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基礎知識

所有権が移転する時期とは、官公庁側の検収完了で物が特定されたとき

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基礎知識
2007年 シンガポール
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物品購入契約で所有権が移転する時期の解説です。所有権の移転については、民法や会計法令の中にも明確に移転時期を定めた条文がありません。日常の契約実務の中では、それほど気にする必要はないですが、所有権が移転する時期を理解しておきましょう。

 

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物品売買の所有権移転時期とは

 

日常の契約実務の中では、特に所有権を気にしなくても大きな支障はありません。しかし基礎知識として理解しておきたいポイントです。

 

最初に、民法の所有権移転時期に関する条文を確認します。

 

民法

(物権の設定及び移転)
第百七十六条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

 

物権とは、所有権や占有権、地上権、抵当権などです。今回は物権の中の所有権についての解説です。

 

民法の上記条文では、「当事者の意思表示のみによって」と定められています。簡単にいえば、売主と買主の契約締結時に所有権が移転することになります。

 

また契約は、書面による取り交わしは必要なく、「売ります、買います」という当事者間の口頭での合意だけで成立します。

 

(えっ、契約締結と同時に所有権が移転?)

 

(契約締結と同時に所有権が移転する?)

 

ここで疑問が生じると思います。

 

例えば、発売されたばかりの20万円の大型冷蔵庫を購入し、自宅へ届けてもらう売買契約をイメージしてください。

 

休日に自宅近くの大型電気店へ出かけます。店に展示してある、いろいろな冷蔵庫を見比べて、やはり新製品を購入することにしました。店員さんと価格交渉し、値引き後の販売価格にも納得し、正式に注文します。大型冷蔵庫のために持ち帰れないので、一週間後に自宅に配送されるとします。

 

民法の「契約締結と同時に所有権が移転する」とした場合、どうでしょうか?

 

自宅に届く冷蔵庫は、店頭に見本として展示されていた冷蔵庫ではありません。メーカーの倉庫に保管してある新品の冷蔵庫が届くはずです。配送のときに、メーカーの倉庫の中から、同じ型式の新品の冷蔵庫を選んで、自宅へ配送してくれます。

 

つまり店頭で契約を締結した時点では、自宅に届く冷蔵庫は、実際にどの冷蔵庫なのか特定できていません。売買契約の目的物が特定できていない状況では、「買主に所有権が移転する」といわれても、どの冷蔵庫なのかわかりません。冷蔵庫が特定されてないので所有権を主張することは事実上不可能です。

 

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カタログ製品の所有権移転時期は民法で定められてない

 

実は民法では、市販されているカタログ製品の所有権が移転する時期を明確に定めた条文がありません。そのため過去の判例等に頼らざるを得ず、所有権移転時期についての解釈も複数存在しています。

 

判例などから通説となっている考え方は次のとおりです。

 

所有権移転の時期は、特定物と不特定物で異なる。

 

特定物の売買では、契約締結の時に所有権が移転し、引き渡しによって、占有権だけが売主から買主に移転します。特定物とは、中古物品や不動産など、代わりのものが存在しない物です。不特定物とは、カタログ製品など同じものが多数存在する物です。

 

不特定物の売買では、目的物が特定した時に売主から買主に所有権が移転します。つまり納品時に、買主が納品検査(検収)を完了することによって目的物が特定し、所有権が買主に移転します。

 

ただし不動産などは、法務局への登記が第三者対抗要件となるなど、話が複雑になるので今回は不動産を除外します。

 

次に官公庁の契約手続きの中で、所有権に関係する会計法令を確認しましょう。すると意外なことに、納品検査に関する法令はありますが、所有権に関する条文がないことに気付きます。

 

財政法 所有権の規定なし

 

会計法 検査の条文のみ
第二十九条の十一第二項
契約担当官等は、(略)請負契約又は物件の買入れその他の契約については、(略)、自ら又は補助者に命じて、その受ける給付の完了の確認をするため必要な検査をしなければならない。

 

予算決算及び会計令 検査の条文のみ
第百一条の四
(略)契約についての給付の完了の確認をするため必要な検査は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて行なうものとする。

 

会計法令では、納品時に検査を行わなければならないことを明確に定めています。しかし、所有権の条文ではありません。所有権移転時期は会計法令でも定めていないのです。(引き渡しによって現物が手元にあれば気にならないのかもしれません。)

 

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所有権移転時期についてのまとめ

 

会計法令では、上述のように所有権に関しては定めてありません。そこで民法に基づく所有権移転時期の考え方によることになります。

 

メーカーが大量生産するカタログ製品の売買契約は、不特定物の売買です。目的物が特定した時に、売主から買主へ所有権が移転します。目的物が特定する時期は、納品検査(検収・検査収納)のときです。

 

予算決算及び会計令第百一条の九第二項では、検査調書に基づかなければ、支払をすることができない、と定められています。つまり納品検査(給付の完了の確認検査)が完了した時点で、所有権が移転するので、国側に支払い債務が発生するわけです。

 

予算決算及び会計令
第百一条の九 契約担当官等、契約担当官等から検査を命ぜられた補助者(略)は、検査を完了した場合においては、(略)検査調書を作成しなければならない。
2 前項の規定により検査調書を作成すべき場合においては、当該検査調書に基づかなければ、支払をすることができない。

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