一社入札が無効となる場合、入札公告期間を正しく理解する

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入札
2020年11月 きぬ川温泉
入札

一般競争入札における一社入札は、入札公告期間を十分に確保していれば有効です。しかし極端に短い入札公告期間を設定し、あらかじめ入札内容を知っていなければ参加できないような状況であれば、一社入札は無効にしなければなりません。

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一社入札とは、一社入札の問題点

 

一社入札とは、官公庁が実施する入札において、参加者が1社しかない場合です。競争相手が存在しない入札を一社入札といいます。一社入札のことを、一社応札や一者入札とも表現します。

 

入札の種類には、一般競争入札と指名競争入札があります。一般競争入札は、不特定多数の誰もが参加できる入札です。一方、指名競争入札は、あらかじめ官公庁側の契約担当者が数社を選んで入札を行います。指名競争入札は、誰もが参加できるわけではありません。一般競争入札と指名競争入札の違いは、誰もが参加できるかどうかで異なります。

 

一社入札が問題になるのは、競争相手が存在しないために価格が高くなると思われている点です。ライバルが存在しないのだから、業者の言い値になり不利になると問題視してしまうのです。

 

しかし官公庁が実施する入札では、予定価格という適正な上限価格が存在します。予定価格の制限内でなければ落札しません。適正な価格の範囲内でのみ落札します。つまり予定価格という上限価格の範囲内で落札したのであれば、適正価格ということが証明されているのです。一社入札では、契約金額が割高になるという批判は正しくありません。一社入札を問題視する人たちは、予定価格を作成した経験がなく、予定価格の真の意味を理解せずに批判しています。

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なぜ一社入札になるのか

 

一社入札はそれほど珍しくありません。特殊な研究用設備などの購入契約は、むしろ一社入札の方が多いです。

一社入札になる原因は、主に次のとおりです。

 

◯特殊な製品やサービスのため入札参加者が一社しかない場合

 

◯会社の経営判断として、利益にならないと他社が判断した場合
すでに他で大口の契約を受注していたり、入札へ参加しても落札できない、利益が少ないと判断する場合などです。

 

官公庁が実施する入札への参加は、義務ではありません。官公庁と民間企業の契約は、そもそも対等の立場で締結するものなので、入札へ参加する、参加しないの判断は自由です。 そして民間企業は営利を追求する組織なので、自社の利益にならないと判断すれば入札へ参加しません。

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一社入札は無効あるいは有効なのか

 

入札手続きを担当すると、一社入札が無効になるのか、有効なのか判断に迷うことがあります。一社入札になった場合の取り扱いについては会計法令に規定されていないためです。

 

一社入札が無効になるのは、指名競争入札の場合です。指名競争入札は、事前に官公庁側の契約担当者が数社を選んで入札を実施します。誰もが入札に参加できるわけではなく、入札に参加できる会社を事前に選んでしまっているのです。選んだ会社によってのみ競争入札を行うという前提で実施し、結果的に一社しか参加しないのであれば、前提である指名基準に問題があったことになります。入札へ参加する会社の選び方が間違っていたことになります。他に参加の意思がある会社が存在している可能性があるため、指名競争入札における一社入札は無効にしなければなりません。通常は一般競争入札へ切り替えて実施することになります。

 

一方、一般競争入札における一社入札は、入札公告期間を十分に確保していれば有効です。なぜなら入札公告を公開し、誰もが参加できる状態で、競争機会を十分に確保した結果としての一社入札だからです。入札公告を一定期間公開することで、競争性を十分に確保しているわけです。入札公告を公開しても、結果的に一社しかないという状態は、他の会社が参加しないことを証明しているので有効として判断します。

 

しかし2020年頃から電子入札が普及し、入札公告期間の短い入札が見受けられるようになってきました。入札へ参加する準備期間が極端に短い入札は、誰もが参加できる入札とはいえません。

 

例えば、入札公告が公開され、入札までに5日間しかないとすれば、入札へ参加できる企業は限定されてしまいます。十分な人員を持つ大企業か、あらかじめ入札内容を知っている特定の民間企業しか参加できません。誰もが参加できるように十分な準備期間(入札公告期間)を設定していない一般競争入札は、実質的に競争の機会が確保されていません。

 

このような入札公告期間の短い、参加者が特定される一般競争入札における一社入札は無効です。競争機会が十分に確保されていない状態では、指名競争入札と同じく一社入札は無効になります。

 

近頃は、電子入札で簡単にできることから、短い入札公告期間が増えてしまいました。当然ながら、競争参加機会が十分に確保されていないので、一社入札は無効とすべきです。

 

普通に考えて一週間以内の入札公告期間は適正ではありません。最低でも土日や休日を除き5日以上は必要です。通常の入札公告期間は2週間以上です。

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一社入札が無効となる場合とは

 

一般競争入札における一社入札が無効となる具体例を確認しましょう。入札書の提出期限だけでなく、関係書類の提出期限が短い場合や、入札説明会の開催日時までの期間が短い場合も該当します。

 

最初に入札公告期間についての会計法令を確認します。

 

予算決算及び会計令(国の場合)
第七十四条 契約担当官等は、入札の方法により一般競争に付そうとするときは、その入札期日の前日から起算して少なくとも十日前に官報、新聞紙、掲示その他の方法により公告しなければならない。

 

東京都契約事務規則(地方自治体はそれぞれの規則)
第七条 契約担当者等は、一般競争入札により契約を締結しようとする場合においては、(略)その入札期日(略)の前日から起算して十日前までに、東京都公報、入札情報サービス、掲示その他の方法により公告しなければならない。

 

地方自治体は、それぞれの規則で定めています。国の会計法令である予算決算及び会計令では、入札期日前日の10日前を最低基準としています。これは入札公告を見てから関係資料を取り寄せ、入札へ参加するかどうか判断し、入札書を提出するまでに最低でも10日以上は必要であると考えられているからです。この10日間という期間は最低限の期間です。それよりも長期間であれば、より競争性が確保されるようになります。法令上の10日前とは、土日などを含む暦日数です。

 

しかし、GWやお盆の時期、年末年始など、多くの民間企業が休暇に入る時期はカウントすべきではありません。例えば年末に入札公告を公開して、年始に入札するのであれば、実質的に入札準備できる期間は3日程度になってしまいます。これでは参加企業が大幅に制限されてしまいます。年末年始を含む期間で設定するのであれば3週間以上は必要でしょう。

 

通常の一般競争入札では、上記の会計法令の趣旨を踏まえて、入札公告期間は2週間以上とします。

 

入札公告公開 6月1日

入札書、関係書類提出期限 6月15日

開札 6月22日

 

ここで注意が必要なのは、会計法令で定めている入札期日とは、入札書や関係書類の提出期限を指します。開札日ではありません。入札へ参加可能な期日です。入札説明会への参加を義務付けるなら、入札説明会開催日時までの期間を10日以上としなければなりません。

 

なぜ入札公告期間(入札期日までの公告期間)を十分に確保しなければならないかというと、次の理由によるからです。

 

入札公告を見ても、入札へ参加する準備期間が不足して、書類作成が間に合わず断念するケースが増えてしまう

 

これは逆にいうと、あらかじめ入札内容を知っている会社しか参加できないことを意味します。つまり官製談合と同じように、特定の民間企業を落札させるために、他の会社が参加できないように提出期日を設定していることになってしまうのです。

 

例えば、入札公告期間が5日で土日が含まれてしまえば、実質的に1〜2日で入札準備しなければなりません。事前に入札内容を知っている会社しか入札へ参加できないのです。

 

他の会社へ十分な検討期間を与えずに、特定の企業のみを入札へ参加させるのであれば、官製談合と同じ違法な契約手続きです。

 

入札公告期間の短い一般競争入札で、一社入札となるのであれば無効にしなければなりません。入札の参加機会が制約されているので入札すべきではありません。

 

実際に入札へ参加するか検討できる期間が10日以上確保されている一般競争入札のみ、1社入札が有効です。

 

土日や祝日を除き、10日以上の入札公告期間が確保されていない一社入札は無効と考えるべきです。

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