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1社入札を批判する間違った考え方、契約実務経験者からの視点

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イギリス コッツウォルズ
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1社入札についての解説です。競争入札へ参加する会社が1社だけのときは、実質的に競争が行われず、国民の税金が無駄に使われるという報道があります。しかし実際は、そんなことはなく、むしろ1社入札を問題視する報道こそ危険です。官製談合を助長することになります。

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「 1 社入札は不適切」と判断すること自体が問題

 

2009年のテレビ番組で、総務大臣が、2社しか参加しない競争入札を問題視していました。現実は1社入札で「本当は100万円で済むものが150万円で買われている」と批判していました。競争原理が働かずに国民の税金が無駄に使われている可能性や、談合が疑われる事例があるとのことでした。「1社入札は不適切であり、様々な疑惑を生む」というニュアンスの報道です。

 

同じ2009年に、和歌山県の工事入札では 2 社以上参加しないときは、入札を不成立とする取扱いに規則を変更したというニュースがネットへ掲載されていました。県の議会でいろいろな意見があったようですが、議論の結果、「 1 社入札は認めない」方針になったようです。

 

しかし、これらは運用面で極めて高いリスクがあります。契約実務の経験者から見ると「 1 社入札を認めない」制度は大きな問題になってしまうのです。

 

 2 社以上の参加を義務付けてしまった場合、誰にも見えないところで癒着や談合が行われるようになります。官製談合を助長してしまうのです。

 

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入札は自由な意思決定が前提

 

本来、一般競争入札は自由な競争が前提です。競争入札へ参加する、参加しないの意思決定は自由です。入札金額も自由に決定するものです。制約を課してはならないのです。

 

入札公告を一般公開し、誰でも参加できる手続きであれば、自由な意思判断を前提として、競争の健全性が確保されます。しかし、「入札成立の条件は 2 社以上の参加」と義務付けてしまえば次のようなリスクが生じます。

 

入札へ参加しようとする会社は、入札内容を見れば、ライバル会社を予想できます。2 社以上という制約があれば、他の会社が参加しないと予想された段階で、当て馬として仲の良い会社へ参加を依頼し、複数の会社が入札へ参加したように装うでしょう。

 

当然のことながら、本命の会社から依頼された営業担当者は、契約を獲得する意思はありません。落札したら困るわけです。そのためには本命の会社よりも高い入札金額で参加しなければなりません。本命の会社と入札金額を調整することになります。これは違法な談合です。外部の第三者からは、その行為は見えず、水面下で談合が横行することになります。

 

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さらに官製談合を助長するリスク

 

官公庁側から見た場合はどうでしょうか?「2 社以上でないと入札が成立しない」ということは、再度、手続きが大変な入札を仕切り直すことになります。膨大な労力をかけた手続きが、徒労に終わるのです。一般競争入札は、契約を締結するまでに 2 ヶ月以上の期間が必要です。2ヵ月以上の期間が無駄に使われたことになります。

 

官公庁の契約担当者から見れば、入札手続きをやり直すような「余計な無駄」をなくすため、「なんとしても入札を成立させよう」と考えます。本命の会社以外へ声をかけ、無理やり入札へ参加するよう働きかけるでしょう。仕方なく入札へ参加する営業担当者は、落札したら困るので、契約担当者と入札金額を調整することになります。こうなると、もう完全に違法な官製談合です。

 

このような危険性は、現場で契約実務を経験した者しか理解できません。

 

 一般競争入札の本来の目的は、競争機会の確保です。つまり不特定多数の者が、自由な意思で入札へ参加できる「機会を確保すること」です。入札公告を公開して、競争へ参加できる機会を確保した後に、実際に1社しか入札へ参加しなかったとしても、それは結果論です。入札へ参加しないと判断する時点で、すでに競争が行われています。競争が行われた結果、1 社となっただけです。入札公告を公開し、参加できる機会を確保していれば、競争が行われているのです。「入札へ参加しない」という判断は、「参加しても利益にならない」、「ライバルに負けそう」などの営業戦略です。その時点で競争に敗れています。

 

競争性を高めたいなら、無理に参加を強制したり、談合的な行為による見せかけの競争を条件とするのでなく、入札公告の掲載期間を長くしたり、誰でも参加できる仕様書を作成する方が重要です。

 

また 1 社入札を問題視する意見として、「契約金額が割高になった」という短絡的な話をする人がいます。官公庁が実施する入札では、予定価格調書を事前に作成しています。予定価格調書は、取引実績を調査し、適正な契約金額を設定した書類です。1 社入札であろうと 100 社入札であろうと、予定価格以下で落札します。落札した契約金額は、常に適正な価格です。もし契約金額が割高になったなら、その原因は 1 社入札ではなく、予定価格調書の積算自体に問題があっただけです。契約金額と 1 社入札は関係ありません。

 

契約金額の妥当性については、「正当な利益をどう判断するか」などの困難な課題があります。正当な利益を認めずに、無理な値引きを強制すれば、それこそ談合を増やすことになってしまいます。「安ければ良い」という考え方は、官公庁の契約担当者は持つべきではありません。適正な利益を含む契約金額でなければならないのです。

 

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