パソコンを購入する契約手続を実例で学ぶ、仕様書作成や入札手続き等

イギリスのロンドン塔 2015年 契約手続き
イギリスのロンドン塔 2015年

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契約手続きの流れと手順を実例で解説します。官公庁の契約手続きで一番多い購入契約の手続きです。仕様書の作成から入札や開札、契約書の取り交わしなどを簡単に説明します。パソコンを20台購入するケースで総額280万円の契約手続きの解説です。

契約手続の手順

 

物品を購入するときの、おおまかな契約手続きの流れは次のとおりです。

1  仕様決定
2  仕様書作成
3  入札伺作成
4  入札公告掲示
5  仕様説明会開催
6  市場調査
7  予定価格作成
8  入札(開札)
9  契約伺い作成
10 契約書の取り交わし
11 納品検査(検収)
12 支出決議(支払)

 

官公庁では、これだけの契約手続きが必要になります。手続きはすべて会計法令などの法律や規則で定められています。

 

仕様決定(しようけってい)

 

「仕様(しよう)」とは簡単に言うと「購入したい物の内容」という意味です。

 

官公庁の契約は、原則として特定の機種(メーカー)を選べません。税金を使うので、例えば「○○会社製」など特定のメーカーを指定するのは公平性の観点から問題になります。

 

公平性と公正性が国の契約手続きで基本となる考え方です。

 

具体的な検討は次のように行います。

最初に、いろいろなメーカーのカタログと定価表を取り寄せ、必要な性能を比較検討します。そして最低限必要な性能のみを条件として抽出します。カタログに掲載してある性能すべてを記載してしまうと必要のない性能まで含めてしまい、結果として特定の機種を指定することになります。競争性を確保するためには必要最小限の性能のみを必要条件として記載します。

 

品名 パソコン (昔の記事なのでスペックが低いです。)

本体 形状は、タワー型であること。

CPU ペンティアム 400MHZ以上
メモリー 64MB以上
ハードディスク 3GB以上
OS Windows95が動作すること。
24倍速以上のCD-ROMを搭載すること。3モード(1.44,1.25,760)フロッピー装置を搭載していること。

カラーモニター 17インチ以上
解像度 1024×768 Truecolor以上
ビデオメモリを6MB以上搭載していること。

 

これが「仕様決定」です。

特定のメーカーに偏らず、買おうとするパソコンの最少限の性能を必要条件として記載しなければなりません。性能は、誰が見てもわかる客観的な資料(カタログなど)を基に作成します。なるべく複数メーカーの機種が候補となるよう各メーカーの仕様を比較し最少限の性能とします。例えばCPUの処理スピードが200MHZと500MHZでは金額が倍くらい違うこともあります。

 

仕様書作成(しようしょさくせい)

 

仕様書は、仕様決定で決めた内容を入札に参加を希望する民間企業へ条件提示できるように、要求内容を書面としてまとめたものです。

 

パソコン購入の場合は仕様書に次の項目を記載します。

 

①パソコンの仕様(求める性能)
②納入期限
③納入場所
④納品検査の方法
⑤代金請求書の送付先
⑥パソコンの無償保証期間
⑦代金の支払方法、支払場所
⑧搬入設置時の遵守事項(注意事項)

 

通常、パソコンを購入するときは、搬入して設置した後にネットワークへの接続や附属ソフトのインストール、動作テストまで実施するように仕様書で明記します。複雑な機器の場合には使用者に対する操作説明と操作手順のマニュアル作成を義務付けます。

 

仕様書は、発注者側が必要とする内容を相手に求めるものなので、なるべくわかりやすい表現で記載します。言葉使いは普通の表現でかまいません。

 

「②の納入期限」は、例えば「納入期限は6ヶ月以内」などの設定で余裕がある場合はさほど気にする必要はありません。販売価格(見積金額)にも影響しません。しかし「納入期間は1週間以内」などの短期間の場合は注意が必要です。会社の倉庫に製品がなく在庫が不足しているときは要検討です。

 

メーカーから問屋や代理店を通しての販売では、メーカーからの出荷時期は週1回とか月に2回とか運搬時期(定期便)が設定されています。定期便では仕様書に記載してある「納入期限」には間に合わなくなります。そうなると特別に運搬しなければなりません。運搬費用(トラック費用、運搬作業員費用)が特別に必要になりますので、販売価格(見積金額)に影響する可能性があります。

 

次に「③の納入場所」です。

パソコンメーカー近くのビルへの納入なら、運搬費用は無料となることが多いのでそれほど難しくありません。建物の1階とか高くてもせいぜい5階くらいです。高い所でもエレベーターがあれば搬入は簡単ですぐに設置できます。

 

しかし極端な例ですが、納品場所が山岳地帯ならどうでしょう?

 

火山活動をモニタリングするために、山岳地帯の高所に設置してある山小屋へ納入する条件なら相当な人件費が必要になります。自動車は山の麓までしか入れません。そこからはパソコンを1台ずつ担いで山を登らなければなりません。多額の人件費が運搬費用として必要になります。

 

納入に要する費用は、運搬内容によって金額が2倍くらい変わってしまうこともあります。特に高層建物の階数や搬入場所近くにトラックを駐車できるかなどを実際に目で見て確認する必要があります。大きな物品のときは入口の大きさ、廊下で角を曲がれるか、ドアを通過できるかなども考慮する必要があります。

 

契約を締結する際は、仕様書で細かな約束毎を明記しておかないと、後々トラブルが生じてしまいます。「最初の想定と話が違うとか、言った、言わない」ともめてしまいます。

 

トラブル(紛争)を生じさせないためには、作業手順をイメージして可能なかぎり仕様書へ細かく記載します。

 

入札伺作成(にゅうさつ うかがい さくせい)

 

「入札(にゅうさつ)」とは、見積金額を書いた紙(入札書の様式)を提出することです。

 

官公庁側がパソコンを購入したいとき、仕様書によって条件提示します。民間企業側では、その条件に従って販売価格を見積もり、「この金額なら販売できる。」という見積金額を入札書に記載し提出します。

 

買う側(官公庁側)は少しでも安く買いたい。売る側(民間企業)は、少しでも高く販売し利益を確保したいのです。

 

これが入札のときの心理状態で、「かけひき」が必要です。

 

具体的な手続きを解説します。

 

まず、どのような入札をするか「伺い(うかがい)」書類を作成します。

 

官公庁の事務手続きは、何かを行うときには、必ず「伺い」が必要です。組織としての仕事ですから、担当係員、係長、課長補佐、課長、部長まで、つまり担当係員から契約権限を持つ役職の部長までの承認(決裁)手続が必要です。

 

「入札伺い」に必要な書類

①入札公告の案文
②仕様書
③入札書様式
④委任状様式
⑤入札心得(にゅうさつこころえ)の案文
⑥契約書(案)

 

これらの書類をクリップで留めて、ひとつのファイルにしてから原義書(稟議書)として決裁を受けます。

 

入札公告の案文

買う側(官公庁側)が入札についての条件を提示するための公告です。通常は、インターネットの公告専用サイトに掲示することが多く、その他に入札専用の掲示板に掲示したりします。内容としては、入札の簡単な内容と入札前の関係書類配布場所や説明場所、入札の実施日、入札に参加できる条件等を記載します。

 

仕様書

これは上述のとおりです。

 

入札書様式

入札書には、入札金額(見積金額)、入札年月日、入札者の住所、会社名、役職名、氏名、押印が必要です。あらかじめ様式として作成し入札前に仕様書と一緒に民間企業へ渡します。

 

委任状様式

入札は契約の権限を有する法人の代表者のみが行います。通常は、代表者(社長)から営業担当者への委任状を提出してもらい、営業担当者が入札することが多いです。

 

入札心得の案文

入札をする前の一般的注意事項です。入札金額は消費税抜きで記載するようにとか、入札書に印鑑を押してないと無効になるとか、金額を記載し忘れると無効になるとか、いわゆる入札についての注意事項を記載したものです。

 

契約書(案)

開札の結果落札したときに締結する契約書の案文です。契約内容を事前に承諾した上で入札することになります。案文は契約の相手方欄を空欄にしておき落札後に会社名などを記載します。

入札伺の決裁が完了した後に入札公告を掲示し、入札手続きを開始します。

 

入札公告掲示(にゅうさつこうこくけいじ)

 

入札公告の掲示場所は、WEBサイトと職場の掲示板が主に利用されます。また大規模な特定調達契約は官報に掲載します。新聞はあまり利用されません。

 

公告の内容は、入札事項(パソコン20台)、入札方法(総額なのか1台あたりの単価なのか)、参加資格、納入期限、納品場所、入札説明会の開催日時、入札が無効となる場合、契約書の取り交わしの有無などを記載します。

 

A4版の大きさで、掲示版へ画鋲とかセロテープで貼ります。

 

官報への掲載は、原稿を提出したり広告掲載費用が必要になるので、特定調達契約に該当する高額な契約の場合のみ掲載します。

 

仕様説明会開催(しようせつめいかいかいさい)

 

仕様説明会(入札説明会)は、入札公告を見て入札に参加する意思のある民間企業が参加します。

 

いつも取引している営業担当者が参加することもあれば、初めての営業担当者が参加することもあります。入札を一度も経験したことのない人に対しては説明が必須です。特に入札参加資格は、入札の無効に直接関係しますから十分に説明します。

 

入札を実施するときは、参加者の名刺と引き換えに、入札関係書類を配布します。なぜ名刺と交換するかと言うと、この後で行う予定価格の作成に関係してきます。また仕様書の記載ミスの訂正連絡にも必須です。入札を妨害しようとしている者を排除する(ひやかしなどを牽制する)意味もあります。

 

配布する書類は、仕様書、入札書様式、委任状様式、入札心得、契約書案です。説明内容は、仕様そのもの(パソコンの性能面)、入札書の記入方法、入札に参加する資格、当日持参するものなどを丁寧に説明します。

 

入札書の記入方法は簡単です。入札金額(見積金額)、社名、役職名、代表者名、押印です。

 

開札当日に持参するものは、印鑑、筆記用具、入札書、委任状、競争参加資格認定通知書の写しです。

 

市場調査(しじょうちょうさ)

 

市場調査とは、予定価格を作成するための資料を準備することです。

 

予定価格とは、官公庁側で何かの契約をする時に、あらかじめ見積もる金額で入札の基準価格となります。
パソコンの例では、そのパソコンが実際にどのくらいの金額で取り引きされているか調べることです。

 

入札に参加しそうな会社(仕様説明会で名刺もらっている。)から、納入実績表を提出してもらいます。納入実績表とは、パソコンの販売実績です。納品年月日、納品物品名、納品金額、その当時の定価(カタログなどにメーカー希望小売価格と書いてある標準価格)を一覧表にして提出してもらいます。
そして、その納品先へ官公庁側が購入実績を照会します。

 

「納入」とは、民間企業側で販売する(納入する)ときに使う言葉です。「購入」とは、官公庁側で買うときに使用する言葉です。あなたがパソコンを買ったときは「納入した。」とは言わず「購入した。」となります。言葉の違いに注意しましょう。

 

購入実績の照会は、納入実績表に記載されている金額(値引率)が正しいか確認するためのものです。稀に、消費税の有無等で金額を間違えることがあるので必ず必要になる調査です。

 

納入実績一覧表に記載されている納品場所へ電話して、FAX等で当時の契約書や見積書を送ってもらいます。納入場所の相手先を調べて電話で事前確認してから文書で正式に照会します。調査に1週間くらいかかることもあります。これらの調査資料は予定価格作成に必要な資料で必ず保存しておかなければなりません。

 

予定価格(よていかかく)作成

 

市場調査によって、実勢販売価格や値引率が判明したら予定価格を作成します。

 

予定価格は、官公庁側であらかじめ作成する「この価格なら購入できる」という購入価格の基準です。まず購入予算の範囲内であるかどうか、そして実際の取引価格を考慮して予定価格を設定します。パソコンなどの物品購入契約であれば、市場調査の中で一番安い値引率の有利なものを目安として作成します。

 

さらに直近の実勢価格を調べる意味でも、入札参加希望者から「参考見積書」を提出してもらいます。

 

そして一番有利な値引率を基にした実績額と参考見積金額を比較し、安い方を予定価格として設定します。

 

ここで、あまり深く考えすぎるとジレンマに陥ります。市場調査のデータの完全性で悩むのです。

 

日本全国のデータを調べることは物理的に不可能です。どこまでの範囲を市場調査として調べる必要があるか、ここが悩みどころです。

 

昔の会計検査院の調査官は、「日本全国の価格を調べてください」と平然と言ってましたが、予定価格を自分で作成した経験のない人の発言で現実的でありません。

 

実際には、近隣の公的組織の実績を調べて参考見積書と比較することになります。過去3年以内で5件ほど調べれば十分です。契約金額が大きいものは調査件数も多くした方が無難です。

 

パソコンの予定価格作成例

 

定価 20万円 × 20台=400万円 (定価表とカタログを添付)

 

納入実績による値引率 400万円×0.6=240万円 (別紙として調査資料)

 

参考見積金額 230万円 (別紙として最も安い参考見積書)

 

上記を比較検討の結果、2,300,000円を採用する。
消費税相当額(8%)184,000円
予定価格 2,484,000円

 

予定価格調書は封筒に入れて密封し、開札時まで金庫に保管します。

 

大きな契約になると市場調査も数ヶ月必要になり集めた資料だけでも数百枚になります。

 

入札(にゅうさつ)、開札(かいさつ)

 

「入札」は、簡単に言うと、見積金額(入札金額)の書いてある紙を提出してもらう(入札箱に入れる)ことです。

 

実際の入札(開札)手順は次のとおりです。事前に郵送入札を認めているときは開札のみになります。

 

最初に入札参加資格の確認を行います。委任状、名刺、競争参加資格認定通知書の写しを提出してもらい内容を確認します。参加資格があるかどうか、参加者に入札権限があるかどうかチェックします。

 

確認を終えたら入札開始です。

 

「それでは、第1回目の入札を行います。入札書を入札箱へ入れてください。」

 

入札参加者は、入札箱(木製の箱を用意しているところや書類決裁箱を代用しているところなど様々です。)へ封書で密封した入札書を入れます。

 

全員が入札を終えたことを確認した後、

「それでは、開封させて頂きます。」

と発言し入札書をはさみで切って開封します。はさみを入れる前に発言するのがマナーです。

 

封筒の中身の入札書を切らないよう、封筒の一片をトントンし、はさみで開封します。中の入札書を取り出し、記載もれや印もれがないかじっくりと確認します。通常は入札執行者と担当者の複数で確認します。

 

「それでは、入札金額を発表します。○○会社さん250万円、○○会社さん260万円…」

 

間違いのないよう2回読みで発表します。

 

発表が終わったところで予定価格をはさみで開封します。

 

「それでは当方で作成した予定価格調書を開封します。」

 

予定価格調書は入札金額が入札参加者に見えないよう注意します。

 

入札金額と予定価格を比較し、予定価格より安ければ「落札」です。予定価格より高ければ入札書の用紙を再度配布して再度入札を行います。再度入札は3回ほどが目安です。

 

落札(契約の成立)した時の手順

 

「○○会社さん、入札金額○○円は、当方の予定価格の範囲内ですので落札とします。」

 

「落札した○○会社様のみ、お残り頂き、この後の契約手続きの打合せをお願いします。本日はお忙しいところ入札に参加して頂き、ありがとうございました。」

 

これで入札(開札)は完了です。入札は企業間のかけひきもあり、また私語は談合を疑われるため、無言の中で厳粛に行なわれます。かなり緊張した雰囲気が漂います。

 

落札後は、落札者へ「落札内訳書」の提出を依頼し契約書の取り交わし手続に移ります。

 

契約伺い作成(けいやくうかがいさくせい)

 

契約伺い(原義書、稟議書)の決裁に必要な書類は、入札伺い決裁済み文書、入札公告、予定価格調書、各社からの入札書、入札結果一覧表、落札内訳書、契約書の案文(押印前のもの)です。落札した民間企業と契約書の取り交わしを正式に行って良いかどうか上層部(契約権限者の支出負担行為担当官)までの決裁を受けます。

 

契約伺いが決裁完了になった後、契約書の取り交わしを落札者と行います。実際の取り交わしは落札決定から2週間程度後になることが多いですが、契約日は落札日で処理します。(落札時に契約が部分的に成立し、契約書を両者が押印することによって完全に契約が成立します。)

 

契約日は事前に(落札したとき)相手方へ説明し確認しておきます。

 

契約書の取り交わし(けいやくしょのとりかわし)

 

契約書本文、契約基準(契約の細目)、仕様書などを一緒に袋とじにして原本を2通作成し、落札者(契約の相手企業)に先に押印してもらってから官公庁側で押印し、1部を落札者へ渡します。押印済みの契約書を双方で保管し契約書の取り交わしが完了します。

 

これらの一連の契約手続きで、一番手間(時間)のかかる大変な手続きは入札(開札)までです。仕様書と予定価格の作成が大きな負担で時間が費やされます。契約書の取り交わしが完了すれば契約手続きは、ほぼ完了です。

 

納品検査(のうひんけんさ)、検収(けんしゅう)

 

契約どおりに、物品(パソコン)が納品されたら、検収を行います。

 

搬入から据え付け調整までを契約書に記載してますので、納品検査は物品が正常に稼動するかどうかを契約の相手方立会いのもとに確認します。

 

すべてOKなら納品検査が完了し「給付の完了確認」となります。

 

検査が終了したことを書類として残すために検査調書を作成します。

 

支出発議(ししゅつはつぎ)

 

納品検査を終えたら、落札者(契約の相手方)から請求書を提出してもらい、請求書の内容を確認し支払い手続きを行います。

 

支出手続きは、請求書、検査調書、納品書、契約書、落札内訳書、開札までの書類を全て添付し決裁(支出決議)します。決裁が完了したら銀行へ代金を振り込みます。

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