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会計法令の解説

契約の確定、官公庁が契約書を取り交わすときの必須知識

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会計法令の解説
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官公庁が契約書を取り交わすときは、記名押印するまで契約が確定しません。なぜ民法よりも厳しく契約の確定を定めているのか、具体例で解説します。民法の契約成立と、官公庁を当事者とする契約の確定の違いです。

 

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契約の確定

 

官公庁が契約書を取り交わす場合、当事者が記名押印するまで契約は確定しません。契約の確定についての条文を確認します。

 

会計法

第二十九条の八  契約担当官等は、競争により落札者を決定したとき、又は随意契約の相手方を決定したときは、契約の目的、契約金額、履行期限、契約保証金に関する事項その他必要な事項を記載した契約書を作成しなければならない。(略)

2  前項の規定により契約書を作成する場合においては、契約担当官等が契約の相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は、確定しないものとする。

 

地方自治法

第二百三十四条

5 普通地方公共団体が契約につき契約書(略)を作成する場合においては、当該普通地方公共団体の長(略)が契約の相手方とともに、契約書に記名押印し(略)なければ、当該契約は、確定しないものとする。

 

契約の相手方を決定したときは、原則として契約書を作成しなければなりません。ただし契約金額が小さい場合は省略できます。

 

そして契約書を作成する場合は、上記のとおり、契約書に記名押印しなければ契約が確定しません。民法の契約成立の考え方と違う点に注意しましょう。

 

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民法における契約の成立日

 

民法では、当事者の意思の合意のみで契約が成立します。契約書などの文書による取り交わしを必要としません。民法では口頭のみの約束で契約が有効に成立することを定めています。

 

民法

第五百二十二条  契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方 式を具備することを要しない。

 

官公庁の契約手続きでは、契約締結前に民間企業から見積書を取り寄せます。この提出された見積書が「契約の申込み」です。競争入札の場合には、入札書の提出が「契約の申込み」になります。

 

通常、見積書には有効期間(一ヶ月以内など)が記載されています。この見積有効期間が記載されている見積書は、次の民法第五百二十三条「承諾の期間を定めてした申込み」に該当します。見積書の有効期間内に、官公庁側の契約担当者が承諾した時点で契約が成立します。承諾とは、「見積書の内容でお願いします」と発注することです。口頭でも電話でもメールでも構いません。契約の相手方が正式受注を理解できれば良いのです。日本の民法では、契約書などの書面による取り交わしを義務付けていません。競争入札では落札決定したときが承諾です。

 

民法

第五百二十三条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。

 

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民法と会計法の契約成立日

 

契約書に記名押印しなければ契約が確定しないと定めている目的は、万が一、トラブルが起きたときに、官公庁側が損害を被ることを防止するためです。国民の税金で運営している官公庁では、民間企業同士の取り引きよりも、さらに安全な取り引きが必要です。そのために厳格な要式行為を求めています。官公庁に損害が発生すれば、国民が損害を被ることになるのです。

 

つまり官公庁の契約手続きでは、民法と会計法の両方が適用されます。民法の上に、さらに会計法が加わっているイメージです。

 

民法と会計法における契約成立は次のようになります。契約書を取り交わす場合です。

 

 競争入札や見積もり合わせで契約の相手方を決定したときに、民法に基づき契約が部分的に成立します。その後、契約書を作成し、当事者が記名押印を完了した時点で、会計法に基づき契約の全てが確定します。

 

長々と解説しましたが、実務上は、さほど意識せずに契約手続きを進めても支障はありません。お互いに信頼している当事者同士が合意した上で契約手続きを進めますので、発注段階で契約が完全に確定していなくても問題ありません。部分的な契約成立でも、実質的には契約の成立と同じ扱いです。よほど悪質な不良会社に遭遇し、重大なトラブルにならない限り、必要のない知識かもしれません。

 

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記名押印が契約の確定になっている理由、悪質な違反例

 

なぜ、契約の確定をこのように厳格に定めたのか、次のような例を想定すると理解しやすいです。わかりやすいように悪質な契約の相手方を「不良会社」とします。

 

1.落札決定後、契約書の押印を依頼するため、不良会社へ契約書を2部送付。

 

2・不良会社は、官公庁を騙して不当に利益を得ようと、物品の型式を古いものへ書き換えて、押印した契約書2部を官公庁側へ提出。

 

3.返送された契約書の内容を官公庁側で確認したところ、契約書が不利な内容に書き換えられていることが判明。官公庁側は契約書の押印を拒否。当初の約束どおりの型式へ修正するよう不良会社へ申し入れ。

 

4.協議の結果、不良会社は修正に応じない。悪質な詐欺のため契約書に押印せず、契約を破棄。法令上も契約は確定してないので、契約しないこととした。

 

(あくまで架空の話です。私は不良会社に遭遇したことはありません。)

 

会計法では、契約書への記名押印を根拠にして、不良会社からの詐欺行為を防止することができます。契約書への押印の順番(最後に官公庁側が押印することが重要)が大切なことも、わかると思います。

 

また記名押印は、自署する必要はありません。むしろWORDなどで作成した契約書の中で、部分的に手書きの場所があると改ざんを疑われます。

 

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