仕様書を作成するときに注意したいポイントです。官公庁が実施する一般競争入札では、最初に仕様書を作成します。仕様書は契約金額に直接影響します。仕様書に基づいて予定価格を作成します。仕様書を作るときのチェックポイント、予定価格との関係です。
仕様書を作成するときは、予定価格まで考慮
一般競争入札を実施するときは、官公庁側で要求する契約内容を仕様書として作成します。そして開札の前までに予定価格調書を作成します。
契約手続きの流れは、仕様書作成 → 予定価格作成 → 入札 → 開札です。
仕様書を作成するときに、つい忘れてしまいがちなことがあります。それは仕様書に記載してないことは、予定価格の積算に含められないことです。
早く入札公告を公開したいと思い、仕様書を作成することのみに集中してしまい、その後に作成する予定価格の存在を忘れてしまうのです。仕様書の内容で、契約金額に影響する部分は明記しなくてはなりません。ここは注意が必要です。
仕様書に記載していない内容は、予定価格では積算できません。仕様書に記載してある部分のみ予定価格で積算可能です。
予定価格の積算を行なうとき、仕様書に記載していないことを含めてしまうと、予定価格の過大積算として、会計検査院などから指摘を受けてしまいます。
簡単に言えば、仕様書と予定価格は同一でなければなりません。仕様書・予定価格同一の原則といいます。
本体だけでなく、周辺のことにも注意
一般競争入札へ参加しようとする民間企業は、官公庁側から提示された入札説明書や仕様書に基づいて入札金額を見積もります。
例えば仕様書の中で、機器を接続するケーブル類などの記載を忘れてしまうと、かなり大きなミスになってしまいます。
多量のノートパソコンを購入し、職場内のネットワークへ接続しようと考えていたのに、接続に必要なLANケーブルやスイッチングHUBなどが仕様書に含まれていないと、民間企業側は官公庁側で既に用意してあると思い、契約の対象外と考えます。
民間企業側としては、仕様書に記載がないので、契約金額にも含めないですし納品物にも含めません。
そして、これらのミスは契約手続きの最終段階の納品当日になって判明します。
LANケーブルがなければ、物品を設置して性能検査を行うときに、ノートパソコンをネットワークに接続できません。動作確認ができません。近くにコンセントがなければ、ノートパソコンを起動できません。契約内容どおりの物品か確認できないのです。完了検査が実施できなければ代金の支払が不可能になります。
単年度予算の物品購入契約で、納品日が3月31日で上記の状況であれば、年度内の納品検査を断念することになります。新年度予算で支払うことになり、他の予算を使ってしまいます。とても残念な契約になります。(本来、新年度で購入予定だった物品を断念することになります。)
仕様書に記載してないので、契約の相手方である販売会社にミスはありません。発注者である官公庁側のミスです。慌てて次年度に別途予算を確保して、追加でLANケーブルを購入することになってしまいます。
仕様書を作成するときは、本体のみでなく、運送費、梱包費、現地作業費、機器を接続するケーブル類、電源工事(一次側、二次側工事)などの確認が必要です。事前に参考見積書を取り寄せ、動作確認までイメージして内容を確認することが重要です。
特に参考見積書などで、据付調整費一式という表記があったときは、内訳を問い合わせて内容を確認し、必要となる接続ケーブル類や電気、ガス、水道工事などを仕様書で明示する必要があります。
仕様書を作成するときのチェックポイント
物品購入を例に、契約金額に影響することが多い部分、仕様書を作成するときに確認すべきポイントを参考に記載します。
仕様書のチェックポイント
購入する本体
本体の附属品(本体を動かすのに必要なもの)
インストールが必要なソフト類(仕事で必要なもの、インストール費用も検討が必要です。)
本体を動かすために必要な環境(接続ケーブル類、電気、ガス、水道、排気が必要か確認)
設置のときの搬入経路、特に本体の大きさと、エレベーターや廊下、ドアの間口を確認します。大きな物品のときは、専門会社と一緒に歩いて実測します。
コメント
※管理人様
丁寧なご回答誠にありがとうございました。
ご多忙な中恐縮ではございますが、下記の2点についてご回答いただけますと幸いです。
■1つ目
仕様書が必要な条件として下記の内容を挙げられていますが、
こちらの根拠法令等はございますでしょうか。
>契約内容が複雑なとき。
>契約金額が高額で入札や見積もり合わせが必要なとき。
■2つ目
少額随契(HDMIケーブル購入など)で見積もり合わせをするときは
仕様書はカタログのコピー等で良いと指示を受けたのですが、これは正しいのでしょうか。
根拠法令等もあればご教示いただけますと幸いです。
以上、よろしくお願い致します。
管理人です、コメントありがとうございます。
■1つ目
仕様書の作成については、会計法令等で定めているものはありません。仕様書は、販売会社に対して、発注内容(契約条件)を提示するための書類です。少額随意契約などで、契約内容が簡単なもの、つまり、後日トラブルにならないものであれば口頭でも可能です。
■2つ目
上述とも関連しますが、HDMIケーブル購入契約などは、簡単な発注(契約)と判断すれば、仕様書は省略することもあると思います。貴組織が慣例的に実施していて、過去に外部から指摘を受けてないなら問題ないです。会計検査院や内部監査でも認めているものであれば問題ありません。
管理人様
いつも勉強させていただいております。
仕様書についてお聞きしたいことがございます。
■1つ目
上司によって、
・「消耗品は仕様書が不要、備品は仕様書が必要」
・「消耗品・備品に関係なく仕様書は作ったほうが良い」
と意見が分かれるのですが、どちらが正しいのでしょうか。
■2つ目
上司から
「カメラやUSB等の情報機器は価格によらず仕様書を作らないといけない」
と指示を受けたのですが、これは正しいのでしょうか。
■3つ目
上司によって
・「消耗品は5万円以下ならどんな物でも消耗品扱い」
・「消耗品は5万円以下でも耐用年数が1年以上なら備品扱い」
と意見が分かれるのですが、どちらが正しいのでしょうか。
もしご存知でしたら根拠法令等を含めてご教示いただけますと幸いです。
よろしくお願い致します。
コメントありがとうございます、管理人です。
■1つ目 仕様書は次のときに作成します。会計法令上は消耗品と備品の区別はありません。
契約内容が複雑なとき。
契約金額が高額で入札や見積もり合わせが必要なとき。
つまり、仕様書を省略するのは、契約金額が少額(数万円)で1社のみと契約するときです。ただし、組織によって慣例があると思います。
仕様書を省略できないのは、「入札」と「見積もり合わせ」のときです。口頭では契約条件を提示できません。
■2つ目 上記と同じです。
■3つ目 組織内で規則を作成すべきです。政府系の予算を使用するときは10万円以上は備品扱いです。
参考 タイトルで検索すると多数情報があります。
「競争的資金における使用ルール等の統一について」
平成27年3月31日(競争的資金に関する関係府省連絡会申し合わせ)
3 使用ルールの統一
消耗品や備品の購入に関するルールや、備品として管理する物品の金額、研究機器の購入方法等について使用ルールを統一する。
(1)補助又は委託先の研究者及び研究機関は、耐用年数1年以上かつ取得価格 10 万円以上の物品は備品として、耐用年数1年以上かつ取得価格 50 万円以上の物品は資産として管理すること。