何を書けばいいの?「随意契約」に必要な「選定理由書」の実例

スポンサーリンク
随意契約
イギリス ロンドン
随意契約

官公庁の契約手続きで、「随意契約」を締結するときに必要な「理由書」の解説です。「少額随意契約」や「競争性のない随意契約」では、「選定理由」などの「随意契約理由書」が必要になります。わかりやすい書き方の解説です。

スポンサーリンク

随意契約の「種類」

 

官公庁の契約手続きは「一般競争入札」が原則です。例外として随意契約が認めれらています。そして、随意契約を大きく分けると、「競争性のある少額な随意契約(少額随意契約)」と「競争性のない随意契約」の2つに区分できます。

 

「少額随意契約」は、予算決算及び会計令(予決令)第九十九条の範囲内(例えば160万円以下の売買契約など)であれば、見積もり合わせ(複数の見積金額を比較して最安値と契約すること)によって契約締結が可能です。「事務簡素化」の観点と、「競争原理」を部分的に取り入れたものです。

 

少額随意契約は、「競争性がある」ことが前提です。随意契約の理由書としては、契約の相手方である会社を選ぶのではなく、特定の機種を選ぶ「機種選定理由書」が必要になることがあります。ただし、組織によっては省略しているところも多いです。競争性のない随意契約だけ「理由書」を作成している組織もあります。

 

予算決算及び会計令

第九十九条  (略)随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。

三  予定価格が百六十万円を超えない財産を買い入れるとき。

 

 

次に「競争性のない随意契約」は、予算決算及び会計令第百二条の四第三号に基づく契約です。契約を締結する際には「競争を許さない」と判断した理由書が必要です。

 

予算決算及び会計令

第百二条の四  各省各庁の長は、契約担当官等が指名競争に付し又は随意契約によろうとする場合においては、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

三  契約の性質若しくは目的が競争を許さない場合において、随意契約によろうとするとき。

 

スポンサーリンク

「随意契約理由書」とは

 

「随意契約理由書」は、会計法令で作成方法や様式が定められているわけではありません。様式は任意です。「競争を許さない」状況であることを、誰もが理解できるように記述します。また当然ながら事実どおりの内容でなければなりません。理由を証明する資料も必要です。

 

契約実務担当者から、

 

「随意契約の理由書を提出してください。」

 

こう言われても、(え、何、それ?)

 

怪訝な顔をする人がほとんどでしょう。

 

何しろ官公庁の中でも、契約実務担当者のみが必要とする書類ですから、官公庁に勤務する人でも、ほとんどの人は作成方法を知らないです。理解できなくて当然です。

スポンサーリンク

「随意契約理由書」の「種類」

 

では実際の「随意契約理由書」の書き方を具体例で説明します。

物品の購入契約を例とします。

 

随意契約理由書は、書類の呼び名も様々で、選定理由書、機種選定理由書、業者選定理由書、特命理由書など多数あります。組織や慣習により異なります。いずれも対外的な説明用資料です。

 

随意契約理由書は、大きく次の二つに区分されます。

1.機種選定理由書

2.業者選定理由書

 

 

ノートパソコンの購入契約を想定します。一般的なメーカーで販売店が多数存在する(競争性がある)場合です。

 

販売店が多数あるなら、随意契約ではなく、入札(競争契約)ではないかと思うかもしれません。しかし、予決令では少額随意契約(上記の予決令第九十九条)が認められています。

 

国の契約では、予定価格が160万円以内であれば「見積もり合わせ」による随意契約が可能です。160万円を超えれば随意契約ではなく、公告して入札(一般競争契約)になります。

 

少額随意契約は、機種を選定して、その後に「見積り合わせ」を実施し、最安値の会社と随意契約します。少額随意契約でも「機種選定理由書」が必要となることが多いです。

 

スポンサーリンク

「機種選定理由書」の実例と作成方法

 

宛名は「支出負担行為担当官」などの契約権限を持つ担当官宛です。官公庁では官職指定しているケースがほとんどです。

 

作成者は、3名以上の複数者による記名押印が望ましいです。組織によっては内部ルールで○名以上と決めていることもあります。

 

支出負担行為担当官
○○ ○○契約課長 殿

選定者 ○○ ○○ 印
○○ ○○ 印
○○ ○○ 印

機種選定理由書

1.目的
(購入目的を簡潔に書きます。)

当省○○課で業務に使用しているノートパソコンは、平成18年に購入したパソコンであり、すでに耐用年数を大幅に経過し、経年劣化による処理速度の低下、ハードディスクの不調など、業務に支障が生じることになったため、機種の更新を行うものである。

2.必要条件
(最低限必要な機能を検討して列挙します。この項目は選定の基準なので、カタログの数値を、そのまま並べて記載するのではなく、業務に必要な機能のみに絞り、3~5つほどの要件を記載します。)

① 日常業務で使用している過去の保存データ、アプリケーションが動作可能なWindows10Pro(64ビット)をOSに搭載すること。

② 効率的な業務を行うため、CPUは、Core i7、コア数4、動作周波数は2.9GHz以上であること。

③ メモリは8GB以上であること

④ HDD容量は1TB以上であること

⑤ 光学ドライブとしてDVD-RWを装備していること。

⑥ 有線LAN100Mbpsが接続可能なこと

⑦ 画面サイズは、17インチ以上であること。

 

3.選定理由
上記の必要条件に基づき、別紙のとおり比較検討した結果、次の機種が必要条件を満たしているので選定した。

選定機種

A社○○製  ○○型
B社○○製  ○○型

 

そして別紙に「性能比較表」を作成して添付します。

 

スポンサーリンク

「性能比較表」の記載例

 

比較表は、表形式で具体的な数値を明記し、判定(○×や合否)を記載します。

 

左欄に必要とする性能を縦に列挙し、3~5くらいの機種(複数メーカーが望ましい。)を並べ、必要とする性能を満たしているか、カタログなどから数値を転記し確認します。

 

使用したカタログデータは、該当箇所に付箋やマーカーします。必ず契約書類と一緒に保存することが必要です。(これを怠ると、実際は一生懸命に機種選定を検討したのに、後日会計検査などで「検討不十分」と指摘され、その苦労が報われない悲しい事態になります。)

 

比較表の例として CPU動作周波数の欄

周波数は2.9GHz以上であること A社 2.9GHz 合格、 B社 3.4GHz 合格、C社 2.0GHz 不合格

 

必要とする条件(性能)について、全ての項目を満たしている機種を選定します。比較対象は、3から5つ程度で十分です。(多い方が良いですが3つ以上でOKです。2つだと検討不十分となる恐れがあります。)これらの性能比較は、インターネット上でも簡単にできるので、その部分を印刷(ハードコピーなど)して参考資料とします。

 

インターネットの検索サイトで「ノートパソコン 性能比較」などのキーワードで調べると効率的です。比較データを基にして、市場で取引されているものを2~3選定します。

 

以上が「機種選定理由書」の書き方です。

 

通常、事務部門で使用する業務用のパソコンであれば、性能を満たすものは多数あります。1機種に限定せず、性能を比較検討し、複数機種に絞り込むことになります。

 

「機種選定理由書」は、買う側(発注者側)の欲しい機能(仕様)を満たしていれば、複数の機種を選定する場合もありますし、場合によっては機種がひとつに絞られることもあります。

 

スポンサーリンク

必要条件は「最低限」とする

 

特に注意したい点は、機種を1つに絞り込むときは「競争性」が弱くなるところです。そのため必要条件を設定した理由(根拠などの説明)を具体的に備考欄などに付記しておくことが重要です。原則として必要条件は最低限とします。

 

必要条件を厳しく設定し過ぎて、「競争性」が弱くなると、後日「特定メーカーに有利な資料を恣意的に作成した」と疑われ問題となる可能性があります。逆に必要条件を緩やかに設定し、複数メーカーの機種を選定できれば、競争性が確保できるので望ましい機種選定になります。また、複数の機種選定を行うときは、価格差の少ないものを選定します。

 

複数の機種を選定したときや、販売店が複数あるときは、機種選定を終えた後に契約実務担当者によって、「入札」や「見積もり合わせ」が実施され契約の相手方が決定します。

 

スポンサーリンク

「業者選定理由書」とは

 

複数メーカーの機種を選定した場合は、販売店も複数存在し、販売会社が1社に限定されることはありません。「業者選定理由書」は不要です。

 

必要条件(性能)を満たす機種がひとつしか存在せず、かつ、購入できる販売店も1社しか存在しない場合は、「競争性のない随意契約」として「業者選定理由書」を作成する必要があります。(通常、機種選定理由書は使用する部署の人たちが作成しますが、業者選定理由書は契約実務を担当する部署が作成します。)

 

スポンサーリンク

「業者選定理由書」が必要になる典型例

特許権を占有したメーカー(あるいは販売会社)が、独占的に1社で販売する場合。(特許権の取得や専用実施権などを確認する資料が別途必要です。)

 

精密な電子機器等で、製造メーカーの技術者以外にアフターサービス(修理や保守)できる者が存在せず、業務上、早急に修理を行わなければ大きな支障が生ずる「修理契約」の場合。

 

つまり「競争性のない随意契約」は、知的財産権と技術力、この二つが理由となるケースがほとんどです。

 

知的財産権の場合は、客観的に確認できる特許権の資料などを提出してもらいます。しかし技術力に関しては疑義が生じる場合があるので注意が必要です。

 

例えばメーカーの会社から「修理できる技術を持っている会社はうちしかありません。」と言われても、契約実務担当者は日本中の業界の情報を持っているわけではありません。それが真実なのかわかりません。多数ある代理店を経由してメーカーが修理することも一般的です。

 

契約を締結した後に、別の会社でも修理できることが判明すれば、「業者選定理由書の検討が不十分」だったことになり、後日外部の検査等で指摘を受けてしまいます。それなら最初から公告を掲載して「競争入札」方式で契約する方が、適正な契約手続きになります。

 

公開入札を実施し、結果的に「1社入札」であっても問題ありません。

 

スポンサーリンク

「機種選定」と「業者選定」をまとめた「随意契約理由書」

 

「機種選定理由書」と「業者選定理由書」を分けずに、ひとつの「選定理由書」として作成することもあります。

 

特殊な機器で、製造メーカーが1社しか存在せず、そのメーカーは代理店制度を設けておらず、直接販売しているケースです。修理などのアフターサービスが、他社では不可能な場合です。

 

この場合は、メーカーからの説明を十分に聞き、過去の契約実績を調べます。他の官公庁でも「競争性がない」と判断して随意契約を締結しているか「購入実績の照会」を行います。本当に1社で独占して契約していることを確認した上で、「随意契約理由書」を作成します。

 

典型例として、有効な特許権(20年間)を有している精密機器の場合です。

 

選定理由書

1.目的
(購入する目的、その機器を必要とする理由を簡単に書く)

2.選定理由(比較検討の対象がないので、そのまま選定理由となる。)

○○業務を行うためには、○○の解析が必須である。その解析機器は、○○メーカーが独自に開発した特許権(別添特許資料参照)を用いた○○しか存在せず、○○メーカーは、他の代理店や販売店を経由せずに直接販売のみを行っている。よって、○○会社を契約の相手方として選定する。

 

以上が「選定理由書」の書き方です。


本サイトの「電子書籍」販売中!


「見積書って、どうやって依頼するの?」

「予定価格の作り方が、全然わからない!」

「どうやったら仕事が覚えられるのだろう?」


初めて担当する仕事は、わからないことばかりです。


例えば、新人のときは、見積書を取り寄せるだけでも、大変な仕事です。何しろ、中学や高校では何も教えてくれませんでした。


上司から「見積書を取り寄せてください。」と指示されても、初めて経験することであれば、どのようにすればよいか、全くわかりません。
会計法令では「見積書が必要」と定められていても、では実際に、どのように手続きを進めれば良いかわからないのです。電子メールで依頼するのか、電話で依頼するのか、依頼文の内容はどう書けば良いのかなど、具体的なことがわからないのです。


本書籍は、これらの実務上の疑問を解決するための書籍です。「実務経験者が実務担当者向け」に、わかりやすく具体的に解説しています。40年間の実務経験を集約し、実例を用いながら解説しました。実際の書類作りのノウハウを、すぐに学ぶことができます。ノウハウを学ぶことで、仕事を早く理解できるようになり、わからない仕事が少なくなります。


官公庁(役所)で働く人や、官公庁向け営業担当者に役立つ書籍です。


誰でも、初めての仕事は不安なものです。「経験がなく」知識が不足するため不安になります。知識として「書類の作り方」を知っていれば、不安になりませんし、ミスもしません。経験に基づく知識は学ぶことができます。書類作りをマスターすれば、仕事に追われることがなくなり、余裕が生まれてきます。そして毎日が楽しくなってきます。さらに同僚や上司からも信頼され、友人まで増えてきます。


本書籍は、官公庁の会計実務について、いろいろな視点から解説しています。わずか数分のスキマ時間だけで、しっかりと学ぶことができます。 なお紙の書籍は、印刷経費が高くなってしまうので、販売していません。多くの方へ、安くお届けしたいので、電子書籍のみです。


「わからない!」そう思ったときが学ぶチャンスです。疑問などは、ひとつひとつ解決しましょう!迷っている時間さえ、もったいないです。さあ、すぐに始めましょう!


電子書籍のくわしい内容(目次など)については、こちらに記載してあります。本サイトの「電子書籍」



誰も教えてくれない官公庁会計実務1,250円


官公庁会計実務の基礎用語 980円


スポンサーリンク
誰も教えてくれない官公庁会計実務

コメント

  1. 新人 より:

    役務(随意契約)でポケットwifiの契約(4台分・3年契約)を担当することになりました。
    また、料金携帯等が複雑なことから、上司の勧めにより起案で契約手続きをすることになりました。
    しかしながら、私の役所では、ポケットwifiを契約した前例がなく困っています。
    そこで、下記の4点についてご存知でしたらご教示いただけますと幸いです。

    ■1つ目
    上司からは、次のように手続きを行えば問題ないと指示を受けましたが、大丈夫でしょうか。
    ※不足する資料や手続き等ありましたらご指摘ください

    ①「仕様書」「見積書のコピー(2社以上)」を決裁者に提出
    ②「ポケットwifiの契約」を起案する。
    ※添付資料に「仕様書(決裁済み)」「見積書のコピー(2社以上)」「Webフォームでの申込記載例(案)」
    ③起案が承認されたらWebフォームで申込し、契約を結ぶ。(※契約決議書の作成は不要)
    ④「ポケットwifi」「納品書」「見積書(原紙)」「請求書」を郵送で受け取る。
    ⑤検収担当者に「ポケットwifi」「納品書」「見積書(原紙)」「請求書」を提出。
    ⑥毎月請求書が来るたびに支出依頼書を作成して支払い。

    ■2つ目
    起案で「役務・随意契約」の承認を受けると「契約決議書の作成は不要」と教わったのですが、
    この根拠となる法令等をご存知でしたら教えていただきたいです。

    ■3つ目
    契約相手が、契約書でなくwebフォームでのみ申込を受け付けている場合、
    webで申し込みをしても問題はないなのでしょうか。

    ■4つ目
    申込時、次の内容で記載するのは法令上問題ないのでしょうか。
    法人名・・・機関名
    契約者・・・所属長(部長)
    契約担当者・・・自分(職員)

    • 矢野 雅彦矢野雅彦 より:

      コメントありがとうございます、管理人です。

      ■1つ目 手続きは問題ありません。

      ■2つ目 契約の承認については、契約締結権限を持っている人(支出負担行為担当官など)が組織により異なるので一概に言えません。しかし、通常、契約締結してよいかどうかの決裁(承認)は一度でOKです。起案で一度承認受ければ問題ないと思います。

      ■3つ目 問題ありません。webフォームのハードコピーはプリントしておくことが必要です。

      ■4つ目 契約締結権限は、通常、組織の長です。組織内の規則で契約者が部長と定められていれば問題ありません。ポイントは「契約者」が契約権限を正当に持っているか(規則が定められているか)です。

  2. 新人 より:

    ※管理人様
    ご回答ありがとうございます。
    所属している組織で契約権限を正当に持っているのは部長でした。

    部長以外の職員(契約権限を正当に持っていない)を契約者にしたい場合は
    起案にその旨を申し添えする必要があるということでした。

タイトルとURLをコピーしました