ストライキ、停電、電車の故障、道路の通行不可、飛行機の遅れ等)

契約の相手方が代理店のときはメーカー側の理由(出荷の遅れ、製造の遅れ、輸入の遅れ)

 

契約の相手方としては、原因を避けられない事情であること、誰が考えても、原因を回避できず、無理と思える状況であれば「不可抗力」として「ペナルティなし」で納期を延長することが可能です。不可抗力ということを双方で確認した後に、納期の遅れの期間を確認し、官公庁側の業務に支障がなければ契約を変更します。変更契約書を作成して、納入期限を正式に延長します。変更契約書には次の書類を添付します。

 

「変更理由書」
官公庁側で、不可効力と判断したことを簡単に記し、理由書として契約関係書類に保存します。

 

「納入期限延長願い」
契約の相手方である民間会社から、納期が遅れる原因を詳細に書いてもらいます。当初の納入期限を、いつまで延期するか明記してもらいます。契約書の押印と同じ立場の人に、印鑑も押してもらいます。

 

「事実を示す客観的な書類」
新聞記事や、ニュースサイトの記事などの写しを添付します。交通機関に関係するものは「証明書」などがあれば添付します。

 

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原因が「不可抗力でない」場合

 

民間会社からの納期遅れの原因が次のケースは、不可抗力とは考えられません。納期を遵守するよう毅然と交渉します。

 

他の大口契約が入り、そちらの契約の方が利益が大きいので、他の顧客を優先したい。(会社の営業戦略)

 

営業担当者あるいは社員のミスにより納品準備が遅れた。

 

これらの会社独自の理由であれば、納期の遅れは認めません。納入期限を絶対守るよう指示します。工程管理等の計画がずさんであれば、24時間体制で休日もシフトを組んで納品に間に合うよう指示します。もし納期に遅れたときは、契約書の条文を見せてペナルティを課すことも詳しく説明します。

 

官公庁との取り引きで「契約違反」になれば、ペナルティとして「取引停止措置」になり、上級官庁へ報告することになります。取引停止になれば、上級官庁から全省庁へ連絡がなされ、日本全国の官公庁から取引停止措置を受けることになります。会社の信頼が失われ、莫大な損害になることも説明します。

 

契約違反等の報告は、予算決算及び会計令第百二条で義務になっています。各官公庁→財務大臣→各省へ報告がなされます。

予算決算及び会計令

二条 契約担当官等は、その取扱いに係る契約に関し、第七十一条の規定に該当すると認められる者があつたときは、財務大臣の定めるところにより、その事実を詳細に記載し、又は記録した書面により当該各省各庁の長に報告しなければならない。

 

七十一条 契約担当官等は、一般競争に参加しようとする者が次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、その者について三年以内の期間を定めて一般競争に参加させないことができる。その者を代理人、支配人その他の使用人として使用する者についても、また同様とする。

五 正当な理由がなくて契約を履行しなかつたとき。

納期が遅れたときに、その責任が会社側にあったときは、契約書に基づくペナルティと民法に基づく損害賠償等になります。

 

通常は契約書の中で「履行遅滞の場合」の損害金計算方法を具体的に定めています。遅延日数に応じて損害金を請求することになります。

 

損害金=納期が遅れた代金額×遅延日数×遅延利息の率

 

遅延利息は、官公庁側の代金支払が遅れたときの「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」第八条と同じ率を定めていることが多いです。

 

参考
政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率
平成29年3月3日財務省告示第53号

年二・七パーセント

 

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「契約解除」と「損害賠償(違約金)」

 

納期が遅れることで、重大な支障になるときは、「契約解除」と「損害賠償(違約金)」を検討することになります。しかし双方の主張が争いになる可能性があるので、法務専門部署や弁護士に事前相談する方が安全です。話がこじれると訴訟になりますので担当者レベルでは判断できません。

 

契約解除の判断は、納期の遅れが業務に重大な支障を来たし、すぐに他の会社と契約し直す必要があるときです。会社側のミスによる契約解除であれば、「違約金」を請求することが可能です。

 

契約書の条文の中に「契約解除の場合は、違約金として契約金額の10%に相当する額を支払わなければならない」と定めておくと安全です。

 

「違約金」だけでなく、「損害賠償」するときは、かなり大変な労力になります。損害額を具体的に証明しなければなりません。相手方が納得しなければ訴訟になります。損害賠償金額は「契約違反がなければ必要なかった経費」を積算することになります。

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