「入札不調」と「不落随契」を具体例で理解、再度入札の判断方法

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随意契約
2005年 グアム

「入札不調」と「不落随契」についての解説です。入札が不調(ふちょう)になる3つのケースや、不落随契(ふらくずいけい)」の根拠法令をわかりやすく解説します。入札者がない、落札者がない場合とは、再度入札の回数、入札打ち切りの判断等の解説です。

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官公庁の契約手続きの「原則」

官公庁の契約手続きは、会計法令などの「公正なルール」に基づいて、手続きを進めなければなりません。「公正なルール」とは、国会で議決した法律などを意味します。

 

そして契約手続きの原則は、一般競争契約(一般競争入札、公開入札とも呼びます。)です。これは会計法第二十九条の三第一項で義務付けられています。

 

会計法

第二十九条の三

契約担当官等は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、第三項(指名競争契約)及び第四項(随意契約)に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。

都道府県や市町村などの地方自治体では、地方自治法で定めています。

地方自治法
(契約の締結)
第二百三十四条 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。

2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。

地方自治法では、上記の第2項で、指名競争入札と随意契約については、政令(地方自治法施行令)で定める場合のみ認められています。つまり逆に言えば、一般競争入札が原則という意味です。

政令で定める場合は、契約金額が少ない、競争できない場合などです。

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「入札が原則」である理由

官公庁の運営財源は「国民の税金」です。

 

税金は、本人の意志に関係なく「強制的」にお金を国に納めます。公共サービスを実施するために必要な財源です。強制的に国民全員からお金を集めているので、税金を使用するときは「公平・公正」でなければなりません。

 

例えば、特定の民間会社だけに税金が流れてしまうのは「不公平」です。一部の会社の役員だけが、不当に儲けた税金で豪遊していたら、ほとんどの国民は許さないでしょう。

 

そのため一般競争契約という「公開入札方式」によって不特定多数の者が、競争に参加できる機会を確保した契約手続きが、契約方式の「原則」になってます。

 

税金を納めることは、国民全員の義務であることが憲法第30条で定められているので、その使用方法も機会均等にすることを法律(会計法、地方自治法)で定めたわけです。

日本国憲法
第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

 

一方、民間会社の運営財源は、物品やサービスを購入する顧客のお金です。お客様が、任意に支払うお金です。顧客が、どの民間会社の物品やサービスを選択するかは、個人の自由です。顧客が任意に判断できます。選択の自由があるので、民間会社の運営財源の使用方法を「法律で義務化する必要はない」わけです。

 

競争契約は、価格競争によって契約の相手方を決定します。しかし開札の結果、落札者がないときは「入札不調」になることがあります。

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「入札不調」(にゅうさつ ふちょう)とは

入札が不調になる原因は、主に次の3つのケースです。

 

入札に誰も参加しない。

 

再度入札で、予定価格に達しない。

 

再度入札で、全員から辞退札が提出された。

 

入札公告を掲載して、不特定多数の者が入札に参加できる機会を確保しても、利益が少ない契約や、すでに他の大口契約を請け負っている会社などは、社内の営業戦略として「入札に参加しない」ことがあります。

 

また予定価格の制限を超えて「落札しない」ケースがあります。官公庁が実施する入札では、開札前に予定価格調書を作成します。入札金額の妥当性(適正な金額であるかどうか)をチェックするために、入札の上限価格として「予定価格調書」を作成しています。開札するときは、入札金額が、予定価格の金額以下(範囲内)のときに「落札」となります。

 

開札の結果、予定価格の範囲内(購入契約であれば予定価格以下の金額)に達しない場合は、すぐに「再度入札」を実施します。

 

予定価格の範囲内になるまで繰り返すのが理想です。しかし、入札金額と予定価格の開きが大きい場合は、3回程度で入札を打ち切ります。そして最安値の会社と個別に価格交渉に入ります。予定価格以下の金額で交渉が成立すれば「不落随意契約」になります。

 

もし価格交渉が合意できなければ、仕様書と予定価格をリセットして、最初から入札手続きを行ないます。(やり直しになります。)

 

「辞退札」は、入札に参加した会社が「再度入札」の段階で、「これ以上安い金額では赤字になってしまい採算が合わないと」判断し、入札書の金額欄に「辞退」と表示して提出するケースです。「これ以上値引きできない」という意思表示です。(しかし、不落随意契約の交渉に入ると、さらに値引きしてくれることが多いです。)

 

これらの落札者がいない状況を「入札が不調になった」と呼びます。

 

「入札不調」と「不落随意契約」の違いは、時系列で考えると、時期が異なるところです。次の流れになります。

入札 ➡ 開札 ➡ 入札不調 ➡ 不落随意契約

ただし、不落随意契約は、任意の手続きです。手続期間に余裕があるときは、不落随意契約せずに、もう一度入札することもあります。

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「不落随意契約」の根拠法令

入札を行った結果、落札しなかったときは予決令第九十九条の二に次の規定があります。

 

予算決算及び会計令

第九十九条の二

契約担当官等は、競争に付しても入札者がないとき、又は再度の入札をしても落札者がないときは、随意契約によることができる。この場合においては、契約保証金及び履行期限を除くほか、最初競争に付するときに定めた予定価格その他の条件を変更することができない。

 

「不落随契(ふらくずいけい)」と呼ばれる随意契約は、この予決令第九十九条の二が根拠法令です。地方自治法施行令では第百六十七条の二 第一項に同様の規定があります。

 

予決令第九十九条の二をくわしく解説します。

 

前提は「一般競争入札」の場合です。指名競争入札での不落随契は考え方が異なるので別に説明します。

 

そもそも、この予決令第九十九条の二で定めている不落随契は、一般競争契約(入札)の例外規定です。入札手続きを再度行う(リセットして最初の入札公告からやり直す)には、手続き期間が不足したり、事務手続きが間に合わなくなるなど、契約の締結時期が遅れてしまい官公庁の「業務に支障が生じる場合」に適用するものです。

 

例えば、単年度予算(予算自体が3月31日までしか有効でない通常の政府予算)による高額な契約手続きが該当します。公告期間を含めた入札手続に3ヶ月を必要とし、さらに納入期限が3ヶ月以上かかる契約などです。海外からの高額機器の輸入契約や、製造期間が長期間必要な契約などの場合には、契約手続きを完了するのに最低6ヶ月間必要です。

 

入札公告を5月に掲示し9月に開札した結果、落札者がいなかったときに、再度リセットして入札手続をやり直すと、契約が成立しない恐れがあったり、開札しても明らかに「納入期限が間に合わない」場合に例外的な「随意契約」を認める規定です。簡単に言うと、「入札手続きをやり直すと、間に合わない場合」です。

 

当然のことながら、1週間程度で簡単に入札公告が可能で、納入期間も2週間などの短期間であれば、最初から入札手続をやり直しても年度内に納品が可能です。手続きをリセットしても支障がない場合は、入札をやり直すのが望ましい処理です。

 

上記の予決令第九十九条の二では、次の二つのケースで「随意契約」が可能と定めています。

 

1.「入札者がないとき」

2.「再度の入札をしても落札者がないとき」

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「入札者がないとき」とは

官報やインターネット上のWEBサイトなどに「入札公告」を掲載して、広く入札への参加機会を確保しても、入札(開札)当日に誰も参加していない場合です。入札書の提出期限までに入札書の提出がなかった場合です。

 

入札公告を見て仕様書を取りにきたので、入札に参加する意思はあったけれども、その後社内で検討した結果、参加を見合わせることになり、実際に入札(開札)に参加しなかった場合です。

 

「入札者がない」とは、誰も入札に参加しなかった状態です。

 

しかし実際の契約実務では、仕様書の作成や予定価格の作成段階で、市場調査を行います。参考見積書を取り寄せたり仕様書の技術内容について、複数者の民間会社へ確認したり情報を取り寄せます。

 

なるべく多くの会社が入札に参加できるよう仕様書を作成します。入札者がないという状況は極めて稀です。(私は数百回入札しましたが、一度も経験ないです。)

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「再度の入札をしても落札者がないとき」とは

1回目の開札を行った結果、予定価格を超えた入札金額のため、続けて2回目の入札や3回目の入札を行ったところ、いずれも予定価格の範囲内の入札金額がなく「落札者」がいなかった場合です。

 

通常、「不落随契」と呼ぶのは、こちらのケースが圧倒的に多いです。予定価格の設定が厳しすぎた結果とも言えます。

 

ここで実際の入札(開札)で悩むのが「再度入札」の回数です。

 

予決令第八十二条に「再度入札」の規定があります。

 

予算決算及び会計令

第八十二条

契約担当官等は、開札をした場合において、各人の入札のうち予定価格の制限に達した価格の入札がないときは、直ちに、再度の入札をすることができる。

 

再度入札を想定しましょう。

 

予定価格が600万円の物品売買契約と仮定します。

 

第1回目入札書(予定価格600万円)

A社 1,000万円
B社 1,100万円
C社 900万円

 

1回目の入札は、C社が900万円で最安値です。しかし、予定価格の制限(600万円)の範囲を大幅に超えてます。すぐに予決令第八十二条による「再度入札」を行います。

 

「再度入札」は開札結果を発表した後に、各入札者へ次のようにアナウンスします。

 

「1回目の入札の結果、C社が最も安い入札金額ですが、当方(発注側)で作成した予定価格の制限に達していません。予定価格を超えているので2回目の再度入札を実施します。入札参加者は1回目の最安値900万円未満での入札をお願いします。もし、これ以上、入札金額を下げるのが無理な場合には、配布した入札書様式の金額欄に「辞退」と記載して提出願います。2回目の入札は900万円未満でお願いします。」

 

アナウンス後に入札書の様式を配布し、入札価格を検討し記載する時間(2~3分)を待ち、入札者の様子(まだ入札金額を書き終えていないなら待つ)を見て、2回目の入札書を提出してもらいます。

 

ここで全員が「辞退札」を提出するようなら、予決令第九十九条の二「再度の入札をしても落札者がないとき」に該当するので、入札を打ち切り、1回目の最安値の会社と交渉し随意契約することが可能です。(随意契約の交渉としては予定価格600万円未満となるように価格交渉します。価格交渉は、他の会社と行うこともできます。)

 

2回目の入札者があった場合

 

2回目の入札(予定価格600万円)

A社 850万円
B社 辞退
C社 860万円

 

入札の結果、B社は辞退札が提出されたので2回目の入札結果発表後に入札会場から退出してもらいます。2回目も予定価格の制限に達しないので落札せず、1回目と同様に「再度入札のアナウンス」をして3回目の入札に入ります。

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「入札打ち切り」の判断

3回目の入札(予定価格600万円)

A社 辞退
C社 840万円

 

C社1社が残りましたが、まだ予定価格を超えています。そして「予定価格」と「入札価格」の金額の開きが大きいです。

 

今まで1回目から3回目のC社の入札状況を見ると次のとおりです。

 

900 → 860 → 840

 

値引き額も少なくなっていて、このまま再度入札を続けても、落札価格(600万円未満)に達する可能性は低いと見るべきでしょう。

 

予定価格との開きが少なくて、あと1~2回で落札しそうな金額であれば、さらに再度入札を繰り返すこともあります。今回のように「予定価格」と「入札価格」に大きな開きがある場合は、入札会場でC社に対して再度入札を継続できるか意向を聞くこともあります。(予定価格を「秘密扱い」としている場合は予定価格を教えてはいけません。)

 

3回目の入札結果を発表し、A社は辞退札が提出されているので入札会場から退出してもらい、4回目の入札に入る前にC社へ「再度入札の意向」を確認します。

 

「まだ、予定価格との差が大きいのですが、再度の入札(値引き)は可能ですか?これ以上は本社に戻って上層部と協議が必要であれば、入札はここで打ち切り、随意契約の交渉に入ることも可能ですが?」

 

ここで、注意しなければならないのは、もしC社から予定価格の金額を聞かれても、国の会計法令では予定価格を事前公表していませんので絶対に予定価格は教えません。

 

C社が「まだ値引き可能なので、再度入札を続けたい」という意向があれば再度入札を続けますが、そうでなければ予定価格との金額差が大きい場合は、入札を打ち切り「不落随契」として契約金額の交渉へ移行します。

 

入札手続き自体は有効に成立しています。3回の入札(再度入札)を実施した結果、落札者がいないので、この後は予決令第九十九条の二に基づく不落随意契約(不落随契)の交渉に移ります。

 

入札を終え、C社には会社に戻ってもらい、ギリギリの価格(これ以下の契約金額では無理という金額、ただし利益は確保してあげるのが適正な契約であることは当然です。)を検討してもらいます。

 

3日~1週間程度の検討期間を設けて、最終金額をメールや電話で教えてもらいます。

 

提示された最終金額が、予定価格の範囲内であれば、正式な見積書を提出してもらい、(見積書は最後に提出した入札書より低い金額になるはずです。)「随意契約」として契約を締結します。

 

「不落随意契約(不落随契)」は、競争性を確保した入札の結果として(落札者がいなかったので)随意契約するものです。「競争性のない随意契約」と異なり、後日、会計検査等で契約の相手方の選定経緯や契約金額について問題となることは少ないです。対外的な説明では、「不落随意契約」は、落札したのと同じ効果があります。

 

ただし、入札関係書類を全て保存しておくことが重要です。

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