請書は契約書を省略したときに必要、強制力は弱い一方的な誓約書

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官公庁の契約手続きで必要となる請書(うけしょ)の詳しい解説です。請書とはどのような書類なのか、請書を必要とする根拠法令、請書と契約書の違い等の説明です。また、契約の相手方に対して、請書のみで強制力があるのか実務面から解説します。

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請書が必要な根拠法令

 

最初に、契約手続きを行なう上で「請書」が必要となる根拠法令を確認します。

 

請書の読み方は「うけしょ」です。「せいしょ」ではありません。間違える人がいますので注意しましょう。

 

契約事務取扱規則

第十五条  契約担当官等は、契約書の作成を省略する場合においても、特に軽微な契約を除き、契約の適正な履行を確保するため請書その他これに準ずる書面を徴するものとする。

 

契約書の作成を省略するときに、契約の相手方から提出してもらう書類が「請書」です。

 

そもそも請書とは

 

請書とは「契約内容を守ります」という誓約書です。誓約書なので当事者の一人が相手方に対して一方的に提出するものです。当事者同士で内容を合意し、双方を拘束する契約書とは異なります。

 

契約書は、当事者間の意思の合意を文書で取り決めて、お互いの債権と債務を約束します。相手に対して何を求める権利があるのか、何をしなければならない義務があるのか約束します。当然のことですが、契約内容が守られなければ契約違反となり違約金や損害賠償の対象になります。

 

一方、請書は、契約書と異なり相手に対しての強制力はありません。

 

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請書に強制力があるのか

 

契約の相手方に対して(通常は発注者に対して)一方的に提出する書面なので、請書を理由として、相手方を強制させることはできません。

 

例えば、請書が提出されているのに、納期が遅れて履行遅滞になったとき、相手方から「請書を提出したのに返事がなく正式な発注(契約)なのか不明だった。」、「正式に契約が成立したとは思わなかった。」と主張されると強制できません。請書を提出してもらうだけでは契約の成立が確認できないのです。そのため、請書を受理したときに必ず「正式発注します。」ということを相手方に伝えて確認する必要があります。

 

請書を提出してもらう契約は「軽微なもの」だけです。契約書を取り交わすほど重要でない軽微な契約(金額が低いものや、契約内容が簡単で契約不履行が想定できない契約など)の場合に相手方から提出してもらいます。

 

重要な内容の契約であれば、契約金額が低くても、請書ではなく「契約書」の取り交わしを行うべきです。

 

請書の例(様式例、A4たて)

 

請書の様式例です。実際の契約内容に合わせて作成します。

 

請 書

件名  ○○○○システム一式

 

内訳(品名、メーカー名、型式、数量を記載)
本体  ○○株式会社製 ○○型  1台
付属品         ○○型  1台
付属品         ○○型  1台

 

契約金額  金○,○○○,○○○円
(うち消費税及び地方消費税相当額 ○○○,○○○円)

 

上記の物品供給契約について、次の条件により契約した証として、この請書を提出します。

 

1.納入期限  平成29年  月  日( )
2.納入場所  ○○省○○課
3.検収確認  発注者は物品の納品時に検査確認を行う。
4.契約代金  発注者の検査確認後、適法な請求書を受理してから1回払い。
5.書類の提出場所 納品書、請求書は○○省○○課○○係に提出するものとする。
6.物品の無償保証期間は、納品検査確認後1年間とする。
7.この契約について必要な細目は、○○省が定めた物品供給契約基準による。(別に契約の細目を定めている場合の記載)
8.その他定めのない事項については、発注者と協議のうえ定めるものとする。

 

平成29年  月  日

 

発注者
○○省○○課 御中

 

受注者
住所
会社名
代表者氏名        印

 

特に軽微な契約とは

 

国の契約手続きでは、予算決算及び会計令第百条の二により150万円以下は契約書の作成を省略できます。

予算決算及び会計令

第百条の二 (略)契約書の作成を省略することができる場合は、次に掲げる場合とする。

一 (略)契約金額が百五十万円を超えないものをするとき。

 

さらに、契約事務取扱規則第十五条では「特に軽微な契約を除き」という記載があります。契約書の作成を省略できる150万円以下は請書を取り寄せることになりますが、さらに「特に軽微な契約」では請書も必要ありません。

 

では「特に軽微な契約」とは何を指すのでしょうか。

 

法律や政令では定めておらず、各省庁などの運用通知や内部規則で一定金額(100万円以下など)を定めています。

 

国土交通省所管
会計事務取扱規則(平成13年国土交通省訓令第60号)第46条の規定により、金額が100万円を超えない契約については、契約事務取扱規則第15条に規定する軽微な契約として取り扱うことができる

 

文部科学省 100万円未満の契約
「予算決算及び会計令第72条の規定による各省各庁の長が定める一般競争参加者の資格等の定め等について」平成6年3月8日付会計課長通知文会総第25号

 

一橋大学契約事務取扱要項

第45条 (略)契約書の作成を省略できる場合は、次に掲げる場合とする。

一 (略)契約金額が300万円を超えないものをするとき。

2 (略)契約書の作成を省略する場合においても、特に軽微な契約を除き、契約の適正な履行を確保するため必要に応じて、契約の事実及びその内容を明らかにする請書その他これに準ずる書面を契約の相手方から提出させるものとする。

第46条 前条第2項の規定により契約の相手方より請書を提出させる基準は次の各号に掲げる場合とし、契約の内容を明らかにするため、必要に応じて仕様書・図面等を添付させるものとする。

一 契約金額が150万円を超える場合

 

請書の変更契約

 

請書を提出してもらった契約でも、まれに発注(正式契約)後に契約内容を変更するケースがあります。契約の変更は、発注者である官公庁側に不利な内容でなければ可能です。(税金を使用している官公庁の契約では、原則として契約後に、官公庁側が不利となる契約変更は認められません。)

 

契約金額を減額する変更契約や、当初の契約時に想定していなかった事実が発生し、その事実と異なる部分を変更したいケースは多いと思います。

 

150万円以上で契約書の取り交わしを行った契約は「変更契約書」を新たに作成し取り交わします。

 

請書を提出してもらった契約金額の低い契約の場合は、次の手順になります。

 

請書は一方的に提出する誓約書です。双方で記名押印して取り交わす契約書ではありません。請書による契約の変更は、請書を提出し直すことによって変更契約となります。

 

契約の相手方と双方で変更内容を確認し(合意して)、契約内容を変更したときは次の処理となります。

 

変更後の請書を、変更日で再度作成し提出してもらいます。当初の請書と変更後の請書の双方を保管しておきます。当初の請書と変更後の請書の2つが、正式な契約書類です。当初の請書の余白に「○年○月○日付け変更請書あり」などの表示をしておくと効率的です。

 

あるいは、当初の請書を相手方へ返送し(返す場合は写しをとっておく)、当初の請書の日付で変更後の請書を再提出してもらいます。(これは当初の請書の差し替えになります。)

 

いずれの処理方法も、契約の相手方と合意の上、請書を提出し直す(出し直す)方法で処理可能です。変更後の請書も決裁手続きが必要になります。経緯を簡単にメモして決裁すると良いです。

 

もうひとつ古風な方法として、変更後の請書の内容を「変更契約書」のように記述する方法です。

 

変更請書の記載例

請書(○年○月○日変更)

 

件名 ○○○

 

平成○年○月○日に提出した請書について、下記の部分を変更します。それ以外の部分については当初に提出した請書のとおり契約をお請けします。

 

変更部分
当初の○○○○を○○○○に変更する。

 

平成○年○月○日

 

発注者
○○省○○課 御中

 

受注者
住所
会社名
代表者氏名        印

 

この場合は、当初の請書の余白部分へ鉛筆などで「平成○年○月○日変更請書受理」と記載しておくと、後日悩まなくて済みます。小さな変更は時間の経過で忘れやすいです。人事異動で担当者が変わるとわからなくなるので、必ず、当初の請書などにメモしましょう。

 

請書の変更は、事実どおりに書類を整えれば問題ありません。

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