1社入札は有効?それとも無効?1社入札を問題視するのは間違い

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入札
長瀞

1社入札を問題視するマスコミ報道があります。競争性が確保されていない、という理由によるものです。しかし1社入札が本当に問題なのでしょうか?実務経験者の視点からわかりやすく解説します。

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1社入札とは

 

官公庁が一般競争入札を実施するときに、悩ましい問題として、1社入札があります。1社入札は多数の呼び方があります。1社応札、1者入札、1者応札、1者応募などです。いずれも一般競争入札へ参加した会社が、1社のみの状態を意味します。開札時に競争相手が存在してない状態が1社入札です。

 

新聞やテレビのマスコミ報道で、入札という言葉が使われますが、官公庁の入札には、一般競争入札と指名競争入札の2種類があります。(国は会計法 29条の3、地方自治体は地方自治法234条)

 

一般競争入札と指名競争入札について、1社入札は有効なのか解説します。両方とも入札という言葉が使われてますが、実態は全くの別物です。一般競争入札と指名競争入札を一緒に考えることはできません。

 

契約方式の原則は一般競争入札です。例外として、契約金額の低い場合や入札参加者が限定されている場合に指名競争入札が認められています。

 

一般競争入札は、不特定多数の者が参加可能です。

 

指名競争入札は、あらかじめ発注者側(官公庁の契約担当者)が選んだ会社を指名して入札します。そのため指名競争入札は、談合や業者との癒着などの危険性が常に存在します。リスクばかりが目立つので、おすすめできない入札方式です。そのため物品購入契約では、一般競争入札がほとんどです。

 

では、一般競争入札を実施して、参加者が1社しかないときは、どう対応するのが適正でしょうか。

 

1社しか入札に参加しなくても、入札と言えるのでしょうか。

 

実は1社入札が有効かどうかは、昔から意見が分かれています。会計法令でも何も定められていません。

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1社入札を無効とする考え方

 

1社入札を無効とする考え方は次のとおりです。

 

そもそも官公庁が実施する競争入札は、競争性を確保した上で、経済的な金額での契約締結を目指すものです。入札公告を掲載し、不特定多数の者に対して参加機会を確保しても、その結果として参加者が1社だけであれば、その時点で競争性が確保されなくなったのです。競争できない状態では入札ではありません。

 

そして1社入札が判明した時点で、入札を取りやめにすべきとする考え方です。入札に参加できる条件(仕様書など)を再度見直し、複数の会社が入札に参加できるようリセットします。もう一度最初から、入札手続きをやり直すべきと考えます。

 

これは理論的に考えれば、一見、正しいです。

 

競争性を実質的に確保した入札を絶対条件と考え、2社以上の複数の入札参加者によって、実際に競争性のある状態で開札するのが入札という考え方です。1社のみの入札は、そもそも競争相手が存在しないのだから、競争入札ではないという判断です。

 

このような主張は、実務を経験したことのない人に多いです。自分で入札を実施した経験がなく、仕様書や予定価格の作成経験がない学識経験者の人に多いようです。

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入札やり直しの弊害

 

では入札の結果、1社のみの参加となり、入札をやり直す(仕切り直す)ことを現実的に想定しましょう。どれほどの手間と人件費が必要か考えます。

 

机を100台購入する、総額500万円の入札を例にします。

 

一般競争入札を取りやめて、最初から入札をやり直す場合の手続き期間は、およそ次のとおりです。

 

  • 仕様書(発注者が必要とする内容を示す資料)を見直して再作成するためには、複数の販売会社から資料を取り寄せて検討するなどの調査が必要です。机の型式や類似商品を再検討するために資料を集め、営業担当者へ(なぜ参加できなかったかなど)ヒアリングします。少なくとも2週間以上必要です。
  • 次に、入札公告をインターネットのホームページに掲載するための入札伺いを作成し、内部で決裁する期間も1週間必要です。
  • 入札公告の掲載期間は、最低でも4週間はとりたいところです。この入札公告掲載期間が短いほど、入札参加者が少なくなります。1社入札だったのなら、なおさら長期間の入札公告が必要です。

 

入札手続きをやり直す場合は、開札(入札)までに7週間、およそ2ヶ月程度の期間が必要です。

 

1社入札をやり直すということは、参加する会社が2社以上になるよう仕様書を見直すことです。多数の会社が参加できるように同等品や類似品を増やして内容を修正します。市場調査のやり直しを行なうことになります。参加可能な会社の情報を調べるのに労力が必要です。

 

つまり1社入札を有効とすれば、2ヶ月で契約手続きを終える予定のものが、やり直しによって4ヶ月の手間(手続期間と人件費)が必要になります。

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1社入札を無効とする矛盾点

 

そして、さらに矛盾が生じてしまう点は、入札をやり直しても、再び1社しか参加しない場合があることです。さらに3度目の入札までやり直しを行うのか、という問題が生じます。

 

不特定多数の会社が参加できるように、インターネットのWEB上へ入札公告を掲載し、競争参加機会を十分確保したとしても、入札公告を見た会社が次のように判断することがあります。

 

うちの会社も取り扱いできるが、今回は他に大型契約を獲得しているので、忙しいから辞退しよう。

 

今回はあまり値引きできないから、入札に負ける可能性があるので、参加するのはやめよう。

 

〇〇省の入札は、いつも予定価格が厳し過ぎて、契約を獲得しても全く利益にならないので参加するのはやめよう。

 

入札書を提出する前段階で、会社側の経営判断として辞退するケースが存在するという事実です。これでは何度入札をやり直しても、再び1社入札となってしまいます。

 

入札をやり直すのは、相当な労力と人件費の負担になります。入札を実施するのに、通常2ヶ月の手続き期間が必要なのです。一度決定した入札内容を見直して、再度公告して入札するために3ヶ月から、(最悪、この繰り返しとなれば、)半年くらい必要になります。その間の労力を考えれば、(経済性まで考慮すると)ほんとにメリットがあるのか極めて疑問です。

 

入札を実施するときは、予定価格という適正価格の基準があります。1社入札だとしても、予定価格以下の金額でしか落札しません。ライバル会社が参加しなくても予定価格によって経済性は確保されているのです。

 

このように考えると、実質的に競争性が確保されない1社入札は無効である、という考え方は、机上の空論に過ぎません。現実社会を理解していない考え方です。(理論を否定するつもりはありませんが、実社会を知らない、意味のない理論です。)

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1社入札を無効とすれば、不正の温床になる

 

1社入札を否定する考え方は、さらに悲劇的なことが起きるかもしれません。例えば、1社入札は競争性がなく無効と判断し、入札をやり直したり、取り止めにしたとします。その後で厳しい上司から、次は、何が何でも入札を成功させろ、絶対に複数の会社が入札へ参加できるようにしろ、との命令があったとします。こうなると、完全にブラックホールに落ちます。

 

契約担当者は、複数の会社を入札へ参加させることが任務と受け取ります。いつも取引している顔見知りの営業担当者へ、入札へ参加するよう内緒で声をかけることになります。声をかけられた営業担当者は、たまったものではありません、いい迷惑です。

 

入札へ参加しても、落札できるわけでもなく、当て馬にされるだけです。しかも、普段扱っていない商品などの入札で、万が一、的外れの安い入札金額を書いてしまい、間違って落札でもしたら大損です。かと言って、お役所の契約担当者から依頼されたことを断るわけにもいきません。

 

仕方なく、当て馬とされた会社の営業担当者は、本命の会社を調べて連絡し、落札予想金額を聞くでしょう。内緒で官公庁側の契約担当者へ、落札予想金額を訪ねるかも知れません。こうなれば完全な談合です。典型的な官製談合です。

 

つまり、無理に競争を取り繕い、2社以上で競争したかのように見せかける入札は、完全な法律違反です。入札自体が不正行為(犯罪行為)になってしまいます。書類上、競争性を確保することに執着した結果、やらせ入札が実現します。最悪の場合、逮捕されるでしょう。悲劇的な結末になります。

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1社入札を有効とする考え方

 

一方、1社入札を有効とする考え方は、競争性を確保した時期を重視します。

 

そもそも一般競争入札という契約方式は、誰もが入札に参加できる機会を確保すれば十分(入札公告を公開すれば十分)と考えます。結果として1社のみの入札だったとしても、それは、ただの結果論と捉えます。入札へ参加する機会は、入札公告を掲載した時点で確保されているので問題なく、競争性が十分確保された手続きと考えます。もし参加しようと思えば、参加できたのです。参加する機会は提供していたのです。(ただ、当然ながら入札公告期間は長期間であることが前提です。最低でも2週間以上は必要でしょう。)

 

結果として1社だけの入札であったとしても、そのまま開札を実施します。予定価格の制限の範囲内であれば、経済性も十分ですから落札になります。1社入札は有効で適法と考えます。

 

1社入札を有効とする考え方が、現実的で正しく一般的です。

 

ほとんどの官公庁で1社入札を有効としています。適正な予定価格を設定すれば、1社入札でも再度入札(2回目、3回目と予定価格以下になるまで入札を繰り返す。)を実施し、安く契約できます。

 

入札公告を掲載した時点で、すでに競争性は確保されます。そして予定価格を上回れば、再度入札を実施することで経済性も確保できます。一般競争入札での1社入札は問題ない手続きです。

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一般競争入札の目的とは

 

上記のように、競争性を確保するタイミング(時期)から、1社入札を有効と判断する考え方は、一般競争入札の目的を考えるとわかりやすいです。

 

一般競争入札の目的は、次の3点です。

 

  1. 機会均等
  2. 公正性
  3. 経済性

 

機会均等とは、納税者である誰もが、公平に入札に参加できるという、参加機会の確保という意味です。(入札公告の一般公開)公平性とも言えます。

 

公正性とは、契約の相手方を選定するときに、競争入札という公開された手続によって、客観的に(予定価格の範囲内で落札し)選ばれるという意味です。会計法令などのルールに基づく適正な手続きということです。

 

経済性とは、最も有利な価格で契約するという意味です。予定価格以内の最安値で落札することです。

 

特に最初の目的である機会均等は、競争の機会を確保することで一番重要です。入札公告を十分な期間一般公開して、不特定多数の会社が入札へ参加できる機会を確保することです。

 

官公庁は、国民の税金で運営されてます。一般競争入札を行うときは、誰もが参加できる公平な手続きが必要です。

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指名競争入札の1社入札は無効

 

では、指名競争入札の場合、1社入札となったらどうでしょう。

 

一般競争入札では、入札公告を公開した時点で競争性が確保されていました。結果として1社入札でも競争性には問題ありませんでした。

 

同じように指名競争入札の場合も考えられるでしょうか。

 

一般競争入札は、入札公告を公開することで、不特定多数の者に対して競争に参加する機会を公平に確保しています。しかし指名競争入札は、入札公告を公開しません。発注者側が事前に選んだ会社へ、指名競争入札を行なう旨を通知して、入札へ参加してもらいます。

 

例えば、指名競争入札として10社を選び、指名通知を郵送したとします。結果的に1社しか参加しなかった場合、これは明らかに、会社の選び方(指名基準)に問題があったことになります。指名する会社の選び方に問題があり、その結果として1社入札になったのです。これでは競争性が確保されたことになりません。

 

つまり指名競争入札では、発注者側が会社を選んでいるので、この段階では競争の機会が十分に確保されていないのです。

 

指名競争入札の開催通知を、複数社へ送ったにもかかわらず、結果的に1社入札であれば、指名方法に問題があったのです。指名競争入札における1社入札は、不適切なので無効と考えるのが正しい判断です。

 

指名競争入札での1入札は、問題があるので取り止めとします。通常は、一般競争入札へ切り替えます。

コメント

  1. 質問 より:

    私の自治体では、ネットワーク機器及びPC類などの数百万〜数千万の指名競争入札において、A社が出した仕様書がそのまま採用され、細かい箇所でA社以外応札できないような仕様が組まれています。

    例えば、あるPCメーカーしか満たすことができない必要とは思えない仕様を盛り込み、質問状でそれを指摘しても回答は常に不可です。

    既存システムがA社から納入されているため、担当者がA社に仕様書を依頼し、A社が縛った仕様書でA社が落札するという大変不健全なループに陥っています。

    このような状況下での一社入札は問題ではないかと市の担当者に掛け合った事もありますが、問題ないとの回答です。

    当記事を拝見し、やはり指名競争入札における我が市の現状は正常ではないと思います。

    何か打開できるようなアイデアはないでしょうか。大変不躾ですが、このままでは弊社含めA社以外の競合他社はジリ貧です。

    なお、さらに言うとA社の役員には副市長も名を連ねている上、A社は第三セクターです。

    • 管理人矢野 雅彦 より:

      コメントありがとうございました。
      管理人です。

      ネットワーク機器やPC類の入札で、お困りのようですね。

      おっしゃるとおり、仕様書の中で「不必要と思える条件」で縛られてしまうと、競争入札ができなくなってしまいます。また、契約実務担当者は、お気に入りの会社へ、仕様書の原案を丸投げすることもできてしまいます。(国際入札では、明確に禁止しているので、正式に苦情相談窓口へ訴えることが可能です。)

      内閣府の相談窓口

      https://www5.cao.go.jp/access/japan/chans_main_j.html

      実際の仕様書を見てない状況では、正確に答えることは難しいので、一般的な答えになります。

      A社と、自治体の契約担当者が癒着してない限り、自治体の職員は(良識があるなら)、「複数社で競争して欲しい」と思っているはずです。(もしA社以外を排除しようとしているなら、癒着している可能性ありです。)

      自治体の担当者へ質問するときに、次のいずれかの方法を試してみてください。

      ◯入札方法や、仕様書の記載内容を批判するのではなく、「代替手法」や「代替機能」を提案する。仕様書の目的は、本来、機能を求めるものです。同じことが実現できるなら他メーカーでも問題ないはずです。そして、もし実現できなければ、仕様書どおりのものに、無料で入れ替えるなどの保証までつければ、拒否できないはずです。

      ◯次回の契約更新(機器入れ替え)のときに、仕様書の原案作りに参加させてもらう。そして、「もっと安く良いシステム」の仕様書の原案を提示できることを説明する。

      つまり、入札に関することを批判してしまうと、「問題ない」という回答しか得られません。結果的に門前払いになります。そもそも、官公庁の契約担当者は、問題ないと判断して入札を実施しています。

      なお、最後の手段としては、地元の議員へ相談する方法や、公益通報制度を利用して、癒着が疑われていることを通報する方法もあります。ただし逆に、クレーマーと間違われ「取引停止」になるなど、かなりリスクがあります。ホントに最後の手段です。

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