納品確認等のときに作成する「検査調書」についての解説です。官公庁が締結した契約代金を支払うときは、原則として「検査調書」が必要です。給付の完了を確認するための「検収」(検査収納)です。一定金額以下の契約は「検査調書」を省略できます。
「検査調書」の作成と省略
官公庁が締結した「契約の代金」を支払うときは、納品時等に「検収」が必要です。物品が納品された時、工事が完了した時などに「給付の完了」を確認するために検査を実施します。そして一定金額以上の契約では「検査調書」の作成が義務付けられています。「検査調書」がないと支払いできません。
予算決算及び会計令
第百一条の九 (略)契約担当官等から検査を命ぜられた補助者は、検査を完了した場合においては、財務大臣の定める場合を除くほか、検査調書を作成しなければならない。
2 前項の規定により検査調書を作成すべき場合においては、当該検査調書に基づかなければ、支払をすることができない。
「財務大臣の定める場合を除くほか、検査調書を作成しなければならない」と義務付けられています。さらに第2項で、「検査調書に基づかなければ、支払をすることができない」と定めています。
検査調書の作成を省略できる「財務大臣の定める」場合とは、契約事務取扱規則の第二十四条です。
契約事務取扱規則
第二十四条 令第百一条の九第一項 に規定する財務大臣の定める場合は、請負契約又は物件の買入れその他の契約に係る給付の完了の確認のための検査であつて、当該契約金額が二百万円を超えない契約に係るものである場合とする。
契約金額が200万円以下(消費税等すべてを含む)であれば、検査調書の作成を省略できます。
地方公共団体の根拠法令
都道府県や市町村などの地方公共団体は、それぞれの条例等で定めています。参考として東京都の例を記載します。
東京都契約事務規則
第五十一条 検査員は、(略)検査を完了した場合においては、次条に定める場合を除くほか、検査調書(略)を作成し、その結果を契約担当者等に報告しなければならない。
第五十二条 請負契約又は物件の買入れその他の契約に係る給付の完了の確認(略)のための検査であつて、当該契約金額(略)が二百万円未満の契約に係る検査調書の作成は、これを省略することができる。
東京都の検査調書を省略できる契約金額200万円は、国と同じです。大阪府も確認します。
大阪府財務規則
第六十九条 第四項
4 (略)職員は、(略)検査をしたときは、直ちに検査調書(略)を作成しなければならない。ただし、当該検査に係る契約の契約代金が百五十万円以下であるとき(略)は、納品書、工事の完了届書、請求書等にその旨を記載の上記名押印し、又は知事が別に定める方法により当該契約担当者若しくはその指定する職員が検査したことを示すことによってこれに代えることができる。
大阪府では、「検査調書」を省略できる契約金額は150万円以下です。微妙に低いです。事務簡素化の観点から省略するものなので、年間の契約件数などから決定していると思われます。
「検査調書」と「検収」の違い
ここで注意が必要な点は、「検査調書」は省略できますが、「検収」・「検査」は省略できない、ということです。
わかりにくいと思いますので詳しく解説します。
「検査調書」とは、検査を行った結果を「調書」として「正式な書面」として作成するものです。
物品購入契約の検査調書の例です。(書式は任意で、A4が多いです。)
検査調書
契約件名 ○○○○ 一式
(内訳は契約書記載のとおり)契約金額 金○,○○○,○○○円也
(うち消費税及び地方消費税相当額 金○○○,○○○円也)契約の相手方 ○○○株式会社
代表取締役社長 ○○○○契約日 平成○○年○○月○○日
納入期限 平成○○年○○月○○日
納入日 平成○○年○○月○○日
上記の物品は、検査の結果、契約書に相違なく納品されたことを確認する。
平成○○年○○月○○日
検査職員
○○省○○課 ○○課長 印
「検査」自体は、納品された現物について、当初の契約内容と相違がないか確認するものです。通常、メーカー名、型式、数量、動作確認などが検査項目になります。契約書と仕様書の写しを持参し、一品一品、現物と書類を照合しながら確認します。仕様書に性能が記載してあれば、その性能についても動作確認します。いわゆる「検収」です。
検査調書に内訳すべてを記載することもありますが、普通は、「内訳は契約書記載のとおり」と表示する方が効率的です。この「検査調書」という書面を作成するのが、契約金額が200万円を超える契約です。(国や東京都の場合)
すべての契約について、給付の完了を確認するために「検査」を行います。そして契約金額が一定以上のものは「検査調書」を作成します。
検査調書を「省略」したとき
契約金額が200万円以下(国の場合)のときは、検査調書の作成を省略し、納品書(完了通知書)などへ、納品確認の検査を行った日付、氏名を手書きし、検査完了とします。上記の大阪府財務規則では具体的に規定してます。
納品書への記載例(書類を綴じても見える余白に記載します。)
○年○月○日 検査完了 役職名 氏名 サイン(又は押印)
昭和55年に大蔵大臣から各省庁あてに通達された、「会計事務簡素化のための法令の実施について」においても、検査調書を省略したときは、給付の完了の確認を証する適宜の書面を作成するか、請求書等の余白に検査年月日を記入し押印するよう求めています。
なお、近年の税務調査(消費税の調査)では、検収サインは自筆で行うことが求められています。実際に、いつ、誰が検収したか、書類を保存することが必要です。
コメント