「1社入札」は有効です、問題視すれば重大な「不正事件」が発生

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「1社入札」を問題視する報道があります。「競争性が確保されていない」という理由によるものです。しかし本当に問題なのか、実務者の視点から詳しく解説します。1社入札を無効とする見解や、有効とする見解、指名競争入札での「1社入札」の解説です。

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「1社入札」とは

 

官公庁が入札を実施するときに、契約実務担当者が悩む問題として「1社入札」があります。「1社入札」以外に、多数の呼び方があります。1社応札、1者入札、1者応札、1者応募などです。

 

いずれも、入札に参加した会社が、1社のみの場合です。開札会場内に、競争相手が存在しない状態が「1社入札」です。

 

新聞やテレビのマスコミ報道で「入札」という言葉が使われますが、国の会計法令である「会計法」で定めている「入札」には、「一般競争」と「指名競争」の2種類があります。(会計法第二十九条の三)

 

「一般競争入札」と「指名競争入札」、それぞれについて解説します。両方とも「入札」という言葉が使われてますが、実態は、全くの別物です。両者を一緒に考えることはできません。

 

契約方式(入札)の原則は、一般競争入札です。例外として、契約金額の低い場合や入札参加者が限定されている場合に「指名競争入札」が認められています。

 

「一般競争入札」は、不特定多数の者が参加可能です。

 

「指名競争入札」は、あらかじめ発注者側(官公庁の契約実務担当者)が選んだ会社を指名して入札します。そのため指名競争入札は、「談合」や「業者との癒着」などの危険性が常に存在します。あまり薦められない入札方式です。2018年現在は、物品購入契約などは「一般競争入札」がほとんどです。

 

では、一般競争入札を実施して、参加者が1社しかないときは、どう対応するのが適正でしょうか。

 

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1社入札が「有効か」どうか

 

そもそも一般競争入札において、「1社入札」は、有効なのでしょうか、無効なのでしょうか。

 

1社しか入札に参加しなくても「入札」と言えるのでしょうか。

 

実は、「1社入札」が有効かどうかは、昔から意見が分かれています。会計法令でも具体的な規定は存在しません。

 

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1社入札を「無効」とする見解

 

「無効」とする代表的な考え方は、次のとおりです。

 

そもそも官公庁が実施する入札は、競争性を確保して経済的な契約締結を目指すものです。入札公告を掲載し、不特定多数の者に対して、入札への参加機会を確保しても、その結果として、参加者が1社であれば、その時点で競争性が確保されなくなったのです。競争できない状態では、「入札」にならないのです。

 

そして「1社入札」が判明した時点で、入札手続きを一旦「取りやめにすべき」と主張します。入札に参加できる条件(仕様書など)を再度見直し、複数の会社が入札に参加できるよう「リセット」します。もう一度最初から「入札手続きをやり直すべき」という考え方です。

 

これは理論的に考えれば、一見「正しい」ものです。

 

「競争性を実質的に確保した入札」を絶対条件と考え、2社以上の複数の入札参加者によって、実際に競争性のある状態で開札するのが「入札」という考え方です。「1社のみの入札」は、そもそも競争相手が存在しないのだから、「競争入札ではない」という判断です。

 

このような主張は、実務を経験したことのない人に多いです。自分で入札を実施した経験がなく、仕様書や予定価格の作成経験がない学識経験者の人に多いようです。

 

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入札「やり直し」の弊害

 

では、入札の結果1社のみの参加となり、入札をやり直す(仕切り直す)ことを現実的に想定し、どれほどの手間と人件費が必要か考えます。

 

机を100個購入する総額500万円の入札を想定します。

 

一般競争入札を実施する場合の手続き期間は、およそ次のとおりです。

 

  • 仕様書(発注者が必要とする内容を示す資料)を見直して再作成するためには、複数の販売会社から資料を取り寄せて検討するなどの調査が必要です。資料を集めたり、営業担当者に電話したり、少なくとも2週間以上必要です。
  • 次に、入札公告をインターネットのホームページに掲載するための入札伺いを作成し、内部で決裁する期間も1週間必要です。
  • 入札公告の掲載期間は、最低でも4週間はとりたいところです。この入札公告掲載期間が短いほど、入札参加者が少なくなります。

 

このように入札手続きを「やり直す」場合は、開札(入札)までに7週間、およそ2ヶ月程度の期間が必要です。

 

「1社入札」をやり直すということは、参加する会社が2社以上入るよう、仕様書を見直して、内容の修正や市場調査のやり直しを行なうことになります。参加可能な会社の情報を調べるのに時間が必要です。

 

つまり、「1社入札」を有効とすれば、1ヶ月から2ヶ月で契約手続きを終える予定のものが、3ヶ月から4ヶ月、余計に手間(手続期間と人件費)が必要になります。

 

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1社入札を「無効とする矛盾点」

 

そして、さらに矛盾が生じてしまう点は、入札をやり直しても、再び1社しか参加しない場合があることです。さらに「3度目の入札までやり直しを行うのか」という問題が生じます。

 

不特定多数の会社が参加できるように、インターネットのWEB上へ入札公告を掲載し、競争参加機会を十分確保したとしても、入札公告を見た会社が、次のように判断することがあります。

 

「うちの会社も取り扱いできるが、今回は他に大型契約を獲得しているので、忙しいから辞退しよう。」

 

「今回はあまり値引きできないから、入札に負ける可能性があるので、参加するのはやめよう。」

 

「○○省の入札は、いつも予定価格が厳し過ぎて、契約を獲得しても全く利益にならないので参加するのはやめよう。」

 

つまり、入札書を提出する前の段階で、会社側の経営判断として辞退するケースが存在するという事実です。これでは何度入札をやり直しても、再び「1社入札」となってしまいます。

 

入札を「やり直す」のは、相当な労力と人件費の負担になります。入札を実施するのに、通常2ヶ月の手続き期間が必要なのです。一度決定した入札内容を見直して、再度公告して入札するために3ヶ月から、(最悪、この繰り返しとなれば、)半年くらいの負担が必要になります。その間の労力を考えた場合、(経済性まで考慮すると)ほんとに得策(適正な手続き)なのか疑問です。

 

入札を実施するときは、「予定価格」という適正価格の基準があります。「1社入札」だとしても、予定価格以下の金額でしか落札しません。予定価格によって「経済性は担保されている」のです。

 

このように、実質的に競争性が確保されない1社入札は「無効」であるという考え方は、机上の空論に過ぎず、現実社会を理解していない考え方です。(理論を否定するつもりはありませんが。)

 

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無効という考え方は、「さらに不正の温床となる」

 

さらに悲劇的なことは、例えば「1社入札」は、競争性がなく無効と判断し、入札をやり直したり、取り止めにした後で、厳しい上司から、「次は、何が何でも入札を成功させろ、絶対に複数の会社が入札へ参加できるようにしろ」との命令が下れば、完全にブラックホールに落ちます。

 

契約実務担当者は、複数の会社を入札へ参加させることが「任務」と受け取ります。日常取引の多い、顔見知りの営業担当者へ、内緒で声をかけることになります。声をかけられた営業担当者は、たまったものではありません、いい迷惑です。

 

入札へ参加しても、落札できるわけでもなく「当て馬」にされるだけです。しかも、普段扱っていない商品などの入札で、万が一、的外れの安い入札金額を書いてしまい、間違って落札でもしたら大損です。かと言って、お役所の契約実務担当者から依頼されたことを断るわけにもいきません。

 

仕方なく、「当て馬」とされた会社の営業担当者は、本命の業者を調べて連絡し、落札予想金額を聞くでしょう。官公庁側の契約実務担当者へ、落札予想金額を聞くかも知れません。こうなれば完全な談合です。違法です。典型的な「官製談合」の構図です。

 

つまり、無理に「競争を取り繕い」、2社以上で競争したように見せかける入札は、完全な法律違反です。入札自体が「不正行為(犯罪行為)」になってしまいます。書類上、「競争性を確保すること」に執着した結果、「やらせ入札」が実現します。最悪の場合、逮捕されるでしょう。悲劇的な結末になります。

 

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1社入札を「有効」とする見解

 

一方、1社入札を「有効」とする見解は、「競争性を確保した時期」を重視します。

 

そもそも競争入札という契約方式では、「誰でも入札に参加できる機会を確保すれば十分」(つまり入札公告の掲載)と考えます。結果として1社のみの入札だったとしても、それは「ただの結果論」と考えます。入札へ参加する機会は、「入札公告を掲載した時点で確保されている」ので問題なく、競争性が十分確保された手続きです。もし参加しようと思えば、参加できたのです。機会は提供したのです。

 

結果として1社だけの入札であったとしても、そのまま開札を実施します。予定価格の制限の範囲内であれば、経済性も十分ですから落札になります。1社入札は「有効」で適法と考えます。

 

この考え方が「現実的で正しく、一般的」です。

 

今は、ほとんどの官公庁で「1社入札」を有効としています。適正な予定価格を設定すれば、「1社入札」でも再度入札(2回目、3回目と予定価格以下になるまで入札を繰り返す。)を実施し、安く契約できます。

 

入札公告を掲載した時点で、すでに競争性は確保されており、予定価格を上回れば、再度入札で経済性も確保できます。最も効率的な契約手続きです。

 

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入札の「目的」

 

上記のように、競争性を確保する「タイミング(時期)」から「1社入札を有効」と判断することについては、入札の目的を考えると理解し易いです。

 

入札(一般競争契約)の目的は、次の3点です。

 

  1. 機会均等
  2. 公正性
  3. 経済性

 

「機会均等」とは、納税者である誰でもが、公平に入札に参加できるという、「参加機会の確保」という意味です。(入札公告の公開)

 

「公正性」とは、契約の相手方を選定するときに、「入札」という公開された手続によって、客観的に(予定価格の範囲内の落札金額で)選ばれるという意味です。「ルールに基づく適正な手続き」ということです。

 

「経済性」とは、最も有利な価格で契約するという意味です。予定価格以内の最安値で落札することです。

 

この入札の目的である「機会均等」は、競争の機会を確保すること・・入札公告を公開し、不特定多数の会社が入札へ参加できる機会を確保すること・・が重要なのです。

 

官公庁は、国民の税金で運営されてます。入札を行うときは「誰もが参加できる」公平な手続きが求めらます。

 

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「指名競争入札」の1社入札は「無効」

 

では、指名競争入札の場合、「1社入札」となったらどうでしょう。

 

一般競争入札では、入札公告を公開した段階で競争性が確保されているので、結果として「1社入札」でも問題ありませんでした。

 

同じように「指名競争入札」の場合も考えられるでしょうか。

 

一般競争入札は、入札公告を公開することで、不特定多数の者に対して、競争に参加する機会を公平に与えています。しかし、指名競争入札は、入札公告を公開しません。発注者側が事前に(恣意的に)選んだ会社へ、指名競争入札を行なう旨を「通知」して、入札へ参加してもらいます。

 

例えば、指名競争入札として10社を選び「指名通知」を郵送したとします。結果的に1社しか参加しなかった場合、これは明らかに「会社の選び方(指名基準)に問題があった」ということになります。指名する会社の選び方に問題があり、その結果として「1社入札」になったのです。これでは、「競争性が確保された」ことになりません。

 

つまり、指名競争入札では、発注者側が恣意的に会社を選んでいるので、この段階では競争の機会が十分に確保されていないのです。

 

指名競争入札の開催通知を、複数社へ送ったにもかかわらず、結果的に1社入札であれば、「指名方法に問題があった」のです。不適切な入札手続きなので「無効」と考えるのが正しい判断です。

 

指名競争入札での「1社入札」は、問題があるので「取り止め」とします。通常は、「一般競争入札」へ切り替えます。

 

当然のことながら、指名競争入札を最初からやり直すか、あるいは一般競争入札へ切り替える手続きが必要です。

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誰も教えてくれない官公庁会計実務

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