官公庁が支払いを行うときは税金を使います。税金を使うので支払方法が法令で定められています。原則は後払いですが、例外として前金払や概算払いがあります。それぞれの支払方法を簡単に理解するための一覧です。複雑な支払方法の違いを理解しましょう。
官公庁の支払方式とは
官公庁の支払い方式を簡単にまとめました。官公庁の支払いは、後払い(あとばらい)が原則です。例外として前金払(まえきんばらい)、概算払(がいさんばらい)、精算払(せいさんばらい)があります。それぞれを区分するのがややこしいので、わかりやすいように次の2点で区分しました。
支払方式の区分
◯支払時期
◯金額が確定しているか
大きく分けると、事前に支払う場合、終わってから支払う場合、また、金額が確定している場合、金額が未確定の場合に分かれます。
支払時期で区分する前金払、概算払、後払い、精算払
事前に支払う場合・・前金払、概算払
何かを実施する前に支払うことです。外国製品の購入契約で事前に契約代金を支払う場合、旅費を出発する前に支払う場合などです。
終わってから支払う場合・・後払い、精算払
物品の購入契約や製造契約などでは、納品完了後あるいは製造完了後に代金を支払います。何かの作業が終わった後、工事などが完成した後に支払う場合です。後払いは(あとばらい)と読みます。「ごばらい」と読んでしまうと誤払いを意味し、間違いになってしまいます。
支払金額が確定しているかで区分する前金払、後払い、精算払、概算払
支払金額が確定している場合・・前金払、後払い、精算払
金額が確定している契約代金の支払いや、出張完了後に支払う精算払いです。金額が確定しているので、その後に過不足を調整することはありません。確定金額で支払った後に過不足を調整する場合は、なんらかのミスがあったことになります。確定金額を修正するときは誤払いがあったことになります。
支払金額が未確定の場合・・概算払
細かい金額がわからない場合や、実際に行わないとわからないときに、およその金額で支払うのが概算払です。
概算払の典型例は、出張前に支払う旅費です。事前に予約する宿泊代や航空賃、新幹線代金などは確定していますが、出発前に旅費を支払うときは金額が確定していないことになります。なぜなら出張当日に緊急の重要会議が発生したり、訪問先の相手方が急遽都合つかなくなることがあるからです。急病になる可能性も否定できません。出張が途中で変更になったり、取りやめになる可能性があるために金額が確定しないのです。稀な例では、地震が発生し新幹線が動かなくなるかもしれません。
このように事前に支払った後に、不測の事態が発生し金額が変わることが予想できるときは概算払になります。事前に支払うときに、金額が変わる可能性があるものを概算払といいます。概算払ができるケースは法令で定められています。そして概算払の場合には、必ず精算手続きが必要になります。
実際に実施した後に確定金額で過不足を調整するのが精算払いです。精算払いは、追加で支払う場合、返納してもらう場合、過不足なしのゼロ精算のいずれかになります。精算手続きは、領収書などの関係書類を添付して行います。ただし、概算払いは手続きが2倍かかります。事前に支払うときと、終わった後の精算手続きに同じように手間がかかります。精算手続きを忘れると、不正を疑われることもあるため、できるだけ概算払は行わない方が安全です。
官公庁の支払方式区分表
上記の支払方法をまとめると次のようになります。
官公庁の支払方式 一覧
区分 | 確定金額 | 金額未定 |
事前に支払う | 前金払 | 概算払 |
事後に支払う | 後払い、精算払い | ━ |
精算払いは、概算払いのときだけ該当します。
原則は後払いなので、最初は後払いが可能か検討し、どうしても後払いが困難な場合に前金払や概算払いを行うことになります。
前金払や概算払などの根拠法令
官公庁の支払いは、税金を使っています。支払いについても法令で明確に定められています。原則が後払いで、例外として前金払と概算払を認めている根拠法令は次のとおりです。
支払方式の根拠法令
官公庁の支払い方法の原則を定めた法律です。原則は後払い、例外として前金払と概算払が可能であることを定めています。会計担当者には必須の知識です。
国の場合
会計法
第二十二条 各省各庁の長は、運賃、傭船料、旅費その他経費の性質上前金又は概算を以て支払をしなければ事務に支障を及ぼすような経費で政令で定めるものについては、前金払又は概算払をすることができる。
地方自治体の場合
地方自治法
第二百三十二条の五
2 普通地方公共団体の支出は、政令の定めるところにより、(略)概算払、前金払(略)の方法によつてこれをすることができる。
前金払の根拠法令
国の前金払の根拠法令
予算決算及び会計令
第五十七条 会計法第二十二条の規定により前金払をすることができるのは、次に掲げる経費に限る。(略)
一 外国から購入する機械、機械部品、航空機、航空機部品、航空機専用工具、図書、標本又は実験用材料の代価(略)
二 定期刊行物の代価、定額制供給に係る電灯電力料及び日本放送協会に対し支払う受信料
三 土地又は家屋の借料
四 運賃
(略)
地方自治体の前金払の根拠法令
地方自治法施行令
第百六十三条 次の各号に掲げる経費については、前金払をすることができる。
一 官公署に対して支払う経費
二 補助金、負担金、交付金及び委託費
三 前金で支払をしなければ契約しがたい請負、買入れ又は借入れに要する経費
四 土地又は家屋の買収又は収用によりその移転を必要とすることとなつた家屋又は物件の移転料
五 定期刊行物の代価、定額制供給に係る電灯電力料及び日本放送協会に対し支払う受信料
六 外国で研究又は調査に従事する者に支払う経費
七 運賃
八 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上前金をもつて支払をしなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの
概算払の根拠法令
国の概算払の根拠法令
予算決算及び会計令
第五十八条 会計法第二十二条の規定により概算払をすることができるのは、次に掲げる経費に限る。ただし、第三号から第六号までに掲げる経費について概算払をする場合においては、各省各庁の長は、財務大臣に協議することを要する。
一 旅費
二 官公署に対し支払う経費(次号から第六号までに掲げる経費を除く。)
三 委託費
四 補助金、負担金及び交付金
五 損害賠償金
六 民事訴訟法(略)
地方自治体の概算払の根拠法令
地方自治法施行令
第百六十二条 次の各号に掲げる経費については、概算払をすることができる。
一 旅費
二 官公署に対して支払う経費
三 補助金、負担金及び交付金
四 社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に対し支払う診療報酬
五 訴訟に要する経費
六 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上概算をもつて支払をしなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの
上記の国と地方自治体の根拠法令を比較すると、予算決算及び会計令の本文は「・・次に掲げる経費に限る。」と記載されており限定的であることがわかります。地方自治体の方が対象を広く捉えています。
なお、この他に資金前渡や隔地払いなどもありますが、視点が異なるので今回の説明には含めていません。いずれも上記の中に含まれます。
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