随意契約のメリットを正しく理解、入札と随意契約の手続を詳細に比較

随意契約

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

入札と随意契約の詳細な比較です。官公庁の契約手続きの原則である一般競争契約(入札)と少額随意契約について、書類の作成から契約手続きまで詳しく解説し比較します。随意契約のメリットについての解説です。

随意契約の正しい理解

 

世間一般では「随意契約」という言葉は、「贈収賄事件」「業者との癒着」などの悪いイメージで「いけないこと」「不正や犯罪の温床」のように思われています。

 

悪い制度であれば法律で禁止すれば良いのですが、なぜ禁止しないのでしょうか。

 

そもそも、何のために「随意契約」という契約方式が存在するのでしょうか。これらの疑問について解説します。

 

官公庁が事業を実施するときは、国民の貴重な血税である税金を使用して、民間会社と工事契約や物品購入契約や役務契約を締結します。契約方式は原則として一般競争契約(入札)です。

 

契約方式の原則は、会計法令(会計法第29条の3第1項)で一般競争契約と義務付けられています。これは、随意契約に絡む事件が増えてきた今も昔も変わっていません。

 

不正事件が多いなら随意契約を廃止して、全ての契約を一般競争契約(公開入札)で実施すれば良いと思うかも知れません。

 

しかし、入札という契約方式は極めて煩雑な事務手続きが必要で、膨大な時間と労力が必要です。そして、これらの膨大な労力について客観的に示す資料が存在せず、マスコミを始めとする多くの人に理解されていません。

 

膨大な時間と労力が必要なら、お喋りせずに真面目に働けば解決するはずという公務員のお役所仕事体質を批判する声が聞こえますので、具体例と数値で解説します。

 

一般競争契約(入札)と随意契約の比較

 

例えば、総額200万円のパソコン(1台20万円相当のパソコンを10台)を購入する契約手続きとしましょう。この手続きを、基本原則である一般競争契約(入札)と随意契約で細かく比較します。契約手続きの流れに沿って業務量を比較します。

 

仕様決定(買いたいパソコンの決定)

 

一般競争契約の場合

 

競争性を確保するため、市販されている大手メーカーのカタログと定価表を収集します。インターネットを用いて、各メーカーのサイトから該当品を検索したり、販売会社へ電話してカタログと定価表を取り寄せます。特定メーカーに依存しないよう競争性を確保した仕様書を作成するのに必須の作業です。通常、1週間程度の期間(調査時間、依頼時間、待ち時間)が必要です。

 

 

随意契約の場合

 

特定のメーカーを2~3社比較して一番良さそうな機種(コストパフォーマンス)を選ぶだけで、作業期間は1日あれば十分です。

 

仕様書の作成

 

一般競争契約の場合

 

インターネットサイトや掲示板に入札公告を掲載し、不特定多数の販売会社が入札に参加できるよう仕様書を作成します。

 

必要とする性能、付属品、ソフト類を選定し契約条件をまとめます。一人の担当者のみが作成すると恣意的になってしまうので、3~5人の複数メンパーで構成する仕様策定委員会を設置して仕様書を作成します。

 

最初に委員の選任手続きを行います。その後に委員への委嘱簿の作成、委員会開催日程の調整、委員会での審議資料の準備を行います。

 

これらの作業には、最低でも10日ほど必要です。仕様策定委員会は、機種の性能を詳細に検討するので、通常、会議時間の制約から、1回で完了できないことが多いです。そうなると、仕様策定委員会の開催数だけ時間と書類作成の手間が比例的に加算されます。今回の比較では便宜上1回で仕様策定を完了したとします。

 

随意契約の場合

 

担当者ひとりで仕様書の作成が可能です。メーカー品を指定する場合でも、競争性を確保するように、同等品での入札を可能とする記載で問題ありません。2時間程度で仕様書が完成します。

 

入札公告の準備と掲載手続

 

一般競争契約の場合

 

一般公開用のインターネットサイトへ入札公告を掲載し、同時に入札専用の掲示板へ入札公告を掲載します。インターネットへの入力と掲示板への掲載で半日ほど必要です。通常は、掲示板へ掲載するために、掲示板を管理する部署の事前許可を得ます。その後、庁舎内の複数の場所に入札公告を掲示します。

 

随意契約の場合

この入札公告手続きは不要です。

 

入札問い合わせ対応

 

一般競争契約の場合

 

入札公告期間の最低日数が会計法令で義務付けられています。入札公告から開札まで最低10日間は必要です。通常は、土日の休業日を考慮して2週間以上掲載します。その間に、公告を見た入札参加希望会社からの質問などへの対応と入札関係資料の配布や説明が必要です。

 

 

随意契約の場合

 

この手続きは不要です。

 

予定価格調書の作成

 

一般競争契約の場合

 

入札の際には、事前に法令で定められた予定価格調書を作成します。

 

市場の取引価格の実例を調査するため、官公庁での類似の契約実績を調べます。納品先を調査し、その納品先へ事前に電話で購入の事実を確認します。その後、正式に文書で購入実績を照会します。予定価格を作成するために必要な情報(契約当時の見積書、定価、契約金額、契約方式)を文書で回答してもらいます。

 

通常、10箇所ほどの官公庁を調べます。相手先の調査時間や待ち時間を含めて2週間程度が必要です。

 

契約実績は過去の取引価格の調査です。購入した官公庁の担当者に対して、過去の契約書類を探してもらうことになります。少し古い契約書類は、離れた倉庫に保存していることが多いです。その分調査に時間もかかります。倉庫のキャビネットを調べてもらい該当書類を探してもらいます。これらの作業は、「購入実績の照会」と言われ、会計検査院からも十分に調査するよう指示されています。

 

随意契約の場合

 

調査対象は1~2箇所、電話照会のみで口頭確認したことをメモするだけなので、3日程度で完了します。

 

開札手続き

 

一般競争契約の場合

 

入札会場の設営準備後に開札を行います。開札は、入札書の確認、読み上げ、落札後の契約手続き打ち合わせなどで3時間程度必要です。

 

随意契約の場合

 

不要です。見積もり合せは、見積書を郵送(メール)などで取り寄せるだけです。

 

随意契約よりも入札は10倍の業務量が必要という事実

 

上記を集計します。

 

一般競争契約の場合は41日間と7時間必要です。約42日間が必要です。土日を除くと月20日平均なので、約2ヶ月間の業務量(手続期間)です。

 

随意契約の場合は4日と2時間です。およそ5日間の業務量(手続期間)です。

 

つまり、全く同じ物を購入するという契約手続で次のように労力に差があります。

 

一般競争契約(入札)は事務手続きに2ヶ月間が必要。

 

随意契約は事務手続きに1週間が必要。

 

入札なら2ヶ月間、随意契約なら1週間です。

 

随意契約に比して入札は10倍の業務量(手続期間)が必要です。

 

契約手続きに必要な期間が2ヶ月と1週間では、どちらが効率的か明らかです。比較にならないほどの差です。

 

そのため、入札手続きを行なうケースは契約金額が高額なものとすることが会計法令で定められています。例えば、物品購入契約であれば160万を超える契約と規定しています。契約金額が少額なものは随意契約が可能と規定して事務簡素化を図っています。

 

さらに、購入物品の使用者(依頼者)側から見れば、欲しい物の契約手続で2ヶ月待たされるのと、1週間待たされるのと、どちらが良いでしょうか?

 

このように、業務の効率性という観点では、圧倒的に随意契約が有利なのです。

 

これが、一般競争契約(入札)と随意契約の手続きの違いです。

 

これらの事務手続きの違いは、実際に契約手続きを担当し書類を作成した経験のある契約実務担当者しか理解できません。

 

マスコミなどが報道する際には、視聴者受けする公務員の体質批判や随意契約批判のみでなく、正確な事実も広く国民へ伝える必要があると感じています。

コメント