予定価格についての解説です。官公庁の契約手続きでは予定価格が必要です。しかし予定価格の作成は、とても労力のかかる大変な事務手続きです。なぜ、これほど大変な予定価格を作る必要があるのか悩むことがあります。予定価格の意義は3つに集約されます。
予定価格の根拠法令とは
官公庁の契約手続きに必要な予定価格の意義や役割をわかりやすく解説します。
予定価格は会計法令に基づいて作成します。最初に会計法令から解説します。地方自治体は、地方自治法、同施行令、各契約規則で同じように定めています。
予定価格の根拠法令を確認します。会計法令の基本となる財政法の中では、意外にも予定価格に関する条文はありません。財政法自体が、国の予算について定めているため、契約手続きの実務に関する内容は含まれていません。予定価格は予算の執行の範囲ではありますが、具体的な契約手続きに関しては財政法で定めていないのです。
次に会計法で定めている予定価格です。
会計法では、次の2つの条文で予定価格を用いてます。
会計法
第二十九条の三
5 契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、(略)指名競争に付し又は随意契約によることができる。
第二十九条の六
契約担当官等は、競争に付する場合においては、政令の定めるところにより、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。
会計法では、契約方式の判断と、落札の基準価格として予定価格を用いています。予定価格の役割として、契約方式と落札の判断に使われています。
次に条文に記載のある政令、予算決算及び会計令を確認します。
予定価格の役割は予決令で定めている
予算決算及び会計令(予決令)は政令です。契約手続きを細かく定めているため、予定価格が多数出現します。
予算決算及び会計令
第七十九条 契約担当官等は、その競争入札に付する事項の価格を当該事項に関する仕様書、設計書等によつて予定し、その予定価格を記載し、又は記録した書面をその内容が認知できない方法により、開札の際これを開札場所に置かなければならない。
第八十条 予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。
2 予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。
第八十二条 契約担当官等は、開札をした場合において、各人の入札のうち予定価格の制限に達した価格の入札がないときは、直ちに、再度の入札をすることができる。
上記以外にも予定価格が多数規定されています。
そもそも予定価格の意義とは
明確な規定はありませんが、法令等から考えると予定価格の意義は次の3つに集約されます。
予定価格の意義
1.予算の確認
2.経済性の確認
3.契約金額の基準
少し詳しく説明します。
歳出予算の確認
国が事業を実施するためには、国会で承認された予算が必要です。予算を無視して事業を行うことは、結果的に国会の議決を無視することになります。そのため予定価格を作成するときは、必ず、歳出予算を確認して、予算の範囲内で作成しなければならないのです。予算の範囲内という意味は、金額だけでなく、予算の使用目的や事業内容まで含みます。
国の予算は、予算事項として事業目的を明確にしています。歳出予算の目的と金額の範囲内で予定価格を作成します。
経済性の確認
一般的に使われる経済性と同じ意味です。税金の無駄遣いは許されませんし、不当に高い買物をすることはできません。予定価格の設定は、実際の取引価格を想定して決定します。
ここで注意が必要なのは、なるべく安いものを買うという考え方です。安い物を買うことは良いことですが、安ければ良い、という考え方は間違いです。契約の相手方を無理に叩いて値引きさせなければ予定価格の範囲内にならないのであれば、正しい予定価格とは言えません。赤字になるような無理な価格は、正しい予定価格ではないのです。
正当な利益を含んだ価格が、正しい予定価格です。
契約金額の基準
予定価格は、開札のときに落札基準価格になります。
一般的な入札手続きは、自動落札方式です。最低価格落札方式を採用します。予定価格以内なら、最安値の入札をした者が自動的に落札となり、契約の相手方として決定されます。入札の場合には必ず予定価格を作成しなければなりません。予定価格が存在しないと落札できません。契約するための基準価格です。
一般競争入札でよくいわれる公平性や公正性は、会計法令に基づき手続きを進めることです。契約方式の判断や落札決定の判断に予定価格を用いることで公正な手続きになります。
公平性とは、特定の会社を有利に扱うなどの差別をしないことです。公正性とは、法律や規則などに基づき手続きが進められることです。
予定価格に基づいて、一般競争入札などの契約方式を判断し、契約の相手方を決めることになります。公平性や公正性のためにも重要な書類です。
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