契約手続きのために見積書を取り寄せる方法です。電話やメールで見積書を依頼するときに、何をどのように伝えればよいのか具体例で解説します。初心者にとっては見積書を依頼するのも大変です。実際にどのように見積書を依頼するのかわかりやすく解説します。
官公庁が必要とする見積書とは
今回説明する見積書は、参考見積書ではありません。契約手続きに必要な見積書を取り寄せる方法です。
参考見積書とは、契約手続きに関係なく、単に金額を把握するためだけに取り寄せる見積書です。参考見積書の取り寄せ方は次の記事をご覧ください。

契約手続きに必要な見積書は、主に次のケースで必要になります。
◯ 競争入札に該当しない「少額な随意契約」を締結するとき
◯ 「競争性のない随意契約」を締結するとき
見積書を取り寄せる目的は、契約の相手方を探して随意契約を締結するためです。今回の解説では、見積書を比較して契約の相手方を探す、少額随意契約のときに行う「見積もり合わせ」を想定します。 オープンカウンター方式や公開見積合せのように一般公開するのではなく、3社程度の会社を探して見積書の提出を個別に依頼する場合です。
本来の「見積もり合わせ」とは
2021年現在は、公開方式による見積もり合わせが増えています。「オープンカウンター方式」や「公開見積り合わせ」などと呼び、官公庁側が必要とする仕様書を一般公開して、不特定多数の人から見積書を提出してもらいます。公開見積り合わせは、官公庁側が特定の民間企業を選んでいないため公平性には配慮されています。しかし一方で、一般競争入札のような法令に基づく手続きを経ていないこと、入札と同じ事務負担が発生していること、価格競争だけで契約の相手方を決めてしまうなどのデメリットがあります。
本来の「見積もり合わせ」は、信頼できる契約の相手方を3社ほど選んで見積書を取り寄せるものです。本来の目的は、事務負担をなくして人件費を節約すること、事業を効率的に進めること、そしてもうひとつ重要なことがあります。あまり知られていないのですが、見積もり合わせを正しく運用することで、公平な発注を可能にすることです。ここでいう公平という意味は、実質的な公平を意味しています。
一般競争入札のように、参加する機会を公平に確保するだけではなく、実際の受注を公平にできるのです。見積書を依頼する会社を選ぶ際に、受注額が偏らないように相手方を選ぶことができるのです。過去の取引実績を勘案しながら、特定の民間企業への発注額が偏らないように、バランス良く相手方を選ぶことができるのです。価格競争によって大企業だけが契約を独占するような状況を防止するのが、本来の見積もり合わせの趣旨でもあるのです。
つまり現在のように、価格競争一辺倒の偏った契約を防止することができるのです。価格競争では、資本力のある大手企業が独占して契約を取ってしまいます。特定の民間企業へ国民の税金が流れる不公平をなくすために、本来は見積合わせという制度があります。
インターネットが普及する前は、見積もり合わせも様々な中小企業が受注できるように公平に行われていたのです。価格競争しか考えていない現在の電子入札や公開見積もり合わせは、大手企業と中小企業の格差を広げてしまうだけです。公平に契約できる機会を与えているとはいえ、受注できなければ格差は広がる一方です。特定企業に偏ることなく、中小企業を含めてバランスよく発注することが官公庁の役割でもあるのです。国民の税金を使っているのですから当然のことです。
見積書を依頼するときの手順
「見積もり合わせ」を実施するために、見積書を依頼するときの手順は次のとおりです。
見積書の依頼手順
1.契約内容を仕様書として作成する
2.見積書を依頼する会社を探す
3.見積書の提出が可能か電話で確認する
4.見積書の依頼文を作成し送信する
5.契約するかどうか 結果を連絡する
では具体的に解説します。
契約内容を仕様書として作成する
複数社から見積書を取り寄せるときは、官公庁側が必要とする条件を明確にします。金額を積算する民間企業側にとってわかりやすいことが最重要です。わかりやすく、特定の会社に偏らないように作成します。特定のメーカー名などを指定するときは、各社が公平に扱えるものを選びます。仕入れ価格に大きな差がないことが重要です。
特定のメーカーを指定したり、特殊な技術を用いる内容のときは、仕様書を作成する前に電話で各社へ対応可能か確認します。
仕様書の作成方法は次の記事でまとめてあります。

完成した仕様書を添付して見積書の依頼文を送信することになります。
見積書を依頼する会社を探す
会社は次の順番で探します。探しながら電話で確認すると効率的です。3社見つかればOKです。
見積書の依頼先を探す順番
1.過去の取引先
2.入札参加資格者一覧(全省庁統一資格者名簿)
3.ネット情報
普段使っている会計システムなどには、取引先一覧を出力する機能があります。過去の取引先一覧や契約実績一覧から探します。
次に、入札参加資格一覧や全省庁統一資格名簿から探します。官公庁への参加資格を持っていれば安心して取引できる会社です。
それでも見つからなければ、ネットで探すことになります。ただ注意したいのは官公庁との契約実績のある会社の方が安全です。官公庁側は会計法令に基づいて公平に契約することを理解している会社を選びます。危ない会社は、正式に契約する前に動き出してしまうことがあります。正式に発注していないのに、既成事実として「すでに受注している」と言い張る会社が実際にあります。民間企業の営業担当者の中には、公平性とかは関係なく、早いもの勝ちという困った認識の人もいます。
見積書の提出が可能か電話で確認する
知り合いの営業担当者であれば、いきなりメールしても大丈夫ですが、通常はメールの前に電話で確認します。
見積書の提出が可能か電話で確認する例
「はじめまして、私、◯◯省◯◯課の◯◯と申します。」(相手方:お世話になっております)
「私どもの方でノートパソコンの購入を計画していまして、御社ではノートパソコンを取り扱ってますでしょうか。」
(いいえ、取り扱っていません との返答の場合には、丁重にお礼を言います。そうですか、すみませんでした、残念ですが、また別の機会に取引をお願いできればと思います。どうもありがとうございました。)
(はい、取り扱っています。との返答の場合)
「それでは見積書の提出を無料でお願いできますでしょうか。」
(はい、無料で提出できます。)
「今回は、見積もり合わせという方式で、御社の他にも何社か声をかけさせて頂きまして、最も安い見積書を提出して頂いた会社と契約したいと考えています。」
(わかりました、ぜひ、参加させてください。)
「では見積もり合わせの案内をさせて頂きますので、連絡方法(電子メールあるいはFAX、担当者のお名前)を教えてください。」
見積書の依頼文を作成し送信する
各社へ送る依頼文は、なるべく同じ時間帯に送ります。送る準備をすべて整えておいて一気に送るようにしましょう。依頼文を送る日が違うと公平な見積もり合わせになりません。
見積書の提出依頼文例
◯◯株式会社
◯◯営業部
◯◯◯◯様
いつもお世話になっております。
◯◯省◯◯課 会計係◯◯です。
私どもでは、別紙仕様書の物品の購入を計画しています。
今回は、御社の他にも数社、見積書の提出を依頼してます。提出頂いた見積書のうち、最も有利な金額を提示して頂いた方と契約を締結する予定です。
つきましては、ご多忙中恐縮ですが、令和 年 月 日(金)までに見積書の提出をお願いします。(注:メール添付あるいはFAXでの提出も可能です。)
なお、お手数ですが、受信確認のため本メールに返信(受信した旨の記載のみ)あるいは電話連絡頂けますと幸いです。
注:見積書の提出をメールまたはFAXでも可とする場合のみ、その旨を記載します。押印のある書面での提出を必要とする場合は、「郵送または持参でお願いします」と記載します。
以上のような依頼文に仕様書を添付して送ります。
見積書の提出期限は、依頼日から1週間以上の余裕を持って設定します。見積もり期間に余裕がないと金額が高くなります。
以上が、見積もり合わせを実施するときに見積書の提出を依頼する方法です。見積もり合わせも省略するような小さな契約のときは、信頼できる実績のある会社へ依頼することが多いです。1社のみへ依頼するときは口頭のみでお願いすることが多いです。
見積書を依頼するときの手順とチェックシート
見積書を依頼する手順です。コピーして印刷して使えます。
見積書の依頼手順
◯契約内容を仕様書として作成する
見積金額を積算できるようにわかりやすく作成します。特定のメーカーに偏らない、誰もが対応できる仕様書が理想です。
◯見積書を依頼する会社を探す
過去の取引先、入札参加資格者名簿から探します。見つからないときはネットから探しますが、官公庁と取引経験のある会社が安全です。
◯見積書の提出が可能か電話で確認する
初めての会社は、メールする前に電話で確認します。
◯見積書の依頼文を作成し送信する
3社へ依頼文を送信するときは、同じ時間帯に送ります。同一日でないと不公平になってしまいます。
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