ほんとに「電子入札」って大丈夫?手続きが不透明になっただけ?

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入札
2002年 ハワイ

電子調達・電子入札についての解説です。2020年現在、多くの官公庁で契約手続きのデジタル化が進められています。国の場合には「政府電子調達」、地方自治体の場合には「東京都電子調達システム」などです。紙ベースの入札手続きとの違いを解説します。

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「電子調達」システムのメリットとは?

現在(2020年7月)、多くの官公庁で入札手続きがオンライン化されました。「電子調達システム」による入札が実施されています。インターネットを利用した入札手続きです。国の場合には 、各省庁が共同利用する「政府電子調達(GEPS)」です。地方自治体は、それぞれの自治体で専用サイトが構築されています。例えば東京都では、「東京都電子調達システム」、市区町村が利用する「東京電子自治体共同運営 電子調達サービス」などです。

 

電子調達システムは、官公庁へ行かなくても、会社の手元のパソコンから入札へ参加できます。こう聞くと、とても便利そうに思えます。しかし、国、各自治体それぞれの電子調達システムのサイトを見ると、あまりにも複雑な手続きなので「げんなり」します。

 

まず利用を始める前の環境整備からややこしいです。利用者登録の方法も複雑すぎて、よくわかりません。たぶん一度だけ登録すれば大丈夫なのでしょうが、「電子認証局」などでお金もかかり大変そうです。

 

会社によっては国の組織だけでなく、複数の自治体へも参加希望があるでしょう。ひとつのシステムを覚えるのも大変でしょうから、想像を絶する大変さかと思います。もし電子調達へ参加するための手続きが大変すぎて、断念している会社があるとすれば、「本末転倒」です。誰もが手軽に参加できるのが、官公庁が実施する入札の原則のはずです。

 

実際の入札についても、操作マニュアルを理解するのが大変です。読んでも、よくわかりません。おそらく、ほとんどの人は、「電子調達」よりも、普通に紙ベースで、昔のように入札してもらいたいと思っているのではないでしょうか。マスコミでは報道されていませんが、電子調達のトラブルも起こっているのではと心配になります。

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そもそも「行政手続きのデジタル化」とは

「行政手続きのデジタル化」については、かなり昔に検討が開始されています。驚くことに、1994年12月には「行政情報化推進基本計画」が閣議決定されています。

 

なんと、パソコンが普及する契機になった Windows 95の発売(1995年11月23日)前に、すでに検討が開始されていたのです。「行政情報化推進基本計画」の目的は、「国民サービスの飛躍的向上と行政運営の質的向上を図ること」でした。

 

2020年現在、未だ行政手続きのデジタル化が十分でないことを考えると、やはりどこかに大きな問題があるのだと思います。おそらく、デジタル化にふさわしくない手続きまで含めてしまったことが原因でしょう。

 

そもそも、行政手続きをデジタル化する目的は、利用者である国民へのサービスを向上させることです。官公庁へ行かなくても、手元のパソコンやスマホを使って、簡単に手続きができることです。つまり、多くの国民が利用する行政手続きを簡単にする部分のみを対象とするものです。そして官公庁側としても、人手をなるべく省いて、事務手続きを効率化することです。行政改革の一環としても検討されてきました。

 

当然のことながら、官公庁側だけが便利になれば良いわけではなく、あくまでも、(サービスを利用する側の)多くの国民にとって便利なサービスであることが一番重要です。サービスを利用する側にメリットがないのであれば、そもそもデジタル化は必要ないわけです。

 

「利用者にとって便利なものか」という視点から、電子調達 システムについて解説します。

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紙ベースの「開札の意味」、入札者を立ち会わせる目的

入札手続きは、公正性・公平性が、最も重要です。会計法令に基づく手続きによる「公正性」、特定の会社のみが有利に扱われない「公平性」が確保されていなければなりません。

 

なぜなら、非公開、あるいは見えない(隠れた)部分があると、不信感が生まれ、不正も起きやすくなるからです。見えない行為(手続き)を許してしまうと、官製談合、贈収賄、癒着などの不正事件が横行してしまいます。(いずれの不正も、現在の会計法令に基づく契約手続きでは、完全に防ぐことはできません。筆者が提唱する「透明契約制度」を導入しない限り・・)

 

特に電子入札によって「開札」が見えない状況になってしまいました。従来の紙ベースによる入札手続きでは、それぞれの入札参加者立会いのもとに開札が行われます。官公庁側の入札執行者、入札者、それぞれが緊張感を持ちながら開札会場へ入り、相互に牽制効果が働いてました。厳格な雰囲気の中で行われる開札は、不正を許さないという強い牽制効果が発揮されます。入札会場の中にいるすべての人たちが、お互いを監視することができました。不審な挙動や表情は、すぐに誰かに感づかれます。

 

お互いが「不正を許さない」という気持ちの中で開札をすれば、談合なども起こりません。目つきや表情からも不正は知られてしまうものです。不正を許さない開札会場内は、厳粛で緊張感に包まれていました。

 

従来の紙ベースの開札手続きでは、次の目的があったのです。

入札妨害を防ぐため「権限を持つ入札者一人」のみ参加

開札会場への入室は、入札権限(契約締結権限)を持つ会社の代表者1名のみに制限されています。これは、権限のない人の行為を極力排除するためです。他社の金額を覗いたり、落札する気がないのに、わざと安い入札をするような妨害行為を防ぐためです。ひとりに制限することで私語を禁止して談合行為も防止していました。私は、入札中は世間話もさせませんでした。

 

「予定価格の存在」を証明

1回目の入札で落札しなかったときは、公表しない予定価格であっても、入札者の目の前で「予定価格調書」を開封し、予定価格が現実に存在していることを、全員に確認してもらっていました。

 

これは不正防止のために重要なことです。もし予定価格を作成せずに開札してしまうと、特定の会社を落札させることが可能になってしまいます。落札の基準価格が存在しないので、入札執行者の恣意的な判断で落札できてしまうのです。お気に入りの会社が最安値の入札をした時だけ「落札」にすることができてしまいます。

 

これらの不正行為を防止するために、予定価格調書を入札参加者の前で開封します。開札会場に予定価格調書を置くことが、会計法令(予決令79)で義務付けられています。

予算決算及び会計令

第七十九条 契約担当官等は、(略)予定価格を記載し、又は記録した書面をその内容が認知できない方法により、開札の際これを開札場所に置かなければならない。

 

再度入札を公平に判断

予定価格を超えているときの、「再度入札」実施の判断を、入札者と一緒に「公平に」検討することができました。

 

開札した結果、予定価格以内の入札がなければ、「再度入札するか、あるいは、入札を打ち切るか」判断が必要です。これ以上の入札は無理と判断して、入札を打ち切り「不落随契」とするかは、実際の入札状況を見ながら、入札者の意向を確認し、公平に判断することが必要です。

 

入札手続きで大切なことは、「手続きの透明性」です。落札決定までの経緯を、入札者全員が納得できる形で、目の前で確認できることです。入札金額や、落札決定するまでの途中経過について、官公庁側だけでなく、入札者全員がリアルタイムに確認できることが最重要です。落札決定までの経緯を、「目の前で知ることが不信を払拭できる唯一の方法」だからです。

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電子入札で「談合」が簡単に?

電子調達システムを使わない「紙ベースの入札」では、入札から落札決定までの一連の手続きを、官公庁側の入札実施担当者だけでなく、入札者も一緒に参加して「手続きに不正がない」ことを相互に確認できました。不思議なことに「嘘や不正」などは顔の表情でわかるものです。

 

しかし現在実施している電子入札(電子調達)では、これらの不正を防ぐ牽制機能がなくなっています。官公庁側だけの判断で、落札決定も再度入札も決定できるシステムです。落札基準価格の予定価格が実際に存在しているのかも外部から見えません。再度入札を実施する判断も見えません。途中経過が全く見えないのです。透明性がなくなったわけです。あまり思いたくはありませんが、自分のお気に入りの会社を落札させるため、落札させずに再度入札を利用できてしまいます。

 

さらに、こんなことはないと信じたいですが、オンラインで会社から入札できるということは、いくらでも談合できることになったわけです。スマホ片手に入札金額を調整しながら入札できてしまうでしょう。見えない場所から入札できてしまうわけです。こうなれば犯罪になってしまいます。

 

「紙ベースの入札」では、予定価格調書の存在、再度入札の判断などは、常に入札者の目の前で(入札者の監視の基に)行われます。当然のことながら緊張感もあり、お互いに「不正を許さない」という姿勢が保持されます。人の目により、厳格な入札手続きが担保されるわけです。官公庁側も民間会社側も、相互に牽制効果が期待できるわけです。会計法令でも「入札に立ち合いが必要なことを」明確に定めているわけです。

 

これらが電子調達システムによる入札では、なくなってしまいました。「入札の結果」しかわからない状況です。途中経過がわからず、透明性が消滅しました。一番重要な落札決定までの経緯や判断が、ブラックボックスになってしまったのです。

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本来の入札手続きは「透明性」が最重要

そもそも行政手続きのデジタル化は、多数の利用者にとって便利なものでなければなりません。パソコンやスマホから、ボタンひとつで手続きが完了することを目的にしています。手数料も不要になるよう、デジタル化を進めるべきです。

 

はっきり言って、入札手続きは、現在のような形でデジタル化すべきものではありません。見えない部分(ブラックボックス)が増えてしまい、いくらでも不正ができてしまいます。さらに入札へ参加する人たちの負担も膨大になっているでしょう。むずかしいマニュアルを読むのも大変なはずです。

 

そして本来、入札手続きの「開札」は、官公庁側の事務手続きを監視する(牽制する)目的もあります。予算決算及び会計令第81条で定められています。開札とは、厳格な手続きが守られていることを証明する行為のはずです。

予算決算及び会計令

第八十一条 契約担当官等は、公告に示した競争執行の場所及び日時に、入札者を立ち会わせて開札をしなければならない。この場合において、入札者が立ち会わないときは、入札事務に関係のない職員を立ち会わせなければならない。

つまり、入札手続きの中で一番重要な「落札決定までの状況」が目の前で見えることが重要なのです。

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