「産学連携」と「癒着」の違い、民間会社との共同研究で注意すべき点

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「産学連携」についての解説です。民間会社と共同研究するときに注意したいポイントです。「産学連携」は、正式な手続きで承認を受け、契約書を締結しないと「業者との癒着」と疑われてしまうことがあります。公的組織で働く研究者に必須の知識です。

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研究費の不正使用と「癒着」

 

国立大学の教員(教授、准教授、講師、助教、研究者)による「研究費の不正使用」が後を絶ちません。民間会社との取引を利用し、架空発注などで裏金を作り、国民の税金を私的に使うという構図が目立ちます。いわゆる「癒着」です。「癒着」とは、グルになって悪いことをすることです。

 

最先端の研究を行なう研究者にとっては、研究データを解析するために高額な研究設備が必要であり、研究室の運営に必要な人件費や研究費を継続的に確保することが必須です。

 

日常的に研究室と取り引きのある、民間会社の営業担当者から見れば、研究費の集まる「力のある研究者」の信頼を勝ち取ることが、会社の売上増加に直結し利益に繋がります。

 

これら研究者と民間会社(業者)との「癒着」が問題となる一方で、「産学連携の推進」も、国の科学技術政策として掲げられています。参考に「業者」という言い方は、一般的に、相手方から見て「お客さん、お得意さん」の場合です。研究室で実験材料などを継続して購入している会社などが「業者」です。

 

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「産学連携」と「業者との癒着」

 

では、素朴な疑問です。

 

「産学連携」と「業者との癒着」はどこが違うのでしょうか。

 

両方とも、国民の資産とも言うべき国立大学(研究者の人件費や設備など)を利用して、民間会社の利益のために行動する、という意味では同じです。

 

あるいは「産学連携」は、研究を行うことで、「業者との癒着」は、民間会社へ便宜を図ること、と捉えると異なる気もします。しかし「産学連携」という名の下で、研究者が隠れて研究成果を渡し、民間会社と一緒に大儲けして、研究者がリベートを懐に入れるなら、「業者との癒着」と変わりません。医薬品開発のコアになる研究成果などは可能性があります。(下記に実際に事件になったケースを記載しました。)もし医薬品と承認されれば、莫大な収入になるでしょう。ノーベル賞の本庶佑先生が発見した、がん免疫治療薬「オプジーボ」は、1,500億円の売上(2019年現在)と言われてます。

 

実際に、産学連携に関連した「癒着事件」も発生してます。
1998年11月に、名古屋大学医学部の教授が、製薬会社から2億5千6百万円を受け取り、「収賄罪」で追起訴されてます。捜査当局は「税金で研究し成果を国民に還元すべき教授が、研究生を受け入れ、施設などを使う権限を一企業のために行使した」と判断しています。この事件は、製薬会社との共同研究について、正規の手続きを経ずに「裏」で金を受け取ったことが「癒着」と看做されました。当時、大学の関係者からは「これが事件になるのなら、大学の研究者はみんな捕まってしまう」とまで噂されました。しかし1999年3月31日の名古屋地裁判決は、懲役三年執行猶予五年、追徴金二億五千六百万円の有罪判決でした。裁判長は「各製薬会社から共同研究の依頼を受けるという強い立場を利用してわいろを要求した」と判断しました。

 

簡単に考えると、「産学連携」は良いことで、「業者との癒着」は悪いことなのですが、その本質的な違いは、どこにあるのでしょうか。

 

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「産学連携」とは

 

国立大学等における「民間等との共同研究」が制度化されたのは、1983年(昭和58年)です。初年度の実施件数は、わずか56件でした。発明が生じたときは共同出願で、7年間の優先実施権が認められていました。

その後、日本の経済成長が鈍り、不況の時代に突入しました。そして経済を活性化する目的で産学連携を推進することにしました。

産学連携を本格的に政策として進めてきた経緯を見ると、次の科学技術政策が出発点です。

 

1995年(平成7年)11月「科学技術基本法」

1996年(平成8年)7月「第1期科学技術基本計画」

 

この時期から国の政策として「産学連携」が推進されてきました。

 

それ以前は、産学連携は、「業者との癒着」と同じように意識されていて、国立大学の研究者が、営利企業である特定の民間会社と一緒に研究開発を行うことは、モラルに反すると考える人が多かったのです。

 

一般的に、「癒着」とは、国立大学の研究者などが、特定の営利企業と結託して、私利私欲のために、税金などの公的資金を私物化することです。

 

癒着の典型例は、民間会社から「架空の請求書」を提出させ、国立大学から代金を支払わせ、その代金を不正にキックバックすることです。研究者が私的に使用することです。

 

「架空請求」でなくとも、ルールに違反して「競争入札」を行わずに、特定の会社と随意契約を繰り返し継続すれば、その会社は「不当な利益」を得ることが可能です。明らかに「癒着」となります。

 

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「産学連携」も民間会社の利益のため

 

「産学連携」とは、国立大学の研究者と、民間会社の研究者(技術者)が一緒に開発研究を行い、研究成果を利用して商品化し、双方が利益を得ることです。

 

このように見ると、「産学連携」と「癒着」は、「特定の民間会社の利益のため」という点では共通しています。

 

業者との癒着」が社会的に問題となるのは、特定の会社の利益に、公的な資産を利用することです。横領などの公費の不正使用が現実に存在していなくとも、社会的には「癒着」と看做され、「公正性」に問題があると疑われます。

 

「随意契約」は、しばしば問題点として「業者との癒着」が疑われます。国民の貴重な税金(資産)を、特定の会社へ流せば、つまり、恣意的に特定の会社と取引すれば、それは「業者との癒着」であり「不正」と看做されるのが日本社会です。

 

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国民性と「公正さ」、ギリシャの財政破綻

 

2012年に「ギリシャの財政破綻」が大きなニュースになりました。その原因は、公務員を始めとする、ギリシャの「国民性」にあったと言われています。

 

ギリシャの国民が、人柄の良い人ばかりで、ルールを無視しても、誰も何も批判せず、税金を払わないなどの違法行為が当然の社会であったらしいです。ほとんどの人が税金を払わなくなり、財政破綻は必然と考えられていたのです。

 

そういう意味では、日本人の国民性からすれば、他人との比較を好むことや、他人のズル(不正らしき行為)を許さない、という真面目さで安全です。「業者との癒着」も許しません。

 

このような「法治国家の礎」となる考え方が、日本人に根ざしている限り、日本は財政破綻しないでしょう。

 

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正式な手続を経て「産学連携」へ

 

民間会社(業者)との「癒着」を防止するためには、会社から受け取る利益を、国立大学などの「公的組織へ還元する」仕組みが必要です。

 

公的組織の財産(研究成果、大学の資産など)を利用する代わりに、会社の利益を、公的組織へ還元する約束が必要です。この約束を、「正式な手続き」を経て、会議等で正式に認めて、「共同研究契約書」を締結することで、「業者との癒着」が「産学連携」に変わるのです。

 

研究成果を実用化し、商品化して利益を得て、その利益の一定割合を公的組織に納付し還元する、これが産学連携の基本的な仕組みです。研究成果の社会還元です。

 

国立大学などの研究者が、特定の会社と一緒に、共通の研究テーマで開発研究を行うのであれば、「共同研究契約書」の締結が必須です。

 

契約書の内容として、発明などの特許出願の権利の帰属、実用化についての取り決め、売上時の利益の還元(ロイヤリティ)を明確にします。公的組織(国立大学内部)では「教授会」などの審議機関で、特定の民間会社と共同研究を行うことについて、正式に承認を受けます。「受託研究」も同様です。

 

もし、特定の民間会社と共同研究を行う場合に、契約書を締結せず、教授会などにも諮らなければ、それは単に「業者との癒着」と看做され、社会一般では「不正」となります。

 

つまり、「産学連携」と「業者との癒着」の違いは、正式な承認手続きを経て、研究契約書(共同研究契約書あるいは受託研究契約書)を締結しているかどうかです。

 

ルールに基づき正式な書類手続を行なえば「産学連携」ですが、隠れて同じことを行なえば「癒着」になるのです。名古屋大学の事件では、その「違い」が見えます。

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