検査職員と監督職員の兼職禁止、監督が必要になる契約の種類

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会計法令の解説
2005年 グアム

官公庁の契約手続きに必要な「検査」と「監督」は、原則として兼職が禁止されています。検査と監督を義務付けている根拠法令、それぞれの内容の違いをわかりやすく解説します。また、監督が必要になる契約の種類を理解しておくことも重要です。

 

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検査職員と監督職員は兼職禁止

 

検査職員と監督職員は、別々の人を指定しなければなりません。兼職を禁止している法令を確認します。

予算決算及び会計令

第百一条の七  契約担当官等から検査を命ぜられた補助者(略)の職務は、特別の必要がある場合を除き、契約担当官等から監督を命ぜられた補助者(略)の職務と兼ねることができない。

 

「検査を命ぜられた補助者」とは、上司から事務の一部を命じられた職員です。通常、職場の内部規則で、係の所掌範囲が決められています。課長補佐や係長などの官職指定で補助者に指定されています。事務分掌規定などで、係ごとに担当する範囲が決められていることが多いです。高額な契約案件では、補助者指定簿によって個別に指定することもあります。

 

地方自治体は、それぞれで定めています。参考に東京都の例です。

 

東京都契約事務規則

第四十五条 契約担当者等から検査を命ぜられた職員(以下「検査員」という。)の職務は、特別の必要がある場合を除き、契約担当者等から監督を命ぜられた職員(以下「監督員」という。)の職務と兼ねることができない。

 

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検査職員とは

 

契約手続きで実施する検査とは、契約が約束どおりに履行されたか確認することです。売買契約であれば、納品されたときに数量や型式、性能などを確認します。製造契約なら完成したときに、役務契約なら業務が完了したときに確認します。発注者と受注者、双方の関係者が集まり、契約書や仕様書を見ながら現物を確認します。検査は検収ともいいます。給付の完了の確認検査です。

 

給付とは、相手に対して何かを行うことです。例えば、売買契約を締結すると、売主には納品するという債務が発生します。納品することが給付です。普段使わない言葉なのでむずかしいです。給付は契約内容ともいえます。

 

検査を義務付けている法令は、会計法と予算決算及び会計令です。

 

会計法

第二十九条の十一
○2  契約担当官等は、請負契約又は物件の買入れその他の契約については、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、その受ける給付の完了の確認をするため必要な検査をしなければならない。

 

政令は、予算決算及び会計令を意味します。

 

予算決算及び会計令

第百一条の四  会計法第二十九条の十一第二項 に規定する工事若しくは製造その他についての請負契約又は物件の買入れその他の契約についての給付の完了の確認をするため必要な検査は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて行なうものとする。

 

 

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監督職員とは

 

監督とは、工事契約や製造契約、役務契約などで実施過程のチェックを行うことです。契約書や仕様書で決められた内容どおりに進められているか確認することです。契約書で定めた材料を使い、正しい工法で作業しているかチェックします。

 

特に工事契約では、完成後の強度や耐久性が重要です。道路や橋がすぐに壊れてしまえば人命にも関わります。一定の品質の材料や工法で実施しないと、完成物の強度や耐久性が不足してしまいます。そのために製造過程で使用している材料や工法を確認します。完成した後には外見しか見えません。内部の材質等をチェックするには、作業工程の途中で現物を見て監督を行なうしかありません。そのため法令で監督を義務付けています。手抜き工事などを防止するためにも、製造過程の監督はとても重要です。

 

会計法

第二十九条の十一  契約担当官等は、工事又は製造その他についての請負契約を締結した場合においては、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、契約の適正な履行を確保するため必要な監督をしなければならない。

 

予算決算及び会計令

第百一条の三  会計法第二十九条の十一第一項に規定する工事又は製造その他についての請負契約の適正な履行を確保するため必要な監督(略)は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、立会い、指示その他の適切な方法によつて行なうものとする。

 

監督が必要になる契約は、工事契約、製造契約、役務契約です。売買契約が除かれているのは、市販製品はすでに完成品として販売されていてメーカー保証もあるからです。完成済みの製品なので、製造過程をチェックすることはできません。そのため売買契約は、監督の対象から除かれています。

 

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検査と監督が必要な契約とは

 

検査(検収)は、すべての契約で必要です。検査を完了した後に代金を支払うのが原則です。逆にいえば、検査を行なう前に代金を支払うことはできません。これは政府契約の支払遅延防止等に関する法律第六条で定められています。

 

政府契約の支払遅延防止等に関する法律

第六条  対価の支払の時期は、国が給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求を受けた日から工事代金については四十日、その他の給付に対する対価については三十日以内の日としなければならない。

 

しかし監督が必要な契約は、上述の予決令第百一条の三のとおり、工事契約、製造契約、役務契約のみです。売買契約は監督を必要としません。

 

そもそも監督は、製造過程や作業過程を確認するものです。売買契約では、契約を締結する時点で、すでに製品が完成しています。製造を終えているので監督は不可能です。そのため売買契約では、納品検査のみを実施し、製造過程を監督する必要はありません。

 

つまり、検査と監督の両方が必要な契約は、工事契約、製造契約、役務契約です。

 

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検査と監督の違い

 

検査も監督も、「契約内容を確認する」という意味では同じです。しかし、大きな違いは実施時期にあります。

 

検査は、物品が納品されたり、工事や製造が完成した時点で実施します。契約内容の履行を終えた最後の段階で行うのが検査です。納品検査、完成検査、しゅん工検査、完了検査と考えると理解しやすいです。

 

一方監督は、製造途中や作業途中に実施します。完成するまでの途中段階でのチェックです。いずれも契約の内容どおりに履行されているか確認するものですが、確認する時期が異なります。

 

〇検査は、履行完了後に実施

 

〇監督は、履行途中に実施

 

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兼職が禁止されている理由

 

検査職員と監督職員の兼職を禁止している理由は、同一人物が検査と監督を兼ねてしまうと、不正が防止できないためです。例えば、監督職員が契約の相手方と一緒に不当な利益を得ようとしたとします。契約よりも品質の悪い安い材料や、手抜きの工法などを使い、当初の契約金額よりも安く履行し、その差額を賄賂などでキックバックしても、検査職員が同一人物では不正を見抜けません。不正を防止する牽制効果がなくなってしまうのです。現金のやりとりがなくても、特定の会社へ不当な利益を得るように便宜を図ることが可能になってしまいます。

 

そのため、検査職員と監督職員は、原則として同一人物に指定しないことになっています。

 

なお、予算決算及び会計令第百一条の七の「・・特別の必要がある場合・・」には、例外として同一人物へ検査と監督を行わせることができます。例としては、担当職員が極めて少なくて、一人でしか対応できない場合、特殊な契約のため専門知識を持つ人が一人しかいない場合などです。

 

簡単にまとめると、次のとおりです。

検査と監督の簡単なまとめ

 

検査職員は、契約の終了段階でチェックする職員

監督職員は、契約の途中でチェックする職員

 

検査は全ての契約が対象

監督は、工事契約、製造契約、役務契約が対象

 

検査職員と監督職員は、不正防止のため、原則として兼職禁止

コメント

  1. とに より:

    御指導ありがとうございます。
    役務関係に関しまして、確かに、当方におきましても事実上監督は行われていますが、契約担当官等から監督を命ぜられていることを疎明する書類が存在しませんので、上司、人事等に上申し、直ちに是正することといたします。
    今後も適切な会計事務を心がけますので、よろしくお願いします。

  2. とに より:

    いつも拝見、勉強させていただいています。
    さて、監督についてですが、予決令では「その他についての請負契約」には監督をしなければならないとあります。
    この場合の「請負契約」とは、工事及び製造に係るような請負契約を指すのでしょうか。
    いわゆる清掃や保守などの雑役務費関係については監督は不要なのでしょうか。
    と言いますのも、当方が所属する組織では、雑役務関係(清掃などです。)では監督をおかない場合が多く、工事、製造、各所修繕関係では監督を置きます。
    また、軽微な修繕関係では契約書内の監督に当たる記載を削除し、監督を省略する取扱いをしている場合もあるようです。
    私としては予決令の規定からすると、役務関係の請負契約でも監督をおかなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
    なお、他官公庁様の案件で申し訳ないのですが、ネットで検索をすると、某省庁が締結したデータ入力の請負契約について、会計検査院が監督が適切に行われていないなどと指導している事例などがあります。
    やはり、役務関係の請負契約でも監督はおかなければならないでしょうか。

    長文になり申し訳ありませんが、御教示のほどよろしくお願いします。

    • 矢野雅彦管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      清掃や保守などの役務契約についても、監督は必要です。

      ご存知のとおり、監督を行う目的は、品質を確保するためです。履行途中に材質や製造方法、工法などを確認して、契約で定めた目的物を完成させることが目的です。そのため既製品の購入契約では、監督は不要です。(すでにメーカーが製品を完成させているので、監督のしようがありません。)

      ただ役務契約については、一般的に、すでに監督されているかと思います。

      例えば、清掃契約は毎日実施していることが多く、契約担当者だけでなく、他の職員も清掃状況を見ていると思います。清掃が粗雑だったり、拭き忘れている場所があれば、すぐにクレームの電話が入るでしょう。特に日常清掃では、業務日報(どの清掃員が、どのエリアを掃除したか)が毎日提出され、清掃内容も確認しているので、監督を行っているはずです。清掃の契約担当者は、常に現場が綺麗になっているかを見ていると思います。現場を見ることで監督が行われていることになります。

      また、保守契約も同じです。定期点検時には作業内容を見ていると思います。点検が終わった後は、作業が完了した旨のサインも行います。定期点検以外でも、日常的に使用していて不具合がないかどうか、契約担当者だけでなく、他の使用者も確認しているでしょう。故障があれば、すぐに使用者から連絡が入ります。保守契約の場合には、機器が正常に動作しているか日常的にチェックして監督しているわけです。

      ご質問にある、データ入力の請負契約などは、もし余裕があるなら、実際の現場を目視して仕様書どおりに作業がなされているか監督するのが理想です。しかし作業場所が遠方であったり、契約金額が小さくて、現場視察の出張旅費まで工面するのが困難な場合もあります。現場へ出かける余裕がないときは、実際の作業風景を写真やビデオで送ってもらったり、書面で進捗状況を報告してもらい確認することになります。作業内容を把握することで監督できます。

      いずれも、契約がきちんと実施されているか、「手抜き」がないか確認することで監督を行うことができます。

      なお、一般的には係長クラスが「監督」を行い、上司の課長補佐クラスが「検査」を行うことが多いです。監督職員は頻繁に契約内容を確認しなくてはならないので係長クラスです。検査は、通常1回だけなので上司が行います。