「検査」と「監督」を正しく理解する、契約実務に必須の知識を解説

スポンサーリンク

官公庁の契約実務に必須な「検査」と「監督」の解説です。それぞれの業務内容とその違い、「兼職禁止」について説明します。「検査」と「監督」は、法律によって明確に定められています。代金の支払前には「検査」が義務付けられています。また、不正防止を目的とした「兼職禁止」を理解することも重要です。契約実務に必須な知識です。

スポンサーリンク

「検査職員」と「監督職員」は、「兼職禁止」

契約手続きに必要な「検査職員」と「監督職員」は、別々の人を指定しなければならない、という兼職を禁止する規定です。

予算決算及び会計令

第百一条の七  契約担当官等から検査を命ぜられた補助者(略)の職務は、特別の必要がある場合を除き、契約担当官等から監督を命ぜられた補助者(略)の職務と兼ねることができない

 

「検査を命ぜられた補助者」とは、上司から事務の一部を命じられた職員です。通常、職場の内部規則などで「係の所掌範囲」が決められています。係長や係員が「補助者」に指定されていることが多いです。「事務分掌規定」などで事務処理の範囲を定めています。高額で重要な契約案件では、「補助者指定簿」によって個別に特定の者を指定することもあります。個別に指定するのは高度な専門知識を必要とする場合です。

 

それぞれの内容をくわしく解説します。

 

スポンサーリンク

「検査職員」とは

 

「検査」とは、契約の履行内容(給付)を最後に確認することです。売買契約なら納品を終えたときに、製造契約なら製造物が完成したときに、役務契約なら業務が完了したときに実施する検査です。契約書や仕様書を見ながら、内容をチェックします。

 

「給付」とは、「相手に対して行なわなければならない行為」です。約束の内容です。例えば、売買契約を締結したときは、売主は納品する債務があります。納品することが「給付」です。普段使わない言葉なので理解がむずかしいです。給付は「債務者の行為」とも言います。

 

「検査」については、会計法と予決令で定めています。「給付の完了の確認」のために「検査」を行います。

 

予算決算及び会計令

第百一条の四  会計法第二十九条の十一第二項 に規定する工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他の契約についての給付の完了の確認をするため必要な検査は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて行なうものとする。

 

会計法

第二十九条の十一
○2  契約担当官等は、請負契約又は物件の買入れその他の契約については、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、その受ける給付の完了の確認をするため必要な検査をしなければならない。

会計法の中にある「政令」は、予算決算及び会計令を意味します。

 

スポンサーリンク

「監督職員」とは

 

「監督」とは、工事契約や製造契約などで、「製造過程のチェック」を行うことです。契約書や仕様書で決められた内容どおりに工事などが進められているか確認することです。

 

特に工事では、完成後の強度や耐久性が重要です。「道路」や「橋」がすぐに壊れてしまえば人命にも関わります。一定の品質の材料や工法で実施しないと、契約で想定した完成物の強度や耐久性などが不足してしまいます。製造過程で、使用している材料や工法の確認が必要です。完成した後には、外見しか見えません。内部の材質等をチェックするには、作業工程の途中で「監督」を行なうしか方法がありません。そのため予決令第百一条の三で定めています。

 

予算決算及び会計令

第百一条の三  会計法第二十九条の十一第一項に規定する工事又は製造その他についての請負契約の適正な履行を確保するため必要な監督(略)は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、立会い、指示その他の適切な方法によつて行なうものとする。

監督が必要な契約の種類として、工事、製造、請負契約を明記してます。売買契約が除かれているのは、通常、既製品であればメーカーが責任を持って製造していることが、一般的に認知されているからです。もし既製品の中に不良品があれば、メーカーは回収することになります。(製造物責任法(PL法))

会計法

第二十九条の十一  契約担当官等は、工事又は製造その他についての請負契約を締結した場合においては、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、契約の適正な履行を確保するため必要な監督をしなければならない。

 

スポンサーリンク

「検査」と「監督」が必要な契約とは

 

「検査」は、すべての契約について必要です。検査を完了した後に、代金を支払うのが原則です。逆に言えば、検査を行なう前に代金を支払うことは、原則できません。これは、遅延防止法(政府契約の支払遅延防止等に関する法律)第六条で明確に定めています。

 

政府契約の支払遅延防止等に関する法律

第六条  対価の支払の時期は、国が給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求を受けた日から工事代金については四十日、その他の給付に対する対価については三十日以内の日としなければならない。

 

しかし、「監督」が必要な契約は、上述の予決令第百一条の三のとおり、「工事又は製造その他についての請負契約」のみです。「物件の買入れ」(売買契約)は、「監督」を必要としません。そもそも「監督」は、製造過程で実施するものです。売買契約では、契約を締結する時点で製品が完成しています。カタログ製品などの既製品は、すでに製造を終えています。「監督」は不可能です。そのため売買契約では、納品検査のみを実施し、製造過程を監督する必要はありません。メーカーが広く製造販売している既製品は、欠陥等があれば、すぐに無償保証やリコール等でカバーされます。

 

スポンサーリンク

まとめ、「検査」と「監督」の違い

 

「検査」は、契約の相手方から「給付」が行われた時点で実施します。通常は、契約内容がすべて履行された段階です。一方、「監督」は、履行途中に実施します。完成する途中段階でのチェックです。いずれも契約の内容どおりに実施されているか確認することですが、確認する時期が異なります。

 

「検査」は、履行完了後に実施

「監督」は、履行途中に実施

 

「検査職員」と「監督職員」との兼職を禁止している理由は、同一人物が「検査」と「監督」を兼ねてしまうと、「不正が防止できない」ためです。例えば、不当に利益を得ようと、故意に工事の材料や工法などを安上がりに粗雑にしても、「監督職員」と「検査職員」が同一人物では、その不正をチェックできません。不正を防止する内部牽制効果がなくなってしまいます。

 

「検査」と「監督」を同一人物にしてしまうと、仕様書で定められた材料よりも質の低い安い材料を使い、差額を会社側の不当な利益にして、その不当な利益の一部を横領しても、「検査」の段階でチェックできません。誰にもわからず「不正」ができてしまいます。横領しなくても、特定の会社へ不当な利益を得るように、便宜を図ることが可能になってしまいます。
簡単にまとめると、次のとおりです。

「検査職員」は、契約の終了段階でチェックする職員

「監督職員」は、契約の途中でチェックする職員

「検査」は全ての契約が対象

「監督」は、工事、製造、役務等の請負契約が対象

検査職員と監督職員は不正防止のため「兼務禁止」

コメント