随意契約より国際入札の方が年間7億円高くなる、日米経済摩擦の事実

国立競技場 入札
国立競技場

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日米経済摩擦によってアメリカ政府から市場開放を迫られていた1991年当時、国際入札で透明性のある公正な手続きで契約するよりも破格の安い金額で随意契約を提案されました。国際入札よりも年間7億円安くなる随意契約が適正なのか、当時の思い出と解説です。

スパコンの国際入札

 

以前、事業仕分けでも話題となったスーパーコンピューター(以下「スパコン」)の契約手続きについての思い出です。

 

今(2016年)から25年前の懐かしい時代です。
スパコンの研究開発は、日本の科学技術を支える基盤的な分野で世界各国が処理スピードを競っています。

 

日本は、戦後の復興期から、国の政策としてスパコンの開発を進めてきた背景があります。今では技術の進歩によって国産のスパコンが世界的に認められる時代になってます。

 

日米経済摩擦の裏側

 

1991年当時、アメリカのクレイ社やIBM社などは、日本のスパコン市場が閉鎖的だとクレームをつけていました。アメリカ政府は日本政府に対して、スパコンの市場を開放せよと強硬な態度で臨んでいました。当時は日米経済摩擦が社会問題になっていた時代です。

 

アメリカ側の要求は、日本の政府関係機関がスパコンを調達する場合には、外国の企業も入札に参加できるよう、国際入札を実施して門戸を開放せよというものでした。

 

「競争性の確保」、「透明性の高い入札手続き」をアメリカ側は表向き主張していました。しかし、その裏では自分たちアメリカ側で世界のコンピューター市場を独占したい(特にスパコンは国防にも関連する分野)という思惑が見えていました。

 

ちょうどその頃、私の研究所でもスパコンのリプレース(買い替え)を検討していました。入札を前提としたレンタル契約についての情報を日本の大手スパコン各メーカーから集めていました。

 

スパコンは、開発費だけで数十億から数百億円が必要な超高額なものです。

 

買取りするには予算の確保が困難なので、レンタルでの契約を検討していました。月額1億円で年間12億円程度の計画で、国際入札の契約手続きを進めていました。

 

随意契約なら破格の値段

 

ある日、国際入札を始める前に、おおよそのレンタル料金を把握するため、スパコンのレンタル料金の参考見積書を複数メーカーの営業担当者へ依頼しました。

 

一週間くらい経過したある日、あるメーカーの営業担当者が打合せのため訪問してくれました。正式契約前の打合せの思い出です。

 

営業マン「このレンタル契約は、国際入札の手続きになるのでしょうか?」

 

私「ええ、高額なレンタル契約ですから国際入札を計画しています。」

 

営業マン「私どもの会社では、随意契約と国際入札では、見積金額の算定方式が異なります。」

 

私「は?・・・」

 

営業マン「随意契約をして頂けるなら、破格なレンタル金額を提示できます。」

 

私「え?・・・本当ですか?・・・どうしてですか?」

 

営業マン「ご存知のとおり、国際入札は官報に入札情報や落札情報が掲載されます。日本のみならず世界中に契約金額が公開されます。」

 

私「ええ、もちろん、国際入札ですから。手続きの透明性や公正さを担保するために公開しますが、何か?」

 

営業マン「いやー、そこなんですよね。入札の情報が公開されると不当廉売(ダンピング)などで訴えられる可能性があるので、思い切った金額を提示できないのです。特にアメリカでは、クレイ社やIBM社が世界市場を狙っています。極端に値引きした情報が外部、特に海外に漏れることを考えると安い金額は提示できないんですよ。」

 

私「・・・でも不当廉売(ダンピング)は違法じゃないですか?」

 

営業マン「公的な組織は、国民の税金を使用するわけですから、安い方が良いのではないですか?国民の税金ですよ?安い方が国民のためでは?」

 

私「うーん、確かにそうですが・・・、具体的にどのくらいの開きが出るのですか?」

 

営業マン「ひとつの例として、おおざっぱに金額を言うなら、年間のレンタル料ベースで、随意契約なら5億円で提示します。しかし、国際入札を行うのが前提なら12億円までしか提示できません。」

 

私「おおお・・・7億円の差ですか・・確かに悩みますね・・・」

 

私は、競争性を確保した国際入札を実施して、より安く買うというケースしか想定していませんでした。随意契約なら安く(破格の値段で)契約可能という提案に対して、かなり悩みました。なにしろ年間7億円の差が出るのですから。

 

レンタル契約は、通常5年間継続するので、合計35億円安くなるのです。税金を35億円節約できるのです。

 

随意契約なら国内メーカーと安く契約できます。国内の需要を刺激することにも役立ちます。国内メーカーの技術力開発や産業の更なる発展に役立つかも知れません。

 

(うーん、しかし、不当廉売という、違法の臭いがムンムンするし、安さと公正さは矛盾するのか・・?)

 

上司とも相談し、数日間考え迷った結果、正式な国際入札手続きでスパコンを調達しました。当然ながら契約金額は高い方になりました。入札参加者は3社でしたが、随意契約を提示されたときのような安い金額の入札はありませんでした。

 

この契約以後は、随意契約の方がはるかに安くなるという契約はありませんでした。しかし、今でも「入札だから安い」という思い込みは、素人の考えと思っています。

 

公正な判断で35億円の損

 

国民の税金を使用する以上、特定の企業との随意契約によるメリットを優先するのではなく、法令等を遵守した公正で透明な契約手続きが重要です。

 

しかし、年間7億円損したとすれば、5年間のレンタル期間で35億円損したことになります。

 

すでに25年経過した今でも、時々、「やはり、あの時は損したかなぁ、ダンピングでも安い方が良かったかも」などと、ふと思い出してしまいます。

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