正しい契約書の取り交わし方法、契約書の条文修正と契約年月日の調整

契約手続き

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官公庁の契約実務を担当していると契約書の取り交わしが必要になる場合があります。初めて契約書を作成するときに具体的な処理手順や正しい作成方法についての具体的な情報がないので、わからずに悩むことになります。過去の契約書類を見ても押印した後の契約書が保存してあるだけなので実際の作成手順がわからないのです。

 

そこで契約書の作成方法と契約書の正しい取り交わし方法を解説します。売買契約や共同研究契約など、契約当事者が2者(官公庁側と相手企業側)のケースで説明します。(3者以上でも考え方は同じです。)

 

契約書の案文作成

 

契約当事者が押印する前に、官公庁側の契約実務担当者と民間会社側の営業担当者の間で、契約書の案文について内容(個々の条文)を確認し摺り合わせします。

 

一般競争契約(入札)は、入札参加条件として事前に契約書の様式を提示するので契約内容について修正するようなケースは少ないです。しかし双方が対等な立場で締結する随意契約や共同研究契約などのときは、契約書の個々の条文について見解が異なることがあります。相手方から「この条文では合意できないので修正して欲しい」と要望されるのです。その場合は双方で修正箇所を確認しながら内部調整を行いつつ摺り合わせします。

 

修正箇所が契約内容に大きな影響を与える重要な部分(費用負担や責任負担に関連する条項など)であれば、双方の担当者がそれぞれの上司に事前了解を得ます。

 

契約書の案文は、過去の契約書や雛形などをベースにして一方の担当者が作成し相手方へ提示します。相手方から要望があれば修正を加え、双方が合意できるまで契約書の案文を担当者レベルで作成します。この案文作成の段階では押印はせず、契約年月日も仮に記入するだけです。

 

通常は契約書案文の作成は官公庁側の契約実務担当者が作成し、民間会社側へ内容確認を依頼することが多いです。たたき台としての契約書案文はどちらが作成しても問題はありません。

 

メールなどで契約書案文の確認を依頼する文例です。

「お世話になります、○○省の○○です。契約書の案文を送付しますので内容のご確認をお願いします。双方で契約書の案文について事前承認が得られた段階で契約年月日について打ち合わせさせて頂き、後日、契約年月日を記入した契約書に押印し「正式な契約書の取り交わし」という手順で進めたいと思います、よろしくお願いします。」

契約締結伺いの決裁

 

担当者間で事前合意し契約書の案文が完成したら、次に正式な内部決裁手続きへ進みます。

 

契約書の案文と関係書類を添えて、内部決裁(契約権限のある上司までの決裁)を受けます。決裁途中で上司などから契約書の案文について修正を求められた場合は、相手方の担当者へ修正箇所の内容を説明し合意を得ます。すべての合意が得られるまで修正案を出しつつ双方で可能な範囲で譲歩しながら内容を詰めていきます。

 

協議のコツは「この条文では合意できない」という否定的なスタンスではなく「この条文をこのように修正してもらえば合意できる」という前向きな協議が基本になります。修正理由はメールなどで補足説明してもらいます。

 

修正の記録は後日の紛争に備えて決裁書類と共に残す必要があります。可能な限りメールなどの形に残る形式でやりとりし記録として関係書類に添付します。

 

決裁途中では、契約書案文に赤ペンなどで修正し、その修正理由や相手方の了承日もメモとして付記しておきます。決裁完了後は赤字で修正された契約書案文となり、この修正した案文が正式な決裁書類なので保存しておきます。決裁書類を見れば修正の経緯がわかるようにしておきます。

 

大切なポイントは赤字で修正された契約書案文は正式な決裁書類なので保存しておくことです。後日トラブルになったとき修正した経緯が問題となるケースがあるからです。誰が、いつ、どのような理由で修正したのか記録を残しておきます。

 

稀に、契約書の条文について双方の意見が平行線となり、担当者間で合意を得るのが困難な状況になることがあります。そのときは契約の締結権限のある双方の上司が打ち合わせに参加し、直接相手方と交渉し合意を得ます。このときも譲歩する姿勢が大切です。

 

私は以前、知的財産権に関連する契約書の条文で、6ヶ月ほど交渉したことがあります。双方とも交渉に疲れ果て、最後はお互いが譲り合い妥協しました。長期間にわたる交渉は、打ち合わせの日程調整だけでも相当な苦労が伴います。打ち合わせ場所も相互に相手方の会場を使うなど公平性に配慮しました。

 

決裁完了後の契約書作成

 

決裁が完了した段階で契約書案文の修正箇所(赤字で修正されている部分)を反映した契約書を作成します。相手方へ契約年月日の確認を行います。契約年月日の調整を終えたら、契約書(正本)を2通作成して相手方へメール送信あるいは郵送し、先に相手方の押印を依頼します。押印した2通を返送してもらいます。

 

押印の順序は、先に相手方の民間会社に押印してもらいます。官公庁側は最後に押印します。これは契約事務取扱規則第14条第2項で定められています。

契約事務取扱規則
(昭和37年8月20日大蔵省令第52号)

第14条

2 契約担当官等が前項の契約書を作成する場合において、当該契約の相手方が隔地にあるときは、まず、その者に契約書の案を送付して記名押印させ、さらに、当該契約書の案の送付を受けてこれに記名押印するものとする。

3 前項の場合において、契約担当官等が記名押印をしたときは、当該契約書の一通を当該契約の相手方に送付するものとする。

 

 

契約年月日は契約書の案文決裁完了後の日付が原則です。しかし相手方と合意済みなら、案文作成に日時を要し決裁書類の起案日が遅れたときなどは、契約年月日を遡及して(実際に合意した日に遡って)契約書を作成することも可能です。

 

遡及する際は、決裁文書の起案日や決裁承認日は、実際に合意した契約年月日以前に設定し、遡及する理由を口頭で説明し上司の了承を得ます。双方で実際に合意(実質的な合意)した日が契約成立日ですので、書類作成(契約書の条文の詳細な調整など)に時間がかかり、形式的に契約年月日が遡及すること自体は問題ありません。

 

例(実際の処理日)

契約書案文の修正確認(8月5日)

決裁前の事前合意(8月10日)

字句修正、不足書類の修正など微調整

契約締結伺いの起案文書作成(9月10日)

決裁完了(9月17日)

 

この場合は双方で合意できるなら、決裁書類の起案日と決裁完了日を8月5日に設定し、契約書の日付を8月10日としても問題ありません。(事実どおりの意思決定なので)

 

契約締結日(契約書の日付)確認の文例

「・・(挨拶文)・・こちらの内部決裁が完了し契約書の押印が可能となりました。契約年月日は○年○月○日でよろしいでしょうか。あるいは別の日であれば連絡をお願いします。契約年月日の決定後、契約書(正本)2通を郵送しますので、社印と代表者印を押印して頂き2通の返送をお願いします。こちらで押印後1部を返送させて頂きます。」

 

(参考)契約書押印の順序の説明

 

時々、契約の相手方が大企業のときなどに起きる事例ですが、相手方企業によっては「先に契約書へ押印することはできないので、そちらで先に押印して欲しい」という要望があります。そのときは上述の契約事務取扱規則第14条第2項について説明し相手方へ理解を求めます。

 

契約書の取り交わし

 

契約締結伺いの決裁を完了し相手方と契約年月日を調整した後、契約書を2通作成し(ここで、もう一度、契約書案文と修正箇所の確認を行います。)袋とじなどで必要書類を綴じ込み、契約の相手方へ簡易書留で2通郵送します。

 

郵送後はメールあるいは電話で送付した旨を連絡しておくと安全です。(相手方の担当者が近くなら郵送でなく取りに来てもらい手渡しする方が確実です。)

 

相手方から押印された契約書(正本2通)を受領したら、決裁文書(契約書案文)を公印を管理する担当者へ提示し承認を得てから契約書に公印を押します。正本2通の押印を終えたら相手方へ返送する方の契約書のコピーを取り相手方へ簡易書留で郵送します。コピーした契約書には相手方へ郵送した日付をメモして決裁書類と一緒に保存します。

 

以上が正しい契約書の作成方法と取り交わし方法です。

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