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一般競争入札のすべて、入札手続きを具体例でわかりやすく解説

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イギリス ロンドン
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官公庁が実施する一般競争入札の解説です。手続きが一番簡単な物品購入契約を例にして解説します。仕様書の作成、予定価格の作成、入札や開札の方法、契約書の取り交わしなどです。一般競争入札の流れと、契約手続きの基本を理解できます。

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一般競争入札の手順

 

パソコンを購入するための一般競争入札を例にします。入札手続きの主な手順は次のとおりです。それぞれの段階で書類を作成したり集めたりします。

 

一般競争入札の手順

1  仕様決定
2  仕様書の作成
3  入札伺の決裁
4  入札公告を公開・掲示
5  仕様説明会の開催(省略が多い)
6  値引率等の市場調査
7  予定価格調書の作成
8  入札・開札
9  契約締結伺いの決裁
10 契約書の取り交わし
11 納品検査・検収
12 支出決議(代金支払)

 

一般競争入札は、最も複雑で手間のかかる契約手続きです。ひとつひとつの手続きすべてが会計法令(法律や条例など)で定められています。根拠法令を確認しながら事務手続きを進めることになります。当然のことながら、会計法令を正しく理解していなければ一般競争入札を実施できません。そのため、契約実務を3年以上経験した人が担当することが多いです。新人や初心者にとっては、極めて困難な契約手続きになります。

 

それでは順番に解説していきます。

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仕様決定

 

ここでの「仕様」とは、簡単にいうと、「官公庁側が求める内容、欲しいもの」という意味です。契約に必要な条件になります。

 

官公庁の契約では、原則として特定の機種を選べません。官公庁の運営財源は国民の税金です。税金を使うので、公平でなければなりません。例えば〇〇会社製など、特定のメーカーを指定するときは明確な理由が必要です。理由もなく特定のメーカーを指定するのは、公平性の観点から問題になるのです。官公庁の契約手続きでは、公平・公正でなければなりません。「公平」とは、「えこひいき」しないことです。「公正」とは、多くの人が正しいと思えることです。国会や議会で承認されている会計法令に基づいて手続きを進めることが「公正」さを証明することになります。

 

仕様の検討は次のように行います。

 

最初に、いろいろなメーカーのカタログと定価表を取り寄せ、必要な性能を調べて比較検討します。そして、最低限必要な性能のみを抽出します。カタログに掲載してある性能すべてを選ぶのではありません。性能すべてを羅列してしまうと、必要のない性能まで含めてしまいます。結果として、最初から特定の機種を指定してしまうことになります。特定の機種を指定してしまうと、競争性が弱くなってしまいます。いろいろな民間会社が入札へ参加できるよう、競争性を確保し、必要最少限の性能のみを仕様とします。

 

仕様決定の例

 

品名 デスクトップパソコン

本体 形状は、タワー型であること。

CPU インテル Core i7-10700(8-コア, 16MB キャッシュ, 2.9GHz – 4.8GHz)以上

メモリー 8GB以上

ハードディスク 3GB以上

OS Windows 10 Pro

特定のメーカーに偏らないよう、購入したいパソコンの最少限の性能を必要条件とします。性能は、誰が見てもわかる客観的なカタログなどを基に作成します。なるべく複数メーカーの機種が候補となるよう、各メーカーの性能を比較し最少限とします。例えばCPUの処理スピードが大きく変わると、金額が倍くらい違うこともあります。官公庁側が必要とする最少限の性能を検討します。

 

CPUは、メーカーを指定しても競争性が確保されていれば問題ありません。インテル製のCPUを使って多数のメーカーが販売しているので、メーカー指定しても競争性は確保されています。「多くのメーカーが参加できるか」という判断基準で作成します。

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仕様書の作成

 

仕様書は、入札へ参加を希望する民間企業に対して契約条件を提示する書類です。仕様(契約内容)に加えて、その他の契約条件をまとめたものです。

 

仕様書には次の項目を記載します。それぞれの契約内容により記載項目は変わります。

 

仕様書の記載項目

①パソコンの仕様(求める性能等)
②納入期限
③納入場所
④納品検査の方法
⑤代金請求書の送付先
⑥パソコンの無償保証期間
⑦代金の支払方法、支払場所
⑧搬入設置時の遵守事項(注意事項)

 

パソコンを購入するときは、搬入して設置するときに据付調整と動作確認まで契約に含めます。ネットワークへの接続や附属ソフトのインストール、動作テストまで実施するように明記します。操作が複雑な機器の場合には、使用者に対する操作説明と、操作手順の写真入り簡易マニュアルの作成も含めます。

 

仕様書は、官公庁側が必要とする内容を、民間企業に対して契約条件として提示する書類です。なるべくわかりやすい表現で記述します。記述方法は普通の表現でかまいません。法律の条文のような難解な表現は避けます。

 

 「②納入期限」は、最終の納入期限を設定します。納入期日ではなく、納入期限です。納入期限に遅れたときは、履行遅滞として違約金などが発生します。仕様書には、余裕のある納入期限を設定します。注意したいのは、無理な納入期限を設定すると料金が高くなる点です。通常のルート配送でなく、特別な配送が必要になったりして、契約金額が高くなる可能性があります。メーカーの倉庫に製品が少なく、在庫が不足気味のときは要注意です。納入期限を設定するときは、無理のない期間を複数の会社へ確認します。

 

メーカーから問屋や代理店を通しての販売では、メーカーからの出荷時期が週1回とか月2回など定期便として設定されています。納入期限を短くしてしまうと、定期便では間に合わなくなります。そうなると特別に運搬しなければなりません。トラック費用、運搬作業員の費用が別に必要になります。納入期限が契約金額に影響してしまいます。

 

次に「③納入場所」です。

 

物品購入契約では、運搬経費は無料のことが多いです。台車を使ってエレベーターで搬入すれば簡単に設置できます。

 

しかし極端な例ですが、納品場所が山岳地帯ならどうでしょう?

 

例えば火山活動をモニタリングするために、山岳地帯の高所にある山小屋へ納入する条件なら、相当な運搬費用が必要になります。自動車は山の麓までしか入れません。そこからはパソコンを1台ずつ担いで山を登らなければなりません。多額の人件費が運搬費用として必要になります。

 

納入に要する費用は、設置場所や運搬方法によって金額が大きく変わります。実際の搬入風景をイメージすることが大切です。高層建物の階数や、搬入場所近くにトラックを駐車できるかなどを、実際に目で見て確認します。大きな形状の物品のときは、入口の大きさ、廊下を曲がれるか、ドアを通過できるかまで確認します。

 

想定される作業内容を仕様書の中で明記しておかないと、トラブルが生じることもあります。「最初の想定と話が違う」とか、「そんなことは聞いていない」など、「言った、言わない」ともめてしまいます。トラブルにならないよう、作業内容をイメージして仕様書に書き込みます。

 

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入札伺の決裁

 

「入札」は、見積金額を書いた紙(入札書の様式)を提出してもらうことです。選挙のときに投票箱へ投函するイメージです。(2021年頃からは、電子入札が多くなりました。電子入札はWEB上なので目には見えません。入札や開札がブラックボックスになってしまっているので、この解説では取り扱いません。)

 

パソコン購入では、仕様書によって条件提示します。民間企業側では、仕様書に基づいて契約金額を見積もり、「この金額なら販売できる」という見積金額を入札書へ記載します。「官公庁側はできるだけ安く買いたい」、「民間企業側はできるだけ高く売って利益を確保したい」わけです。これが競争入札のときの心理状態で、「かけひき」になります。

 

一般競争入札を実施する前には「入札伺(にゅうさつ うかがい)の決裁」が必要です。予定価格の範囲内の入札があれば、自動的に落札し、契約が成立するからです。契約が成立すれば、官公庁側は契約代金を支払うという債務を負担します。そのため、入札を実施する前に、上層部の了承が必要になります。

 

どのような内容で入札するのか、原議書を作成します。官公庁の事務手続きは、何かを行う(事業を実施する)ときには原則として原議書で決裁を受けます。組織としての仕事ですから、担当係員、担当係長、課長補佐、課長、部長までの承認が必要です。実務を担当する係員から、契約権限を持つ上位の役職までの承認を受けます。

 

入札伺いに必要な書類

①入札公告の案文
②仕様書(または入札説明書)案文
③入札書様式
④委任状様式
⑤入札心得(にゅうさつこころえ)の案文
⑥契約書の案文

 

これらの書類をダブルクリップで留めて、原議書(起案文書、稟議書などともいいます。)を表紙にして決裁を受けます。原議書には、一般競争入札と判断した資料を添付します。通常は参考見積書の金額によって一般競争入札になることがわかります。原議書の備考欄へは、契約方式の根拠法令も付記します。

 

国の場合

本件は、会計法 第二十九条の三 第一項により一般競争入札を行うものである。

 

地方自治体の場合

本件は、地方自治法 第二百三十四条 第一項により一般競争入札を行うものである。

 

入札公告の案文

 

一般競争入札を実施することを知らせる「公告の案文」です。「広告」ではなく、「公告」であることにも注意しましょう。官公庁が広く伝える内容は、「公告」です。民間企業(営利企業)が宣伝に使用するのが「広告」です。両方とも「こうこく」なので変換ミスが多いです。ここを間違えると、かなり恥ずかしいので注意してください。

 

「案文」とは、正式に承認される前の外部へ発信する文書を指します。決裁文書に添付するのは案文です。決裁を終えると(案)がとれ、案文が正式文書になります。決裁途中では、上司からミスを指摘され修正が入ることもあります。案文は、赤のボールペンや色鉛筆で修正します。鉛筆は消えてしまうことがあるので、修正のときは使いません。決裁途中での修正は、必ず記録に残します。行政の判断記録になるので、とても重要です。

 

入札公告は、WEB上の専用サイトへ掲示することが多いです。その他に玄関や廊下の掲示板へ貼付したりもします。入札公告には、簡単な契約内容と入札関係書類の配布場所、入札の実施日、入札に参加できる条件などを記載します。入札公告は、記載内容が会計法令で定められているので、どの一般競争入札でもほぼ同じです。

 

仕様書

 

これは上述のとおりです。

 

入札書の様式を作成

 

入札書には、件名、入札金額、入札年月日、入札者の住所、会社名、役職名、氏名、押印が必要です。あらかじめ入札書様式として作成しておきます。入札書の記載ミスによって入札が無効になることがあります。記載ミスや記載もれを防止するためにも、入札書の様式を指定して配布した方が安全です。

 

委任状の様式を作成

 

入札は、契約権限を持つ法人の代表者が行います。会社組織そのものは、人間ではないので意思を持たず判断できません。会社を代表する人間が、いくらで契約を締結するか判断します。会社であれば、代表取締役社長が契約権限を持っています。しかし通常は、社長自らが入札へ参加することは稀です。社長から営業担当者へ契約締結権限を委任します。入札の際に委任状を提出してもらいます。取り引きに慣れている営業担当者が入札へ参加することが多いです。もし社長が自ら入札へ参加するのであれば、委任状は不要です。

 

委任状によって代理人が選ばれますが、場合によっては、復代理人を選任することがあります。本社の社長が、支店長を代理人とし、支店長が営業担当者を復代理人として選ぶ場合です。この復代理人のときには、代理人を選任する委任事項の中に「復代理人の選任に関すること」が含まれていることが必要です。間違えやすい部分なので、代理人用の委任状と、復代理人用の委任条の両方の様式を作成しておきます。

 

入札心得の案文作成

 

入札心得は、入札時の一般的注意事項です。「入札金額は消費税抜きで記載する」とか、「入札書に印鑑を押してないと無効になる」とか、「読みにくい金額は無効になる」など、いろいろな入札へ参加するときの注意事項です。入札心得は、入札案件ごとに作成するのではなく、共通的に使用する書類です。最新版の電子ファイルを探しておくだけです。

 

契約書の案文を作成

 

開札の結果、落札すると契約が自動的に成立します。そのため事前に契約書の案文を民間企業側へ提示しておく必要があります。どのような契約条文で契約書を締結するのか、事前に知らせておかなければなりません。実際に締結する契約書の様式です。契約内容と契約書の条文を事前に承諾した上で入札へ参加してもらうことになります。契約書の案文は、契約金額、契約の相手方欄を空欄にしておき、落札後に契約金額と会社名などを記載します。

 

入札伺の決裁が完了したら、入札公告をWEB上へ公開(掲示)し、入札手続きを開始します。

 

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入札公告を公開・掲示

 

入札公告の掲示場所は、WEBサイトと職場の掲示板が主に利用されます。高額な国際入札では官報や公報に掲載します。新聞はあまり利用されません。

 

入札公告の内容は、入札事項(パソコン20台)、入札方法(総額なのか1台あたりの単価なのか)、入札参加資格、納入期限、納品場所、入札説明会の開催日時、入札が無効となる条件、契約書の取り交わし要否などです。

 

職場の掲示版へ貼るときは、A4版縦で作成し、画鋲とかセロテープで固定します。

 

官報への掲載は、事前に原稿を提出し、わりと高い掲載料金も必要になります。国際入札に該当する高額な契約のときに掲載します。

 

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仕様説明会の開催(省略が多い)

 

仕様説明会(入札説明会)は、入札へ参加を希望する民間企業の営業担当者が参加します。開札のように代表者1名という入場制限はありません。誰でも参加できます。いつも取り引きしている営業担当者が参加することもあれば、初めての営業担当者が勉強のために参加することもあります。入札を一度も経験したことのない人に対しては、丁寧な説明が必要です。特に入札参加資格は、入札の無効に直接関係する重要な部分なので時間をかけて説明します。

 

仕様説明会を開催するときは、参加者の名刺と引き換えに、入札関係書類を配布します。なぜ名刺と交換に入札説明書を渡すかというと、仕様書等の記載ミスが判明したときの連絡に必須だからです。入札を妨害しようとしている者を排除する(ひやかしなどを牽制する)意味もあります。また、この後で実施する予定価格の作成手続きにも関係してきます。

 

配布する書類は、仕様書(入札説明書)、入札書様式、委任状様式、入札心得、契約書案です。説明内容は、仕様そのもの(パソコンの性能面)、入札書の記入方法、入札に参加する資格、開札当日に持参するものが中心になります。

 

開札当日に持参するものは、印鑑、筆記用具、入札書、委任状、競争参加資格認定通知書の写しです。再度入札のときは、会社の住所スタンプがあると記入が楽です。

 

しかし仕様説明会(入札説明会)は、談合の温床になるとの見方もあり、開催しないことが多くなりました。

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値引率等の市場調査

 

市場調査は、予定価格を作成するための資料を準備することです。予定価格とは、官公庁側であらかじめ見積もる契約予定金額です。競争入札では、落札の上限価格になります。予定価格を設定する際に、実際に取り引きされた過去の契約金額を調べ、値引率を把握します。

 

入札へ参加する民間企業(仕様説明会で名刺もらっている。)から納入実績表を提出してもらいます。参加条件として、開札前に納入実績表の提出を義務付けることも多いです。

 

納入実績表は、民間企業の販売実績です。納品年月日、納品した製品名、納品金額、その当時の定価(カタログなどにメーカー希望小売価格と書いてある標準価格)を一覧表にして提出してもらいます。そして、その納品先へ官公庁側が購入実績として照会します。

 

「納入」は、民間企業側が販売する(納入する)ときに使う言葉です。「購入」は、官公庁側が買ったときに使用します。あなたがパソコンを買ったときは、「納入した」とは言わず、「購入した」と言うはずです。他の官公庁へ購入実績を照会するときは、言葉の違いに注意しましょう。

 

購入実績の照会は、入札参加希望の会社から提出された納入実績表の金額が正しいか確認するために実施します。金額が間違えてしまうと、値引率が変わってしまいます。値引率を正確に把握するためには購入実績を照会するしか方法がありません。

 

ほとんどの場合は、納入実績表の定価と契約金額は正しい数字になっています。しかし稀に、消費税の有無などで金額を間違えて記載していることがあります。消費税を勘違いしてしまうと、3~10%も値引率が変わってしまいます。

 

調査方法は、納入実績一覧表に記載されている官公庁へ電話して、当時の契約書や見積書をメールやFAX等で送ってもらいます。納入場所の官公庁を調べて、電話で契約の有無を事前確認してから文書で正式に照会します。調査に1週間くらい必要です。これらの調査資料は、予定価格設定の根拠資料になります。後日実施される会計検査等のために必ず保存しておかなければなりません。

 

定価と契約金額の比率から値引率を算出しますが、消費税を除いた金額で計算します。

 

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予定価格調書の作成

 

 

市場調査によって値引率や取引価格が確認できたら、予定価格を作成します。

 

予定価格は、官公庁側が事前に作成する、「この価格なら購入できる」という上限価格です。まず予算の範囲内であること、次に実際の取引価格を想定して予定価格を設定します。また直近の実勢価格を調べる意味でも、入札参加希望者から参考見積書を提出してもらいます。パソコンなどの物品購入契約であれば、市場調査の中で一番安い過去の値引率と、直近の参考見積書を比較して予定価格を設定します。

 

ここで、あまり深く考えすぎるとジレンマに陥ります。市場調査のデータの完全性で悩むのです。過去の契約実績といっても、実際に日本全国のデータを調べることは不可能です。どこまでの範囲を市場調査として調べるか、ここが悩みどころです。昔の会計検査院の調査官は、「日本全国の取引価格を調べてください」、などと平然と言ってました。予定価格を自分で作成した経験のない人の発言は、現実的ではありません。(そもそも計算証明規則という法令があり、会計検査院へ日本全国の情報が集まっているわけですから、値引率を検索するシステムを開発できるはずです。そうすれば業務負担が劇的に改善されるでしょう。人件費の節約額は、会計検査院の運営経費や指摘金額を上回る経済効果になるでしょう。)

 

実際には、近隣の公的組織の実績を調べて、参考見積書と比較することになります。購入実績は過去3年以内で5件ほど調べられれば十分です。ただし契約金額が大きいものは、調査件数も多くしたいところです。

 

パソコンの予定価格作成例です。最初に「予定価格算出内訳書」を作成してから、その後で「予定価格調書」を作成します。

 

 

予定価格算出内訳書

 

定価 20万円 × 20セット=400万円(定価表とカタログを添付)

 

納入実績による値引率 400万円 × 0.6 = 240万円 (別紙として調査資料)

 

参考見積金額 230万円(別紙として参考見積書を添付)

 

上記を比較検討した結果、2,300,000円を採用する。

消費税相当額(10%)230,000円

予定価格 2,530,000円(消費税を含む)

 

予定価格調書はA4で作成し、押印を終えたら封筒に入れて密封し、開札時まで金庫に保管します。封筒も封印しておきます。

 

予定価格調書

件名 パソコン 20セット

予定価格 2,530,000円(消費税相当額を含む)

内訳

入札書比較価格(消費税相当額を含まず) 2,300,000円
消費税相当額(10%) 230,000円

作成者  支出負担行為担当官
◯◯省大臣官房 契約課長 ◯◯◯◯ 認印

 

大きな契約(数億円とかの高額な契約)になると、市場調査だけでも数ヶ月かかります。予定価格を作成するための参考資料も数百枚になります。予定価格は、正常な取引価格で設定します。相手を買いたたくように安すぎてもいけませんし、もちろん税金の無駄遣いを防ぐためにも高すぎてもダメです。余分な利益を削ぎ落した価格です。会社の利益を含んだ値引後の金額です。

 

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入札・開札

 

「入札」は、見積金額の書いてある入札書(紙の様式)を提出することです。「開札」は、提出された入札書を開封し、入札会場で読み上げることです。実際の入札・開札手順は次のとおりです。事前に郵送入札を認めているときは開札のみになります。(これは紙ベースの入札の解説です。電子入札は後半で触れます。)

 

入札を開始するときは、最初に入札参加資格の確認を行います。委任状、名刺、競争参加資格認定通知書の写しを提出してもらい、参加資格を確認してから始めます。参加資格があるかどうか、参加者に入札権限があるかどうかチェックします。もし、参加資格や入札権限がなかったときは、退室してもらいます。入札書を提出する前に退室させた方が安全です。

 

確認を終えたら、いよいよ入札開始です。

 

「それでは、第1回目の入札を行います。入札書を入札箱へ入れてください。」

 

入札参加者は、入札箱(木製の箱を用意しているところや、書類決裁箱を代用しているところなど様々です。)へ、封書で密封した入札書を入れます。

 

全員が入札を終えたことを確認した後、

 

「それでは、開封させて頂きます。」

 

と発言し、封書をはさみで切って開封します。はさみを入れる前に、「開封させて頂きます」と発言するのがマナーです。

 

注意したいのは、封筒の中身の入札書まで一緒に切らないよう、封筒の一片をトントンしてからハサミで開封します。中の入札書を取り出し、記載もれや印もれがないかじっくりと確認します。通常は、入札執行者と担当者の複数で確認します。

 

「それでは、入札金額を発表します。〇〇会社さん250万円、〇〇会社さん250万円・・・」

 

間違いのないよう、金額は2回続けて発表します。発表が終わったところで、予定価格をはさみで開封します。

 

「それでは当方で作成した予定価格調書を開封します。」

 

予定価格調書は、入札参加者から金額が見えないよう注意します。特に前方の座席配置は気をつけます。入札執行者と入札参加者の距離は2m以上開けた方が安全です。

 

入札金額と予定価格を比較し、予定価格以下であれば落札です。予定価格より高ければ、入札書の用紙を再度配布して再度入札を行います。再度入札は3回ほどが目安です。

 

落札した時の手順

 

全員の入札金額を発表した後に、落札結果を発表します。予定価格の範囲内であれば「落札」になります。落札のときは必ず、入札執行者と担当者の複数で確認してから発表します。ここは、慌てず、ゆっくりです。

 

「〇〇会社さん、入札金額〇〇円は、当方の予定価格の範囲内ですので落札とさせていただきます。」

 

「落札した〇〇会社様のみ、お残り頂き、契約手続きの打合せをお願いします。皆さん本日はお忙しいところ入札に参加して頂き、ありがとうございました。」

 

これで入札と開札は完了です。入札者が5社ほどで、1~2回の入札で落札なら、およそ20分程度で終わります。入札と開札は、とても簡単です。入札者が20社以上になったり、入札品目が大量にあるときは大変ですが、通常はすぐに終わります。

 

落札後は、落札内訳書の提出を依頼し、契約書の取り交わし手続に移ります。

 

開札手続きは、会社間のかけひきもあり、また私語は談合を疑われるため、無言の中で厳粛に行なわれます。会場内は、かなり緊張した雰囲気が漂います。雰囲気を和らげようとジョークなどは言わないようにします。会場内でのジョークは、官製談合の合言葉と疑われます。開札会場では無駄な発言は控えましょう。厳粛に、淡々と行うので早く終わります。

 

2021年頃からは電子入札が普及し、入札と開札がWEB上で行われることが多くなりました。ただ電子入札の導入メリットは、ほぼないでしょう。この解説でもわかると思いますが、入札と開札の手続きは、ほんのわずかです。契約手続き全体の中では、無視できるほど業務量は少ないです。それにもかかわらず、電子入札を導入した官公庁は、特定のIT会社へシステム利用料を払い続けなければなりません。膨大な税金の無駄使いが発生しています。電子入札で談合を防げるようなことも言われてますが、そんなことはありません。談合は、入札前に発生するものです。電子入札では談合は防げません。

 

むしろ電子入札は、スマホ片手に談合し放題な気がして心配です。紙ベースの入札と開札は、関係者が会場に集まり実施します。入札執行者、入札参加者が相互に牽制しあい不正を防止できます。ベテランになれば、表情だけで不正はわかるものです。顔が見えないWEB上での電子入札はかなり危険だと感じています。入札と開札の状況が目に見えないので、誰にも見つからずに不正ができてしまうような気がします。見えないブラックボックスが不正の温床になります。

 

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契約締結伺いの決裁

 

落札後に契約を締結することになります。落札時に契約が部分的に成立しています。契約書への記名押印によって契約が完全に成立します。契約書への押印の前には決裁が必須です。

 

契約締結伺いの決裁に必要な書類は、入札伺い決裁済書類、入札公告、予定価格調書、各社からの入札書、入札結果一覧表、落札内訳書、契約書の案文(押印前のもの)です。「落札した民間企業と契約書を取り交わして良いか」上層部(契約権限を持つ支出負担行為担当官など)までの決裁・承認を受けます。

 

契約締結伺いが決裁完了になった後、契約書を取り交わします。実際の取り交わしは、双方の決裁手続きが必要なので、落札決定日から1~2週間後です。通常、契約日は落札日とします。落札時に部分的に契約が成立し、契約書を両当事者が押印することによって完全に契約が確定します。契約日は、事前に相手方と打ち合わせし双方で確認しておきます。

 

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契約書の取り交わし

 

契約書本文、契約基準(契約の細目)、仕様書などを袋とじにします。原本を2通作成し、先に民間企業の方で押印してもらい、最後に官公庁側が押印します。押印を終えたら1部を民間企業へ渡します。押印済みの契約書を双方で保管し、契約書の取り交わしが完了します。

 

これらの全入札手続きの中で、一番手間のかかる大変な手続きは、入札・開札の前までです。仕様書と予定価格の作成が、一番大きな負担になります。作成する書類の数が多く、さらに待ち時間(入札公告期間など)があります。契約書の取り交わしが完了すれば、契約手続きは、ほぼ完了したといえます。

 

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納品検査・検収

 

契約どおりに、納入期限までに物品が納品されたら検収を行います。検収は、「検査収納」の略です。契約内容が履行されたことを確認することです。「検収」という表現が一般的です。

 

搬入から据え付け調整、動作確認までを契約書で義務付けておき、検収時に物品が正常に稼動するか、営業担当者立会いのもとに確認します。すべてOKなら検収が完了し、「給付の完了が確認できた」ことになります。検収が完了したことを書類として残すために、検査調書を作成します。

 

検収のときは、営業担当者の立ち合いが必須です。もし営業担当者が立ち会わないときは検収を中止します。官公庁側だけで検収を実施し、もし不具合が見つかっても、それを証明することができなくなってしまうからです。動作エラーが発生したときに、現場で見ていなければ、官公庁側の操作ミスが原因と疑われてしまいます。検収の動作確認は、必ず、営業担当者(あるいは技術者)に操作してもらいながら性能確認を行います。

 

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支出決議(代金支払)

 

検収を完了したら、請求書を提出してもらい、契約代金の支払い手続き(支出手続き)を行います。

 

支出手続きは、請求書、検査調書、納品書、契約書、落札内訳書、開札までの書類を全て添付し、支出決議書を表紙にして決裁します。決裁が完了したら、銀行へ代金を振り込みます。支払い手続きは、契約担当係と別の係が担当することが多いです。(内部牽制のため)

 

以上が一般競争入札の実際の手順です。

 

 

本記事の内容を初心者向けに簡単にまとめてあります。復習として読むと理解を深めることができます。

入札を簡単に知りたい!初心者向けに誰でもわかる入札の説明
官公庁の入札手続きを初心者向けにわかりやすく解説。一般競争入札と指名競争入札の違い、電子入札と紙ベース入札の方法、公平性と公正性を保つための注意点について詳しく説明します。
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コメント

  1. 匿名 より:

    分かりやすくご回答いただきまして、ありがとうございました。
    上層部をいかに納得させることができる理由を出せるかがポイントになりますね。
    しっかり検討してみたいと思います。

  2. 匿名 より:

    入札について、ご教授ください。
    「特定のメーカーを指定するときは明確な理由が必要です。」とあり、最もなことかと思いますが、以下の場合、明確な理由と言えるか迷っています。
    キャッシュレス決済を導入し、その端末は、特定の業者のみ使用できる機種となります。その機種を購入しましたが、来年度以降も引き続き使用していきたいと考えています。(契約は今年度末まで)
    そこで、入札の条件として、その機種が使用できることとしたいと考えています。
    ただ、そうすると、入札できる会社は、そのメーカー(キャッシュレス決済の運用も行っている会社)とその会社の協業会社(この機種のメーカーを主に取り扱っている別の決済代行会社)のみとなると考えられます。
    その機種の機能及びメーカーが提供するサービス(決済情報が随時確認できるなど)が優れており、他社より利便性が高いため、できれば継続して契約できたらと考えています。
    また、契約する会社が変わると現在使っている機種は使えなくなる可能性が高くなります。
    このようなことから、次の契約は、長期継続契約を考えており、契約金額から入札が必要となります。(複数年だと100万円を越えるため)
    なお、年間の見込額が100万円未満であり、単年度の随意契約も可能かと思いますが、一者随契とするにも上記の理由では弱いと考えられます。(この機種を取り扱っている会社を探し、2者以上で見積り合わせをすることができればいいのですが)
    何卒、アドバイスをいただけないでしょうか。
    よろしくお願いいたします。

    • 矢野雅彦 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      キャッシュレス決済の端末が、「特定の機種に限定される」理由が明確であれば、機種選定理由書を作成して、一般競争入札を実施することになるかと思います。

      この場合、他の機種にない性能(サービス)が、「貴組織に必要」という部分がポイントになります。次のように検討するのが良いと思います。

      〇 必要とする性能(サービス)について、ライバル会社など他メーカーの取り扱い店からヒアリングし、「他社では対応できない」ことを明確にしておく。

      〇 なぜ、その性能が必要になるのか、具体的に理由書へ明記しておく。必要だと判断する場合には、上層部(決裁者)も全員同意見でなければなりません。上司たちへも事前相談が必要です。もし上司のうち、誰かが「他社の製品でもいいんじゃないの?」と疑問を持つようなら機種選定できません。

      機種選定しても、対応できる会社が複数あり、一般競争入札できる状況なら問題ないです。実際に入札へ参加するかは関係なく、取り扱いできる会社が複数あることを電話などで確認しておきましょう。(入札した結果、1社入札になっても問題ありません。)

      入札できずに「競争性がない随意契約」とするときは、「他社が対応できない」という、客観的な資料まで準備する必要がありますが、入札できる状況であればそこまで必要ありません。

      なお、長期継続契約は、単年度予算の例外になりますので、(法律や規則などの)根拠が必要です。予算の種類など、予算担当者の判断も必要になります。

      以上です。

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