契約実務担当者に潜む危険を正しく知る、予定価格を作成するときの誘惑

国立競技場
国立競技場

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

官公庁の契約実務担当者が実施する入札手続きに潜む危険性の解説です。特に、大規模な入札では、予定価格に関する情報を得ようとする誘惑が多くなります。予定価格漏洩と贈収賄、さらに談合、これらの危険から身を守るための方法です。

予定価格に潜む危険性

官公庁の契約手続きは、入札(競争契約)が原則です。入札を実施する際には予定価格の作成が法令で義務付けられています。契約実務担当者の宿命とも言えます。

そして、残念ながら予定価格に絡んだ事件は極めて多いです。

典型的な不正事件は、談合と贈収賄、それと情報漏えいです。



談合と予定価格

談合の目的は、入札に参加する企業が不当に利益を得るためです。価格競争を逃れ利益を確保することが目的です。

また、予定価格を事前に知ることができれば、最大限の利益を確保できます。

事前に入札へ参加する企業同士で金額を調整して、予定価格ギリギリの金額で落札が可能です。利益を最大限に確保できます。落札金額に合わせて「出来レース」として競争を装います。

入札に参加する企業が談合を行う場合、予定価格を事前に知っているケースと知らないケースを見分けるのは比較的簡単です。

複数回の再度入札を実施していれば、入札金額の経緯によって、談合の有無について推測できます。

予定価格を事前に知っている談合は、落札率(落札金額÷予定価格×100)は90%以上となるケースが多くなります。95%以上は極めて怪しいです。さらに入札が複数回実施されたときは、それぞれの最低入札金額の企業がまちまちになります。

予定価格を事前に知らない場合の談合は、落札率は90%以下になることが多く、さらに、複数回の入札でも、最低価格を提示した企業が毎回同じ業者となります。

これらの状況を知ったときには、談合の可能性が高くなるので、入札を停止して、参加企業に対して聞き取り調査が必要です。
また、予定価格を事前に知っているとなると内部の職員から情報が漏れた可能性が高くなります。

もちろん、偶然に上記のような状態になることもありますが、別の入札で参加企業が同じで、同じような状態が出現すれば、ほとんどが談合を疑った方が良いでしょう。

談合は、法律に違反する不正行為です。当然、良くないことですが、入札に参加する企業としては、過当競争を防ぎ、適正な利益を確保する手段として止むを得ないことでもあります。談合は「必要悪」とまで言われています。



贈収賄と予定価格

談合よりも、さらに悪い事件として、贈収賄があります。

入札に参加しようとする企業は、談合の有無にかかわらず、予定価格を事前に知ることによって、利益を最大限に確保できます。

そのため、入札が実施される前に、契約実務担当者へ挨拶に頻繁に訪れて情報収集します。

用件があるわけでもないのに、担当者と会話しながら机の上の資料などを見たり、入札に関係する情報がないかどうか偵察にやってきます。机の周りで普通に世間話をしながら情報を得ようとします。

悪質な手法としては、業務終了後に割り勘で飲み会に誘うことがあります。一次会や二次会、三次会まで誘います。居酒屋で軽く飲み、少し雰囲気の良い酒場で飲みなおし、最後にきれいなお姉さんのいるクラブなどに誘われると、もう、かなりやばいです。犯罪に片足突っ込んでいる状態です。

これらの接待は、現在、国家公務員倫理規程で禁止されています。

最初は割り勘と言っていても、飲み代は企業が払ってしまうので、この時点で接待を受けたことになります。さらにビールやウィスキーで意識が朦朧となり入札のことをしゃべってしまうこともあります。さらに帰り際にタクシー代として金一封を受け取ると、もう完全に真っ黒の収賄事件です。

酔っ払って予定価格を話してしまうと、収賄だけでなく秘密漏洩にもなり、もう働く場所がなくなるのは間違いありません。

マスコミや第三者に現場を見られたら、解雇となり退職金もなくなります。人生が終わるくらいの危険性を秘めています。

契約実務を担当する職員、特に入札などで予定価格作成を任された職員は、このような危険性を十分認識しながら日常生活を送ることが大切です。

契約実務担当者が守るべきこと

予定価格は、第三者へ絶対に話さない。

同じ職場の人でも直属の上司以外には話してはいけません。家族へも話しません。もし友人や他部署の同僚から聞かれたときは、「金額は覚えてない」とか、「まだ積算を終えてない」と回答します。「秘密だから教えない」と正直に答えると友人を失います。いやなやつと思われます。

  • 予定価格作成中は、常に回りに注意して、民間企業の人たちが訪問している時は、契約についての会話はせず、関係書類は伏せて見えないようにします。
  • 予定価格関連の資料は、帰る前に必ず整理して、目につかない場所(引き出しの中とか封筒に入れて保管)に置きます。
  • 予定価格関連資料を破棄するときは、必ず、自分でシュレッダーを使う。ごみ箱に捨ててはいけません。(悪質な企業は職場のゴミ置き場までチェックします。)

以上のことに注意して、自分の身を守りましょう。




コメント

  1. 匿名 より:

    補助金を受けて水路改修をする農業者団体の事務をしている農業者です。
    水路改修工事費を積算できないので、談合されないよう別々の日程で業者を呼んで現地で説明をして見積書をもらい、契約者を決めています。水路工事の仕様書をどう作れば良いのか分かりません。?

  2. 管理人 より:

    管理人です。

    コメントありがとうございます。

    申し訳ございません、工事契約については、建築士や土木施工管理技士の資格など、工事ごとの専門知識が必要なので、本サイトの対象外になります。

    お役にたてず、申し訳ありません。

    ただ、専門知識を必要としない小規模な工事契約であれば、仕様書の作成は次の手順が多いと思います。

    1.複数の工事会社から参考見積書を取り寄せる。(正式契約の前段階です。)

    2.最安値の工事会社へ、工事内容を文書で提出してもらう。
    (工事の概要、工事の手順、使用する材料、工事期間など、可能なら図面も作成してもらう。)

    3.仕様書は、工事会社から提出してもらった資料をベースに作成することになります。そして、仕様書が完成した段階で、見積もり合わせ(あるいは入札)を実施して契約の相手方を決定します。

    また、大規模な工事契約は、一般的に次のように処理します。

    1.補助金の出資元省庁の工事契約の手続きに準じる。
    各省庁では工事契約の標準仕様書や積算基準を設定しています。

    2.国土交通省が定めた契約手続きに準じる。
    例 国土交通省 関東地方整備局
    http://www.ktr.mlit.go.jp/gijyutu/gijyutu00000041.html

    これら大規模な工事契約は、仕様書の作成、予定価格の作成に際して、専門知識が必要です。