相見積(合見積)が違法になる?相見積と見積もり合わせの違い

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随意契約
2020年9月 忍野八海
この記事は約10分で読めます。

相見積と見積もり合わせについての解説です。両方とも金額を比較するために複数の見積書を揃えることです。しかし見積書を取り寄せる方法を間違えると談合と同じになってしまいます。複数の見積書を比較するときは、「見積もり合わせ」が正しい表現です。

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違和感のあるCM、相見積に参加?

 

2020年11月、テレビ で不思議なCMがありました。ある会社が、相見積に参加させてくださいと宣伝していたのです。官公庁で契約実務を長い間経験してきた立場からすると、かなり違和感を感じました。そこで相見積について、あらためて解説することにしました。

 

相見積(あいみつ)は、合見積ともいいます。複数の見積書を取ることです。

 

官公庁の契約手続きでは、相見積に参加させてくださいという表現は、違法な談合に参加させてくださいと聞こえる場合があるのです。「私の会社は法律違反だって平気です、談合は必要悪ですから」とアピールしているようなものです。

 

つまり、相見積に参加させてください、というテレビCMは、かなり痛い CM なわけです。おそらく営業の人たちが、相見積の意味を正しく理解してないことが原因だと思いますが。

 

なお、この解説の相見積は、官公庁の契約に限定したことです。民間企業同士の取り引きであれば、相見積という表現で問題ありません。しかし国民の税金を使う官公庁では、官製談合と見做され法律に違反する行為です。「談合は必要悪」だとしても認められないものです。官公庁の契約担当者が談合を行えば逮捕されてしまいます。契約担当者として一番注意しなくてはいけない行為です。

 

相見積は、複数の見積書を揃えることだけを意味します。そのため見積書の取り寄せ方法を間違えると談合になってしまうことがあるのです。1990年以前は、相見積というと官製談合を意味してました。正しい表現は、相見積ではなく、見積もり合わせ(みつもりあわせ)です。この違いは重要なので、この後わかりやすく解説します。昔は厳格に使い分けていました。

 

2020年11月現在は、相見積と見積もり合わせが、ごっちゃになって、ほぼ同じ意味で使われています。そのためテレビCMで、官製談合を匂わすような痛い広告が放送されているのかもしれません。法律に違反しない正しい表現は、見積もり合わせに参加させてくださいです。

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そもそも相見積とは

 

最初に、相見積、合見積、それぞれの文字が持つ意味を確認します。

相・・・仲間、ぐる

合・・・揃える、くっつける、同じ

 

つまり相見積や合見積は、仲間うちで揃えることを意味することがあるのです。つまり見積書を誰が取り寄せるかなのです。

 

例えば官公庁が、30万円のノートパソコンを購入するとしましょう。少額随意契約の範囲内なので、見積書を複数取り寄せて比較し契約の相手方を選びます。

 

官公庁側の契約担当者が、3社へ連絡して見積書を取り寄せます。会計法令(予決令99-6)では 2 社以上と定められているので、 2 社でも問題ありません。しかし会計検査などの際に注意を受けます。 3 社であれば一般的なので問題ありません。

 

3 社の見積書を取り寄せ、その中の最安値の会社と随意契約を締結するのが正しい手続きです。

 

ところが、3社の見積書を取り寄せる方法が、相見積と見積もり合わせで異なるのです。ここが大きな違いです。

 

相見積の場合は、官公庁側の契約担当者が契約の相手方を決定し、その相手方へ依頼して他社の見積書を取り寄せるのです。見積書を比較する前に契約の相手方を決定しているのです。多くの場合は、営業担当者が気を利かして他社の見積書を準備して提出することが多いです。

 

例えば、契約の相手方がA社と仮定しましょう。最初に取り寄せたA社の見積書が 3 割引きの 21 万円だったとします。契約担当者は、これなら安いので問題ないと判断します。A社に対して、 21 万円で正式発注することを伝えます。他社の見積書を取り寄せる前に、A社を契約の相手方として選定してしまうのです。そして他社の見積書を相見積として提出するよう、A社へ依頼するのです。

 

相見積を依頼されたA社は、自社の子会社や知り合いの会社へ、見積書の提出を依頼します。当然のことながらA社の 21 万円よりも高い金額の見積書を提出してもらいます。3 社のうち、A社が一番安いことを証明するための相見積だからです。B社もC社も、A社より高い金額の相見積になります。

 

ときには、他社の見積書の様式だけを持っていて、21 万円よりも高い見積書をA社が作成してしまうこともあります。あらかじめ他社の社長印が押してある見積書を持っていることは珍しくありません。お互いに信頼している会社同士であれば、相互に白紙委任しています。

 

つまりA社を通して、価格を調整したB社やC社の高い見積書が官公庁側へ提出されるわけです。こうなるとA社が、B社、C社と談合したのと同じ構図です。

 

官公庁側としては、見積書が 3 社あれば問題ありません。誰が見積書を取り寄せたか、誰が見積書を作成したかは気にしません。3社の正式な見積書があれば、会計法令に合致しているから書類上は問題ないのです。

 

このように契約の相手方へ依頼して、他社の見積書を取り寄せる相見積は違法です。価格調整している可能性が高く、ほぼ談合と同じになるからです。公正取引委員会も、競争入札だけでなく、随意契約でも談合になることを次のように公表しています。

 

参考 「公正取引委員会 入札談舎等関与行為防止法について QA」

 

「入札.競り売りその他競争により相手方を選定する万法」には.どのような契約方法が含まれるのですか。

 

「入札,競り売りその他競争により相手方を選定する方法」には. 一般競争入札及び指名競争入札のほか,随意契約のうち,複数の事業者を指名して見積を徴収し.当該見積りで示された金額だけを比較して契約先を決定する形態のもの(指名見積り合わせ)が含まれます。このような形態の随意契約は, 実質的に競争入札と変わるところがなく,公正取引委員会においても従来から指名見積り合わせに係る事件を入札談合事件の一類型として扱っています。

 

入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(平成十四年七月三十一日法律第百一号)

第二条
4 この法律において「入札談合等」とは、国、地方公共団体又は特定法人(以下「国等」という。)が入札、競り売りその他競争により相手方を選定する方法(以下「入札等」という。)により行う売買、貸借、請負その他の契約の締結に関し、当該入札に参加しようとする事業者が他の事業者と共同して落札すべき者若しくは落札すべき価格を決定し、又は事業者団体が当該入札に参加しようとする事業者に当該行為を行わせること等により、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第三条又は第八条第一号の規定に違反する行為をいう。

 

つまり相見積は、見積書を比較して相手方を選ぶのではなく、価格調整した他社の見積書を揃えることを意味し、談合になることがあるのです。

 

なぜ、このようなことが起こるかと言うと、誰が見積書を取り寄せたかは、当事者以外わからないからです。契約担当者と営業担当者にしかわかりません。

 

さらにわかりやすく解説した記事はこちらです。両方を読むと理解が深まります。

相見積(合見積)と見積もり合わせの違いとは、相見積は危険!
少額随意契約では見積書を比較し相手方を選びます。見積書を比較するときに、相見積と見積もり合わせという表現を使います。同じ意味で使われることが多いですが、官公庁の契約手続きでは、相見積は談合を意味することがあります。

 

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正しい見積もり合わせとは

 

相見積という表現は、談合と同じ違法な手続きが含まれます。複数社の見積書を比較する前に、契約の相手方を決定してしまうことがあるのです。

 

正しい契約手続きは、見積もり合わせ(みつもりあわせ)です。見積り合わせ、見積合せと表記することもあります。送り仮名がややこしいです。

 

見積もり合わせは、価格競争を実施するために、契約担当者が見積書を直接取り寄せます。公平性に配慮しながら 3 社へ見積書の提出を依頼します。依頼するときには官公庁側が求める契約内容を提示するための仕様書を添付します。仕様書には、依頼を受けた会社側が見積金額を積算できる内容が網羅されています。仕様書を提示して見積依頼しないと、条件があいまいになり正確な見積金額が算出できません。

 

見積もり合わせは、官公庁側の契約担当者が、直接、各社から見積書を取り寄せます。各社の見積書が集まった段階で最安値の見積金額を提示した会社を契約の相手方として選び、正式に契約を締結します。

 

通常、契約の相手方に選定された会社の見積書には合格と表示し、他社の見積書には不合格と表示します。合格と不合格の表示は官公庁内部での処理です。そして不合格になった会社に対しては、他社の方が安かったこと、今回は契約できなかったことを伝えます。文書で通知することもありますし、メールや電話で伝えることもあります。

 

官公庁の契約手続きでは、相見積という表現を使うと、違法な談合を意味してしまいます。見積もり合わせが正しい表現です。

 

官公庁との契約を長く経験しているベテラン営業担当者になると、私の方で、相見積を用意できますので契約をお願いします、とアピールしてくることもあります。WEBサイトの中で、当店は官公庁様向けに相見積を準備できますと宣伝している会社さえあります。

 

経験者しかわからないことですが、契約担当者にとって複数の会社から見積書を取り寄せるのは、わりと大変なのです。そのため違法な相見積に頼ってしまうことがあるのです。

 

違法な相見積を防ぐためには、契約金額の小さいものまで相見積を必要とする規則を変更するしかありません。本来、少額随意契約は事務簡素化を目的にしています。事務負担が大きくなる規則自体が問題なのです。組織の予算や契約担当者の人員配置に応じて、正しい見積もり合わせができるよう、見積り合わせを省略する基準額の設定が必要です。

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もし相見積を受け取ってしまったら

 

私自身も経験がありますが、気が利いたベテラン営業担当者は、官公庁側が依頼しなくても、見積書と一緒に他社の相見積を提出してきます。価格調整を行ったと思われる見積書です。

 

もし他社の相見積を含めた3社の見積書を受け取ったときは、次のように対応することになります。

 

他社の相見積を含む 3 社分の見積書はそのまま受理します。危ない書類だからと返してしまうと角が立ちますし、融通の利かないヤツ、と業界内で変な噂が流れます。ただし、この時に次のように正式契約を待つよう笑顔で伝えます。絶対に談合を見つけたような険しい表情はやめましょう。

 

「他の製品や、予算状況などを検討したいので、少し契約を待ってください。正式契約できそうなら後日連絡します。現時点では保留でお願いします。」

 

そして提出された3社とは全然関係ない会社を探して、直接、見積書の提出を依頼します。(この段階で正式な見積もり合わせに変わります。)

 

もし、正式に見積もり合わせを依頼した会社の方が安ければ、相見積を提出した会社に対して契約を断ることを伝えるのです。

 

「すみません、今回は、契約を見送ることになりました。他の会社で〇〇円で契約することにしました。また次回よろしくお願いします。」

 

このときに、「いや待ってください。もっと安い金額で契約できます。」と申し入れがあっても、受け入れてはいけません。もし受け入れてしまえば、官製談合になってしまいます。「申し訳ありません、今回は他社と契約しますので残念ながら無理です。」と断りましょう。

 

見積書を取り寄せるときは、最安値の会社と契約することを事前に伝えておけば、このようなトラブルになることはありません。

 

あるいは、どうしても再度見積書を提出したいと強い要望があり、まだ正式契約していない状況であれば、見積もり合わせを再度行うことも可能です。ただ癒着を疑われるリスクがあるので可能な限り避けましょう。仕方なく行う場合には、再度見積もり合わせを行うので◯◯円より安い金額で提出して欲しいと各社へ公平に連絡します。そして最安値の会社と契約することも伝えておきます。

 

つまり違法な相見積に対して、新たに見積書を加えることで、正しい見積もり合わせへ変えるのです。結果的に見積書が4社になっても問題ありません。見積もり合わせの会社数は多い方が良いわけです。

 

官公庁で契約実務を担当するときは、相見積と見積もり合わせの違いを正しく理解しましょう。相見積は違法な場合があるので、昔は絶対に使いませんでした。2019年現在は、会計検査院の調査官も、相見積を取ってください、と意味不明な指摘をします。

 

どうやら相見積は、大昔(1980年以前)に建設業界から広まったようです。工事代金の内訳が曖昧なことが多いため、下請け会社から相見積を提出させて、顧客へ金額の妥当性をアピールすることが多かったようです。

コメント

  1. 匿名希望 より:

    いつも参考にさせていただいております。
    文章の中の「昔は」という文言が少し気になりました。
    今は相見積は「官製談合」にならないということでしょうか?
    それとも今も変わらず「官製談合」に該当するのでしょうか?

    • 矢野雅彦矢野 雅彦 より:

      管理人です。コメントありがとうございました。

      今(2020年11月)でも、価格競争を避ける目的で、特定の会社の見積金額より高くなるように「価格調整」すれば、談合となり、違法です。

      本記事にも記載しましたが、公正取引委員会のQAでも、入札談合事件の一類型となっています。

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