リバースオークションが官公庁には適さない理由、過度な競争は致命傷

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入札
2014年 奈良
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官公庁が導入しているリバースオークションのデメリットです。リバースオークションは、価格競争を繰り返し契約の相手方を決定します。しかし過度の価格競争は、将来的に大きな傷を残します。官公庁の契約担当者には、公正性を意識した契約手続きが重要です。

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リバースオークションとは

 

2011年頃から、リバースオークションという言葉を耳にするようになりました。いわゆるオークション(高く売るために、価格を競り上げて買い手を探す方式)の逆のシステムです。せり方式で価格を下げていき、購入者が売り手を探すシステムです。2010年7月5日付け日本経済新聞の朝刊でも、政府が競り下げ方式を導入する方針を固めたとの報道がありました。たしかにリバースオークションを利用すれば、見境のない価格競争が実施され、従来の入札制度よりも大幅な値引きが可能かもしれません。

 

インターネット上で、リアルタイムに短時間で価格競争を行うのです。なんとしても契約を獲得したい会社は、赤字覚悟で大幅に値引きします。契約実績を獲得するために、利益を度外視した無理な価格を提示するでしょう。しかしそうなれば、もはや適正な価格、あるいは適正な競争とは言えません。

 

いわゆる「安かろう、悪かろう」が、リバースオークションの特徴です。

 

参加する会社は、ライバル会社を打ち負かそうと、自社の利益を犠牲にして安価な金額を提示します。時には、名声を得ることだけに安価な金額を提示するかもしれません。

 

官公庁側からすれば、物品を安く購入できます。一見すると、それは良いシステムに思えます。しかし「自制心を持たない過度の競争」は、次のようなリスクが発生します。そして、そのリスクは将来的に致命傷になります。

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リバースオークションは、致命傷になる

安ければ良いという契約は「安かろう、悪かろう」の投げ売り状態になります。

 

リバースオークションによって次のような弊害が生じます。

 

契約締結後にアフターサービス(修理などの不具合対応)をしない。

 

修理の依頼をしても、なかなか受け付けてもらえない。

 

修理の対応が遅く、何ヶ月も使えなくなる。

 

これらの弊害は、目に見えない形で官公庁の現場を疲弊させます。

 

例えば、納品後すぐに故障したとしましょう。1年以内の無償保証期間中の簡単な修理でさえ、官公庁側の契約担当者が、自分でメーカーへ発送しなければなりません。通常業務を中止して、ダンボールを探して梱包し、宅配便として発送しなければなりません。修理物品の状態を確認して、修理を試したり、代替品を探したり、梱包・発送作業だけでも半日くらいかかります。その間の手間(人件費)や発送費を考えると数万円になります。しかも、その梱包発送作業の間は、通常業務が止まり遅れるのです。投げ売りではなく、きちんと対応する会社からの購入であれば、営業担当社へ1本電話するだけです。後は営業担当者が対応してくれます。

 

さらに、安さのみを追い求めると、展示品や売れ残り商品、見えない傷のある商品を買ってしまうこともあるでしょう。仕入ルートの不明な商品(闇商品)や、ライバル企業に受注させないよう、法令に違反するような故意に安い金額を提示することさえあります。不当廉売やダンピングを招くかもしれません。

 

リバースオークションの弊害として社会的に問題になるのは、ライバル会社を潰すような不当な競争です。中小企業を潰すような競争が生じてしまうことです。

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健全な価格競争と市場経済

官公庁が実施する契約手続きは、目的のひとつとして、景気を刺激して経済を活性化させることがあります。補正予算による景気刺激策が典型例です。

 

この前提となる考え方は公正な契約手続きです。民間企業の適正な利益を守ることが最重要です。官公庁がリバースオークションを導入すれば、結果として無理な価格競争が行われ、健全な市場経済の発展を妨害(破壊)することになります。

 

民間企業同士の取り引きであれば、完全な価格競争で問題ありません。民間企業同士なら弱肉強食もやむを得ないでしょう。しかし国民の税金を使用する官公庁が、弱者を潰すようなリバースオークションを導入するのは、公正性に問題があるのです。

 

そもそも官公庁の契約担当者は、日本全体の市場経済を健全に発展させるという気概(意識)を持つべきです。

 

近年(2011年時点)の不況は、過度な競争や不公平な競争が原因の一部になっています。公正でない競争が格差社会を拡大しています。

 

筆者の提唱する透明契約・透明入札制度による公正な契約手続が望まれます。

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