官公庁で立替払が認められている根拠法令が知りたいとき

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基礎知識
長瀞

官公庁の立替払についての解説です。立替払の根拠法令や、なぜ立替払が必要になるのか、わかりやすく解説します。注意したいのは、簿記上の立替金とは違うこと、官公庁や自治体などの組織によっては立替払を禁止しているところもある点です。

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官公庁の立替払(たてかえばらい)とは

 

この解説の立替払とは、簿記上の立替金(たてかえきん)ではありません。似ている用語なので間違えてしまいそうになりますが、次のような違いがあります。

 

〇官公庁での立替払・・官公庁が支払うべき経費を、職員個人が立て替えて支払った場合

 

〇簿記上の立替金・・会社の経費でないお金を一時的に支払った場合

 

官公庁の立替払とは、官公庁が支払うべき経費を、職員が自分のお金で一時的に支払い、後日その支払ったお金を官公庁へ請求して補填してもらうことです。立替払請求書に領収書を添えて請求します。官公庁だけでなく民間企業でも立替払いは行われています。

 

しかし官公庁における立替払は、根拠法令が存在しません。会計法令に規定がないことは会計検査院の報告書でも記載されています。参考に抜粋します。

 

会計検査院トップ> 検査要請> 平成21年度目次> 会計事務の体制の状況
国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)| 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書| 平成22年10月
「在外公館に係る会計経理に関する会計検査の結果について」

(略)

オ その他の事態について
(イ) 職員が必要な経費を立て替えて業者等に支払う立替払は、会計法令に規定がなく、緊急の場合など真にやむを得ない場合に限って行われるべきものである。・・・
(略)

 

会計事務の体制の状況 | 平成21年度決算検査報告 | 会計検査院
会計事務の体制の状況

地方自治体も立替払については、条例などで定めていないと思います。自治体の数は1,800ほどあるので調べきれていませんが。

官公庁が立替払の根拠法令を設けていない理由は、すでに支払制度が構築されていて、理論的には立替払しなくても支払い可能だからです。立替払は、すぐに現金で支払わなければならないときに必要になります。現金での支払いは、すでに前渡資金という制度によって法令上可能になっています。

 

前渡資金については次の記事で解説しています。

前渡資金と前渡金、支出官と資金前渡官吏、官公庁の支払方法とは
官公庁の前渡資金(ぜんとしきん)と前渡金(ぜんときん)の解説です。前渡金は、民間企業が簿記上の仕分けで使う場合と、官公庁が使う場合では意味する内容が微妙に違います。官公庁の支払手続きに必要な前渡資金、支出官と資金前渡官吏の解説です。

 

つまり法令上は、前渡資金を使えば、職員が個人のお金で立て替える必要はないわけです。資金前渡官吏が必要な現金を手渡しすることができるのです。そのため厳しい組織では立替払を禁止しているところもあります。

 

しかし現実の社会では、様々な場面で現金での支払いを必要とすることがあります。

 

例えば、他の官公庁へ書類を提出するために電車代やバス代を払うことがあります。旅費法では、一駅ぐらいの近距離の交通費は支払う項目がありません。旅費として払えないので、交通費として立替払するしか方法がありません。資金前渡官吏が置かれていて手持ち現金があれば、事前に現金を渡すことが可能です。ところが資金前渡官吏が設置してなければ不可能です。

 

また職場から離れた場所で主催する公開イベントなどで、文房具や資料のコピーが現場で急に必要になったり、出張先などで現地でしか入手できない貴重な資料を現金で購入する場合もあります。研究者が出席する学会などでは当日受付で参加費を支払うことも多いです。

 

その場で、現金あるいはクレジットカードで支払うときは、個人のポケットマネーで一時的に立て替えて支払っておき、後日、官公庁側へ請求するしか方法がないのです。

 

職場から離れている場所で、急にその場で現金を払うときには、前渡資金や支出官払いでは対応できないことがあるのです。

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なぜ立替え払いを認めているのか

 

官公庁の立替払については、法令上、すでに支払手段が定められているために根拠法令は存在しません。立替払しなくても理論上(法令上)は可能になっています。

 

では「立替払を認めない」とした場合どうなるでしょうか?

 

立替払を認めないとすると、次のような弊害が生じます。

 

「官公庁のために現金で支払ったのに、立替請求できないのであれば、他の手法を使って支払った分を補填してもらおう」と考えるようになります。

 

手っ取り早く、立替払相当のお金を補填できる手法は、超過勤務手当です。実際は勤務していないのに、架空の超過勤務時間を上乗せして申請するようになってしまいます。あるいは出張旅費を水増し請求することになるかもしれません。鉄道旅行なら領収書の提出が不要なので架空申請ができてしまいます。

 

つまり、官公庁で立替払を認めないとなると、個人で負担した分を補填するための不正を許すことになってしまうのです。

 

官公庁の会計手続きは、公正でなければなりません。公正という意味は、法令に基づいた手続きであることが大原則ですが、その前提として真実であることが求められています。見せかけの書類で法令に合致していても本末転倒なのです。真実という前提がなければ公正な会計手続きにはならないのです。

 

本来、官公庁が支払うべき経費を個人が負担したなら、その真実を受け止めなければならないのです。真実を無視する態度を取れば、法令を無視して不正を許すことになってしまうのです。真実や事実を隠ぺいする行為は、不正をはびこらせることになってしまいます。そのためにも、官公庁のために使用したお金であれば、立替払請求書に基づいて官公庁が支払う義務があるのです。

 

公正な事務事業を行うためには、公正な判断が必要です。民間企業でも会社のために、個人が使ったお金があれば、立替払を認めています。立替払を認めているのが一般常識です。会社の経費を個人に負担させているとなれば問題になります。そのため官公庁では立替払を認めているのです。

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立替払と公私混同リスク

 

本来、立替払はやむを得ないときに行うものです。法令に規定がない例外手続きなので、頻繁に立替払が発生するのは問題になります。頻繁に立替払が発生するようであれば、その原因を分析して、通常の支払手続きが可能となるように見直すべきです。

 

立替払は、個人のお金を使うものです。個人がプライベートで日常的に使っているお金なので、どうしても公私混同になりやすいのです。例えば、無制限に立替払を認めてしまい、大量の領収書と一緒に立替払請求書が提出されたとします。数十枚の領収書やレシートの中には手書きのものや外国語で書かれたものが含まれています。すると、本当に官公庁が支払うべき経費なのかチェックできないのです。もし立替請求書の中に、プライベートな買物のレシートが紛れていれば完全に公私混同になってしまいます。

つまり立替払を認めるということは、公私混同のリスクを排除できなくなるのです。

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大昔の立替払制度

 

1990年頃までの国立大学は、厳格に会計法令を解釈していました。いかなる理由があろうとも、公費を使う立替払は認められませんでした。(公費とは税金を使うという意味です。)会計法令に規定がない以上認められないという考え方でした。

 

出張先で貴重な資料を見つけ、仕事に役立つと思って購入しても認められませんでした。多くの人たちが立替払を却下され、自己負担で涙を流していました。ただ国立大学には、民間企業からの寄付金があり、その寄付金からの立替払のみが認められていました。もちろん現在よりもかなり厳しく、立替払の必要性などがチェックされました。立替払を請求しても認められない事例の方が圧倒的に多かったです。当時は、「急に現金払いが必要になった」という理由は、「計画がずさん」とみなされ全て却下されていた時代です。

 

昔は公費による立替払が認められなかったのです。ほんとに必要なものだけが寄附金を使って立替払が可能でした。誰もが予期しえなかった突発的な出来事、自然災害やトラブルのときに、どうしても必要なものだけに立替払が認められていました。

 

 

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