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会計法令の解説

請求書を受け取るときの注意点、官公庁に適用される遅延防止法

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請求書を受け取る 会計法令の解説
請求書を受け取る
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官公庁が契約代金を支払うときの注意点です。請求書を受け取ったら、支払期限までに支払わなければなりません。遅延防止法は、国だけでなく地方自治体を含むすべての官公庁が適用対象です。もし支払いが遅れると、遅延利息を支払うことになります。

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遅延防止法の適用範囲

 

官公庁が契約代金を支払う際の手続きは、遅延防止法(政府契約の支払遅延防止等に関する法律)で定められています。最初に、遅延防止法が適用される官公庁の範囲を確認します。

 

政府契約の支払遅延防止等に関する法律

 

第二条 この法律において「政府契約」とは、国を当事者の一方とする契約で、国以外の者のなす工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入に対し国が対価の支払をなすべきものをいう。

 

第十四条 この法律(略)の規定は、地方公共団体のなす契約に準用する。

 

 

第二条では、国が締結した契約代金の支払いが対象であることを明記しています。そして第十四条で、地方公共団体が締結する契約も準用すると定めています。準用規定は、適用されるのと同じです。

 

つまり遅延防止法は、国と地方自治体すべてが適用対象です。国、都道府県、市町村、官公庁すべてを対象とする法律です。

 

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最も重要なのは支払期限

 

官公庁の会計担当者が、最も注意したい点は、請求書を受理したときの支払処理です。遅延防止法第六条は、対価の支払時期を定めています。日常の事務処理ではあまり気にしていないと思いますが、請求書を受理した場合には、本規定が適用されます。法律で支払期限が定められているのです。速やかに支払処理を行わなければなりません。

 

政府契約の支払遅延防止等に関する法律

第六条  対価の支払の時期は、国が給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求を受けた日から工事代金については四十日、その他の給付に対する対価については三十日以内の日としなければならない。

 

「給付の完了の確認又は検査」とは、いわゆる検収のことです。物品の納品検査や、工事の竣工検査などです。検収完了後に請求書を提出してもらい、その請求書を受理した日から、工事代金は40日以内、その他の契約代金については30日以内に支払わなければなりません。

 

また、対価の支払時期を定めていないときは、相手方が支払請求をした日から十五日以内の日と定めたものと看做されます。(遅延防止法第十条)

 

特に契約金額の小さな契約は、契約書や仕様書を省略することがあります。そのため支払の時期を定めないことが多いです。注意が必要な条文です。

 

第十条 政府契約の当事者が(検査の時期や対価の支払の時期など)を書面により明らかにしないときは、(略)、対価の支払の時期は、相手方が支払請求をした日から十五日以内の日と定めたものとみなし、(略)

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検収前は、請求書を受理しない

 

法律で支払期限が定められています。そして期限のカウントは、請求書を受け取った日から始まります。つまり検収完了前には、請求書を受理しません。

 

もし納品前や竣工前に請求書を提出してきたら、「すみませんが、検収完了後に請求書の提出をお願いします」と伝えて請求書を返します。検収完了前は請求書を受理しません。検収完了前に請求書を受理してしまうと、支払期限にカウントされてしまうリスクがあります。また万が一、検査のときに不具合が見つかれば、トラブルになるかもしれません。

 

検査不合格なのに、その前に請求書を受理していると、30日以内(工事は40日)に支払わなければならないからです。相手方から、「検収が無事に完了したと思っていた」と言われたら、実際に請求書を受け取っていると、かなりまずい状況になってしまいます。

 

請求書は、検収を完了した後に提出してもらいます。

 

請求書には、実際の提出年月日を必ず記入してもらいます。請求書の日付(受理年月日)から工事契約は40日以内、それ以外の契約は30日以内に代金を支払わなければなりません。官公庁によっては、支払期限を明確にさせるため、請求書受理日を記載しているところもあります。

 

代金支払手続きの流れ(官公庁側から見た場合)

 

納品 → 納品書受理 → 検収(検査収納) → 請求書受理 → 支払

 

遅延防止法第六条の「適法な支払請求」とは、請求権限のある人が作成した正式な請求書であることを意味します。通常、会社組織(法人)であれば、代表者である社長、あるいは社長から委任を受けた部長などが作成した請求書です。請求権限のある人が作成したことを示す記名押印が必要です。請求書の作成者は、契約書の名義人と同じケースが多いです。契約権限のある人に代金の請求権限もあります。請求者の欄には、会社名、代表者の役職名、氏名、会社印、代表者印、が必須です。

 

なお押印については、2020年から省略できる官公庁が増えています。新型コロナウイルスの感染防止対策として在宅ワークが推進され、押印廃止の流れが加速しています。また電子調達などでも押印不要で請求可能になるケースが拡大しています。ただ、いずれも請求権限のある人が作成していることを確認しなければなりません。

 

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遅延利息について

 

検収を終えて請求書を受理してから、約定期間(工事は40日、それ以外は30日)以内に代金を支払わなければなりません。請求書の受理日も1日とカウントされます。支払期限の日数は、土日や祝日を含む暦日数で計算します。そして、もし支払手続きが遅れてしまったときは、遅延利息を支払うことになります。

政府契約の支払遅延防止等に関する法律

第八条 国が約定の支払時期までに対価を支払わない場合の遅延利息の額は、約定の支払時期到来の日の翌日から支払をする日までの日数に応じ、当該未支払金額に対し財務大臣が銀行の一般貸付利率を勘案して決定する率を乗じて計算した金額を下るものであつてはならない。(略・・災害時は例外あり。)

 

2 前項の規定により計算した遅延利息の額が百円未満であるときは、遅延利息を支払うことを要せず、その額に百円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てるものとする。

 

遅延利息の率は、次のように財務省告示で定めています。

 

政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率
(昭和24年12月12日大蔵省告示第991号)

政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第八条第一項の規定に基づき、政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率を次のように定める。

昭和二十四年十二月十二日

大蔵大臣 池田 勇人

年二・五パーセント

 

遅延利息の率は、わりと頻繁に改正されます。上記は令和3年4月1日適用ですが、令和2年4月1日適用の率は、年二・六パーセントでした。最新の率は財務省のサイトで公表されています。「政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率」で検索しましょう。

 

政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率 : 財務省

 

遅延利息を計算した結果、100円未満の端数があれば切り捨てです。(遅延防止法第八条第二項)

 

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遅延防止法の解釈、運用方針の抜粋

 

遅延防止法については、事務取扱上の解釈を統一するために、運用方針が通知されています。昭和25年の古い通知ですが、参考になる部分を抜粋します。

「政府契約の支払遅延防止等に関する法律の運用方針」昭和25年4月7日理 国第140号、大蔵省理財局長通知

 

〇「遅延防止法」の目的
官尊民卑的傾向の考えを慎み、私法上の契約の本質たる当事者対等の立場に立つこと、速やかな支払いを励行すること。

 

〇適用除外となるもの
対価的関係にないもの、支払の根拠が契約でないもの

補助金、旅費、違約金、弁償金、賠償金など
謝礼金給与や賞与など

 

〇請求書の受理日
「受理」とは、所定の執務時間内であれば当然受理すべきであり、その日は、計算上一日に参入される。また、トラブル防止のため、請求書受理者を定め、受理簿を設け又は受理請求書に受理日附印を押捺する等請求書受理後の経過を明瞭ならしめるよう措置すべきである。

 

〇遅延利息の支払い
契約による損害賠償の予定であり、従つて、本来の債務に附従する性質を有し、特に契約において明示しない限り、なるべく本来の債務とともに履行できるよう処理すべきである。また、特に相手方において積極的にこの債権を放棄する意思表示のない限りは、当然支払の義務を負い、その請求を俟たずして履行をなすべきである。

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コメント

  1. 匿名 より:

    いつも参考にさせていただいております。

    インボイス制度の導入により、役職名・代表者名が記載されない請求書が増えてまいりました。請求書の要件を整理する必要があるかと検討しております。そこで、一つ質問させていただきたいと思います。

    ページ中にある「遅延防止法第六条の「適法な支払請求」とは、請求権限のある人が作成した正式な請求書であることを意味します。」この部分の根拠(通知や商慣習など)があればご教示いただきたく存じます。

    • 矢野雅彦 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      遅延防止法第六条の「適法な支払請求」について、具体的な内容を記載した通知や根拠法令はないです。

      「適法」という意味は、総合的に判断しますので、ケースバイケースで変わります。

      一般的に「適法」と判断するための考え方は、次の点がポイントです。

      〇正しい請求書か(正しい作成者であること、請求内容が間違ってないこと)

      〇支払期限をカウントできる発行日が記載されているか

      〇どの分の請求なのか明確になっていること(同じ金額の請求があったときに、別の請求なのか、二重払いなのか判断できなければなりません。いつの契約分なのが区別できることが必要です。)

      またインボイス制度の導入は、消費税の仕入税額控除の適用を受けるために作られた制度なので、遅延防止法とは関係ありません。

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