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契約手続き

仕様書が書けるようになる経験年数、仕様書の書き方と注意点

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契約手続き
2020年11月 きぬ川温泉
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契約手続きに必要な仕様書は、実務経験が浅いと作れません。仕様書を作れるようになるまでには、一定の経験が必要です。いつ頃になれば仕様書が作れるようになるか、また仕様書を書くときの心構えと注意点の解説です。

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仕様書が必要になる契約手続き

 

仕様書にはいろいろな種類があります。この解説で扱う仕様書は、官公庁が契約手続きで使用する仕様書です。官公庁側が必要とする条件をまとめた書類を意味します。

 

最初に、官公庁の契約手続きの中で、仕様書が必要になる場面を確認します。

 

仕様書は、入札書や見積書を提出してもらうときに作成します。競争入札の場合には入札書、随意契約の場合には見積書です。入札書も見積書も、契約金額を見積もった書類です。金額の小さい契約は、簡略化した仕様書が多いです。ここでは、契約金額の大きい競争入札や随意契約に必要な仕様書を想定しています。物品購入契約であれば160万円以上、役務契約であれば100万円以上の契約です。

 

競争入札の場合は、入札公告を見て、参加を希望する民間企業が入札関係資料を取りにきます。電子入札では、WEB上から入札関係資料をダウンロードすることもあります。入札関係資料の「入札説明書」の中に仕様書が含まれています。

 

随意契約の場合は、官公庁の契約担当者が見積書の提出を依頼するときに、依頼文と一緒に仕様書を送付します。

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どのくらい経験を積めば競争入札の仕様書を作成できるか

 

新人のときや、初めて契約担当になったときなど、実務経験が浅い段階では入札の仕様書を作ることはできません。仕様書は、契約金額の積算に直接影響します。記載が不十分な仕様書で競争入札を実施してしまえば、トラブルになるリスクが高いです。仕様書の内容を勘違いしてしまい、契約途中で意見が衝突し、場合によっては損害賠償にまで事態が悪化します。

 

仕様書が作れるようになるまでの経験は、最低でも2年以上必要です。契約実務経験は、「見積もり合わせ」を何度も実施するなど、民間企業の営業担当者と直接やり取りすることで培われます。相手が興味を持って聞きたい部分はどこか、何を質問したいのか、表情や会話のニュアンスから感じ取り学ぶことになります。相手の思うことを想像して仕様書を作らなければなりません。表情だけで相手の思うことが理解できるような豊富な経験が必要になるのです。仕様書を作るときに、「この部分が重要になるから、丁寧に細かく書こう」と思えるようになることです。

 

すでに、多くの官公庁で電子入札や電子調達が導入されています。(スマホ片手に談合し放題になってしまったのではと心配ですが・・)電子入札やWEB上での見積もり合わせは、相手の表情を見たり言葉を聞いて、その場で判断できる場面がなくなってしまいました。たしかに楽になったのですが、その分、契約実務の経験を積むことができなくなっています。やはり、顔を見て、相手と会話することで契約実務の経験が培われます。残念ですが、電子入札や電子調達のシステム化は、目に見えない部分が多くなり不信感だけが増します。

 

本来の契約実務は、相手と顔を合わせ言葉を交わすものです。相手の表情や言葉から、相手がわからなくて困っていること、聞きたいことなどを感じる経験が必要です。書類しか見ずに判断していれば、不信感が多くなり、トラブルの多い契約手続きになってしまいます。

 

民間企業の営業担当者と会話を重ね、時には指摘や批判も受けながら、反省しつつ経験を積むことが重要なのです。そのためには入札の仕様書を作れるようになるまでに、最低でも2年以上の契約実務経験が必要です。

 

もし経験がない中で、仕様書を作る立場になってしまったときは、先輩や上司と一緒に仕様書を作っていくことになります。仕様書を作成しながら、ちょくちょく見てもらい、ひとつひとつアドバイスを受けながら進めることになります。

 

仕様書は、契約金額を見積もるために必要な書類です。わかりやすいことが最も重要です。「専門家などの一部の人だけが理解できれば良い」というものではなく、いろいろな人が見て理解できなければいけません。そのためにも実務経験が少ない段階では、ベテランの人がアドバイスする必要があります。

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仕様書、入札説明書、入札心得、それぞれの違い

 

競争入札を実施する場合には、さまざまな書類が必要になります。仕様書の他に、入札説明書あるいは入札心得を作成することも多いです。組織によって慣習があるので、作成する書類はまちまちです。

 

「仕様書」と似ている書類として、「入札説明書」と「入札心得」があります。それぞれの違いを簡単に解説します。

 

 「入札説明書」は、提出書類や提出期限など、入札手続き全体の説明が書かれています。入札書を封書に入れて、密封し、件名を封筒へ記載するなどの提出方法や、一緒に提出する関係書類の種類などの説明です。この入札説明書の中に、仕様書や入札心得が含まれることが多いです。主に、入札へ参加するための資格、関係書類の作成方法、入札と開札の方法などが記載されています。特に入札が無効になるケース(参加資格の有無や記載ミスなど)は細かく定められています。

 

「入札心得」は、入札説明書とは異なり、全ての競争入札で共通的に遵守する条件を記載したものです。特定の入札案件に限らず、共通的な心構えとして注意してもらいたい内容です。

 

「仕様書」は、技術仕様を記載した書類です。製品に求められる性能、あるいは役務契約であれば、業務内容や作業手順が細かく記載しています。契約内容が具体的に書かれています。

 

入札へ参加を希望する民間企業は、次の優先順位で書類を確認することになります。書類を確認している途中で「対応不可能」となれば、その段階で参加を断念することになります。

 

入札への参加を検討するための順番

 

1.仕様書

 

2.入札説明書

 

3.入札心得

 

4.その他の書類

 

仕様書、入札説明書、入札心得は官公庁によって様式や書類名が変わります。いずれも法律や規則で決められているわけではありません。

 

作成するときに注意したい点は、それぞれの書類で、重複した内容はなるべく書かないことです。そして、わかりやすい内容であることです。説明に必要な書類は、少ない方が良いです。一般的に、書類が少ない方がわかりやすいのです。書類が多くなれば、内容が複雑になり、ミスが起こりやすくなります。簡潔に書かれていて、わかりやすい(ページ数が少ない)説明書類が良いわけです。

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仕様書を書くときの共通の注意点

 

仕様書は、契約金額を見積もるための書類です。一番重要なことは、「内容がわかりやすいこと」です。誰もが勘違いせずに、見落としなく、契約金額を見積もることができるのが理想です。

 

仕様書を書くときの共通の注意点は次のとおりです。

 

1.わかりやすい表現で書く

 

2.むずかしい単語(専門用語や単位)は、補足説明をつける

 

3.箇条書きや図・写真を用いる

 

4.文体を揃える 「ですます調」、「である調」など

つい書いてしまいがちになりますが、法律の条文のような難解な表現は、ミスを招く原因になります。

 

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物品購入の仕様書の注意点

 

カタログ製品など、一般に市販されている物品を購入するときの仕様書は、次の点に注意します。

 

1.特定の機種は指定しない(なるべく避ける)、やむを得ず機種を指定する場合は、合理的な理由(誰もが納得する理由)が必要です。

 

2.同等品(類似品)を認めるときは、許容範囲を明確にする

 

3.物品の形状や重さを記述するときは、〇 cm 以上、〇 cm 以下、あるいは〇 kg 以下のように数値で明確に示します。例「本体の重量は床の耐荷重を考慮して500 kg 以下であること。」

 

特定メーカーの機種を指定する場合は、別途、機種選定理由書をわかりやすくまとめておきます。機種選定理由書は、官公庁内部の書類なので、外部へは公開しません。しかし対外的な説明資料として保存が必要です。なぜその製品でなければいけないのか、要求する性能がないと、どのような支障が生じるのか、わかりやすく記述しておきます。根拠となる数値は、カタログなどの該当部分をマーカーして一緒に保存しておきます。

 

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役務契約(アンケート調査)の仕様書作成例

 

大規模なアンケート調査を実施する業務を例にして、仕様書の書き方を考えてみましょう。

 

ランダムにアンケート用紙を配布する形式です。アンケート調査は、プライベートな内容を含む調査が多いため、事前に倫理審査委員会でアンケート項目の承認を受けるのが一般的です。(多くの人が不快に感じるアンケートはできません。)アンケートの原稿が完成している前提です。

 

最初に、業務の流れ全体をイメージします。(できれば複数の会社へヒアリングします。)

 

アンケート用紙の印刷

配布先リストの作成

アンケート用紙の封入、発送

回答用紙のとりまとめ(回答用紙を基にデータを作成、個人情報の保護は必須です。)

謝礼を郵送

アンケートの報告書を作成

 

次に、各項目の業務内容をイメージして、仕様(作業内容)を書きます。

 

アンケート用紙の印刷

 

アンケート項目の原稿は、発注者(官公庁側)が用意する。予定ではA4で5枚の分量になる。回答用紙はA4で1枚を予定している。原稿は〇年〇月〇日までに電子媒体で渡すので、配布サンプルを発注者が確認した後に、5千部印刷すること。

 

配布先リストの作成

 

アンケートの配布先は、市区町村の住民基本台帳から作成すること。事前に市区町村の許可を得て(申請が必要な場合は、発注者が申請書を作成する。)配布先リストを作成する。配布先リストの個人情報は外部へ漏洩しないよう厳格に管理する。

 

アンケート用紙の封入、発送

 

発注者が指定する封筒に、アンケート用紙と回答用紙を入れ封入する。宛名ラベルを送付先リストから作成し、封筒に貼付する。発送する前に見本品を発注者へ提出し確認を得ること。見本の確認が終わったら、発送を行う。発送費用(切手代)は受注者の負担とするので、後日、切手代単価と発送数を報告すること。)

 

(以後は略)

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仕様書の文体について

 

仕様書は、わかりやすいことが最重要です。そのためには読みやすいことが必須になります。ひとつの文書の中で、文体「ですます」調、「である」調が混在すると、とても読みにくいです。どちらでも構いませんが統一しましょう。

 

上記の例文を、ふたつの文体で比較します。

 

「である」調

 

アンケート項目の原稿は、発注者(官公庁側)が用意する。予定ではA4で5枚の分量になる。回答用紙はA4で1枚を予定している。原稿は〇年〇月〇日までに電子媒体で渡すので、配布サンプルを発注者が確認した後に、5千部印刷すること。

 

「ですます」調

 

アンケート項目の原稿は、発注者(官公庁側)が用意します。予定ではA4で5枚の分量です。回答用紙はA4で1枚を予定しています。原稿は〇年〇月〇日までに電子媒体で渡しますので、配布サンプルを発注者が確認した後に、5千部印刷してください。

 

契約担当者の好みの問題になりますが、厳格に契約内容を守ってもらうという趣旨で、「である」調を使うことの方が多いです。表現も「である」調の方が簡単です。

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