官公庁の契約実務担当者に必須の基礎知識「契約」についての解説です。初心者向けにわかりやすく解説します。国民の税金を使用する官公庁の契約では、会計法令に基づく手続きが必要です。契約の成立時期や債権債務の発生時期について具体例で説明します。
契約は、債権と債務が発生します。民法によってルールが定められています。民法では典型契約として、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13種類があります。この中で、官公庁の契約で最も多い「売買契約」を例に解説します。
「売買契約」の流れを理解する
官公庁が民間会社と締結する主な契約は、売買契約などの双務契約です。契約は、官公庁と民間会社との「当事者間の合意」です。
当事者双方が、相手に対して「何かしなければならない義務」(納品の義務、支払の義務等)が発生するのが双務契約です。以下は「売買契約」の例です。
自分でテレビを購入することをイメージしてください。
( )書きが官公庁の契約実務で使用する「業界用語」です。
最初にテレビを選びます。インターネットやカタログなどからテレビの機種を選定します。
画面の大きさ、画質、操作性、録画機能の有無など、欲しい機能(仕様)に合致するテレビの機種を選びます。(仕様決定、機種選定)
秋葉原などテレビを安く売っているお店のある電気街へ出かけます。
店員さんへ、いくらまで値段を下げられるか交渉します。販売可能な金額を聞いておきます。まだ決定はせずに金額だけ教えてもらい、発注は保留にします。(市場調査、見積もり合わせ準備)
他の店の方が安いかもしれません。近隣のお店を調べようと思い、店を出ようとしたところ、店員さんに呼び止められ、名刺をもらいました。名刺には先ほどのテレビの販売金額が書いてあります。
「この金額なら販売できます」との提示です。(見積書の提出・取り寄せ、契約の申し込み)
他の店を何軒か回りましたが、やはり最初の店が一番安いとわかりました。(見積もり合わせ)
最初の店に戻り、名刺をもらった店員さんへ、他の店より安いので、正式に購入することを伝えます。(契約の申し込みの承諾、契約成立、支出負担行為)
テレビは重いので持って帰れません。後日、配送してもらうことにします。代金は商品到着後に銀行振込みとします。(後払い)
2週間ほど経過し、テレビが家に到着しました。店の人がセッティングしてくれました。(納品)
アンテナを接続し、コンセントに電源ケーブルをつなげ、テレビが映ることを確認します。(給付の完了の確認、納品検査、検収確認、完了検査などいろいろな呼び方があります。いわゆる検収です。)
家にテレビが到着しただけでは、代金を支払うという「支払の債務」は発生しません。代金を支払うためには「給付の完了の確認」として検収が必要です。発注者が、納品されたテレビの動作を確認したとき、つまり、テレビが正常に映ることを確認した時点で、給付の完了の確認が完了します。この完了時点で発注者が代金を支払わなければならないという「債務が発生」します。
テレビが動作することを確認し、検収完了によって、所有権が買主に移転します。ここで代金を支払うという「債務」が発生します。
後日、納品時に同封されていた「請求書」を確認して、銀行振込みによってテレビの代金を支払います。(請求書受理、支出)
以上が契約手続きの流れです。
債権と債務、双務契約とは
つぎに、債権債務、双務契約を詳しく説明します。
債権とは、相手に対して、何かをしてもらう権利です。
債務とは、相手に対して、何かをしなければならない義務です。
上述のテレビを購入する例では、次の時点で債権債務が相互に発生します。
「テレビを買う」と店員さんへ伝えたとき(契約の成立時)
あなた=テレビを納品してもらう債権(権利)
お店=テレビを納品しなければならないという債務(義務)
テレビが納品され、正常に映ることを確認したとき(給付の完了確認時)
あなた=代金を支払わなければならないという債務(義務)
お店=代金を支払ってもらうという債権(権利)
売買契約では、このように、債権債務が双方に同時に発生します。債務が双方に発生するのが「双務契約」です。契約の「基本概念」です。
コメント