オープンカウンター方式と一般競争入札の違い、メリットとデメリット

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イギリス ロンドン
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多くの官公庁でオープンカウンター方式による見積もり合わせ(公開見積り合わせ、公募型見積合わせ)が導入されています。発注情報を公開して誰もが見積競争に参加できるようになりました。一般競争入札との違いや、導入経緯などをわかりやすく解説します。

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オープンカウンター方式とは

 

多くの官公庁でオープンカウンター方式による見積もり合わせが実施されています。オープンカウンター方式による見積もり合わせは、いろいろな呼び方があります。公募型見積合わせ公開見積り合わせともいいます。

 

オープンカウンター方式とは、発注情報を公開し、見積もり合わせに参加を希望する者を募るものです。不特定多数の者が参加して見積もり合わせを実施するため、一般競争入札に近い制度です。

 

従来の見積もり合わせは、官公庁側の契約担当者があらかじめ3社ほどを選び、3社に対して見積書の提出依頼を行い契約の相手方を選ぶものです。官公庁側の契約担当者が、あらかじめ数社を選ぶため、なぜその会社を選んだのか説明が困難なことが多く、癒着などを疑われるリスクがありました。そこで見積もり合わせを行う会社を契約担当者が選ぶのではなく、自由に参加できるようにしたのがオープンカウンター方式です。一般競争入札と同じように、誰もが参加できます。

 

官公庁が契約の相手方を選ぶ契約方式は、一般競争入札が原則です。例外として指名競争入札と随意契約があります。そして随意契約の中に、事務簡素化を目的にした少額随意契約が認められています。この少額随意契約のときに見積もり合わせを実施します。2〜3社の見積書を比較して契約の相手方を選ぶ少額随意契約が法令で認められているのです。(予決令第99条、地方自治法施行令第167条の2)

 

オープンカウンター方式による見積もり合わせで締結する契約は随意契約です。発注情報を公開していますが、一般競争入札ではありません。法令で定められた一般競争入札手続きは行われていません。

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オープンカウンター方式による見積もり合わせが必要な理由

 

2021年現在、多くの官公庁で見積もり合わせを公開しています。

 

なぜオープンカウンター方式が、これほどまでに導入されるようになったのでしょうか?

 

オープンカウンター方式による見積もり合わせ(公募型見積合わせ、公開見積り合わせ)が広く導入されるようになった背景には、次の理由が考えられます。

 

オープンカウンター方式による見積もり合わせ導入理由

 

インターネットが普及しWEB上に簡単に公開できるようになったこと

 

会計検査院などが3社を選んだ理由をしつこく聞くこと

 

見積書を依頼する会社を探すのが大変なこと

 

WEB上に簡単に公開できるようになった

 

オープンカウンター方式が広まることになったのは、インターネットの普及が大きく影響しています。WEB上に発注情報を簡単に掲載できるようになったため一般公開が容易になりました。

 

インターネットが普及する前は、官公庁の玄関脇にある掲示板へ入札公告を掲載するしか方法がありませんでした。一般競争入札を簡単にした発注情報を公開できる場所がありませんでした。

 

3社を選んだ理由をしつこく聞くこと

 

従来の見積もり合わせでは、見積書を依頼する相手方を官公庁の契約担当者が決めてしまいます。あらかじめ3社ほどを選んでしまうので、公平性に配慮していたとしても、担当者が恣意的に選んでいると勘ぐられてしまいます。3社を選ぶ理由としては信頼できる相手方としか説明できません。

 

そもそも見積もり合わせによる少額随意契約が認められている趣旨は、事務簡素化のためです。法の趣旨からすれば、公平性よりも事務簡素化の方が優先されるのです。事務簡素化を目的に2社以上での見積もり合わせが認められているのです。法を理解していれば会社の数は問題視されないはずです。公平性を重視する一般競争入札とは違うのです。

 

ところが会計検査院による実地検査や外部からの検査などでは、会社の選び方が公平性に欠けると指摘されることが多かったのです。事務簡素化を目的にしているはずの見積もり合わせで、なぜ3社を選んだのか指摘されてしまうと答えようがないのです。

 

そもそも事務簡素化のためなので、3社を選んだ理由を聞かれても、事務簡素化のためですとしか答えようがありません。少額随意契約では3社を選ぶ基準が存在しないのです。あまりにしつこく聞くようになったので、3社を選ぶのではなく、自由に参加させる仕組みを作ることにしたのです。

 

つまり事務簡素化という法律の趣旨を理解していない指摘のために、オープンカウンター方式による見積もり合わせが導入されるようになりました。

 

本来は事務の簡素化を目的にしているので、3社を選んだ理由は不要のはずですが、法律を理解しない指摘のために仕方なく公開することになったのです。

 

一般公開して自由に参加できる状態で見積もり合わせを行えば、会社を選んでないので指摘を受けることもありません。そのためオープンカウンター方式による見積もり合わせが定着してきました。

 

見積書を依頼する会社を探すのが大変なこと

 

見積もり合わせを実施するときに、見積書を依頼する会社を探すのが、とても大変な場合があります。パソコンや家具などの一般的な市販品なら簡単に販売店を探せるのですが、特殊な製品や、特殊な役務契約になると、そもそも契約できる会社が1社しか見つからないことがあります。契約できる会社を探すのはとても大変です。電話する度に断られるのは、精神的にもきついです。

 

オープンカウンター方式であれば、発注情報が公開されるので、会社を探す負担がなくなります。これが唯一のメリットです。

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オープンカウンター方式と一般競争入札の違い

 

オープンカウンター方式と一般競争入札は、いずれも一般公開して、誰もが参加できるという点では共通しています。しかし次の点が違います。

 

契約の相手方を選ぶ契約方式

 

オープンカウンター方式は、入札ではなく少額随意契約です。オープンカウンター方式は、会計法令で定めている入札手続きは行いません。入札公告も掲載せず、入札公告期間も考慮しないなど入札手続きを省略しています。根拠法令が次のとおり違います。

 

オープンカウンター方式 予決令第99条、地方自治法施行令第167条の2

 

一般競争入札 会計法第29条の3、地方自治法第234条

 

契約の申し込み方法

 

契約の成立は、民法で定められています。契約の申込みに対して承諾することで契約が成立します。契約の申込み方法がそれぞれで異なっています。

 

オープンカウンター方式は見積書です。一般競争入札は入札書です。

 

契約の相手方を決定する方法

 

一般競争入札では、会計法令に基づいて契約の相手方を決定します。予定価格を上限価格として最安値の者が自動的に落札し契約の相手方に決定します。落札の判断や、再度入札などが法令で細かく定められているのが一般競争入札です。

 

一方、オープンカウンター方式は少額随意契約なので、契約の相手方を決定する方法が定められていません。契約の候補者として選ぶだけの場合もあります。一部の官公庁ではオープンカウンター方式で、契約の相手方を決定することもあります。しかしそうなると、一般競争入札との違いがわからず、事務簡素化にもならないなど、色々な矛盾が生じてしまいます。

 

まとめ オープンカウンター方式と一般競争入札の違い

 

オープンカウンター方式と一般競争入札の違いを簡単にまとめると次のとおりです。

オープンカウンター方式と一般競争入札の違う点

 

根拠法令と契約方式

 

契約の申し込み方法

 

契約の相手方を決定する方法

 

民間企業側から見ると、同じように見えると思います。しかし、やはり一般競争入札の手続きの方が、公平性と公正性を重視して法令で細かく手続きを定めています。契約担当者の恣意的な判断を排除しているのが一般競争入札です。

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オープンカウンター方式のメリットとデメリット

 

オープンカウンター方式のメリットは、見積書を依頼する会社を探す手間が省ける、ということだけです。それ意外のメリットはありません。導入した理由を考えるとわかりやすいですが、事務簡素化を目的とした少額随意契約を理解しない指摘のためだけに導入されている制度だからです。見積もり合わせのときに、なぜ3社を選んだのか、という意味のない指摘に対抗するためだけの制度です。

 

オープンカウンター方式のメリットを強いて挙げるとすれば、しつこく聞かれる、3社を選んだ理由を説明する必要がないということだけです。本来は、事務簡素化を目的にしているので、3社を選ぶ理由を聞く方がおかしいのです。昔の会計検査院などは法令を深く理解していたので、意味のないことを聞く人などいませんでした。規制改革や合理化などという言葉と共に、法律を理解してない制度改革が進んでしまったようです。

 

一方オープンカウンター方式のデメリットは無数にあります。デメリットだらけと表現した方が正確です。

 

オープンカウンター方式は手続きが大変で、事務簡素化を目的とした少額随意契約の趣旨から逸脱しています。手続きは一般競争入札とほとんど同じです。

 

まず仕様書を綿密に作らなくてはいけません。オープンカウンター方式は、不特定多数の会社が参加します。一般競争入札と同じように、詳細な仕様書を作成しなくてはなりません。契約手続きで一番大変なのは、仕様書と予定価格の作成です。この二つが一般競争入札と同じなので、事務簡素化にならないのです。

 

不特定多数の会社が参加するときは、仕様書を細かく作成しないと、クレームが出るリスクがあります。クレームがあれば契約手続きを中止しなくてはなりません。そのため仕様書の作成に時間がかかってしまうのです。

 

3社を選ぶだけの少額随意契約であれば、仕様書を簡単な形式で作ることができます。極端な言い方をすれば、信頼できる会社であれば仕様書がなくても見積もり合わせが可能です。信頼できる3社を選ぶので、クレームなどは一切ありませんし、こちらの意図する要望どおりに完璧に契約を履行してくれます。安心できる営業担当者と契約できるのです。

 

3社を選ぶだけの少額随意契約は、信頼できる確実な会社を選べるのです。ここを問題視してしまうと、そもそも事務簡素化を目的とした少額随意契約の存在意義がありません。

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公開見積り合わせを導入して初めてわかったこと

 

私が勤務する東京大学では、平成16年に国立大学が法人化されました。国家公務員の定員削減を目的に、国立大学が国の機関ではなくなりました。そのため従来の会計法令が全て適用されなくなり、学内規則として改めて制定することになりました。

 

国立大学の法人化をきっかけにして、東京大学では公開見積り合わせという制度を導入しました。実際に公開見積り合わせを導入してからの現場の感想です。

 

公開見積り合わせに該当すると、ほぼ一般競争入札と同じように面倒な手続きになります。入札公告期間が省略できるなど、一般競争入札よりも多少は気が楽ですが、それでも仕様書や予定価格の作成は大変です。

 

現場では、公開見積り合わせも、一般競争入札と同じように捉えています。可能な限り公開見積合せはしたくないのです。事務手続きが大変で労力がかかるので、やりたくないと誰もが感じているのが実情です。公開見積合せになると聞いた途端に、契約担当者は暗くなります。

 

おそらく法令を理解していない指摘がなければ、公開見積り合わせは導入しなかったでしょう。

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