「透明契約・透明入札制度」官公庁の契約手続から不正を撲滅する方法

イギリス コッツウォルズ 契約手続き
イギリス コッツウォルズ

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官公庁が実施する入札手続きに関連した不正事件が毎年発生しています。業者との癒着、贈収賄、談合事件などです。しかし、現在の会計法令のよる契約手続きでは不正を撲滅できません。不正を排除する「透明契約・透明入札制度」の解説です。

現行の契約制度の欠点

 

2018年6月現在、官公庁の契約方式は、原則が一般競争契約(入札)、例外として指名競争契約と随意契約の3方式です。

 

この3つの契約方式は、いずれも制度的な欠点があります。外部から見えないブラックボックスが存在し、業者との癒着、談合、贈収賄などの不正事件を防止することが不可能です。

 

一般競争契約と指名競争契約が、いわゆる「入札」です。

 

入札制度の欠点は、予定価格の作成と開札手続きのブラックボックス部分です。予定価格という入札の基準金額に関連して、業者との癒着、予定価格の漏洩、官製談合、贈収賄などの不正事件が発生します。開札までの手続きがブラックボックスに包まれ、外部から不正が見えない仕組みになっています。

 

官公庁が行なう入札は、会計法令によって予定価格を秘密にしています。予定価格は入札の落札基準価格です。予定価格を事前に知ることができれば、競争を行なわずに最大限の利益を得ることができます。

 

入札に参加しようとする営業担当者は、官公庁側の契約実務担当者が作成した予定価格についての情報(仕様書の場合もあります。)を得ようとします。接待や贈賄などの手法で、様々な接触を試みます。金銭のやりとりは贈収賄事件となりますが、それ以外の方法(高額な商品を贈ったり、ゴルフなどにつきあったり)もあり得る危険な部分です。

 

これらのリスクを避けるため、いくつかの地方自治体は、予定価格を事前公表しています。しかし談合は防止できません。会社同士で入札金額を事前に調整する談合は、落札する会社を入札前に決めて見せかけの入札書を提出します。官公庁側の契約実務担当者は、(競争が)偽装された入札書について、嘘の競争を発見できず防止もできません。

 

また、官公庁の契約実務担当者が、入札価格の事前調整に主導的に関われば官製談合です。

 

ブラックボックスが原因

 

官公庁の契約手続きに関連した不正事件の原因は、いずれもブラックボックス部分です。

 

秘密にしなければならない予定価格の存在、落札の経緯が詳細に公開されない現在の制度、これらの見えない不透明な部分がある限り、不正事件を排除することは制度上不可能です。

 

現在の契約制度は、契約手続きを実施する契約実務担当者本人の倫理感に頼っているのが現実です。

 

また、随意契約の典型的な不正事件は、業者との癒着、不当に高い契約締結です。公平性・公正性を欠いた一部の会社が不当な利益を得る構図です。これも契約手続きのブラックボックス部分が原因です。不正を防止することは、現在の契約制度上不可能なのです。

 

くどいようですが、現在の会計法令による官公庁などの公的組織が実施する契約手続では、ブラックボックスが多すぎて、不正を防止することは不可能なのです。マスコミで報道される官公庁の不正事件を見れば明らかです。

 

では、本当に不正事件を根絶する手段はないのでしょうか?

 

不正が起きないシステム「透明契約・透明入札制度」

 

契約実務担当者本人の倫理感に頼るのではなく、不正を物理的に防止し、さらに、契約制度を劇的に効率化して、改善できる手法が存在します。

 

それが、筆者が提唱している「透明入札・透明契約制度」の構築です。

 

「透明入札・透明契約制度」を導入するためには、現在(2018年)の会計法令の改正が必要です。法律、政令、省令の改正、新たな法令の制定が必要ですが実現可能です。

 

「透明入札・透明契約制度」について詳しく解説します。

 

「透明入札・透明契約制度」の基本コンセプト

 

「透明入札・透明契約制度」は、従来の入札や随意契約という枠組みを全て撤廃し、契約を発注する官公庁側、契約を受注する会社側、双方にとってメリットがあり、公平でオープンな制度とするものです。

 

全ての契約手続き(詳細な内容まで)をリアルタイムに一般公開(透明化)する方法です。

 

近年のインターネット環境の普及により可能となる契約手続きです。そのため、インターネットが存在しない時代に制定された既存の法体系を全て見直し、新たな法令を制定します。

 

官公庁側は発注情報を自由にWEB公開

 

インターネットのWEB上で「透明入札・透明契約制度」専用サイトを構築します。国や地方自治体などの官公庁の発注情報を、原則、自由に掲載します。(掲載ルールは最小限とします。)

 

官公庁等の発注者側は、発注しようとする一定規模以上の契約内容を、インターネット上に例外なく公開します。(例えば50万円以上の契約など)

 

ただし、ここで公開の条件などを、細かくルール化し規定してしまうと、実際の利用が煩雑になるので、原則として自由に記載し公開することを基本とします。掲載情報の中止や内容の変更も自由に可能とします。

 

見積金額の公開(会社名、金額、内訳を一般公開)

 

「透明入札・透明契約制度」への参加を希望する会社は、事前に簡単な審査を受け、固有のIDとパスワードを持ちます。

 

契約を希望する会社は、官公庁が掲載したWEB上の発注情報を見て、見積書を添付してWEB上で申し込みます。見積書は自動的に一般公開されます。ここでいう一般公開は、「透明入札・透明契約制度」の参加資格を有している者(専門会社)への公開です。国民一般が見られる状況とは違います。

 

つまり、(見積)入札の状況がリアルタイムで一般公開されます。

 

見積金額と内訳明細書の一般公開を義務付けます。

 

物品であれば値引率あるいは値引額が明確になるように、工事や製造であれば製造原価や利益相当額が明確に判明する形式で掲載します。実際には見積金額と積算内訳を掲載したPDFファイルなどをアップロードします。(これはリバースオークションに似ています、オークションやせり売りなどのイメージですが、金額のみでなく内容まで公開されます。)

 

発注者の官公庁側は、予定価格を作成しません。仮に予算をオーバーしていれば、後述する契約予定者の決定後、正式発注を行う前に契約を中止することを可能とします。正式契約前なので契約取り消しによる違約金や損害賠償は発生しません。

 

契約予定者の決定と契約審査

 

一定期間(2週間など任意の期間)経過後、最安値の企業が契約予定者となり、次の段階として契約審査へと進みます。

 

契約予定者となった会社は、見積内容について契約審査を受けます。

 

契約審査期間(5日間程度)を設け、この間に、官公庁側の発注者やライバル会社を含む第三者が、契約予定者に対して、見積金額についての質問をWEB上で公開で行います。匿名は受け付けず実名(会社名や組織名)で質問します。

 

契約予定者は、WEB上で公開形式の回答義務を負います。

 

契約予定者が期限までに回答しない場合は、ここで自動的に排除され、次順位者の会社が契約予定者になります。故意に回答しない契約予定者は、ペナルティを受け、その後、一定期間(3ヶ月程度)他の契約に参加できなくなります。

 

質問した会社は、回答を見て納得すれば回答承諾ボタンを押さなければなりません。回答承諾を故意に行わない会社も、一定期間(6ヶ月など長期)参加できないペナルティを負います。

 

ひやかしや妨害を排除するため、質問者の方に、より重い義務を課します。

 

質問を受けた会社は、質問の内容が曖昧なときは、逆に質問も可能です、逆に質問を受けた会社は回答する義務を負います。回答しない場合は、同様に一定期間(1ヶ月)参加できなくなります。

 

ただし、質問数は、項目数5つ以内、1回のみなどの制限を課します。

 

故意に回答しない会社は、説明責任を負わなかったペナルティとして、一定期間(1ヶ月)他の契約に参加できません。

 

契約予定者が辞退すると、一定期間のペナルティを受けます。

 

さらに、「透明入札・透明契約制度」で契約を行った会社は、契約締結後であっても、後日、不当に利益を得ていることが指摘され、それが事実と判明した場合は、不当利得として金額の返還義務を負わせることを法律で義務付けます。遡及期間は5年間とします。

 

契約締結手続き

 

契約審査期間経過後、官公庁側が最終確認し、OKであるなら、契約承認ボタンを押し、自動的に正式な契約が締結されます。この承認前の取り消しは、官公庁側は自由に可能とします。予算の限度額をオーバーしているなどのときは取り消しできます。理由も必要ありません。

 

また、契約締結した会社は、その後、一定期間は参加できません。官公庁の契約を広く公平に機会均等にするためです。

 

以上が「透明入札・透明契約」の基本的な仕組みです。

 

すべてがWEB上で一般公開され、第三者が常に監視できる仕組みを構築します。ブラックボックス部分を完全に排除します。

 

さらに会計検査院へもシステム上での事前検査を義務付ければ、「透明入札・透明契約制度」による契約については、その後の会計実地検査が不要になります。これは莫大な経費節減(数百億円規模)になります。

 

「透明入札・透明契約制度」のメリットは、発注者側には一切業務負担がなく、入札に参加しようとする民間会社側は、営業行為が不要になることです。誰もが手軽に自由に入札に参加できることです。

 

適正な利益が確保された正常な契約であるかどうか、契約金額の内容までもチェック可能なことです。不当利益の排除、不当廉売の排除も可能となります。

 

また、大手企業などの1社に契約が集中することを防ぐため、連続入札の禁止規定も制定します。例えば、1千万円以上の契約を受注した場合は、その後、一定期間(2週間など)、複数の企業が参加する他の案件に参加できないなどを規定し、広く入札参加機会を確保します。WEB上でIDと契約金額を自動監視し制限します。

 

「透明入札・透明契約制度」を導入すれば、すべての過程が公開になるので、談合や癒着などは物理的に不可能です。というか談合や癒着の意味がなくなります。契約後であっても不当な利益(過大積算)は5年間の返還義務を負うのです

 

発注者側も予定価格の作成や入札手続きなどの負担がなくなります。発注者にとっても受注者にとっても、負担が減り、完全に手続きが公開される制度です。

 

インターネットが爆発的に普及し、情報公開が当然のようになった現代において、昭和初期の会計法令、予定価格や入札などのブラックボックス的な手続き、会計検査院のあり方も見直す時期です。

 

現行制度からの移行措置

 

最後に、現行の会計法令に基づく入札や契約手続からの移行措置ですが、移行措置は不要となるように「透明入札・透明契約制度」を構築します。

 

つまり、現行の契約制度はそのまま残し、さらに「透明入札・透明契約制度」も可能とします。両方の制度を利用できるようにしておき、「透明入札・透明契約制度」の方を、使いやすく便利なものとするのです。そうすれば、自然と現行制度を利用する人はいなくなるので、現行制度を廃止する必要もありません。

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