「産学連携」と「癒着」の違い、民間会社との共同研究で注意すべき点

国立競技場 基礎知識
国立競技場

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

 

研究費の不正使用と癒着

 

国立大学の教授(研究者)による研究費の不正使用が後を絶ちません。民間企業との取引を利用し、架空発注などで裏金を作り、国民の税金を私的に使うという構図が目立ちます。

 

最先端の研究を行なう研究者にとっては、研究データの解析を行なうため高額な研究設備が必要であり、継続的に十分な研究費の確保が必須であることは間違いありません。

 

大学の研究室との取引を行う民間企業の営業担当者から見れば、研究費の集まる有名な研究者の信頼を勝ち取ることが、売上の増加に直結し会社の利益に繋がります。

 

これら研究者と民間企業(業者)との癒着が問題となる一方で、産学連携の推進も、国の科学技術政策として掲げられています。

 

産学連携と業者との癒着

 

では、素朴な疑問です。

 

「産学連携」と「業者との癒着」はどこが違うのでしょうか。

 

両方とも、国民全員の資産とも言うべき国立大学(研究者の人件費や設備など)を利用して、民間企業の利益を目的に、商品の研究開発を行なうという意味では同じです。

 

簡単に言えば、「産学連携」は良いことで、「癒着」は悪いことなのですが、その本質的な違いは、どこにあるのでしょうか。

 

産学連携とは

 

産学連携の経緯を見ると、次の科学技術政策が出発点です。

1995年(平成7年)11月「科学技術基本法」
1996年(平成8年)7月「第1期科学技術基本計画」

 

この時期から国の政策として産学連携が推進されてきました。

 

それ以前は、産学連携は、「業者との癒着」と同じように意識されていて、国立大学の研究者が、営利企業である特定の民間会社と一緒に研究開発を行うことは、モラルに反すると考えられていたのです。

 

一般的に、「癒着」とは、国立大学の研究者などが、特定の営利企業と結託して、私利私欲のために、税金などの公的資金を私物化することです。

 

癒着の典型例は、国立大学あてに民間会社から架空の請求書を提出させ、国立大学から代金を支払わせ、その代金を不正にキックバックさせ、研究者が私的に使用することです。

 

架空請求でなくとも、ルールに違反して競争入札を行わずに、特定企業への発注を、随意契約として繰り返し継続すれば、その企業は不当に利益を得ることが可能で、「癒着」となります。

 

産学連携も民間企業の利益のため

 

産学連携とは、国立大学の研究者と、民間企業の研究者(技術者)が一緒に研究を行い、研究成果を利用して商品化し、利益を得ることです。

 

このように見ると、産学連携と癒着は、「特定の民間企業の利益のため」という点では共通しています。

 

「業者との癒着」が社会的に問題となるのは、特定企業の利益に公的な資産を利用することであり、横領などの公費の不正使用が現実に存在していなくとも、社会的には「癒着」と看做され、公正性に問題があることです。

 

随意契約の問題点として「業者との癒着」が疑われることがあります。

 

国民の貴重な税金(資産)を、特定の営利企業へ流せば、つまり、競争性を排除した随意契約で、恣意的に特定の企業の売上に税金を流せば、それは「業者との癒着」であり「不正」と看做されるのが日本社会です。

 

国民性と公正さ、ギリシャの財政破綻

 

2012年にギリシャの財政破綻が大きなニュースになりましたが、その原因は、公務員を始めとする、ギリシャの国民性にあったと言われています。

 

ギリシャの国民が、人柄の良い人ばかりで、ルールを無視しても、誰も何も批判せず、税金を払わないなどの違法行為が当然の社会であったらしく、財政破綻は必然と考えられていたのです。

 

そういう意味では、日本人の国民性からすれば、他人との比較を好むことや、他人のズル(不正らしき行為)を許さない、という真面目さは、「業者との癒着」を許しません。

 

このような法治国家の礎となる考え方が日本人に根ざしている限り、日本は財政破綻しないでしょう。

 

正式な手続を経て産学連携へ

 

民間企業(業者)との癒着を防止するためには、企業が受け取る利益を、国立大学などの公的組織へ還元する仕組みが必要です。

 

公的組織の財産(研究者の知識、大学の資産など)を利用する代わりに、企業の利益を公的組織へ還元する約束が必要です。

 

この約束を、正式な手続きを経て、公的組織が正式に認めて、共同研究契約を締結することによって、「業者との癒着」が「産学連携」に変わるのです。

 

研究者の研究成果を実用化し、商品化して利益を得て、その利益の一定割合を公的組織に納付し還元する、これが産学連携の仕組みであり、研究成果の社会還元です。

 

国立大学などの研究者が、特定の営利企業と一緒に共通の研究テーマで開発研究を行うのであれば、「共同研究契約書」の締結が必須です。

 

契約書の内容として、発明などの特許出願の権利の帰属、実用化についての取り決め、売上時の利益の還元(ロイヤリティ)を明確に契約し、さらに、国立大学内部では教授会などの審議機関で、特定の営利企業と共同研究を行うことについて、正式に承認を受ける手続が必要です。受託研究も同様です。

 

もし、特定の営利企業と共同研究などを行う場合に、契約書を締結せず、教授会などにも諮らなければ、それは単に「業者との癒着」と看做され、社会一般では不正となります。

 

産学連携と癒着の違いは、研究契約書(共同研究契約書あるいは受託研究契約書)を正式に締結しているかどうかです。

 

ルールに基づく正式な書類手続を行なえば「産学連携」ですが、隠れて同じことを行なえば「癒着」になるのです。

コメント