そもそも「随意契約」は何のためにある?主な4つのケースとは

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随意契約
2006年 セブ島

「随意契約」についての解説です。官公庁が民間企業と契約するときに、相手方を選ぶための契約方式には「競争入札」と「随意契約」の2つがあります。そして「随意契約」を締結するときの判断基準は主に次の4つです。「少額随意契約」、「競争性のない随意契約」、「不落随意契約」、「緊急性による随意契約」です。それぞれについて、わかりやすく解説します。

 

最後の「緊急性による随意契約」については、「布マスクの随意契約」として解説します。(当初は、稀なケースなので解説を省略していました。しかしアクセスが急増したので、追記しました。)いわゆる「アベノマスク」です。「緊急性による随意契約」の判断方法です。

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少額随意契約

「少額随意契約」は、時間のかかる入札手続きを省略して、「見積もり合わせ」で契約の相手方を決定します。根拠法令は、予算決算及び会計令 第九十九条です。

 

契約金額が少額なため(物品購入契約は160万円以下など)、事務簡素化の観点から、入札手続きを省略できる契約です。2〜3社の会社を選んで「見積もり合わせ」を実施し、競争原理を部分的に取り入れつつ最安値の会社と契約を締結します。さらに一定金額以下(50万円未満など)のときは「見積もり合わせ」も省略できます。契約実務担当者の判断で、最初から特定の会社を選ぶことができます。

 

入札手続きは、一般公開による「入札公告」手続きを経て、不特定多数の者が競争に参加します。少額随意契約は、2~3社から見積書を提出してもらい、金額等の内容を比較して、最も安い(有利な)見積金額を提示した相手方と契約を締結します。(さらに金額が少額のときは、複数社の見積書を取り寄せることも省略することがあります。この「見積もり合わせ」の省略は、組織によって様々です。)

 

「少額随意契約」は、入札手続きと比較するとライバル会社が少数です。一般的に「競争性が弱く、契約金額が高くなりやすい」デメリットがあります。しかし業務の効率化と、事務手続きを簡素化できるという大きなメリットがあります。通常は2ヶ月以上必要な入札手続きを省略でき、スピーディーな契約締結が可能です。手続きに要する人件費の節約や、早く契約が締結できるメリットがあります。このため「少額随意契約」は、官公庁の契約手続きの中で「一番多い契約方式」です。

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競争性のない随意契約

「競争性のない随意契約」は、契約手続きの原則である「競争性」を排除した例外手続きです。根拠法令は、予算決算及び会計令第百二条の四第三号です。通称「102-4-3」(ひゃくに の よん の さん)と呼びます。

 

特殊な物品等で、製造しているメーカーが一社しかなく、メーカーから直接購入するしか方法がない場合です。販売可能な企業が一社に限定される場合です。研究用の精密機器などが多いです。いろいろなお店で入手可能な需要の多い市販製品は該当しません。マスコミ報道などで「随意契約」という場合は、この「競争性のない随意契約」を指すことが多いです。最初から特定の企業を選んで契約することです。

 

特定の企業を選ぶため、「なぜ選んだのか」を対外的に説明する資料が必要になります。随意契約に至った経緯を記載した「選定理由書(随意契約理由書)」と、それを裏付ける証明書類が必須です。どのような判断で競争入札しなかったのかを明確に示す必要があります。

 

ここで注意したい点は、「メーカーから直接購入する」という理由だけでは、「競争性がない」という理由にならないことです。例えば「直接販売証明書」があったとしても、代理店や販売店が実際に複数存在するなら、「競争性がある」ことになり該当しません。

 

「直接販売証明書」は、代理店などの仲介業者を経由していないという当然の事実を証明するだけの書類です。「競争性がない」ことを証明する書類にはなりません。あまり意味のない書類です。

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不落随意契約(ふらく ずいいけいやく)

「不落随意契約」は、入札を行った結果、落札しなかったために随意契約として締結するものです。根拠法令は、予算決算及び会計令第九十九条の二です。契約方式の原則である入札手続きを実施しているので、上記の随意契約よりも原則に近い手続きです。

 

開札したところ、予定価格の制限に達しない場合や、入札者がいなかった場合などが該当します。落札者がなかったけれども、すぐに契約を締結する必要があるときに、価格交渉を行い随意契約するものです。

 

詳しい解説は別記事を参照願います。

「入札不調」と「不落随契」の違いとは、実務経験者が簡単に解説
「入札不調」と「不落随契」とは、どう違うのでしょう?どういう意味なのでしょうか? 「入札不調」と「不落随契」は似ているように思える言葉ですが、全く違います。根拠法令から問題点まで、契約実務担当者の視点から理解しやすいように解説します。
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「布マスクの随意契約」について

2020年4月29日(水)、この「随意契約」に関する記事へのアクセスが急増しました。いつもより10倍ほどアクセスが増えました。テレビを見ていると、ちょうど「布マスクを5億円で随意契約」したことが問題になってました。発注した4社のうち1社の「選定経緯が不透明」だと追及されていました。いわゆる「アベノマスク」問題です。

 

最初に書いた記事では、今回のような「緊急性に基づく随意契約」は、極めて稀なことなので解説を省略していました。しかし、「アベノマスク」が新型コロナウイルスの感染防止策として配布されたこと、契約金額が大きいことなどから、社会的に注目されているので追記しました。

 

最初に「緊急性による随意契約」を可能としている根拠法令を確認します。国の場合を例に解説します。

会計法

第二十九条の三 (略)「契約担当官等」という。)は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。

 

4 (略)、緊急の必要により競争に付することができない場合(略)は、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。

 

予算決算及び会計令

第百二条の四 各省各庁の長は、契約担当官等が(略)随意契約によろうとする場合においては、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

三 (略)緊急の必要により競争に付することができない場合において、随意契約によろうとするとき。

 

上記の法令では、「緊急の必要により競争に付することができない場合」に随意契約できることになっています。典型的な例は、台風や地震などの自然災害(天災)です。

 

入札手続きは、契約締結までに二ヵ月以上必要です。すぐに契約しないと、人の命が危険になったり、家屋などの財産が破壊されてしまうときです。誰が見ても「時間がない」ときに、随意契約を認めているものです。河川の堤防工事、道路陥没の復旧工事などです。人の命や財産が脅かされている状態のときです。

 

入札手続きは、かなり手続きに時間がかかります。実際に比較した記事は次の記事をご覧ください。

 

「入札」と「随意契約」を数値で比較した記事

知らないと損する「随意契約」のメリット、入札より10倍も効率的
随意契約のメリットを正しく理解するための解説です。契約手続きについて「入札」と「随意契約」を比較すると、随意契約の方が、入札より10倍効率的です。実際の契約手続きを数値で比較して解説します。契約実務担当者しか知らない実際の手続きの比較です。

 

「新型コロナウイルスによる新型肺炎」は、有効な治療薬がない現在(2020年4月29日)では、人命に直接影響します。目に見えないウィルスに感染すると、急激に悪化して死んでしまうことを考えれば、「不可抗力の自然災害、天災」と同じです。布マスクを購入して、感染を防ぐことができるのであれば、当然「緊急の必要」に該当し随意契約可能です。

 

しかし今回の「アベノマスク」配布については、疑問が残ります。そもそも2020年4月29日現在、「布マスク」について一般的に言われていることは「感染を防ぐ効果は、それほど期待できない」ことです。「マスクをしないよりは、マシ」程度の状況です。(もちろん今後、医学的な知見が得られる可能性はありますが。)

 

政府の閣僚たちも、総理以外は誰も「アベノマスク」をしていません。(小さすぎて恥ずかしいのかもしれませんが。)

 

厚生労働省の啓発資料「マスクについてのお願い」では、買い占めはやめて、「風邪や感染症の疑いがある人たちに使ってもらうことが何より重要」としています。つまり、くしゃみなどでウィルスを飛ばさないことが重要としています。予防用にマスクを使うのではなく、感染者がマスクを使うべきという意味です。

啓発資料「マスクについてのお願い」の内容

現在、予防用にマスクを買われている方が多いですが、 感染症の拡大の効果的な予防には、 風邪や感染症の疑いがある人たちに使ってもらうことが何より重要です。

国民の皆さまへ (新型コロナウイルス感染症)
国民の皆さまへ 関連情報((新型コロナウイルス感染症)を掲載しています。

つまり2020年4月29日現在では、布マスクでは予防効果が期待できないと言われていることです。さらに真実かどうか不明ですが、「アベノマスク」の配布を決めたのは、総理の周辺が「国民がマスクがないと騒いでいるのて、それを静かにさせるため」に提案したという噂です。これらを聞いてしまうと、人命を守るための「緊急性」には該当しないと判断せざるを得ないでしょう。

 

2020年4月23日付けの文春オンラインでは、官邸官僚が「布マスクで国民の不安はパッと消えますよ」と総理へ提案したと報道しています。

 

そもそも「緊急性」の条項が適用できる前提としては「客観的な事実」が必須です。布マスクで感染を防止できる事実が証明されてない段階で(むしろ、効果がないと言われている状況で)、単に「国民の気持ちを鎮める」ためだけに「緊急性に基づく随意契約」を適用するのは適切ではありません。しかも莫大な税金が使われています。

 

なお当然ながら、医療用マスク(N95など)や防護服を、医療関係者へ届けるための随意契約なら、「緊急性に基づく随意契約」として判断することは適切です。医療関係者を感染から守るためであれば適用すべきです。

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