「契約書」を簡単に作成する方法、正しい「契約書の取り交わし」手順

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契約手続き
2020年 最後の豊島園

官公庁の契約実務で「契約書」を作成する方法です。初めて契約書を作成するときは、実際の作り方がわかりません。過去の契約書を見ても、完成後の契約書しか存在しません。契約書を作成する方法、正しい契約書の取り交わし手順について、わかりやすく解説します。

売買契約や共同研究契約など、契約当事者が二者(官公庁側と相手企業側)のケースで説明します。(三者以上でも考え方は同じです。)

 

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契約書の「案文」作成

 

契約当事者が押印する前に、官公庁側の契約実務担当者と民間会社側の営業担当者の間で、契約書の「案文」について内容(個々の条文)を確認します。条文の意味について、同じように理解しているか「すりあわせ」します。

 

一般競争契約(公開入札)では、入札参加条件として、事前に契約書の様式を提示しています。契約を締結するときに契約内容を修正するようなケースはないです。

 

しかし、双方が対等な立場で交渉する随意契約や共同研究契約などでは、契約書の個々の条文について見解が異なることがあります。相手方から「この条文では合意できないので修正して欲しい」と要望があります。その場合は、双方で修正箇所を確認しながら摺り合わせします。

 

修正箇所が、契約内容に大きな影響を与える重要な部分(費用負担や、責任の負担など)であれば、双方の担当者が、それぞれの上司に事前了解を得る必要があります。

 

通常、契約書の案文を作るときは、過去の契約書や雛形などをベースにして一方の担当者が「契約書案」を作成し、相手方へ提示します。相手方から修正要望があれば、内部で検討します。双方が合意できるまで、契約書の案文を担当者レベルで作成します。この案文作成の段階では、まだ押印はせず、契約年月日も仮の年月日を記入するだけです。

 

一般的に、契約書の案文作成担当者は、官公庁側の契約実務担当者が多いです。官公庁側で案文を作成し、民間会社側へ内容確認を依頼します。これは、官公庁側の方が過去の契約実例を多く持っていたり、契約書の雛形があるためです。もし民間会社側の方が契約実例を多く有しているなら、民間会社側が案文を作成することも可能です。たたき台としての契約書案文は、どちらが作成しても問題はありません。

 

メールなどで契約書案文の確認を依頼する文例です。

「お世話になります、○○省の○○です。契約書の案文を送付しますので、内容のご確認をお願いします。双方で契約書の案文について事前承認が得られた段階で、契約年月日について打ち合わせさせて頂き、後日、契約年月日を記入した契約書に押印し「契約書の取り交わし」という手順で進めたいと思います、よろしくお願いします。」

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契約締結伺いの決裁、条文の修正協議

 

担当者間で事前合意し、契約書の案文が完成したら、次に正式な内部決裁手続きへ進みます。

 

契約書の案文と関係書類を添えて、内部決裁(契約権限のある上司までの承認)を受けます。決裁途中で上司などから契約書の案文について修正を求められた場合は、相手方の担当者へ修正箇所の内容と理由を説明し合意を得ます。すべての合意が得られるまで修正案を出しつつ、双方で可能な範囲で譲歩しながら内容を詰めていきます。契約書の協議に入ります。

 

正式決裁前の契約書の案文は、担当者レベルの事前協議です。そのため正式な決裁途中では、上層部から修正要望が入ることがあるのです。案文の事前協議は、担当者レベルの非公式協議の文書ですが、案文の段階で双方で合意しておけば、正式な決裁途中で修正要望が入る部分を最小限に抑えられます。逆に、案文の段階で事前協議しておかないと、案文の内容が、すべて修正になってしまうことがあります。そうなると収拾がつかなくなり、かなり揉めます。

 

契約書の条文を協議するときのコツは「この条文では合意できない」という否定的なスタンスではなく「この条文をこのように修正してもらえば合意できる」という前向きな協議が基本です。修正理由は、メールなどで補足説明してもらいます。

 

修正の記録は、後日の紛争に備えて決裁書類と共に残す必要があります。可能な限り、メールなどの書面に残る形式でやりとりし、記録として関係書類に添付しておきます。

 

決裁途中では、契約書案文に赤ペンなどで修正し、その修正理由や相手方の了承日もメモとして付記します。決裁完了後は、赤字で修正された契約書案文になります。この修正した案文が「正式な決裁書類」です。重要な書類になるので必ず保存しておきます。決裁書類を見れば、「なぜ、このような条文にしたのか」修正の経緯がわかるよう保存しておくことが大切です。

 

大切なポイントは、赤字で修正された契約書案文は「正式な決裁書類」というところです。シュレッダー処分してはいけません。必ず保存しておくことです。後日トラブルになったとき、修正した理由や経緯が問題となるケースがあるからです。誰が、いつ、どのような判断・理由で修正したのか記録を残します。

 

稀に、契約書の条文について双方の意見が平行線となり、担当者間で合意を得るのが困難な状況になります。そのときは、契約の締結権限のある双方の上司も打ち合わせに参加し、直接相手方と交渉し合意を得ます。このときも譲歩する姿勢が大切です。

 

私は以前、知的財産権に関連する契約書の条文で、6ヶ月ほど交渉したことがあります。双方とも交渉に疲れ果て、最後はお互いが譲り合い妥協しました。長期間にわたる交渉は、打ち合わせの日程調整だけでも相当な苦労が伴います。打ち合わせ場所も、相互に相手方の会場を使うなど、公平性に配慮しました。

 

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決裁完了後の契約書作成、押印の順番

 

決裁が完了した段階で、契約書案文の修正箇所(赤字で修正されている部分)を反映した契約書を作成します。そして相手方へ契約年月日の確認を行います。契約年月日の調整を終えたら、契約書(正本)を2通作成して相手方へメール送信あるいは郵送します。先に相手方の押印を依頼します。押印した2通を返送してもらいます。

 

押印の順序は、先に相手方の民間会社に押印してもらいます。官公庁側は最後に押印します。これは契約事務取扱規則第14条第2項で定められています。

契約事務取扱規則
(昭和37年8月20日大蔵省令第52号)

第14条

2 契約担当官等が前項の契約書を作成する場合において、当該契約の相手方が隔地にあるときは、まず、その者に契約書の案を送付して記名押印させ、さらに、当該契約書の案の送付を受けてこれに記名押印するものとする。

3 前項の場合において、契約担当官等が記名押印をしたときは、当該契約書の一通を当該契約の相手方に送付するものとする。

 

契約年月日は、決裁完了後の日付が原則です。しかし相手方と合意済みなら、日付を遡及しても問題ありません。案文作成に日時を要し、決裁書類の起案日が遅れたときなどは、契約年月日を遡及して(実際に合意した日に遡って)契約書を作成することも可能です。

 

日付を遡及する際は、決裁文書の起案日や決裁承認日は、実際に合意した契約年月日以前に設定し、遡及する理由を口頭で説明し上司の了承を得ます。双方で実際に合意(実質的な合意)した日が契約成立日です。書類作成(契約書の条文の詳細な調整など)に時間がかかり、形式的に契約年月日が遡及すること自体は問題ありません。

 

例(実際の処理日)

契約書案文の修正確認(8月5日)

決裁前の事前合意(8月10日)

字句修正、不足書類の修正など微調整

契約締結伺いの起案文書作成(9月10日)

決裁完了(9月17日)

 

この場合は、双方で合意できるなら、決裁書類の起案日と決裁完了日を8月5日に設定し、契約書の日付を8月10日としても問題ありません。(事実どおりの意思決定です。)

 

契約年月日を遡及するケースは、契約の開始時期を遅らせると、業務に支障が生じる場合です。契約内容の重要な部分(契約金額とか主な契約内容)が合意できていれば、契約を開始することがあります。細かな修正は後日完了させて、実際に契約書を取り交わす日は、遅れることがあります。これらは双方で事前に合意していれば可能です。

 

契約締結日(契約書の日付)確認の文例

「・・(挨拶文)・・こちらの内部決裁が完了し契約書の押印が可能となりました。契約年月日は○年○月○日でよろしいでしょうか。あるいは別の日であれば連絡をお願いします。契約年月日の決定後、契約書(正本)2通を郵送しますので、社印と代表者印を押印して頂き2通の返送をお願いします。こちらで押印後1部を返送させて頂きます。」

 

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契約書押印の順序の説明

 

時々、契約の相手方が大企業のときなどに起きる事例ですが、相手方企業によっては「先に契約書へ押印することはできないので、そちらで先に押印して欲しい」という要望があります。そのときは、上記の契約事務取扱規則第14条第2項について説明し、相手方へ理解を求めます。

 

官公庁側が最後に押印する理由は、契約書の最終確認を官公庁側が行うためです。もし最初に官公庁側が押印してしまうと、その後、悪意のある会社が条文を書き換えてしまうことが可能になってしまいます。官公庁側に不利な契約が確定してしまうのを防止する目的があります。国民の税金を使う契約なので、より安全に契約を締結するための方法です。

 

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契約書の正しい取り交わし

 

契約締結伺いの決裁を完了し相手方と契約年月日を調整した後、契約書を2通作成します。(ここで、もう一度、契約書案文と修正箇所の再確認を行います。)袋とじなどで必要書類を綴じ込み、契約の相手方へ簡易書留で2通郵送します。(袋とじを相手方が行うときは、電子ファイルをメール添付します。)

 

郵送後は、メールあるいは電話で送付した旨を連絡しておくと安全です。(相手方の担当者が近くなら、郵送でなく取りに来てもらい手渡しする方が確実です。)

 

相手方から押印された契約書(正本2通)を受領したら、公印を管理する担当者へ決裁文書(契約書案文)を提示し、承認を得てから契約書に公印を押します。正本2通の押印を終えたら、相手方へ返送する方の契約書のコピーを取り、相手方へ簡易書留で郵送します。コピーした契約書には、相手方へ郵送した日付をメモして決裁書類と一緒に保存します。

 

以上が、正しい契約書の作成方法と、取り交わし方法です。

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