過去に例のない「仕様書の作り方」、仕様書をゼロから作る方法

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入札
2007年 シンガポール
この記事は約14分で読めます。

官公庁の競争入札に必要な「仕様書の作り方」です。過去に例のない契約内容の仕様書を作成するときは、かなり悩みます。仕様書の雛形やサンプルが存在しないため、どのように作成するのか全くわかりません。そんなときの解決策です。仕様書作りの基本です。

 

この解説の仕様書とは、民間企業同士が使用する仕様書とは異なります。官公庁が競争入札を実施する時に、入札へ参加する人たちに対して提示するための仕様書です。官公庁側の要求要件です。入札説明書の中の書類を意味します。

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過去に例のない初めての仕様書

清掃契約や警備契約のように毎年実施する契約であれば、仕様書を作成するのはそれほど困難ではありません。過去の仕様書をベースにして作成できるからです。昨年から変わった部分を中心に見直し、それほど悩まずに作成できます。

 

しかし今まで契約したことのない「初めての契約内容」となると、そもそもどのように仕様書を作り始めれば良いか、皆目検討がつきません。そこで何もない白紙の状態から仕様書を作る方法を解説します。

 

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仕様書の大まかな作成手順

過去に契約実績のない仕様書は、主に役務契約と製造契約になります。物品購入契約は、物品の規格が異なるだけで、それ以外は共通しているため過去の仕様書を雛形として使えます。今回は、役務契約を例にしてゼロから仕様書を作成する方法を解説します。役務契約は、何かの作業を行ってもらう契約です。物品を買ったり、何かを製造する契約とは異なります。

 

仕様書の作成手順は、次のようになります。

 

1.専門会社へのヒアリングが必要か検討する

従来、官公庁側が実施していた業務を、アウトソーシングあるいは外部委託するケースであれば、官公庁側だけで仕様書を作成することができます。実際に担当していた職員から業務内容をまとめた文書を提出してもらえば、それを基に仕様書を作成できます。

 

しかし全く初めての契約内容で、官公庁側も過去に実施した経験がなく、業務内容をイメージできないときは、専門会社からアドバイスを受けることになります。専門会社へヒアリングして仕様書を作るしか方法はありません。

 

ヒアリングが必要なときは、専門会社を探すことから始めます。ネットや取引会社から情報を得て専門会社を探します。

 

2.ヒアリング内容をわかりやすく整理する。

特に細かい作業内容については、実際の手順通りに記述するようにします。(この解説では、「業務」の中の細かい部分を「作業」と表現しています。)

 

3.契約を締結する時に必要な条件を盛り込む。

 

業務実施期間、業務実施場所、代金の支払い方法などの重要な契約条件を再度確認し、記載が漏れてないかチェックします。

 

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ヒアリング時に注意したいポイント

官公庁の契約手続きは、公平性・公正性が最重要です。国民の税金を使うので、疑惑を持たれてはいけません。

 

特定の民間企業へ有利な情報を与えてしまうと「業者との癒着」を疑われてしまいます。競争入札の内容を「公開前に知ること」も有利な情報に該当します。また癒着を疑われないためにも、専門会社との打ち合わせ(ヒアリング)では、必ず複数の者で対応することになります。通常は、官公庁側の契約担当係員と係長が同席します。主担当を係員として、係長が立ち会うことになります。もし係長が多忙な時は、他の係員に同席してもらいます。

 

官公庁側がひとりで対応してしまうと、後日癒着を疑われたときに、否定できなくなってしまいます。ひとりは危険です。

 

次にヒアリングする専門会社は、必ず2社以上とします。1社のみからのヒアリングであれば「完全な癒着」になってしまいます。特定の民間企業へ便宜を図ったことになります。たとえ賄賂を受け取っていなくても、完全に「疑惑を招く行為」です。実際の仕様書自体も特定の民間企業に偏った内容になってしまいます。1社のみからのヒアリングは絶対に避けましょう。

 

もし「この業務内容は1社しか対応できない」ことが明白であるなら、業務内容自体を見直さなければなりません。国民の税金を使うなら、複数社が対応できる業務内容にしなければなりません。「公平性」が求められます。

 

例えば、日本全国を対象とした事業を実施するときに、「全国展開できる民間企業が一社しか存在しない」とすれば、全国展開自体を見直します。業務の基本要件さえ保持させれば、それぞれの地域ごとに多数の民間企業が参入した方が安全です。日本全国を網羅するような巨大な契約内容を1社へ任せてしまうと、結果的に多数の下請け会社を使うこと(再委託)になり、誰もコントロールできない契約になってしまいます。統制ができないために、誰も責任を持てない契約になってしまいます。責任の所在がわからない「でたらめな契約」になります。こうなれば官公庁が持つ個人情報さえも漏れまくります。

 

日本全国を対象とした業務を1社のみが行う契約は危険です。業界内も1社のみに権限が集中し「いびつ」になります。多数の下請け会社が登場し(再委託の歯止めが聞かなくなり)トラブルが増えるだけです。地域ごとに多数の民間企業を参入させる方が公正で安全です。多数の民間企業が参入すれば、地域によってバラツキがでますが、それは当然のことです。例えば、住民税の計算もすべてバラバラです。そもそも統一する必要がないのです。

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専門会社のヒアリングで最初に伝えること

専門会社からヒアリングする際には、最初に次のことを必ず伝えます。

 

競争入札を前提とする資料作りに協力してほしいこと

 

競争入札になるので御社と契約できる約束はできないこと

 

もし契約を前提としない状況では、協力が困難であれば遠慮なく申し出てほしいこと、ペナルティのようなものは一切ないこと。

 

今回教えて欲しい内容は、〇〇業務の内容、入札の仕様書を作るために教えて欲しいこと。

 

御社の他にも数社、同じようにヒアリングを検討していること

(談合のリスクを排除するために可能な限り他社の名前は伏せます。もし社名を伝えたときは、さらに別の会社を探してヒアリングする予定と伝えます。)

 

つまり仕様書の作成に協力することによって「契約を確約するものではない」ことを明確に伝えます。ここは極めて重要な部分です。もし相手方が「契約を前提としているヒアリング」と勘違いしてしまうと、大きなトラブルになります。最悪の場合は訴訟になります。契約を前提にしていれば手配をかけてしまう可能性があります。契約の準備を進めてしまいます。また契約金額についても、競争入札より安く対応してしまいます。

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業務内容の一般性を確認する

専門会社からのヒアリングでは、作業内容を頭の中でイメージしながら聞き取ります。簡単にイメージできる内容、あるいは様々な民間企業が対応できそうな一般的な内容であれば問題ありません。

 

しかし聞いたことのないような手法、特殊な機器を使うような内容のときは、他の代替手法を聞きます。いろいろな民間企業が参加できるよう一般的な手法がないか必ず確認します。特殊な内容のときはくわしく聞いて、他の専門会社からのヒアリングのときに他の方法がないか再確認します。

 

聞き方の例

 

「この内容ですと御社しか対応できませんか?」

 

「もし他の方法だと、どのようなデメリット(支障)が生じますか?」

 

「この方法を使わないで、同じようにできる方法はないですか?」

 

自社しかできない、他の代替手法は存在しないとアピールするときは、次のように説明して一般的な手法を模索します。

 

「御社しか対応できないとなると、逆に、御社と契約できなくなってしまいます。癒着を防ぐために他社としか契約できなくなってしまいます。一般的な手法で実施できませんか?」

 

例えば、高額な契約案件(1,500万円以上の大規模契約・・政府調達、特定調達、国際入札などとも呼びます。)では、仕様書の作成に関わった会社は入札へ参加できません。法律よりも優先度の高い「国際協定」で決められています。

 

政府調達に関する協定を改正する議定書

5 調達機関は、特定の調達のための技術仕様の立案又は制定に利用し得る助言を、競争を妨げる効果を有する方法により、当該調達に商業上の利害関係を有する可能性のある者に対し求めてはならず、また、当該者から受けてはならない。

 

この国際協定に違反すると入札自体が停止されてしまいます。

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仕様書は「複数の目」によるチェック

ヒアリング内容を基にして、業務内容をまとめて仕様書を作成していきます。仕様書の素案を作成している段階で、必ず「複数の目」でチェックします。完成前の作成途中で「こまめにチェック」するのがコツです。長い時間をかけて素案を作成し終えた最後の段階で、根本的なミスが見つかると致命的になります。特にヒアリングを終えた後では「痛い状況」になります。もし基本的な見落とし(記載もれ)が見つかれば再ヒアリングになります。官公庁側だけでなく民間会社側にも大きな負担をかけてしまいます。ヒアリングは少なくとも3回以上行います。大規模な契約では10回以上ヒアリングすることになります。

 

少なくとヒアリングを終えた後には、毎回チェックしましょう。

 

最初のうちは「とりあえず聞いた内容を文章化」するだけでOKす。徐々に仕様書の形に直していくことになります。担当係員が作成し、係長がチェックします。もし可能であれば他の係員にも見てもらうと安心です。なるべく第三者に見てもらうことが大切です。

 

仕様書は、作成した本人はミスを見つけられません。どんなに優秀な人でも、自分のミスは気付きませえん。自分ではミスを見つけられません。頭の中で思い込んで(イメージして)記載しているので、不足した表現でも自分では理解できてしまうのです。第三者が見て「わからない部分」を早い段階で見つけて修正しておくことが重要です。

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仕様書に盛り込みたい内容

会計法令(予算決算及び会計令 第100条)で定められている契約書の記載事項のうち、重要な部分について記載する必要があります。

予算決算及び会計令

(契約書の記載事項)

第百条 (本文略)

一 契約履行の場所

二 契約代金の支払又は受領の時期及び方法

三 監督及び検査

(以下略)

 

通常、契約書の記載事項は「入札説明書」あるいは「契約書案文」の方で明記します。仕様書の中で記載する項目は、それらの中でも重要な部分を再掲することになります。

 

最低限盛り込みたい内容は次の通りです。

 

業務の目的

この契約が「何を行うためのものか」簡潔に記載します。目的がわからないと、複数の作業手順があるときに「どれが最適な方法なのか」判断できないからです。あまり細かく記述する必要はなく3〜4行で簡潔に記載します。

 

業務実施期間

契約期間を記載します。特に事前準備が大変な業務については、落札決定から業務を開始するまでの期間が重要になります。十分に期間があれば問題ないですが、短期間のときは準備作業自体に多数の人員を投入しなくてはなりません。自社だけで賄えないときは人員を確保するだけでも大変な作業になります。業務開始日によって契約金額が大きく変わります。

 

業務実施場所

実際に業務を実施する場所を明記します。

官公庁側の資料やデータを利用するのであれば、官公庁側の作業場所も記載します。そして、そのデータを入力したり加工する場所が民間会社になるのであれば、その旨も明示します。作業場所の確保も契約金額に大きく影響します。自社内に作業スペースがなければ新たに費用をかけて作業スペースを確保しなければなりません。また官公庁が持つ個人情報の保護のためにも、なるべく具体的に記載します。

 

契約代金の支払い方法

人件費が主な内容となる契約であれば、長期間の契約では「月ごとに代金を支払う」必要があります。なぜなら給与は、毎月支払うことが法令(労働基準法第24条)で定められているからです。長期間の契約にもかかわらず、契約代金を数ヶ月分まとめて支払うことは民間企業側へ負担を押し付けてしまいます。最悪、契約途中で「資金ショート」してしまうかもしれません。契約が途中で不履行になってしまうリスクもあります。

 

月ごとに契約代金を支払うのであれば、月ごとの計算方法を明記する必要があります。例えば「1日当たりいくら」とするのか「処理件数 1件いくら」とするのか、あるいは「作業人数によって計算するのか」などを明確にしなくてはいけません。契約代金の支払い方法によっても契約金額が変わります。また代金を計算できるように仕様書へ記述する必要があります。

 

監督及び検査の方法

高額な契約では、契約を実施している途中で「進捗状況を確認」した方が安全です。作業内容の確認を行うことができるよう仕様書へ明記しておきます。

 

「官公庁側の契約担当者が、契約内容を確認するために立ち入り検査を行うことがあること、立入検査の際には協力しなければならないこと」を記載しておきます。

 

また業務がすべて完了した後、「給付の完了の確認検査」を行うことも義務付けます。

 

「監督」、「検査」いずれも官公庁側だけでなく、民間企業側も立会いの上で実施します。発注者と受注者双方の担当者が実際に目で見て確認しなければなりません。

 

業務内容

仕様書の中心部分です。実際の作業手順を「誰もがイメージできる文章」で記述します。言葉でわかりやすく説明するように記述します。仕様書は法令とは異なります。決められた語句は存在しません。日常用語でわかりやすいように記述します。複数の条件を設定するときには箇条書きにして、わかりやすい表現にします。写真や図形、表などを用いて「わかりやすく記載」することが最重要になります。法律の条文のような難解な文章は避けましょう。仕様書は誰が見ても理解できることが理想です。幼稚な文章の方がわかりやすいです。

 

また、どのデータを使い、どのように処理するのか、結果として何が必要なのか「インプットとアウトプット」を明確にします。

 

例えば大規模なイベント(講演会やセミナー)を開催するための仕様書を考えてみます。ひとつの例です。

 

開催案内文を郵送で送付することを想定すれば、次のような記述になります。

 

「○地区の市区町村の住所と庶務担当係を調査し、それぞれの担当係宛に開催案内文を郵送する。開催案内文の原稿については送付開始の10日前まにで発注者が別途指示する。郵送に必要な案内文は印刷し、発注者が支給する封筒に入れ郵送する。印刷費、郵送費も本契約代金に含むものとする。」

 

ウェブサイトで参加者を受け付ける方式であれば次のように記述します。

 

「イベント開催の専用サイトを構築する。サイトのデザインについては発注者のサイトデザインを例にし、事前に了承を得るものとする。専用サイトで申し込みを受け付け、参加者リストを作成する。参加申し込み画面での入力項目はメールアドレス、氏名、電話番号とする。参加者総数は500名程度を予定しているので、サイトへのアクセス数も想定して堅牢なサイトを構築すること。発注者のサーバーを利用することもできる。」

 

上記は一例ですが、このような記述になります。実際には作業内容を専門会社に聞き取りながら、同時に仕様書への記述方法も頭の中で考えておきます。記述がむずかしいときは専門会社からアイデアを出してもらうこともあります。

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仕様書への記載を忘れた場合の対応

競争入札を実施するときの仕様書は、必要最低限のことは必ず盛り込むようにします。落札決定後に「仕様書に記載のない内容」が判明しても、相手側へ強制することはできなくなります。業務内容を追加すれば別途費用が発生します。

 

しかし実際には100%すべての内容を仕様書へ盛り込むことは不可能です。特に数千万円の大規模な契約では、実際に業務を始めてから、仕様書と異なる部分が見えてきます。その時には官公庁側も民間企業側も、相互に歩み寄る姿勢で相手方と協議することになります。契約は対等な立場で契約するものです。双方が合意できないのであれば、契約内容も変更できません。

 

仕様書へ記載し忘れた場合の対応は、入札前と後で大きく変わります。

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入札実施前の仕様変更

入札書の提出期限前に、仕様書の記載漏れ、あるいは修正が必要になった時は、次のように対応します。

 

入札に参加する人へ文書で修正や追加する部分を周知します。

 

新旧対照表のような形で、わかりやすく通知するのが安全です。

 

文書あるいはメールで通知した後には、必ず電話で確認します。らあるいは電子メールであればメールの返信で内容確認したことを返信してもらいますそして変更部分が契約金額の積算にまで影響するような大きな部分であれば入札書の提出期限も延期します場合によっては契約の業務実施機関も延期しなければならないかもしれませんいずれにしろ変更によって延長することが負担にならないようにしなければなりません

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入札実施後の仕様変更

入札した後では使用者を変えることはできません使用者を変えることで金額が変わってしまうからですもし仕様書を変えなくてはいけない状況であれば入札を取りやめにするしか方法はありません入札を取りやめてまた最初から入札公告を掲載し入札手続きをやり直すことになります

 

通常は入札書を提出した後に仕様変更の必要が生じたときは落札決定した民間企業との交渉になります

 

落札決定し契約の金額や契約の相手方民間企業が確定した段階で民間企業へ協議を持ちかけることになります

 

民間企業側が快く簡単に承諾してくれれば問題ありませんただここで注意が必要なのは契約金額の変更は認められないことです契約金額が変更になるような仕様書の修正は競争入札の前提が変わってしまいますもしかしたら他の会社が落札できたかもしれません

 

契約金額が変更できる場合は落札時の金額単価を変えることなく数量のみを変える場合などです落札決定した時には落札内訳書を提出してもらいますこれは契約を締結した後に自然災害などの不可抗力で契約を変更する時に落札時の内訳をもとに積算するためです

 

落札決定で明記された単価のものを数量を変更するような場合であれば契約金額の変更は可能です当然のことながら変更の要因としては官公庁等の理由によることになります

 

つまり仕様書の変更については入札前と入札後で対応方法が変わりますここは十分に注意しなくてはいけません

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