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会計法令の解説

契約書作成の要否を入札公告へ掲載、契約書へ記載する危険負担

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会計法令の解説
2007年 シンガポール
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官公庁が契約書を取り交わすときは、事前に相手方へ知らせておかなければなりません。一般競争入札では入札公告へ契約書の作成を義務付けます。民法では書面を必要とせずに契約が成立します。しかし官公庁との契約では、原則として契約書が必要です。

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民法と会計法で異なる「契約書の取り交わし」

 

日本の民法では、当事者の合意のみで契約が成立します。購入契約であれば、値段を見て「これをください」と販売店へ伝えれば契約成立です。また契約の成立には原則として書面を必要としません。しかし国を当事者とする契約では、会計法により契約書の取り交わしが義務付けられています。そして契約書へ記名押印しなければ契約は確定しません。

 

口頭のみで契約が成立してしまうので、官公庁が入札を実施するときは、入札公告の中で契約書が必要になることを明記しなければなりません。

 

民法は、契約の申込み(見積書や入札書の提出)に対して承諾(発注や落札決定)することで契約が成立します。第二項では契約書は必要ないことを明確にしています。

 

民法

第五百二十二条
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方 式を具備することを要しない。

 

国や地方自治体などの官公庁では、原則として契約書を作成することとし、記名押印するまでは契約が確定しないことを法律で定めています。

 

会計法

第二十九条の八  契約担当官等は、競争により落札者を決定したとき、又は随意契約の相手方を決定したときは、契約の目的、契約金額、履行期限、契約保証金に関する事項その他必要な事項を記載した契約書を作成しなければならない。(略)

2  前項の規定により契約書を作成する場合においては、契約担当官等が契約の相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は、確定しないものとする。

 

地方自治法

第二百三十四条
5 普通地方公共団体が契約につき契約書(略)を作成する場合においては、当該普通地方公共団体の長(略)が契約の相手方とともに、契約書に記名押印し(略)なければ、当該契約は、確定しないものとする。

 

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契約書の作成要否についての明示義務

 

民法では原則として契約書が不要なため、契約書の取り交わしが必要な場合は、あらかじめ明示することを義務付けています。契約事務取扱規則は国を対象としています。

 

契約事務取扱規則

第十一条  契約担当官等は、一般競争若しくは指名競争に付そうとする場合における公告若しくは通知又は随意契約の相手方の決定に当たつては、当該契約の締結につき、契約書の作成を要するものであるかどうかを明らかにしなければならない。

 

地方自治体では、特に定めていないことが多いです。国の場合には、次のように入札公告へ記載します。

 

〇契約書作成の要否 要

 

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契約書の記載事項

 

契約書の記載内容は、予決令第百条により次のように定められています。地方自治体もそれぞれの規則で定めています。

 

予算決算及び会計令

第百条 (略)契約担当官等が作成すべき契約書には、契約の目的、契約金額、履行期限及び契約保証金に関する事項のほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。ただし、契約の性質又は目的により該当のない事項については、この限りでない。
一 契約履行の場所
二 契約代金の支払又は受領の時期及び方法
三 監督及び検査
四 履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金、履行の追完、代金の減額及び契約の解除
五 危険負担
六 契約に関する紛争の解決方法
七 その他必要な事項

 

契約書の条文は一般的な内容とし、仕様書などで細かく内容を記載します。なお、上記第四号の中に「・・履行の追完・・」とあります。これは2020年4月1日から施行された改正民法によって、従来の「かし担保責任」が代わったものです。契約不適合責任といい、不具合があった場合の修理などを求める内容です。

 

参考に改正前の予決令第百条です。

 

旧予算決算及び会計令

第百条
(略)
四  履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
五  危険負担
六  かし担保責任
七  契約に関する紛争の解決方法
八  その他必要な事項

 

なお、むずかしい項目として「危険負担」があります。危険負担は、自然災害などの不可抗力によって、相手方に責任がない状態で契約が履行できなくなったときに、どちらが責任を負うか取り決めることです。

 

例えば、高価な芸術作品を契約したときに、引渡し前に保管倉庫が火事で焼けて、芸術作品が消滅した場合などです。民法が改正される前は、代金の支払義務があったわけですが、改正後は契約解除権を行使し、代金の支払いを拒むことができるようになりました。

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