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入札

総合評価落札方式は危険、随意契約の隠れ蓑になる

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入札
2002年 ハワイ
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総合評価落札方式についての解説です。官公庁が実施する入札は、価格のみによる競争が原則です。しかしスーパーコンピューターのように、性能が最重要の場合には、価格だけでなく性能を評価に加えることができます。しかし総合評価落札方式は、恣意的な条件に合わせて契約の相手方を選ぶことができてしまうので限定的に使うべきです。

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総合評価落札方式導入の経緯

 

1990(平成2)年以前は、総合評価落札方式という制度がなく、性能を加味して相手方を選ぶという方式は認められていませんでした。一般競争入札になると、価格のみで契約の相手方を選ぶしかなかったのです。「価格のみで選ぶ」というのは、官公庁側の恣意的な操作を防止するためです。金額という客観的な事実だけで落札するので、お気に入りの会社を落札させることはできません。安い会社が、契約の相手方として選ばれていました。

 

これは、いわゆる「安かろう、悪かろう」というリスクが常に心配されていたのです。当時は、品質に重点を置く、官公庁における工事契約は、すべてが指名競争入札か随意契約でした。一般競争入札では、十分に品質を確保した工事契約は不可能と考えられていたのです。事前に過去の工事実績などを調べ、信頼できる工事会社を選び、その信頼できる工事会社のみによる指名競争入札を行っていました。「工事の一般競争入札など、危なすぎて無理」というのが、1990年以前の一般常識だったのです。その頃は、パソコンもインターネットもない時代ですから、信頼できる会社の調査にも限界があり、リスクが大きすぎて(危なすぎて)一般競争入札は無理だったのだと思います。

 

スーパーコンピューターが世界一のスピードを競うのには、はっきりとした理由があります。単にスピードが速いという性能自慢だけでなく、その計算性能を用いて、あらゆる研究が飛躍的に進展するからです。

 

例えば、研究結果を得るために、24時間必要だった計算が、1時間でできるようになったらどうでしょう?1日にひとつの研究結果が得られるのと、24個の研究結果が得られるのでは研究の進捗が全く変わるのです。24年後に実現できることが1年後に実現できるわけです。

 

計算結果をいつか出力できればいい、というわけでなく、計算結果がいつまでに出力できるかという性能(計算速度)が最重要になるわけです。速度を追い求めるスーパーコンピューターは、価格だけでなく、より高い性能が必須です。そのため価格に加え、性能を数値化して落札基準に反映させるようになりました。アメリカからの圧力(1990年当時は日米経済摩擦でアメリカ製のスーパーコンピューターを導入するよう促されていました。)もあり、より性能の高いスーパーコンピューターが落札できるよう、総合評価落札方式が導入されたのです。

 

そして、その後1997(平成9)年頃から、公共工事の談合事件や贈収賄事件が多発したことから、公共工事へも総合評価落札方式の導入が検討されました。従来は品質を確保するために一般競争入札を避けていたわけですが、談合事件等の多発により、スーパーコンピューターのように、価格だけでなく品質も加えて、一般競争入札を行うことになったのです。さらに、その後は行政改革や規制緩和策として、多様な入札・契約方式が導入されるようになりました。純粋に技術力やサービス内容で競うコンペ方式やリバースオークションなどが導入されています。

 

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随意契約の隠れ蓑になるリスク

 

価格だけでなく、品質までを加えて入札する総合評価落札方式は、とても良いように見えます。たしかに、スーパーコンピューターや公共工事のように、品質の重要性が理解できる契約では、十分に役割を果たすことができます。

 

しかし、それ以外の契約へ総合評価落札方式を導入してしまうと、随意契約の隠れ蓑になる恐れがあります。総合評価落札方式は、入札の中の一形態ですが、重要でない性能の項目を加えてしまうと、限りなく随意契約に近くなります。総合評価落札方式といいつつも、実態は随意契約と同じことができてしまうのです。

 

例えば、性能を評価する条件の中に、官公庁側の意向を自由に盛り込むことができるからです。実質的な競争入札を逃れる意図で、総合評価落札方式を導入すれば、お気に入りの会社を落札させることができてしまいます。特定の会社しか条件を見たさない項目を入れ込むことで、随意契約の隠れ蓑にできるのです。「過去3年以内に、5件以上の契約実績を有すること」などという条件があれば、簡単に他社を追い出し、特定の企業を落札させることができます。本来は契約を履行できるなら、過去の実績を重視する必要はありません。4件でも十分でしょう。

 

そのため、総合評価落札方式を導入するときには、次の点を遵守して公正性を確保する必要があります。

 

総合評価落札方式の対象とする契約

 

性能を評価する項目や技術点は事前に公表すること、誰もが点数を計算できるようにすること

 

評価項目や技術点は、特定の企業に偏らないよう、仕様策定委員会で公平に定めること

 

総合評価落札方式の対象とする契約は、スーパーコンピューターのように世界レベルで競争が行われている分野や、公共工事のように品質の確保が重要視されるものに限定すること

 

これらの点が遵守されないと、「入札を逃れるための随意契約」と同じになってしまいます。

 

総合評価落札方式は、評価方法が公平でないと、限りなく随意契約に近くなってしまいます。公平な価格競争ではなく、評価項目や評価点数を恣意的に設定できてしまうのです。総合評価落札方式を実施する入札案件は慎重に判断すべきです。

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