官公庁の契約手続きを不正事件から完全に守る方法です。贈収賄や談合事件を完全に撲滅します。不正事件の原因は、予定価格などのブラックボックス部分です。会計法令を見直し、ブラックボックス部分を排除します。現在の電子入札制度は逆効果です。
官公庁の契約制度の欠点とは
官公庁が契約の相手方を選ぶ契約方式は、3つに区分されています。契約方式の原則である一般競争入札、例外である指名競争入札と随意契約です。これら3つの契約方式は、いずれも制度的な欠点があります。外部から見えないブラックボックス部分が存在し、業者との癒着、談合、贈収賄などの不正事件の原因になってます。
一般競争入札と指名競争入札が、いわゆる入札です。入札は、競争入札や競争契約ともいいますが同じ意味です。
入札手続きの中で、予定価格と開札手続きがブラックボックス部分です。入札参加者など外部から見えない部分です。特に予定価格は、落札上限価格であり、会計法令で秘密扱いになってます。最大限の利益を得て落札するためには、予定価格を知ることが必要です。入札参加者は事前に予定価格を知ろうとして、契約担当者に近づきます。業者との癒着や贈収賄などの不正事件が発生します。
これは予定価格がブラックボックスに包まれ、外部から見えない仕組みになっているからです。また開札手続きも一般の人からは見えません。開札会場へは、入札参加者以外入室できないのです。一般の人から見えないため談合が生じる原因にもなってます。
2020年頃から導入されてきた電子入札は、スマホ片手に談合し放題になる危険なシステムです。なぜなら、多くの入札では参加者が予想できてしまうからです。業界の人から見れば入札参加者は容易に把握できます。紙ベースの入札なら、目の前で入札や開札するので不正は起こりづらいです。不正をしようとすると顔の表情でわかってしまいます。
官公庁が行なう入札手続きは、会計法令によって予定価格を秘密にしています。(一部の地方自治体は、予定価格漏えいを回避するために事前公開するケースもあります。)
予定価格は落札上限価格てす。予定価格を事前に知ることができれば、談合して競争を行なわずに最大限の利益を得ることができます。
入札に参加しようとする営業担当者は、官公庁側の契約担当者が作成した予定価格についての情報を得ようとします。接待や贈賄などの手法で、様々な接触を試みます。金銭のやりとりは贈収賄事件となりますが、それ以外の方法もあります。飲食に誘ったり、高額な商品を贈ったり、ゴルフなどにつきあったりします。
これらのリスクを避けるため、いくつかの地方自治体では、予定価格を事前公表しています。しかし談合は防止できません。
入札参加者同士が、入札金額を事前に調整する談合は、落札する会社を入札前に決めてしまいます。そして見せかけの入札書を提出します。官公庁側の契約担当者は、競争が偽装された入札書について、不正を発見できず防止もできません。談合が発覚するのは、関係者からの内部通報のみです。
また官公庁の契約担当者が、入札価格の事前調整に主導的に関われば官製談合です。
不正の原因はブラックボックス
官公庁の契約手続きに関連した不正事件の原因は、ブラックボックス部分です。秘密にする予定価格の存在、落札決定までの経緯が詳細に公開されないためです。
2020年頃からは、電子入札により全く見えなくなってしまいました。真っ黒な状態です。相手の表情がわからないので、入札参加者も官公庁側もいくらでも不正ができてしまいます。
これらの見えないブラックボックス部分が存在する限り、不正事件を排除することは不可能です。つまり現在の契約制度は、契約手続きを実施する契約担当者本人の倫理感に頼っているのが現実です。特定の会社を有利に扱おうと画策すれば、誰にもわからないように不正ができてしまいます。内部通報がない限り、不正がわからないシステムになっています。
随意契約に関連した典型的な不正事件は、業者との癒着です。不当に高い金額での契約締結です。一部の企業が不当に利益を得ようとする構図です。これも契約手続きのブラックボックス部分が原因です。契約金額の妥当性について、外部から目が届かないのです。
不正を防止することは、現在の契約制度では不可能です。
くどいようですが、現在の会計法令に基づいて実施する契約手続では、ブラックボックスが多すぎて、不正を防止できません。毎年、マスコミで報道される官公庁の不正事件を見れば明らかです。電子入札まで導入してしまったのでなおさらです。
では、本当に不正事件を根絶する手段はないのでしょうか?
不正が起きない、透明契約・透明入札制度とは
契約担当者本人の倫理感に頼るのではなく、物理的に不正を防止し、さらに契約手続きを劇的に効率化できる手法が存在します。管理人が提唱している透明契約・透明入札制度の構築です。
透明契約・透明入札制度は、不正事件の温床になっているブラックボックス部分そのものを廃止します。そして契約手続きをオープンにします。そもそも国民の税金を使う契約手続きは、誰もが見えるシステムであるべきです。
もちろん透明契約・透明入札制度を導入するためには、会計法令を改正しなければなりません。法律、政令、省令の改正が必要です。しかし、それほど困難なことではありません。透明契約・透明入札制度について詳しく解説します。
透明契約・透明入札制度の基本コンセプト
透明契約・透明入札制度は、従来の入札手続きや随意契約手続きという枠組みを全て撤廃し、契約を発注する官公庁側、契約を受注する民間企業側、双方にとってメリットのある制度です。公平・公正でオープンです。
全ての契約手続きを、リアルタイムに一般公開するシステムです。
近年のインターネット環境の普及により可能となる契約手続きです。そのためインターネットが珍しかった1995年以前に制定された既存の法体系を全て見直すことになります。
入札公告は簡単にWEB公開
インターネットのWEB上で透明契約・透明入札制度専用サイトを構築します。官公庁の契約予定情報を、原則として自由に掲載します。掲載ルールは最少限とします。契約予定情報は、現行の入札公告よりも具体的な内容にします。
官公庁の契約担当者は、発注しようとする一定規模以上の契約予定情報を、インターネット上に例外なく公開します。例えば50万円以上の契約など、組織の実情により基準額を設定します。
ただ公開の条件などを細かくルール化してしまうと、実際の利用が煩雑になるので、原則として自由な内容で公開します。掲載情報の中止や変更も自由とします。
見積内容を公開、企業名、見積金額、積算内訳を自動公開
透明契約・透明入札制度への参加を希望する民間企業は、事前に簡単な審査(現在の全省庁統一資格など)を受け、固有のIDとパスワードを持ちます。
契約を希望する民間企業は、官公庁が掲載したWEB上の契約予定情報を見て、WEB上で見積書をPDF添付し申し込みます。見積書は自動的に一般公開されます。ここでいう一般公開は、全省庁統一資格などを有している者への公開です。まったく関係ない人たちが見られる状況とは違います。身元がしっかりした入札参加資格のある人だけが見ることができます。
つまり見積や入札の状況が、リアルタイムで一般公開されます。見積金額と内訳明細書の一般公開を義務付けるのです。現行の電子入札は、金額しか公開されません。見積金額の積算内訳は見えません。これでは高いのか安いのか、適正な金額なのか判断できないのです。
物品の売買契約であれば、定価や値引率、あるいは値引額が明記された内訳明細書が公開されます。工事契約や製造契約、役務契約であれば、製造原価や諸経費、利益相当額が明記された内訳が掲載されます。見積金額と積算内訳を掲載したPDFファイルをアップロードします。アップロードすると自動で公開されるのです。
発注者の官公庁側は、予定価格を作成しません。仮に予算をオーバーしそうなら、後述する契約予定者の決定後、正式発注前に契約をキャンセルします。正式契約前なので、契約取り消しに伴う違約金や損害賠償は発生しません。
見積内容を公開するのに抵抗のある民間企業は多いかもしれません。見積内容を公開することは、自社のノウハウを他社に知られることになります。営業戦略に影響するからです。しかし本来、国民の税金を使用するなら、何に必要な経費なのか公開すべきです。公開できないようなら官公庁と取り引きすべきではありません。そもそも官公庁は国民全体のものです。秘密にしなければ契約できないなら、契約すべきではないのです。
契約予定者の決定、契約審査
2週間など任意の一定期間経過後、最安値の民間企業が契約予定者となり、次の段階として契約審査へ進みます。
契約予定者となった民間企業は、見積内容について、第三者から契約審査を受けます。第三者とは全省庁統一資格を有している不特定多数の者です。
5日間程度の契約審査期間を設け、この間に官公庁側の発注者や、ライバル会社を含む第三者が、自由に契約審査を実施します。契約予定者に対して、疑義のある見積金額や内訳についてWEB上で質問します。質問数はすべての企業で5項目以下とします。この質疑応答も公開されます。匿名での質問は受け付けず、企業名や組織名で質疑をします。契約予定者は、WEB上で公開形式の回答義務を負います。
契約予定者が期限までに回答しない場合は、自動的に排除され、次順位者の会社が契約予定者になります。故意に回答しない契約予定者は、ペナルティを受け、その後 3 ヶ月程度の一定期間他の契約に参加できなくなります。
質問した会社は、回答を見て納得すれば、回答承諾ボタンを押さなければなりません。回答承諾を故意に行わない会社も、 6 ヶ月など長期期間参加できないペナルティを負います。ひやかしや妨害を排除するため、質問者に対して、より重いペナルティを課します。
質問を受けた会社は、質問の内容が曖昧なときは、逆に質問することも可能です。逆に質問を受けた会社は、同様に回答する義務を負います。回答しない場合は、1ヶ月間ペナルティを受け参加できなくなります。
ただし質問数は、項目数5つ以内、1回のみなどの制限を設けます。故意に回答しない企業は、説明責任を負わなかったペナルティとして、1ヶ月間は他の契約に参加できません。
また契約予定者が、正当な理由なく自ら辞退すると、一定期間のペナルティを受けます。
さらに透明契約・透明入札制度で契約を締結した民間企業は、契約完了後であっても、後日、不当に利益を得ていることが指摘され、それが事実と判明した場合は、不当利得として金額の返還義務を負います。遡及期間は5年間とします。不当利得となる事例も公開すれば、不正防止の効果が高まります。
契約締結手続き
契約審査期間経過後、官公庁側が最終確認し、予算の範囲内でOKなら契約承認ボタンを押します。自動的に正式な契約が締結されます。この段階で承認せずに取り消しすることも、官公庁側は自由にできるようにします。予算の限度額をオーバーしたり、見積内容に疑義があるときは、簡単に取り消しできます。取り消し理由は公開します。ただし契約承認後は取り消しできません。
また正式に契約締結した会社は、その後、一定期間(1ヶ月など)は他の入札に参加できません。官公庁の契約を獲得する機会を広く公平にするためです。大規模契約を連続で獲得できないなどの制限を設けます。特定の企業が官公庁の契約を独占することを防ぐためです。安ければ良いという考え方よりも、どの企業に対しても公平に契約するという考え方を重視します。
以上が透明契約・透明入札制度の基本的な仕組みです。
官公庁との契約手続き全てが、WEB上で公開され、ライバル会社などの第三者が常に監視できる仕組みを構築します。ブラックボックス部分を完全に排除した制度です。
民間企業の営業担当者は、営業のために官公庁へ出向く必要もなくなります。同一企業は連続して受注できないので、中小企業などもWEB上で機会均等の受注が可能になります。
さらに会計検査院に対しても、システム上での事前検査を義務付ければ、透明契約・透明入札制度に基づく契約については、その後の会計実地検査は不要になります。会計検査院の数百億円規模の莫大な経費節減になります。(ちなみに令和2年度の会計検査院予算額は 170 億円です。)
透明契約・透明入札制度のメリットは、官公庁側には新たな業務負担が一切なく、入札に参加しようとする民間企業側は、営業が不要になり受注機会が増えることです。誰もが手軽に公平に官公庁と契約できるところです。適正な利益が確保された正常な契約かどうか、契約金額の内容・内訳までもチェック可能なところです。不当な利益の排除、不当廉売の排除も可能です。
初めて入札に参加する民間企業にとっては、透明契約・透明入札制度のサイトを閲覧することで、契約を獲得する方法がすべて見えるようになります。
また大手企業などの1社に契約が集中することを防ぐため、連続入札の禁止規定も制定します。例えば、1千万円以上の契約を受注した場合は、その後は一定期間、他の案件に参加できないことをルール化します。広く契約を受注できる機会を確保します。WEB上で、IDと契約金額を自動監視し制限するのです。
透明契約・透明入札制度を導入すれば、契約手続きの過程がすべて公開されます。談合や癒着などは意味がなくなります。契約締結後であっても、過大積算などの不当な利益を第三者から指摘されれば、5年間の返還義務を負うのですから。
それぞれのメリットは次のとおりです。
透明契約・透明入札制度のメリット
官公庁側
予定価格が不要になる。
民間企業側
営業が不要になり、中小企業の受注機会が増える。
インターネットが爆発的に普及し、情報公開が当然のようになった現在において、昭和初期の会計法令や会計検査院の存在も見直す時期です。
現行制度からの移行措置
最後に、現行の会計法令からの移行措置です。
移行措置が不要となるように透明契約・透明入札制度を構築します。
現行の契約制度はそのまま残し、追加の制度として透明契約・透明入札制度を可能とします。両方の制度を利用できるようにしておき、透明契約・透明入札制度の方を使いやすく便利なものに変えていくのです。そうすれば、自然と現行制度を利用する人はいなくなります。現行制度を廃止する必要もありません。自然淘汰されるでしょう。
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