「私事用務を含む出張」は認められる?旅費の公私混同を防ぐには

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出張旅費
2014年 奈良

私事のために滞在する旅行先から、そのまま出張するときの旅費についての解説です。プライベートな旅行先が、出張先に近いときなどは、旅行先から出張する方が便利です。これらの「私事用務を含んだ出張」については、公私混同を避ける意味で、注意が必要です。

 

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「私事用務を含む出張」が、なぜ認められるか

 

2020年10月現在、多くの官公庁では、公務員による「私事用務を含む出張」が認められています。

(私事用務とは、仕事以外の「遊び目的」という意味です。公務員が、国民の税金を使って出張するときに、公務の他に「遊び目的」も含むということです。)

 

私は個人的に、「私事用務を含む出張」について、かなり違和感を持っています。なぜ、このような運用になっているのでしょうか?

 

実は、旅費法の中に、「私事用務」についての難解な条文があり、それを勘違いして運用しているからです。

 

では、最初に根拠法令を確認します。

旅費法

第十条 私事のために在勤地又は出張地以外の地に居住又は滞在する者が、その居住地又は滞在地から直ちに旅行する場合において、居住地又は滞在地から目的地に至る旅費額が在勤地又は出張地から目的地に至る旅費額より多いときは、当該旅行については、在勤地又は出張地から目的地に至る旅費を支給する。

 

簡単に整理すると、次の2点を定めています。

旅行先にいるときは、旅行先から出張できること(事前承認が必要)

旅行先からの出張旅費は、職場を起点とした旅費額を上限とすること

 

遊び目的などの「プライベートな旅行」で、遠くへ出かけているときに、その出先から出張することを認めた条文です。「プライベートな旅行」が「私事用務の旅行」です。

 

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勘違いしてしまう「私事用務の具体例」

 

週末の土日にプライベートな旅行へ出かけ、月曜日から出張するときに、自宅へ帰らずに、旅行先から出張するケースです。旅行先が出張先に近いときなど、自宅へ戻るより効率的になる場合が多いです。

 

ここで注意したいポイントは、上記、旅費法第十条の趣旨です。明確に表現されていませんが、この条文は、「職場から出張先までの旅費と、プライベートな旅行先から出張先までの旅費を比較して、安い方を旅費として支給する」というのが趣旨です。

 

つまり、プライベートな旅行をしているときに、旅行先から出張先までの交通費が安ければ、安い交通費しか支給できないのです。

 

この条文の意味を、次のように勘違いすると、かなり困ったことになります。

旅費法第十条は、旅行先から出張するときに、旅費が多額になるときは、職場を起点とした旅費が支給される。多額になるときだけ適用されるので、旅費が安くなるときは関係ない。旅行先からの交通費が安くても、通常の交通費が支給される。旅行先からの出張でも、職場を出発地とした普通の旅費が支給される。

この考え方は、根本的に間違っています。(完全な公私混同です。)

 

例えば、次のケースです。

職場が東京、 プライベートな旅行先が名古屋、 出張先が京都

普通の交通費 東京 ⇒ 京都 片道 14,170円

旅行先からの交通費 名古屋 ⇒ 京都 片道 5,910円

 

旅費法第十条の正しい読み方は、安い方(名古屋 ⇒ 京都)の 5,910円のみを旅費として支給する、という意味です。ところが、旅行先(名古屋)から出張先(京都)へ行った場合でも、職場(東京)からの旅費が支給されると勘違いしてしまうのです。

 

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旅費の原則は、「必要ない交通費」は支給しないこと

 

勘違いの主な原因は、公私混同についての判断が曖昧だからです。

 

旅費計算の原則は、出張の出発地を、職場(上記の例では東京)としています。職場(東京)から出張先(京都)までの交通費を計算し、旅費として支給します。

 

ところが実際の出張では、出張当日は職場へ出勤せずに、自宅から出張することが多いです。自宅から出発するのなら、出発地を自宅としないと、交通費が変わってきます。しかし、旅費計算の原則として職場を出発地(起点)にしています。ここが「旅費の中の交通費は、職場を起点として支給される」と誤解してしまう部分です。

 

職場を出発地として交通費を計算しても不都合はありません。なぜなた、自宅から職場までの交通費は、「通勤手当」として、すでに給与の中で支給されているからです。そして、職場を出発地としている理由はもうひとつあります。それは、それぞれの職員の自宅住所を出発地とせず、一律に職場を出発地とした方が、旅費計算が効率的だからです。

 

職場までの交通費は、すでに給与の中で支給されていますし、一律に職場を出発地とした方が事務簡素化にもなるからです。ただ、旅費を計算するときに、通勤経路を含んでいれば定期券で乗車できるため、その部分は減額調整します。(旅費法 第四十六条)

 

もし例外的に、自宅を出発地とするときは、事前承認(旅行命令)が必要です。そして、自宅からの出発の方が交通費が安ければ、旅費法第四十六条に基づき、安い交通費しか支給されません。

 

簡単に言えば、「必要のない交通費は支給しない」というのが旅費法の基本的な考え方です。

 

また、旅費の基本原則は、「実費弁償主義」です。出張に必要な費用は、旅費として支給することは可能ですが、不必要な旅費は支給できません。これは旅費法第四十六条によって明確に定められています。

国家公務員等の旅費に関する法律

第四十六条 各庁の長は、旅行者が(略)不当に旅行の実費をこえた旅費又は通常必要としない旅費を支給することとなる場合においては、その実費をこえることとなる部分の旅費又はその必要としない部分の旅費を支給しないことができる。

 

プライベートな旅行先から、出張の目的地へ向かう時に、職場から出張先へ行く旅費よりも安く済むことがあります。プライベートな旅行で、出張先近くに滞在しているときは、旅行先から出張先までの安い旅費しか支給されません。実費弁償という趣旨からすれば、当然のことです。

 

もし、プライベートな旅行先までの交通費部分を旅費として支給するなら、公私混同になります。プライベートな旅行に対して、税金を原資とした旅費を支給すべきではありません。

 

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「私事用務を含む出張」の基本的な考え方

 

簡単に整理すると、次のようになります。
(プライベートな旅行先から直接出張する場合です。)

職場からプライベートな旅行先までの交通費・・自己負担

プライベートな旅行先から、出張先までの旅費交通費・・公費で旅費として支給可能
(ただし上限額は、職場から計算した旅費額)

 

この基本的な考え方を理解していないと、公私混同、旅費の不正使用、不適切な会計手続きなどと疑われてしまいます。

 

出張の前に、有給休暇などを使いプライベートで旅行するときは、注意が必要です。

 

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出張が終わった後に、「私事用務」で旅行

 

では、出張が終わった後、そのままプライベートな旅行へ出かける場合はどうでしょうか?

 

有給休暇を取得して、出張後に帰らず、そのままプライベートな旅行に入る場合です。事前に有給休暇の承認手続きが終わっており、帰庁報告についても、プライベートな旅行後に行うことで承諾を得られている場合です。

 

旅費の負担方法は、次のとおりです。

出張先から、プライベートな旅行先までの旅費交通費・・自己負担

プライベートな旅行先から、自宅へ帰るまでの旅費交通費・・自己負担

 

つまり、出張を終えた後に、続けてプライベートな旅行をするときは、出張が終えた以後は、自己負担になります。出張先から旅行先へ行くまでの交通費、旅行先から自宅へ帰る旅費交通費は、すべて自己負担です。もし帰りの旅費を支給してしまうと、「公私混同」、「不正な旅費支給」になります。

 

「旅費は、本来、往復の交通費を支給すべきもの」という考え方もありますが、これは、プライベートな旅行が含まれない場合の考え方です。プライベートな旅行「私事用務」が含まれた時点で、公私混同を避ける意味で、明確に区分せざるを得なくなります。

 

もし自己負担したくないのであれば、そもそも私事用務を含めないことです。公私混同を疑われないようにすることです。

 

昔は、プライベートな旅行と、公務の出張は、公私混同を避ける意味でも、完全に分けていました。もし日程が一緒になりそうなときは、プライベートな旅行の日程をずらしていました。出張の際に、家族や友人が一緒に同伴しているとなれば、その事実だけで公私混同を疑われます。公務員として行うことではありません。

 

ときどき、「出張先で、いろいろなところを観光すれば(私事旅行すれば)、見聞を広めることができる。仕事にも、いつか役立つから、私事用務を認めて旅費を支給しても良い。」と言う人もいます。しかし、見聞を広めるのは自己研鑽であり、人として当然のことです。税金を使うことではありません。プライベートで行うことです。しかも今はインターネット社会なので、いくらでも見聞は広められます。

 

最近(2020年)は、規制改革やら、弾力的な執行などが求められ、本来の法律の趣旨を逸脱した手続きが増えています。「税金を使う」という意味を、しっかり考えたいものです。

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