分割契約で随意契約すると違法になるリスク、別契約と分割契約の違い

国立競技場 随意契約
国立競技場

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随意契約の根拠法令

 

分割して随意契約することが可能か、問題ないかの解説です。

 

官公庁の契約手続きは、会計法令等に基づいて行います。一定の契約金額以上(例えば、物品購入契約なら160万円など)の場合、競争契約(入札)となります。

 

入札対象となる契約について、契約内容を分割(数量を分けるなど)して、競争契約の対象金額以下で随意契約することが可能か解説します。

 

公的組織の契約手続きは、一般競争入札が原則です。

 

例外的な取り扱いとして、契約金額が少額な場合や競争参加企業が少数の場合に、随意契約や指名競争契約が認められています。

 

会計法

第二十九条の三

第一項
契約担当官等は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。

第三項
契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で第一項の競争に付する必要がない場合及び同項の競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、指名競争に付するものとする。

第四項
契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。

第五項(少額随意契約)
契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、第一項及び第三項の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約によることができる。

 

この会計法第二十九条の三第五項の「政令」は、予算決算及び会計令(省略して予決令 よけつれい)を指します。

 

少額随意契約は金額で判断

 

随意契約については、根拠法令の予決令第九十九条を確認します。

 

予算決算及び会計令(予決令)

第九十九条(部分的に抜粋)

会計法第二十九条の三第五項 の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。

二  予定価格が二百五十万円を超えない工事又は製造をさせるとき。

三  予定価格が百六十万円を超えない財産を買い入れるとき。

 

つまり、物品購入契約の例なら、上記の予決令第九十九条第一項第三号により160万円以下であれば随意契約が可能です。いわゆる「少額随意契約」の規定です。

 

それでは、ノートパソコン1台20万円の物品を20台購入する計画のとき、一般競争入札となるのでしょうか。それとも1台20万円なので、4台づつに分割して、5件の契約とすれば、1つの契約は80万円になるので、予決令99条第3号の少額随意契約が可能となるのでしょうか。

 

会計法令違法となる分割契約

 

契約実務担当者としては、手続きが簡単な随意契約の方が、仕事を効率的に進めることができると考えます。

 

しかし、正解は、一般競争入札を実施すべきです。

 

仮に、契約金額を160万円未満となるよう分割して(上記の例では総額400万円の契約を5つに分割して、80万、80万、80万、80万、80万の契約として契約書類を5件作成)とすると、ひとつの契約書類だけに着目すれば、少額随意契約となりますが、これは会計法令違反です。

 

会計検査院や外部からの監査、あるいは内部監査などで指摘を受けてしまいます。

 

指摘内容は、「一般競争入札を逃れるため、意図的に契約書類を分割し、特定の企業と随意契約を行った。業者との癒着も疑われ、適正な契約手続きとは認められない」となります。

 

不適切な会計処理と指摘されます。

 

もし、契約年月日や納品日の日付を、意図的に、事実と異なる日にずらしてしまうこと、つまり、書類の日付を操作して、対外的に説明ができる書類に変えてしまうこと、これは、かなり危険で甘い考えです。

 

虚偽の日付操作は、税金の不正使用になります。

 

特に、近年の国税専門官による消費税検査では、反面調査権を駆使して、物品を購入した官公庁側の書類だけでなく、物品を販売した会社側の売上台帳のデータと照合し、実際の契約日や納品日と書類の突号(チェック)を行う検査手法が多くなっています。

 

事実と異なる日付の書類を作成すれば、すぐにバレます。故意に書類を偽造したとなれば不正使用となります。

 

物品を販売した会社側で、ノートパソコンを20台まとめて納品した事実があるにもかかわらず、購入した官公庁側で契約書類を意図的に分割すれば、虚偽の書類を作成したと看做されてしまい、とても危険で不正な事務処理になってしまいます。

 

官公需の分割発注の推進とは

 

一方で、分割発注を推進する法律があります。これを読むと上記と矛盾しているのではないかと思いますが・・

 

官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(昭和四十一年六月三十日法律第九十七号)に基づいて、毎年、次のように閣議決定されています。

 

平成23年度中小企業者に関する国等の契約の方針(平成23年6月28日閣議決定)抜粋

 

中小企業者が受注し易い発注とする工夫・・分離・分割発注の推進

 

国等は、物件等の発注に当たっては、価格面、数量面、工程面等からみて分離・分割して発注することが経済合理性・公正性等に反しないかどうかを十分検討したうえで、可能な限り分離・分割して発注を行うよう努めるものとする。

 

この分離・分割発注の推進は、上記のノートパソコン400万円を分割して、書類を分けて契約手続きを行っても問題ないように思えてしまいますが、これは、大きな勘違いです、違法となってしまいます。

 

中小企業を保護する目的の分割発注とは、実際に分割して複数の(たくさんの)企業が契約できるよう配慮することを目的としています。400万円の契約を5件に分割しても、同じ企業との契約であれば適用できません。

 

5件の契約を、それぞれ違う企業と契約するなら問題ありませんが、同じ企業との契約は、中小企業の受注機会を確保しているとは認められません。

 

緊急性のある随意契約

 

それでは、ノートパソコン20台の契約について、上司から早く納品するよう命令され、緊急の必要による随意契約として、会計法第29条の3第4項の「緊急の必要により競争に付することができない場合」を適用させて随意契約できるでしょうか。

 

答えは、ノーです。 緊急性の随意契約は適用できません。

 

緊急性がある場合とは、人命に係わる場合です。2011年3月11日に発生した東日本大震災のような自然災害等で、救援物資の契約を行うときなどが「緊急性による随意契約」を適用するケースになります。

 

誰が考えても、すぐに契約しなければ、人命を救うことが出来ないケースに限定されます。

 

上司から急げと言われたというのは、全く理由になりません。

 

そもそも、国の契約は、計画的に進めなければなりません。物品管理法という法律を受けて次の規定があります。

 

物品管理法施行令(昭和三十一年十一月十日政令第三百三十九号)

第十一条

第1項

物品管理官は、物品の管理に関する計画を定める場合には、各省各庁の長等が物品の管理の目的の適正かつ円滑な達成に資するため物品の管理の実情を考慮して定めるところによらなければならない。

第2項
物品の管理に関する計画は、四半期ごとに定めるのを例とする。

 

日常的な業務の中では、上司の思いつきで物品をすぐに買うことはできず、四半期ごとに計画を立て、計画的に契約しなさいと法律に定められています。

 

分割契約が認められる稀な例

 

それでは、本当に分割契約はできないのでしょうか。

 

分割契約が認められるケースの例です。正確には分割契約ではなく別契約が認められるケースです。

 

(前提条件)

最終的にノートパソコン 単価20万円を20台購入するケースを想定

分割は、4台づつ5回に分けて契約

 

 

正当な分割理由が存在すること。

 

ある事業(研究)を実施するために、研究の進展に併せてノートパソコンの性能を検証し、その結果をフィードバックしながら検討し、進展に応じて仕様変更する必要があり、一度に契約することができない。

 

第1ステップ 4台購入(基礎データ処理)
研究テーマのスタート部分を処理するために、4台を相互にネットワーク化し、研究データの分散処理を行う、基礎データの収集、データ出力フォーマットの検証を行う。

 

第2ステップ 4台購入(発展データ処理)
第1ステップで処理、出力できる状態を確認しながらさらに研究を進展させるため、上位の性能を持つ仕様の検討を行い、ソフトの機能追加を行い契約する。

 

第3ステップ 4台購入(応用データ処理)

第2ステップのデータをさらに応用技術に結びつけるための応用ソフトを開発してデータ処理を行うため、第2ステップまでのデータを利用して、次のステップへ渡すためのソフト開発を実施する。パソコンの性能も、さらに上位機種を検討しつつ導入。

 

第4ステップ 4台購入(データ集計処理)
第3ステップまでのデータを集約するためのソフト開発を行うパソコンとして、第3ステップまでの研究進捗状況を見ながらパソコンの仕様を決定。

 

第5ステップ 4台購入(データ分析処理)
第4ステップまでの研究と併せて、データの最終分析を行うので、研究の進捗状況を検討しながら仕様を検討して購入。

 

架空の話ですが、これらの理由であれば、分けて購入する正当な理由となります。ただし、契約は、分割契約ではなく別契約という概念になります。

 

つまり、当初購入するときに全パソコンの仕様を決定できないこと、その理由が、研究(事業)の進捗状況に併せて内容(仕様)を検討する必要があることです。

 

実際には、データやソフトの互換性などから、結果的に20台全てのノートパソコンが同一仕様になることもあり得ますが、それは結果論であり、契約手続きを別契約としても正当な理由となります。もちろん、ほんとに、このような事実があることが前提です。

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