債権と債務は、官公庁の契約担当者に必須の知識です。テレビを購入する具体例で、債権と債務の発生時期、契約の成立、給付の完了の確認方法をわかりやすく解説します。会計法令に基づく手続きを実施するためには、債権と債務の正しい知識が必要です。
売買契約の流れを理解する
官公庁と民間企業の主な契約は、売買契約などの双務契約です。契約は当事者間の合意で成立します。
当事者双方が、相手に対して何かしなければならない義務(債務)が発生するのが双務契約です。売買契約を例にしてわかりやすく解説します。
自分でテレビを購入することをイメージしてください。
( )書きが官公庁の契約実務で使用す業界用語です。
最初にテレビを選びます。インターネットやカタログなどからテレビの機種を選定します。
画面の大きさ、画質、操作性、録画機能の有無など、欲しい機能(仕様)に合致するテレビの機種を選びます。(仕様決定、機種選定)
秋葉原などテレビを安く売っているお店のある電気街へ出かけます。
欲しいテレビを見つけ、店員さんへいくらまで値段を下げられるか交渉します。販売可能な金額を聞いておきます。まだ注文はせずに金額だけ教えてもらい発注は保留にします。(市場調査)
他の店の方が安いかもしれません。近隣のお店を調べようと思い、店を出ようとしたところ、店員さんに呼び止められ名刺をもらいました。名刺には先ほどのテレビの販売金額が書いてあります。
この金額なら販売できます、との提示です。(見積書の提出、契約の申し込み)
他の店を何軒か回りましたが、やはり最初の店が一番安いとわかりました。(見積もり合わせ)
最初の店に戻り、名刺をもらった店員さんへ、他の店より安いので正式に購入することを伝えます。(契約の申し込みの承諾、契約成立、支出負担行為)
テレビは重いので持って帰れません。後日、配送してもらうことにします。代金は商品到着後に銀行振込みとします。(後払い、あとばらい)
2週間ほど経過しテレビが家に到着しました。店の人がセッティングしてくれました。(納品)
アンテナを接続し、コンセントに電源ケーブルをつなげテレビが映ることを確認します。(給付の完了の確認、検収確認、納品検査、完了検査などいろいろな呼び方があります。いわゆる検収です。)
家にテレビが到着した段階では、中身を確認していないため代金を支払うという債務は発生しません。代金を支払うためには、給付の完了の確認として検収が必要です。納品されたテレビの動作確認が必要です。つまりテレビが正常に映ることを確認した時点で、給付の完了の確認が完了します。この検収完了時点で発注者が代金を支払わなければならないという債務が発生します。
テレビが動作することを確認し、検収完了によって所有権が発注者に移転します。ここで代金を支払う債務が発生します。
後日、納品時に同封されていた請求書を確認して、銀行振込みでテレビの代金を支払います。(請求書受理、支出)
以上が契約手続きの流れです。
債権と債務、双務契約とは
債権と債務、双務契約をわかりやすく解説します。
債権とは、相手に対して何かをしてもらう権利です。
債務とは、相手に対して何かをしなければならない義務です。
テレビを購入する例では、次の時点で債権債務が相互に発生します。
テレビを買う、と店員さんへ伝えたとき(契約の成立時)
あなた = テレビを納品してもらう債権(権利)
お店 = テレビを納品しなければならないという債務(義務)
テレビが納品され正常に映ることを確認したとき(給付の完了確認時、検収完了時)
あなた = 代金を支払わなければならないという債務(義務)
お店 = 代金を支払ってもらうという債権(権利)
売買契約では、このように債権債務が双方に同時に発生します。債務が双方に発生するのが双務契約です。契約の基本概念です。
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