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予定価格

諸経費率を財務諸表から算出する方法、予定価格に設定する諸経費率

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諸経費をじっくり分析している 予定価格
諸経費をじっくり分析している
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官公庁で契約実務を長く担当していると、予定価格を作成することがあります。競争入札では落札基準価格になる重要な書類です。予定価格として積算する内容は、すべて客観的な根拠により算出します。ところが諸経費率についての基準がなく悩むことになります。

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予定価格に必要な諸経費とは

契約実務を長く経験すると、予定価格を作成することがあります。契約手続きの中で予定価格が必要になるのは、競争入札など契約金額が大きいものです。重要な契約になります。

 

そして製造契約や役務契約の予定価格を作成するときには、諸経費を必ず積算します。

 

この諸経費が頭を悩ますのです。

 

工事契約を除く製造契約や役務契約では、諸経費の算定方法が定められていません。何も基準がない中で、諸経費を算定することになります。(工事契約については、国土交通省や各省庁、地方自治体で諸経費率などの「積算基準」が公開されています。かなり難解ですが。)

 

例えば、役務契約(清掃や警備などの人件費が中心となる契約)の予定価格を作成するときは、作業員の職種や年齢構成を考慮して、作業員本人が受け取る給与や、会社が負担する社会保険料などの法定福利費を積算します。契約内容を実施するのに必要な経費を積み上げて計算します。

 

そして最後に、会社の利益相当分と一般管理費を含めた諸経費を加算し、予定価格を設定します。

 

諸経費は、会社が存続するための利益、人事管理や財務管理などの管理部門の経費、営業担当者の人件費や広告費などの経費です。諸経費を積算しなければ赤字になってしまいます。赤字が続けば会社は倒産します。官公庁が締結する契約として、赤字を強制するのは適正ではありません。会社の利益相当分は、必ず諸経費として積算します。

 

ところが諸経費の基準がないのです。予定価格を作成するときに、契約担当者を悩ませる原因になっています。

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なぜ諸経費率は定められていないか

工事契約は、品質を確保するために積算基準が公開されています。これは工事の標準的な工法が社会に認知されているからです。技術者も国家資格が求められ、会社自体も建設業の許可が必要です。工法が広く認知されているので、統一的なルールを積算基準として定めることができるのです。

 

一方、工事以外の製造契約や役務契約は、数え切れないほど多様な種類の契約があります。警備業などは法律で基準が定められていますが、役務契約の多くは統一的な基準がありません。

 

主に次の理由から、諸経費率が定められないのです。

契約内容が、さまざまであること

人件費の職種が統一できないこと

使用する材料の品質が統一できないこと

 

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予定価格を作成するときの諸経費率の求め方

官公庁が作成する予定価格の中で、諸経費率を積算する方法は、次のとおりです。

 

参考見積書の中から諸経費率を算出する

競争入札を実施するときは、直近の価格を調査するために参考見積書を提出してもらうことが多いです。参考見積書は、通常の契約金額で積算されています。複数の参考見積書を比較して、最も安い諸経費率を予定価格に設定します。諸経費を「会社の利益相当額」とみなして、一番金額の安い諸経費率を採用します。

 

財務諸表から諸経費率を算出する

契約内容を実施できる民間企業を想定できるのであれば、財務諸表から諸経費率を算出することもできます。

 

競争入札への参加資格を持っている民間企業は、入札参加資格を取得するときに財務諸表を提出しています。

 

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財務諸表から諸経費を求める方法

財務諸表の中で、諸経費率を算出するときに使うデータは損益計算書です。

 

損益計算書を見ると、売上高、売上原価、売上総利益、営業利益が表示されています。この項目は規則で定められています。

 

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

(収益及び費用の分類)
第七十条 収益又は費用は、次に掲げる項目を示す名称を付した科目に分類して記載しなければならない。
一 売上高
二 売上原価(役務原価を含む。以下同じ。)
三 販売費及び一般管理費
四 営業外収益
五 営業外費用
六 特別利益
七 特別損失

 

予定価格を作成するときは、損益計算書の項目を次のように考えることができます。

損益計算書と予定価格の項目

 

売上高 = 予定価格の総額

 

売上原価 = 契約内容を実施するのに必要な人件費や材料費(直接経費)

 

売上総利益 = 売上高 - 売上原価
(営業利益と販売費及び一般管理費です。一般的な諸経費とみなすことができます。)

 

営業利益 = 売上高 - 売上原価 ー 販売費及び一般管理費
(営業利益は、間接経費を除く、純粋な儲け部分とみなすことができます。)

 

つまり、売上総利益の比率、あるいは営業利益の比率のどちらかを諸経費率として採用することができます。契約金額が大きくなれば率の低い方を採用するのが一般的です。

 

2021年現在は、多くの民間企業でエクセル形式で損益計算書を公開しています。参考に、ある会社の損益計算書から諸経費率を算出した部分を掲載します。赤字部分が諸経費率です。

 

損益計算書から諸経費率を求める

損益計算書から諸経費率を求める

 

別の会社も参考に掲載します。

損益計算書から諸経費率を求める

損益計算書から諸経費率を求める

 

売上総利益から諸経費率を求める計算式

諸経費率(%) = 売上総利益 / 売上原価

 

営業利益からから諸経費率を求める計算式

諸経費率(%) = 営業利益 / 売上原価

 

なお、損益計算書から諸経費率を求めるときは、次の点に留意しましょう。

諸経費率は、会社全体の売上の平均であること

 

一般的に契約金額が高くなれば諸経費率は低くなります。契約金額と諸経費率は反比例の関係です。諸経費の中には、会社の利益分と、本社管理部門の人件費などの固定費が含まれています。契約金額が小さければ諸経費率は高くなります。50万円くらいの契約であれば、諸経費率は30%になることもあります。逆に数千万円の契約金額であれば、諸経費率は5%程度になります。これは一例ですが、予定価格を作成するときは根拠資料が必要です。

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