官公庁の会計手続きに必要な支出負担行為の解説です。そもそも支出負担行為とは、何を行うことなのでしょうか、また、なぜ必要なのでしょうか。契約手続きを例にして、支出負担行為として整理する時期を解説します。
支出負担行為とは
支出負担行為は、官公庁の会計手続きで使用する用語です。法令に違反したり、予算を超えた事業を実施しないよう、コントロールするための制度です。法令と予算の範囲内で支出を行うために、支出負担行為があります。国と地方自治体では微妙に内容が異なります。地方自治体には「支出負担行為担当官」という会計機関はありません。ここでは国の支出負担行為担当官を解説しますが、地方自治体も考え方は同じです。
歳出予算からお金を支払うときは、支出負担行為を行わなくてはなりません。給与や旅費、契約代金の支払いなど、お金に関係すること全てが対象になります。会計書類の決裁手続きを行うときに、支出負担行為担当官から確認を受けます。
今回は、契約手続きに関する支出負担行為の解説です。契約担当者にとって必須の知識です。特に、支出負担行為担当官と契約担当官の違いについては、十分に理解しておく必要があります。両方とも契約締結権限を有していますが、契約内容により分かれることになります。
会計法
第十一条 支出負担行為は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。
参考に地方自治体の根拠法令です。
地方自治法
第二百三十二条の三 普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(これを支出負担行為という。)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。
支出負担行為は、おおまかな意味ならわかると思いますが、とても奥が深いです。簡単にいえば、債務を負担する行為という意味です。債務とは、お金を支払う義務を負うことです。例えば、パソコンを購入することを考えましょう。発注した後に物品が納品になり、納品検査を終えてから代金を支払います。この契約手続きの中で、発注時(契約が成立する時点)に、債務を負担するので、支出負担行為を行います。正式発注した後、納品検査を完了すれば、自動的に代金を支払う債務が発生するからです。
上述の会計法第十一条をわかりやすく表現すれば、次のとおりです。
お金を払う義務を負うためには、法令に基づいて、歳出予算の範囲内で行わなければならない
また国の会計法令では、会計機関を「支出負担行為担当官」と「契約担当官」で厳密に区別しています。それぞれの所掌範囲を理解しておきましょう。
契約手続の流れと「支出負担行為の時期」
参考に、少額随意契約の売買契約手続を、時系列で解説します。
官公庁側から見た契約手続きの流れ
1.仕様書提示(見積書の提出を依頼)
2.見積もり合わせ
3.最安値の会社を選定し、正式発注(支出負担行為)
4.納品
5.納品検査完了(代金支払債務が発生)
6.請求書受理
7.代金支払
官公庁側が契約の相手方に対して正式に発注するときが、支出負担行為を行う時期になります。会計法令に基づいて、予算の範囲内で契約することを確認する時期です。厳密には、正式に発注する前に、支出負担行為の決裁手続きを行います。法令に基づいて契約の相手方を選定していること、予算の範囲内であることを決裁で確認してから、正式に発注します。
実務的には、担当係員も担当係長も、会計法令に基づいて契約手続きを進めます。そして契約手続きを始めるときは、最初に(上記1の段階)予算が確保されているか確認しています。
もし、契約手続きを始めた後になって「予算が確保されていない」ことが判明すると、それまでに行っていた契約手続きが無駄になってしまいます。そのため、一番最初に予算が確保されているか確認します。
コメント
記事の冒頭において、「『支出負担行為』は、国の契約実務担当者のみが使用する言葉です」との記載がありますが、国のみならず、地方公共団体においても支出負担行為を取ります。
したがって、「国の契約実務担当者”のみ”」という記載は誤認を招く恐れがある記載だと思われますがいかがでしょうか?
コメントありがとうございました。
おっしゃる通りです。記載を修正しました。