随意契約は、競争性の有無で2つに別れます。競争性のある随意契約は、見積もり合わせを実施します。今回は競争性のない随意契約についての解説です。
代理店証明書に基づき随意契約するときは注意が必要です。代理店証明書は、競争性がないという根拠になりません。販売店が複数存在するのであれば、一般競争入札あるいは見積り合わせが必要です。
代理店証明書による随意契約
随意契約は、官公庁における契約方式の例外です。契約方式の原則は一般競争入札です。競争性のない随意契約を締結しようとするときは慎重な判断が必要です。
契約担当者が注意したい書類として代理店証明書があります。販売店証明書、特約店証明書、総代理店証明書などです。これらの代理店証明書は、競争性がないことの根拠にはなりません。
この記事では、説明をわかりやすくするために代理店証明書、販売店証明書、特約店証明書などを厳格に区別してません。実際の代理店契約は、仲介のみを行うものです。販売店契約は商品を買い取ってから売るなどの違いがあります。しかし官公庁と契約するときは、すべて契約の相手方として責任を負うので同じ扱いです。
最初に、競争性のない随意契約の根拠法令を確認します。
予算決算及び会計令
第百二条の四
三 契約の性質若しくは目的が競争を許さない場合において、随意契約によろうとするとき。
都道府県や市町村などの地方自治体は、地方自治法、地方自治法施行令で定めています。
地方自治法
第二百三十四条 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
地方自治法施行令
第百六十七条の二 地方自治法第二百三十四条第二項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
二 不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
代理店証明書は、メーカーが小売店に対して製品を正式に販売する会社であることを証明する書類です。製品の一般的な販売ルートは、メーカー → 卸問屋 → 小売店です。
正式な代理店は修理の際に迅速に対応できるなど、アフターサービスが優先的になるメリットがあります。しかし代理店という証明だけでは、他に販売店が存在しない、競争性がないという理由にはなりません。
代理店証明書と競争性の関係
官公庁の契約担当者は、国民の貴重な税金を使うことを常に意識し、競争の機会を十分に確保した手続きが必要です。複数の販売会社が存在するのであれば、一般競争入札あるいは見積り合わせが原則です。例えば、物品購入契約なら一定金額以上(国や都道府県は160万円以上、市町村は80万円以上)なら一般競争入札、それ以下なら見積もり合わせを実施します。
メーカーは、代理店証明書を様々な販売店へ発行します。なぜなら代理店や販売店、特約店を多く持つ方が、販路を広くできるわけです。自社製品の販売範囲が広がるのでメリットになるのです。
代理店証明書を根拠として随意契約を行うのではなく、例え手続きが大変でも、販売会社が複数存在するのであれば、一般競争入札や見積もり合わせを行うのが正しい判断です。
以下は極端な例ですが、代理店証明書を悪用した事件が過去にありました。
2008年8月21日、朝日新聞の朝刊で報道されました。
国立身体障害者リハビリテーションセンター発注の医療機器納入を巡る汚職事件でした。関東地区における唯一の代理店と偽の説明を行い随意契約していた事例です。
メーカーは、販売会社に依頼されて、代理店証明書を便宜上作成したとのことでした。実態は独占的な代理店ではありませんでした。
贈収賄事件を調べていくうちに、随意契約が問題視され、その根拠とした代理店証明が実態でないことが明らかになりました。契約担当者も販売店が一社しかないと誤解してしまった事例です。
総代理店証明書による随意契約
総代理店証明書も代理店証明書と同じで、他に販売店が存在しないという理由にはなりません。海外からの輸入品などは、総代理店として国内の特定会社を指定することが多いです。総代理店の下に多数の代理店や特約店などを設けるのが通常の販売形態です。
2020年1月現在、競争性のない随意契約が認められるのは、独占販売が法律で認められている特許製品や、著作権法で保護されているプログラム等に限られます。ただし官公庁がプログラム開発を委託したときは、その後のプログラム改修のときに一般競争入札が可能となるように、官公庁側へ著作権を帰属させます。
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