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入札の不調と不落随契の根拠法令、不落随契が問題になるケース

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入札が不調になってしまった 入札
入札が不調になってしまった
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入札の不調と不落随契の違いを、わかりやすく解説します。競争入札を実施する契約担当者、競争入札へ参加する営業担当者向けの必須知識です。入札手続きを正確に理解するためにも、それぞれの違いや根拠法令を確認しましょう。

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「不調」と「不落随契」

 

最初に、不調と不落随契の違いについて、簡単に把握しましょう。学校では教えてくれないので、念のため、読み方から確認します。

 

不調は、「ふちょう」です。「入札が不調になった」という言い方をします。不落随契は、「ふらく ずいけい」です。不落随意契約(ふらく ずいいけいやく)を省略しています。単に「ふらく」とだけ呼ぶこともあります。「不落」は、落札者がなかったことを意味します。不調も不落も、落札せずに入札が終了したことです。しかし不落は、その後に随意契約を締結したことを意味します。つまり随意契約の種類として不落を用います。

 

不調と不落随契は、入札手続きの流れの中で時期が異なります。共通点は、入札が上手くいかなかった状態を指す言葉です。手続きの流れの中では、不調の後に、価格交渉が成立すると不落随契になります。

 

開札しても落札者がなかった場合が不調です。落札者がいなくて、入札が成立しなかったときに、「入札が不調になった」と表現します。一方不落随契は、不調になった後に、再度公告入札を断念し、価格交渉で随意契約を締結するときに使います。不落随契するかどうかは、任意です。必ず随意契約するわけではありません。

 

時系列的に整理すると、次の順番になります。

 

入札

開札

落札者がない・・不調

随意契約するか判断(時間的な制約から、再度公告入札できないと判断し、入札やり直しを断念)

価格交渉で随意契約を締結・・不落随契

 

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入札の不調

 

不調とは、落札者がなかった状態を指します。

 

競争入札を実施する目的は価格競争です。落札上限価格である予定価格の範囲内で、最も安い相手方を落札者として決定します。落札者が決定すれば、入札が成立したことになります。「無事に入札が終わった」と安心できるわけです。(落札者が決定すれば、正式な契約を締結できます。大きな入札は、調査や書類作成で数か月かかります。落札し、契約の相手方が決定したときは、皆で居酒屋で一杯やることが多かったです。)

 

落札者がなかった場合とは、次のケースです。

 

 入札者がいない

 

入札者はいたけれど、落札者がいない

 

入札者がいない場合とは、そもそもが、誰も関心を示さない入札案件だったことになります。一般的には契約担当者の事前調査が不足していたことになります。十分に事前調査すれば、たとえ1社でも入札が可能になる仕様書が作成できるからです。入札者がいない状態は、かなり恥ずかしい入札と言えます。当然ながら杜撰な書類作成が疑われます。膨大な労力(通常、開札までに2ヵ月かかります。)を無駄にしたことになるわけです。不調になれば、入札手続きが無駄になったので、税金の無駄遣いともいえます。

 

入札者はいたけれど、落札者がいない場合とは、予定価格以内の入札金額がなかったケースです。再度入札を実施しても、安くなる見込みがないため入札を打ち切る場合と、再度入札の途中で、入札者全員から辞退札が提出された場合です。入札者が(これ以上安くできませんと)ギブアップしたケースです。実際の入札不調は、このギブアップのケースがほとんどです。

 

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入札不調の根拠法令

 

入札の不調は、落札者がなく、入札が成立しなかった状態です。

 

落札者とは、次の会計法で定めているとおり、予定価格の範囲内の入札をした者です。例えば、官公庁が物品を購入する契約であれば、予定価格を 1,000万円としたときは、900万円の入札金額なら落札になります。1,100万円の入札金額なら落札しません。予定価格が落札上限価格になるわけです。予定価格を超えて落札させることはできません。(予定価格と同額の場合は落札になります。)

 

会計法

第二十九条の六 契約担当官等は、競争に付する場合においては、(略)予定価格の制限の範囲内で(略)最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。(略)

 

地方自治体は、次の条文です。

 

地方自治法

第二百三十四条
3 普通地方公共団体は、一般競争入札(略)に付する場合においては、(略)予定価格の制限の範囲内で(略)最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。

 

国の法律(上記の会計法)と、ほぼ同じ内容です。

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不落随契の根拠法令

 

不落随契(不落随意契約)は、落札者がなく入札が不調になった後、再度、入札公告を公開して入札をやり直す時間がないときに締結する随意契約です。

 

本来であれば、入札が不調になったときは、もう1度最初から、入札を実施するのが原則です。最初の入札に参加していなかった別の会社が入札して、安く落札できる可能性もあるからです。そのために再度公告入札として、公告期間を短縮する手続きも認められています。

 

しかし入札手続きは、かなり長期間(通常は、2ヵ月以上) 必要です。また契約内容によっては、履行期間が数か月と長期にわたる場合もあります。例えば、契約を締結してから納品までに半年以上必要になったり、製造期間が7ヵ月以上の契約もあります。そうなると、年度内に入札をやり直す時間的な余裕がありません。また契約できなければ、関連した大きな事業に支障を及ぼすこともあります。そのため再度公告入札を実施する時間的ゆとりがないときは、不落随契が認められています。根拠法令は次のとおりです。

 

予算決算及び会計令

第九十九条の二 契約担当官等は、競争に付しても入札者がないとき、又は再度の入札をしても落札者がないときは、随意契約によることができる。この場合においては、(略)最初競争に付するときに定めた予定価格その他の条件を変更することができない。

 

地方自治法施行令にも、第百六十七条の二第一項に同様の規定があります。

 

地方自治法施行令

第百六十七条の二 (略)随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
八 競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。

 

上記の「・・再度の入札・・」とは、再度公告入札ではありません。入札会場で落札しない場合に、すぐに続けて、2回目、3回目と札入れすることです。すぐに入札を繰り返すことを「再度入札」といいます。「再度公告入札」は、一から入札手続きをやり直し、新しい入札公告を公開して実施することです。

 

ただ注意が必要なのは、不落随契が認められる条件は、予定価格の範囲内で契約しなくてはいけないことです。実際には、入札金額が安かった順番で、個別に価格交渉を行います。もし入札者の中で予定価格以下の金額提示が無理であれば、入札に参加してない別の会社とも価格交渉し、随意契約可能です。一般的には、最安値の会社が、入札金額よりも安い見積書を提出してくれます。

 

ここで疑問に思うかもしれません。

 

 ギリギリの入札金額で落札しなかったのだから、それ以上の値引きは無理ではないか?

 

普通に考えれば、そのように感じるのが当然だと思います。しかし実際の競争入札では、随意契約として価格交渉すれば、さらに値引きに応じてくれることが多いです。

 

入札へ参加するときは、社内で上層部と「値引額の限界」を事前に打ち合わせしています。上層部から「この入札は、いくらまでなら値引きして良い」と権限を与えられています。もし、その値引き幅を超えるようであれば、社長を含めた上層部と再度検討が必要になるのです。逆に言えば、入札金額以上の値引きも可能なわけです。価格交渉では、官公庁側の契約担当者が、「ぜひ契約をお願いしたい」と(真剣に)頭を下げてお願いすることになります。民間企業側としては、「そこまで依頼されるなら協力しましょう」となります。断れば他社に契約を取られる、という意識が働くのかもしれません。

 

しかし予定価格以内の金額提示がなければ、不落随契も無理です。こうなると、かなり痛い状況になります。仕方なく最初から入札をやり直すしかありません。仕様書と予定価格を再度作成し、入札公告からやり直します。

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不落随契が問題になるケース

 

仕方なく競争入札を取りやめて、随意契約の価格交渉に入るときは、かなり躊躇します。苦労して、2か月くらいかけて、ようやく作り上げた仕様書と予定価格です。できれば入札手続きの中で、スッキリと落札させたいわけです。落札せずに随意契約へ移行することは、後ろめたい気持ちになります。契約担当者にとって、入札の不調は、かなりショックです。

 

もちろん契約手続きに余裕があるなら、再度公告入札を実施すべきです。しかし単年度予算で時間がないときは不落随契せざるを得ません。

 

不落随契は、競争性を排除した随意契約とは異なり、契約方式や契約金額が問題になることはありません。なぜなら価格競争を実施した結果、予定価格が厳しすぎて随意契約になったからです。一般的に、随意契約が問題になるのは、競争していない場合です。契約金額が業者の言いなりではないか、高いのではないか、という部分です。「競争していないために、価格が適正ではない」という観点から問題視されることが多いです。

 

価格競争を行っていれば、(落札しなかった入札書があるので)ギリギリの価格だったことが証明できます。随意契約で問題となる価格面がクリアされているわけです。そのため不落随契は、予定価格の範囲内で契約できている限り、問題はありません。

 

不落随契が問題になるケースは、入札をやり直す時間が十分にあるのに、(サボって)再度公告入札しなかった場合だけです。履行期間(納入期間)が1ヵ月程度の短期の入札の場合のみです。入札になるような大規模な契約では、ほとんど該当しません。

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コメント

  1. 匿さん より:

    不落随契についてですが、不落になった場合も業者側は予定価格を聞くことはできないのでしょうか?
    落札ができなかった業者に「この価格まで落としてもらえないか」と価格交渉もできない状況であれば、契約も行えないように思うのですが、実際の取引はどうなのでしょうか。

    • 矢野雅彦 矢野 雅彦 より:

      管理人です、コメントありがとうございます。

      予定価格は、「秘密にする場合」と、「公表する場合」があります。地方自治体や国の一部の入札では事前公表、あるいは事後公表しています。公表して公開する場合は、入札広告などに記載されています。入札案件ごとに判断されます。

      予定価格を公表(公開)しない「秘密扱い」の場合は、不落随契でも教えることはできません。不落になる前段階でも予定価格を教えて(公表)ないですし、一部の会社へ教えたことになってしまうと、法律違反(犯罪)です。

      「秘密扱い」の予定価格を、入札参加会社へ漏らしてしまうと「予定価格漏洩」として犯罪になります。官製談合防止法違反です。

      実際には、予定価格に達しないときは、入札を打ち切り、最安価格の会社と交渉に入るケースが多いです。最安価格の会社は、交渉時に「予定価格とは、どのくらい開いてますか?」とか、「ここだけの話しとして予定価格を教えてもらえませんか?ひとりごとでもいいです。」などの要望があります。しかし、「すみません、この入札は、予定価格非公表なので、金額を言えません。」と返答します。

      そして次のように依頼します。

      「これ以上、もう無理という、最大限の値引き額で金額を提示してください。駆け引き抜きにして、これ以上無理という金額です。」

      多くの会社は即答せずに、持ち帰って検討し、2~3時間後くらいに電話連絡してきます。まれに翌日のこともあります。

      この金額が予定価格の範囲内でなければ、不落随契もしません。予定価格を超えていれば、再度仕切り直して、(かなり大変ですが・・二度手間ですし)最初から入札を行うことになります。リセットする入札であれば、予定価格を見直して再設定することが可能です。落札しない金額なら増額することもあります。

      ただ、ここで注意が必要なのは、そもそも予定価格は、「安ければ良いもの」ではないということです。大昔(1990年くらいまで)の会計検査院は、「予定価格が高すぎる」と口癖のように言ってましたが、「安ければ良い」という考え方は正しくないです。そもそも予定価格とは「市場で正常に取引できる金額」で設定すべきです。適正な利益を含めて予定価格とするのが正解です。つまり、適正な予定価格であれば、必ず「落札するはず」なのです。

      • 匿さん より:

        丁寧なご回答いただきありがとうございます。
        企業の側としては「入札辞退=もうこれ以上無理金額を下げるのは無理です。」という意思表示だと思うのですが、なんだか不思議な制度だなと感じました。
        とにもかくにも公開されていない予定価格は聞かないという点は今後十分に注意していきます。
        ありがとうございました。

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