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一社入札が無効となる場合、入札公告期間を正しく理解する

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入札の無効について相談 入札
入札の無効について相談
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 一般競争入札における一社入札は、入札公告期間を十分に確保していれば有効です。しかし極端に短い入札公告期間を設定し、あらかじめ入札内容を知っていなければ参加できないような状況であれば、一社入札は無効にしなければなりません。

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一社入札の問題点

 

一社入札とは、官公庁が実施する入札において、参加者が1社だけの場合です。競争相手が存在しない入札を、一社入札といいます。一社入札という呼び方の他にも、一社応札や一者入札などがありますが、いずれも同じです。

 

入札の種類には、一般競争入札と指名競争入札があります。一般競争入札は、不特定多数の誰でもが参加できる入札です。一方、指名競争入札は、あらかじめ官公庁側の契約担当者が数社を選んで入札を行います。指名競争入札は、参加できる者が限定されています。誰でもが参加できるわけではありません。一般競争入札と指名競争入札の違いは、「誰でも参加できるか」で異なります。

 

 一社入札が問題になるのは、競争相手が存在しないために価格が高くなると思われている点です。ライバルが存在しないのだから、業者側の言い値になり、契約金額が高く不利になるといわれてしまうのです。

 

しかし官公庁が実施する入札では、「予定価格」という適正な上限価格が存在します。予定価格の制限内でなければ落札しません。適正な価格の範囲内でのみ落札します。つまり予定価格という上限価格の範囲内で落札したのであれば、一社入札であっても、「適正価格である」ということが証明されているのです。一社入札になると、契約金額が割高になるという批判は正しくありません。一社入札を問題視する人たちは、適正な予定価格を作成した経験がなく、予定価格の真の意味を理解せずに批判しています。

 

むしろ、適正価格を無視した、無理な値引競争こそが、談合事件などの原因になっているのです。民間企業の適正な利益を認めて、適正な価格で締結するのが正しい判断です。(ここでいう適正な価格とは、実際に多く取り引きしている価格のことです。)

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なぜ一社入札になるのか

 

一社入札は、それほど珍しくありません。特殊な研究用設備などの購入契約は、むしろ一社入札の方が多いです。一社入札になる原因は、主に次のとおりです。

 

一社入札になる原因

 

特殊な製品やサービスのため入札参加者が一社しかない場合

 

◯会社の経営判断として、利益にならないと他社が判断した場合
すでに他で大口の契約を受注していたり、入札へ参加しても安い価格を提示できず落札できない、利益が少なく採算が合わないと判断する場合などです。

 

官公庁が実施する入札への参加は、義務ではありません。官公庁と民間企業の契約は、そもそも対等の立場で締結するものなので、「入札へ参加する、参加しない」の判断は自由です。 そして民間企業は利益を追求する組織なので、自社の儲けにならないと判断すれば、入札へ参加しません。

 

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一社入札は無効あるいは有効なのか

 

入札手続きを担当すると、一社入札が無効になるのか、有効なのか判断に迷うことがあります。これは、一社入札になった場合の取り扱いが、会計法令に規定されていないためです。

 

一社入札が無効になるのは、指名競争入札の場合です。指名競争入札は、事前に官公庁側の契約担当者が数社を選んで入札を実施します。誰でも入札に参加できるわけではなく、入札に参加できる会社を事前に選んでしまっているからです。選んだ会社によって入札を実施しても、多くの会社が辞退してしまい、結果的に一社しか参加しないのであれば、前提である「指名基準に問題があった」ことになります。他の会社を指名すれば、参加できたかもしれないのです。入札へ参加する会社の選び方が間違っていたことになります。他に参加の意思がある会社が存在している可能性があるため、「指名競争入札における一社入札は無効」にしなければなりません。通常は一般競争入札へ切り替えて実施することになります。

 

一方、一般競争入札における一社入札は、入札公告期間を十分に確保していれば有効です。なぜなら入札公告を公開し、誰でも参加できる状態で、競争の機会を十分に確保した結果としての一社入札だからです。入札公告を一定期間公開していれば、競争性を十分に確保しているわけです。入札公告を公開しても、結果的に一社しかないという状態は、他の会社が(営業戦略として)参加しないことが証明されているので有効と判断できます。

 

しかし2020年頃から電子入札が普及し、入札公告期間の短い入札が見受けられるようになってきました。入札へ参加する準備期間が極端に短い入札は、誰でも参加できる入札とはいえません。例えば、入札公告が一般公開され、入札までに5日間しかないとすれば、入札へ参加できる企業は制限されてしまいます。十分な人員を持つ大企業か、あらかじめ入札内容を知っている特定の企業しか参加できません。誰でも参加できるように、十分な準備期間(入札公告の公開日から書類提出期限までの期間)を設定していない一般競争入札は、実質的に競争の機会が確保されているとは認められません。最低でも2週間以上は必要です。

 

このように入札公告期間が短く、参加者が特定される一般競争入札における一社入札は無効です。入札公告公開日から書類提出期限までに余裕がなく、競争機会が十分に確保されていない状態では、指名競争入札と同じく一社入札は無効になります。

 

近頃は、電子入札で簡単にできることから、短い入札公告期間が増えてしまいました。当然ながら、競争参加機会が十分に確保されていないので、一社入札は無効とすべきです。

 

普通に考えて一週間以内の入札公告期間は適正とはいえません。通常の入札公告期間は2週間以上です。

 

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入札公告期間の考え方

 

一般競争入札における一社入札が無効となる具体例です。入札書の提出期限に余裕がない場合だけでなく、関係書類の提出期限や、入札説明会の開催日時までの期間が短い場合も該当します。期間に余裕がなくて参加できない場合が、すべて含まれます。

 

最初に、入札公告期間についての会計法令を確認します。

 

予算決算及び会計令(国の場合)

第七十四条 契約担当官等は、入札の方法により一般競争に付そうとするときは、その入札期日の前日から起算して少なくとも十日前に官報、新聞紙、掲示その他の方法により公告しなければならない。

 

東京都契約事務規則(地方自治体はそれぞれの規則)

第七条 契約担当者等は、一般競争入札により契約を締結しようとする場合においては、(略)その入札期日(略)の前日から起算して十日前までに、東京都公報、入札情報サービス、掲示その他の方法により公告しなければならない。

 

入札公告期間は、「・・・入札期日の前日から起算して・・・」10日前を最低基準としています。これは、参加しようとする企業が、入札公告を見てから関係資料を取り寄せ、入札へ参加するかどうか判断し、入札金額を積算し、入札書を提出するまでに最低でも10日以上は必要であると考えられているからです。

 

この10日間という期間は、最低限の期間です。それよりも長期間であれば、より競争性が確保されるようになります。法令上の「10日前」とは、土日などを含む暦日数ですが、実務的には、より競争性を確保するために営業日で考えるべきです。

 

GWやお盆の時期、年末年始など、多くの民間企業が休暇に入る時期は、公告期間にカウントすべきではありません。例えば年末12月27日に入札公告を公開して、年始の1月6日に入札するのであれば、暦日数では10日間あるとしても、実質的に入札準備できる期間は3日程度になってしまいます。これでは参加企業が大幅に制限されてしまいます。年末年始を含む期間で設定するのであれば3週間以上は必要でしょう。

 

通常の一般競争入札では、上記の会計法令の趣旨(入札までに余裕のある期間を設定するということ)を踏まえて、入札公告期間は2週間以上とします。

 

 一般的な入札公告の例

 

入札公告公開 6月1日

 

入札書、関係書類提出期限 6月15日

 

開札 6月22日

 

また、ここで注意したいのが、会計法令で定めている「入札期日」です。入札書や関係書類の提出期限も「入札期日」に含まれます。開札日だけではありません。入札へ参加可能な期日を指します。もし入札説明会への参加を義務付けるなら、入札説明会開催日時までの期間を10日以上としなければなりません。(上記の例では、6月1日から6月14日までで2週間です。)

 

なぜ入札公告期間(入札期日までの公告期間)を十分に確保しなければならないかというと、次の理由によるからです。

 

入札公告を見て参加しようとしても、提出期限までに余裕がなく、書類作成が間に合わず断念するケースが増えてしまう

 

これは逆にいうと、あらかじめ入札内容を知っている会社しか参加できないことを意味します。つまり官製談合と同じように、特定の民間企業を落札させるために、他の会社が参加できないよう(他の会社が間に合わないよう)に提出期限を設定していることになってしまうのです。

 

例えば、入札公告掲載期間が5日間しなかく、土日が含まれてしまえば、実質的に1〜2日で入札の準備をしなければなりません。事前に入札内容を知っている会社しか入札へ参加できないのです。金曜日に入札公告を掲載し、水曜日を書類提出期限とするようなケースです。

 

他の会社へ十分な検討期間・準備期間を与えずに、特定の企業のみを入札へ参加させるのであれば、官製談合と同じ違法な契約手続きになってしまいます。入札公告期間の短い一般競争入札で、一社入札となるのであれば、無効にしなければなりません。入札の参加機会が制限されているので、一社入札すべきではありません。

 

入札公告期間に余裕のある一般競争入札のみ、一社入札が有効です。

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