PR
入札

電子入札にはメリットも透明性もない、談合が容易にできる危険なシステム

スポンサーリンク
入札
2002年 ハワイ
記事内に広告が含まれています。

官公庁の電子入札についての解説です。多くの官公庁で事務手続きのデジタル化が進められています。政府電子調達システムや地方自治体でも様々なシステムがあります。いずれも入札会場へ行かずに、社内のパソコンから電子入札できるようになっています。ただ顔が見えないので、本人確認はできず、スマホ片手に談合さえも容易にできてしまいます。

スポンサーリンク

電子入札のメリットが見えない

 

2011年には、多くの官公庁へ電子調達・電子入札システムが導入されました。インターネットのWEB上から見積書を提出したり、入札書を提出することができるようになっています。国の場合には 各省庁が共同で利用する、「政府電子調達 GEPS」 です。地方自治体は、それぞれの自治体で専用サイトを構築しています。例えば東京都では、東京都電子調達システム、都内23区では、東京電子自治体共同運営 電子調達サービスなどがあります。

 

電子調達システムは、官公庁へ行かなくても会社にあるパソコンから入札へ参加できます。こう聞くと、とても便利そうに思えます。しかしそれぞれの電子調達システムのサイトを見ればわかりますが、あまりにも複雑な手続きなので、始めようと思っても「げんなり」するでしょう。

 

まず利用を始める前の環境整備からややこしいです。利用者登録の方法も複雑すぎて、よくわかりません。たぶん一度だけ登録すれば大丈夫なのでしょうが、電子認証局などで毎年お金もかかり、とても大変そうです。電子認証は、本人かどうか契約権限を確認するための機能ですが、顔が見えないので本当に意味があるのか疑問です。すでに、ある自治体で27社の電子証明書(ICカード)を預かって入札した会社が、「新手の談合ではないか」と疑われています。電子証明書を使う場合でも、顔が見えない状態では不正を防げないでしょう。

 

また多くの会社では、国だけでなく、都道府県や市区町村など複数の自治体への参加希望もあるでしょう。ひとつのシステムを覚えるだけでも「げんなり」するほど大変ですから、その負担が自治体の数だけ倍になると考えると、想像を絶する複雑さかと思います。もし電子入札へ参加するための手続きが大変すぎて断念している人がいるとすれば、本末転倒です。本来、希望する人は、誰でも参加できるのが、官公庁が実施する一般競争入札の原則だからです。公平性と公正性が一般競争入札では最重視されます。ITの知識に弱いという理由だけで差別されるべきではありません。同じように税金を払っているのですから。

 

電子入札の操作マニュアルを理解するだけでも大仕事です。読んでもよくわかりません。おそらくほとんどの人は、電子入札よりも、普通に紙ベースで昔のように入札したいと思っているはずです。なぜかマスコミでは報道されていませんが、電子入札のトラブルも起こっているのではと心配になります。

 

スポンサーリンク

電子入札導入の目的

 

電子入札を導入する目的は、総務省の2002(平成14)年度行政事業レビューシートによれば、「企業の負担軽減と行政事務の簡素化・効率化を図ること」だそうです。しかし電子入札システムは極めて複雑なために企業の負担が増えているのではないでしょうか。さらに入札自体が、契約手続き全体の中で、ごく一部(簡単な入札なら、ほんの15分で終わります。)でしかなく、簡素化にも効率化にもなっていません。

 

実は、行政手続きのデジタル化は、かなり昔に検討が開始されています。驚くことに 1994年12月には、行政情報化推進基本計画が閣議決定されました。なんと、1995年の Windows 95 発売前に、すでに検討が開始されていたのです。行政情報化推進基本計画の目的は、国民サービスの飛躍的向上と行政運営の質的向上を図ることでした。

 

2023年現在、未だ行政手続きのデジタル化が十分でないことを考えると、やはりどこかに大きな問題があるのです。デジタル化にふさわしくない手続きまで含めてしまったことが原因のひとつになっています。

 

そもそも行政手続きをデジタル化する目的は、利用者である国民へのサービスを向上させることです。官公庁へ行かなくても、手元のパソコンやスマホを使って、簡単に手続きができることです。つまり一般の多くの人たちが利用する行政手続きを簡単にすべきなのです。そして官公庁側としても、同じ事務手続きを繰り返すような無駄な労力を省くことです。行政改革の一環としても検討されてきました。

 

官公庁側だけが便利になれば良いわけではなく、ITに強い一部の民間企業が楽になれば良いわけではないのです。多くの人たちにとって便利なサービスであることが、デジタル化に一番重要なのです。サービスを利用する国民全員にメリットがないのであれば、そもそもデジタル化は必要ないわけです。

 

スポンサーリンク

紙ベースの入札のメリット、入札者を立ち会わせる目的

 

官公庁が実施する一般競争入札は、公正性・公平性が最も重要です。会計法令に基づく手続きによる公正性、特定の企業のみが有利に扱われない公平性が確保されていなければなりません。

 

これは入札に限ったことではありませんが、「非公開」あるいは「見えない部分」があると不信感が生じ、不正も起きやすくなります。「見えない行為」を許してしまうと、官製談合や贈収賄、癒着などの不正事件が横行してしまうのです。官公庁では、可能な限り、手続きの透明性が必要になっているわけです。

 

電子入札が導入され、開札はWEB上で行われ、見えない状況になってしまいました。従来の紙ベースによる一般競争入札では、それぞれの入札参加者立会いのもとに開札が行われます。官公庁側の入札執行者、入札参加者、それぞれが緊張感を持ちながら入札会場へ入り、お互いの顔を見ながら相互に監視する牽制効果が働いてました。厳格な雰囲気の中で行われる入札と開札は、「不正を許さない」という強い牽制効果が発揮されます。入札会場の中にいるすべての人たちが、お互いを監視することができました。不審な挙動や表情は、すぐに誰かに感づかれます。人間は、誰かに顔を見られていれば不正はできないものです。

 

官公庁側、民間企業側、それぞれお互いが、「不正を許さない」という気持ちの中で入札すれば、談合なども起こりません。目つきや表情からも、不正は知られてしまうものです。紙ベースの不正を許さない入札会場内は、厳粛で緊張感に包まれているものです。

 

参考に、従来の紙ベースの入札では、次のようなメリットがありました。

 

不正を防ぐため、権限を持つ入札者一人のみが入場

 

入札会場への入室は、契約権限を持つ会社の代表者1名のみに制限されています。権限のない人の不正行為を極力排除するためです。他社の入札金額を覗いたり、落札するつもりがないのにおしゃべりして他の人を妨害するような行為を防ぐためです。ひとりに制限し、私語を禁止して談合行為も防止していました。私は、入札中、世間話も禁止していました。厳粛な空気によって不正を排除していました。

 

 電子入札では、入札会場へ入る必要がないため、社内で自由に話をしながら入札できます。他の入札参加者と電話しながら入札できてしまうのです。談合もやり放題なわけです。顔が見えないのは危険です。

 

予定価格の存在を証明

 

1回目の入札で落札しなかったときは、秘密扱いの予定価格であっても、入札者の目の前で予定価格調書を開封し、予定価格が現実に存在していることを全員に確認してもらいます。

 

これは不正防止のために極めて重要なことです。もし予定価格を作成せずに開札してしまうと、特定の会社を恣意的に落札させることが可能になってしまいます。落札の上限価格が存在しないので、入札執行者の意のままに落札者を決めることができてしまうのです。お気に入りの会社が最安値の入札したときだけ落札したと言えばいいのです。

 

これらの不正行為を防止するために、予定価格調書を入札参加者の前で開封します。秘密扱いの場合は金額を伏せていますが、入札会場に予定価格調書を置くことが、重要なのです。会計法令で義務付けられているとおりに、入札執行者の不正操作を防止しているということを示す必要があるわけです。

 

予算決算及び会計令

第七十九条 契約担当官等は、(略)予定価格を記載し、又は記録した書面をその内容が認知できない方法により、開札の際これを開札場所に置かなければならない。

 

残念ながら電子入札では、WEB上のシステム内で判断します。予定価格の存在そのものが全く見えず、落札上限価格で落札にしているのか全くわかりません。

 

再度入札を公平に判断

 

入札会場に入札者全員が集まっていれば、予定価格を超えたときの再度入札の判断を、入札者と一緒に公平に検討することができます。

 

開札した結果、予定価格以内の入札がなければ、再度入札するか、あるいは入札を打ち切るか判断が必要です。「これ以上の入札は無理」と判断して、入札を打ち切り不落随契とするのは、そのときの入札状況によります。入札結果を見ながら、入札参加者の目の前で公平に判断しなければなりません。

 

一般競争入札では、手続きの透明性が必要です。落札決定までの経緯を、入札者全員が目の前で確認できれば、十分に納得できます。落札決定までの経緯を、目の前で知ることが不信を払拭できる唯一の方法です。

 

電子入札によってWEB上の見えないシステムで「入札打ち切り」となったらどうでしょう?まだ値引する余裕のある会社からすれば、「どこかの会社と恣意的に契約するために打ち切ったのではないか」と疑ってしまうのです。見えないところで入札打ち切りは、不正の温床にもなるでしょう。

 

スポンサーリンク

電子入札で談合が簡単になった理由

 

紙ベースの入札では、入札から落札決定までの一連の手続きを、入札者の目の前でお互いに確認しています。手続きに不正がないことを、自分の目で見ているのです。不思議なことに嘘や不正などは顔の表情でわかるものです。お互いの顔を見ながら手続きを進めているので不正ができないわけです。

 

しかし電子入札では、これらの不正を防ぐ牽制機能が皆無です。官公庁側だけの判断で、落札決定も再度入札も決定できるシステムです。落札上限価格の予定価格が実際に存在しているのかさえもわかりません。予定価格がなければ、官公庁側がお気に入りの会社を落札できてしまいます。再度入札を実施する判断も見えません。落札に至るまでの途中経過が全く見えないのです。

 

電子入札が導入され、手続きの透明性がなくなったわけです。あまり思いたくはありませんが、自分のお気に入りの会社を落札させるため、落札させずに再度入札を繰り返すことさえできてしまいます。

 

さらに、こんなことはないと信じたいですが、オンラインで会社から入札できるということは、いくらでも談合できることになったわけです。多くの一般競争入札では、業界の人たちは「どの会社が参加するか」事前に予想できます。スマホ片手に他社と入札金額を調整しながら電子入札できてしまうのです。電子入札は恐ろしいシステムです。見えない場所から入札できてしまうわけです。絶対に談合がわからない完全犯罪が可能なシステムです。

 

紙ベースの入札では、予定価格調書の存在、再度入札の判断などが、常に入札者の目の前で行われます。当然のことながら緊張感もあり、お互いに不正を許さないという姿勢が保持されます。人の目により、厳格な入札手続きが監視されるわけです。官公庁側も民間企業側も、相互に牽制効果が期待できるわけです。会計法令でも、入札に立ち合いが必要なことを明確に定めているわけです。

 

電子入札では、入札の結果しかわからない状況になりました。途中経過がわからず、透明性が消滅しました。一番重要な落札決定までの経緯や判断がブラックボックスに包まれてしまったのです。

 

スポンサーリンク

一般競争入札では透明性が必要

 

そもそも行政手続きのデジタル化は、多数の利用者にとって便利なものでなければなりません。パソコンやスマホから、ボタンひとつで手続きが完了することが理想です。みんなの労力を省略し手数料も不要になるようデジタル化を進めるべきです。

 

しかしはっきり言って、入札手続きはデジタル化すべきものではありません。見えない部分が増えてしまい、いくらでも不正ができてしまいます。さらに入札へ参加する人たちの負担も膨大になっているでしょう。むずかしいマニュアルを読むのも大変なはずです。手続きが煩雑になり不正を増やしてしまう電子入札は廃止すべきです。

 

また、入札システムの維持管理費のために、特定のIT企業へ莫大な税金が流れ続けていることも大きな問題です。

 

本来、入札と開札は、官公庁側を監視する目的もあります。予算決算及び会計令第81条で明確に定められています。開札手続き時の「立ち合い」は、会計法令が厳格に守られていることを証明するためのものです。

 

予算決算及び会計令

第八十一条 契約担当官等は、公告に示した競争執行の場所及び日時に、入札者を立ち会わせて開札をしなければならない。この場合において、入札者が立ち会わないときは、入札事務に関係のない職員を立ち会わせなければならない。

 

つまり開札を行うときは、落札決定までの状況が目の前で見えることが必要なのです。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました