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契約手続き

官公庁の契約で再委託が認められる場合、再委託が認められない場合

たくさんの再委託で、誰が作業しているかわからない! 契約手続き
たくさんの再委託で、誰が作業しているかわからない!
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官公庁の委託契約では、再委託が問題になることがあります。契約の相手方が、業務のほとんどを第三者へ丸投げするような再委託になると、そもそもなぜ契約の相手方に選んだのか疑義を招くことになります。再委託の問題点、再委託が認められる場合、再委託が認められない場合の解説です。

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なぜ再委託が問題になるのか

 

官公庁が締結する委託契約では、原則として再委託を禁止しています。再委託を禁止している理由は、責任の所在が不明確になるからです。 当たり前のことですが、税金を使う官公庁が発注する契約は、適正に履行されなければなりません。 契約を実施するのに必要な経費のみの契約金額であること、契約内容の品質が確保されていることが必須です。

 

 国民の貴重な税金を使う契約であるため、不必要な金額が含まれていたり、粗雑な、いいかげんな契約は許されないのです。契約の相手方が責任を持って履行しなければなりません。

 

「契約について責任を持つ」ということは、契約内容をすべて把握できる状態であることを意味します。発注者である官公庁が、契約の履行状況を見て疑義を抱いたり、不明な部分があったときに、すぐに修正したり報告できる体制が必要です。例えば、一定以上の品質が求められる材料の使用や、作業手順を確認するときに、一緒に現場を視察し、お互いに確認したり修正できなければなりません。発注者も受注者も、常に契約内容をコントロールできる状態であることが、責任を持つということです。

 

特に官公庁が扱うデータの中には、膨大な個人情報が含まれていることがあります。個人の氏名や住所、電話番号、銀行口座番号、学業の成績、病歴などが第三者へ漏洩すれば大変なことになります。契約を進める中で、官公庁が保有する個人情報に接触するのであれば、管理を厳重にしなければなりません。個人情報を扱う作業部屋を個別に設けたり、扱う人を制限するなどの措置が必要です。個人情報は、特定の人しか触れないようにしなければなりません。

 

これら責任を持てる体制、個人情報などの保護を目的に、原則として再委託を禁止しています。

 

再委託が問題になるのは、このような責任体制が確保できなくなるからです。もし再委託を禁止しなければ、発注者である官公庁側が知らない第三者の会社へ、契約内容が漏れてしまうのです。官公庁が契約内容をコントロールできなくなってしまうのです。もし個人情報が発注者の知らない会社へ渡れば、情報漏洩を防ぐことが不可能になります。また作業過程の品質を確保するのも困難になります。でたらめな業務内容になるリスクもあるのです。

 

さらに、契約内容の全部を丸投げするような再委託では、何もせずに手数料などという名目で利益を得ることになります。実際には業務を実施していないのに、名前だけ貸して不当に利益を得ることを認めることになってしまうのです。再委託を禁止しなければ、必要のない中間マージンを税金で払うことになります。

 

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再委託禁止の根拠法令

 

官公庁が締結する委託契約の中で、再委託を明確に禁止している法律はありません。工事請負契約では、建設業法で次のように禁止されています。

 

建設業法

(一括下請負の禁止)
第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

 

建設業法を受けて、国土交通省では公共工事標準請負契約約款を作成しています。例えば文部科学省でも同じように定めています。

 

公共工事標準請負契約約款

(一括委任又は一括下請負の禁止)
第六条 受注者は、工事の全部若しくはその主たる部分又は他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。

 

文部科学省発注工事請負等契約規則

(工事請負契約基準)
第十九条 契約担当官等は、工事に関する請負契約(略)を結ぶ場合は、契約の履行について別記第一号の工事請負契約基準(略)を内容とする契約を結ばなければならない。(略)

 

工事請負契約基準
第六
受注者は、工事の全部若しくはその主たる部分又は他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。

 

工事請負契約では、上記のように法律や各省庁の規則の中で、一括委任や一括下請負を明確に禁止しています。しかし請負契約と委託契約は異なります。請負契約とは、道路工事や建設工事のように、完成物のある契約です。

 

一方、委託契約には完成物がありません。何かの作業を継続的に行ってもらうことに対して契約代金を支払うのが委託契約です。例えば警備業務委託契約は、毎日、施設内に不審者がいないか巡回して警備してもらう契約です。警備をするだけで、なにかを造ったりして完成物ができるわけではありません。巡回することに対して代金を支払う契約なので委託契約になります。官公庁の契約種別としては、役務契約に含まれます。毎日実施する清掃契約なども委託契約(種別は役務契約)です。

 

つまり請負契約における一括委任や一括下請負の禁止に相当するのが、委託契約における再委託の禁止になります。では工事請負契約以外で、一括委任や一括下請負を禁止しているものはあるのでしょうか?

 

文部科学省では製造契約について、規則で次のように定めています。

 

文部科学省発注工事請負等契約規則

(製造請負契約基準)
第二十五条 契約担当官等は、製造に関する請負契約(略)を結ぶ場合は、契約の履行について別記第二号の製造請負契約基準(略)を内容とする契約を結ばなければならない。(略)

 

製造請負契約基準
(一括委任又は一括下請負の禁止)
第5 請負者は、製造の全部若しくはその主たる部分又は他の部分から独立してその機能を発揮する製造物の製造を一括して第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。ただし、あらかじめ、発注者の承諾を得た場合は、この限りでない。

 

文部科学省の規則では、製造請負契約についても、工事請負契約と同じように定めています。しかし役務契約について再委託を禁止することを定めたものが、昔は存在しなかったのです。「昔は」というのは、現在は多くの官公庁で契約書の中で明確に定めているからです。

 

東京大学では、早い時期(1990年頃)から再委託の危険性を認識し、独自に役務提供契約基準を作成して再委託を禁止していました。現在は多くの国立大学や官公庁でも同じように基準を作成しています。

 

東京大学 役務提供契約基準

第5 受注者は、業務の全部又は一部を第三者に委任し、又は請負わせてはならない。ただし、あらかじめ、発注者の書面による承諾を得た場合はこの限りでない。

 

上記のように、東京大学では1990年頃から、役務契約についても再委託を原則禁止としていました。その後しばらくして、いくつかの官公庁で業務の丸投げや個人情報の漏洩など、再委託が社会的な問題になり、ようやく政府として統一的に再委託を禁止するようになったのです。財務省から次のように通知が出されています。

 

 

公共調達の適正化について(抜粋)
財計第2017号 2006(平成18)年8月25日 財務大臣から各省庁宛の通知

 

2.再委託の適正化を図るための措置
随意契約により、試験、研究、調査又はシステムの開発及び運用等を委託(委託費によるもののほか庁費、調査費等庁費の類によるものを含み、予定価格が100万円を超えないものを除く。)する場合には、不適切な再委託により効率性が損なわれないよう、次に掲げる取扱いにより、その適正な履行を確保しなければならない。
なお、競争入札による委託契約についても、再委託を行う場合には承認を必要とするなどの措置を定め、その適正な履行を確保するものとする。

(1)一括再委託の禁止
委託契約の相手方が契約を履行するに当たって、委託契約の全部を一括して第三者に委託することを禁止しなければならない。

(2)再委託の承認
委託契約の相手方が再委託を行う場合には、あらかじめ再委託の相手方の商号又は名称及び住所並びに再委託を行う業務の範囲、再委託の必要性及び契約金額について記載した書面を契約の相手方に提出させ、次に掲げる事項について審査し、適当と認められる場合に承認を行うものとする。なお、再委託に関する書面に記載された事項について、変更がある場合には、委託契約の相手方に遅滞なく変更の届出を提出させ、同様に審査及び承認を行うものとする。

(略)

なお、契約の相手方が特殊な技術又はノウハウ等を有することから「競争を許さない」として随意契約を締結したものについて、承認を行う場合には、随意契約によることとした理由と不整合とならないか特に留意しなければならない。

 

現在は、官公庁が締結する委託契約では、上記の通知に基づいて、契約書の中で再委託を禁止しています。

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再委託が認められる場合

 

官公庁が締結する契約では、契約内容を適正に管理するために、また個人情報などの漏洩を防ぐために、再委託を原則として禁止しています。

 

特に、自分では何もせずに業務のほとんどを丸投げするような再委託は認められませんが、部分的な再委託であれば認めることが多いです。

 

例えば、次のような条件による部分的な再委託であれば問題ありません。

 

◯ 専門会社など再委託の必然性があること

◯ 再委託先の責任者が明確になっていること

◯ 個人情報などの機密情報が確実に守られること

 

よくある例としては、再委託先が専門的な技術を有しており、特定部分の業務については、専門会社へ依頼した方が、より正確に効率的に実施でき、契約金額も安くできる場合です。再委託先が、多数の契約実績を持つ専門会社である場合などです。

 

アンケート調査などの調査委託業務の中で、データ入力部分のみを専門会社へ依頼する場合です。熟練のタイピストは正確で、とてつもなく入力が速いです。もし入力データの中に個人情報などの機密情報を含むのであれば、データを入力する作業場所、電子データを保存するサーバーの場所を限定しなくてはいけません。特に海外の子会社で作業を実施したり、海外にあるサーバーへ保存することがないように注意しなければなりません。再委託先が、さらに他社へ委託する再々委託は認めないのが原則です。

 

契約内容の業務を実施する状況を、完全に把握できる状態である場合のみ再委託が認められます。そして再委託を認めるときは、複数の者で内容を審査しなければなりません。入札を実施するときは、事前に再委託の申請(通常は入札書を提出する際に、提案書の中で明記します。)が必要です。金額の大きな入札であれば、技術審査委員会の中で再委託の可否を書類審査します。

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再委託が認められない場合

 

事前に、委託業務のほとんどを他の会社や子会社へ丸投げすることが判明しているなら、再委託は認めるべきではありません。

 

2020年6月、新型コロナウイルス対策の持続化給付金の業務委託契約で、一般社団法人が業務のほとんどを大手広告代理店へ再委託して「中抜き」と批判されました。この委託契約は、最初から一般社団法人だけでは実施できないことが明確だったようです。

 

本来、契約内容を履行できない相手方とは、契約を締結すべきではありません。

 

持続化給付金の業務委託契約では、契約内容が大規模すぎて、日本全国を網羅できる大手広告代理店を利用したようですが、そもそも日本全国で一律に実施すべき契約を、特定の民間企業へ依頼すべきではないのです。莫大な税金を使う契約を、ひとつの民間企業が受注すれば、取り返しがつかないほどの利権を与えてしまいます。官公庁の政策として根本的に間違っています。「業者との癒着」と同じようになってしまうのです。

 

全国規模の契約をひとつの民間企業へ任せるのではなく、地域ごとに分割すべきです。都道府県単位や市区町村単位で、多数の民間企業が直接参入できるように契約を締結すべきです。多数の会社が契約できるように配慮するのが官公庁の役目です。ひとつの民間企業に対して、莫大な利権を与えるべきではありません。

 

住民税を考えればわかると思いますが、市区町村によってサービス内容が変わっても問題ないのです。基本理念や、一定の基準だけを全国一律に統一すれば、多数の民間企業が実施することでサービス内容が多少異なっても問題ありません。むしろ人口によって行政サービスが変わるのが自然です。

 

全国をカバーするような大規模な契約は、現実的に無理がありますし、必要もないでしょう。実際に、再委託先の大手広告代理店は、自社だけでは対応できずに、さらに子会社や関連会社へ再々委託して契約しています。最初から一社で対応できる契約内容ではなかったのです。

 

つまり、契約内容のほとんどを再委託するような契約は、契約内容に無理があることを示しているわけです。実態に合わせて、多数の会社が契約できるよう分割すべきです。国民の貴重な税金を一社が独占するような契約は、公平性の観点からも締結すべきではありません。

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再委託にあたらない契約

 

官公庁が締結する契約のうち、再委託にあたらない契約は次のとおりです。ここでは請負契約と委託契約を厳密に区分した判断です。

 

◯工事請負契約の中で、建築工事、電気工事、設備工事などを下請け業者へ依頼する場合

 

◯製造請負契約の中で、特許権や著作権などの知的財産権に関係する部分を外注する場合

 

いずれも完成品を造る請負契約です。委託契約ではないので再委託にはなりません。再委託ではなく、一括委任又は一括下請負になります。ただし官公庁との契約では、下請け業者へ依頼することや、部分的に外注することについては事前に了承を得ておくことが必要です。官公庁が実施する契約は、個人情報などの機密情報に関係していることが多いので、自社以外が行う部分は、事前に連絡し承認を受けておきましょう。

 

なお、「自社」の判断は、就業規則が適用される社員であることが必要です。任期の定めのない社員、非常勤の社員、派遣契約に基づく派遣社員でも、会社の就業規則が適用されるなら問題ありません。

コメント

  1. 匿名希望 より:

    コメントありがとうございます。
    やはり、1、2では問題がありますね。
    追加で質問させてください。
    3の場合、契約書については、一つの契約書にA、Bそれぞれの業務を記載し、3者で押印する方法を考えています。問題ないでしょうか。
    また、別々に契約書を作る必要がありますか?
    たびたびの質問で申し訳ありません。よろしくお願いいたします。

    • 矢野雅彦 管理人 より:

      コメントありがとうございます。契約内容の詳細が不明なので、一般的な回答になります。

      民間企業同士の契約であれば、委任関係を明確にすれば、どのような契約も可能です。

      しかし、官公庁が税金を使う契約では、契約の相手方を選ぶ方法が公平・公正でなければなりません。公平・公正とは、会計法令に基づいて(特定企業を優遇することなく)選ぶ、えこひいきしないことです。つまり官公庁が締結する契約の相手方は、金額の小さい軽微な契約を除き、恣意的に選ぶことができないのです。例えば、B社をA社が選んだ手続きが、公平・公正であったことを確認することは不可能ではないでしょうか。ひとつの契約では、「なぜB社なのか」という問題が出てしまいます。

      そのため、A社、B社との契約は、それぞれ個別に、契約の相手方として問題ないのか検討して、それぞれで契約する方が良いです。ひとつの契約書にすると、なぜ2社と契約する必要があるのか、合理的な理由書を作成しなければなりません。通常、契約の相手方が増えれば、その分中間マージン(利益に上乗せする手数料など)が発生するので、極力、避けなければなりません。

  2. 匿名希望 より:

    いつも参考にさせていただいております。
    契約についての質問です。
    A社と契約を結びますが、一部の手数料については、関連会社Bから請求するとの申し出がありました。
    手数料請求業務をA社から関連会社Bに委託するためのようですが、対応策として次の2つを考えています。
    1 契約はA社と結び、別に、手数料については関連会社B社から請求、B社に支払う旨の覚書をA社と結ぶ。
    2 契約はA社と結び、契約書に、支払はAが指定した者に行う旨記載する。
    3 契約をABの2社と結ぶ。
    1、2とした場合、法的に問題ないか心配です。
    3とした場合、経験がなく、契約書の内容をどうするか困ってしまいます。
    ご助言いただけますと幸いです。

    • 矢野雅彦 管理人 より:

      コメントありがとうございます。
      ご質問にある「一部の手数料」の内容がわからないので、一般的な答えになります。

      一つの契約代金を、二つの会社へ支払う(質問の1と2)は、次の点で問題になります。これは法的な問題ではありません。

      契約の履行を、どちらの会社が行ったか不明になるため、履行責任も曖昧になります。本来、契約の相手方を選ぶときは、契約のすべてを履行することを前提に、相手を信頼して選びます。一つの契約を依頼する相手が二社では、そもそもが矛盾してしまいます。

      つまり、(3)で契約を別にするしかないです。

      ご質問の1と2は、法的には委任行為さえあれば問題ないと思いますが、極めて怪しい契約手続き(資金還流や裏金作り、ダミー会社など)になり、不正経理が疑われてしまいます。B社へ支払うことについて、誰もが納得する理由書と根拠資料が必要になります。

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