仕様書に書いてないことを依頼できるか、仕様書の記載もれなどの対応

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基礎知識
2022年6月 お台場海浜公園

仕様書は、契約金額を積算するための書類です。契約内容をすべて網羅しているのが理想です。しかし初めての契約では、すべての内容を盛り込むのはむずかしく、記載を忘れたり、間違えたりしてしまうことがあります。仕様書の記載漏れや修正等の対応方法を解説します。

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官公庁の契約手続きに必要な仕様書とは

 

この解説での「仕様書」とは、官公庁が外部の専門会社と契約するときに必要になる書類です。官公庁側が求める内容をまとめた書類が仕様書です。仕様書を民間企業へ提示することによって、入札金額や見積金額の積算が可能になります。例えば官公庁がパソコンの購入を計画するときは、どのような性能のパソコンを、いつまでに、どこへ納品するのか、細かく記載した書類です。

 

仕様書に基づいて契約内容が履行され、契約金額が決定します。官公庁側が必要とする条件をまとめてあるのが仕様書です。

 

仕様書は、簡単な契約内容であればA4サイズで2〜3枚の書類です。しかし、大きな契約で複雑な契約内容となれば、数百ページにもなります。

 

また入札説明書の中に仕様書を含めたり、現場説明書の一部に含めることもあります。仕様書という書類名は、契約内容によって変わります。 しかし、いずれも官公庁側が求める内容を記載したものが仕様書になります。

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なぜ仕様書が必要なのか

 

一般競争入札や、複数社の見積金額を比較する「見積もり合わせ」では、仕様書が必要になります。仕様書がないと、前提条件を固定できずに比較できなくなってしまうからです。

 

金額の小さい契約では、仕様書を省略することが多いです。例えば 2,000円 ぐらいの電卓をひとつ買うのに、いちいち仕様書は作成しません。小さな契約では、取引のある文房具店へ電話して、値引き額を確認して注文するだけです。他社と金額を比較しないので、仕様書も必要ありません。口頭で発注するだけで契約できます。

 

しかし一定金額以上の契約になると、入札や見積もり合わせが必要になります。いくらから入札や見積もり合わせをするのか、という基準額は組織によって異なります。予算規模の大きな組織では基準額も高くなります。例えば、物品を購入する契約では、50万円以上から見積もり合わせ、160万円以上から入札、などと組織の内部規則で定めています。

 

入札や見積合わせでは、価格競争によって契約の相手方を決めます。一番有利な価格を提示した会社と契約を締結します。この金額を比較する際に、仕様書がないと困ったことになるのです。

 

あるメーカーのノートパソコンを 10 台購入する計画で、参考見積書の金額が120万円だったとします。見積もり合わせを行うために 3 社(A社、B社、C社)へ見積書の提出を依頼します。口頭だけで契約内容を伝えたとしましょう。

 

最初のA社へ電話し、機種名と台数、納入期限だけを伝え、見積書の提出を依頼しました。

 

次にB社へ電話して同じように伝えているときに、オプション類の話になり、HDDよりもSSDの方が動作速度が速く快適に使えることがわかり、SSDの方で見積書の提出を依頼しました。

 

その後、C社へ電話し、オプションのSSDで依頼しているときにOSの話になり、標準で搭載されている Windows 10 よりも Windows 11 の方が良いことがわかり、Windows 11 搭載で見積書を提出するよう依頼しました。

 

口頭で見積書の提出を依頼していると、営業担当者は専門的なアドバイスをしてくれることが多いです。営業担当者としては、少しでも性能の良い製品を納品したいと考え、官公庁側のメリットを考えてオプションなどを提案してくれるのです。営業担当者と話しているうちに、最初に考えていたパソコンより、もっと性能の良いパソコンがわかってきます。B社やC社からのアドバイスを聞いて、上記のように仕様内容が変わってしまったとします。

 

すると、次のような見積書が集まることになります。

 

A社は、標準のパソコンで見積金額が安い。

 

B社は、SSD搭載で処理の速いパソコンだが、A社よりも少しだけ見積金額が高い。

 

C社は、SSD搭載、OSは最新の Windows 11 だが、見積金額が一番高い。

 

この中で、一番良いのはどれでしょうか?

 

比較を行うための前提条件である仕様(契約内容)が異なるため、どれが一番有利なのか判断できないのです。こうなると、もう契約できません。仕様書をきちんと作り、最初から契約手続きをやり直すことになってしまうのです。

 

つまり、価格を比較して契約の相手方を選ぶときは、仕様書が必須になるのです。 仕様書がないと、前提条件を固定できず、価格を比較できません。

 

さらに怖いのは、仕様書を作成せずに 3 社の見積書を揃えていると、不正を疑われることです。複雑な契約では、書面による仕様書を提示せずに同じ内容の見積書を揃えることは不可能です。官製談合と同じように、契約の相手方に対して他社の見積書を依頼したのではないか、と疑われてしまうのです。

 

契約の相手方から提出される(違法な)他社の見積書であれば、仕様書がなくても、自社より高い見積金額を記載するだけなので、簡単に価格調整した見積書が作れてしまうのです。

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仕様書の記載もれが判明した場合の対応

 

仕様書に基づいて入札金額や見積金額が決定します。仕様書の内容は、官公庁側が求める内容を記載しています。もちろん完璧な仕様書を作成すれば問題ありません。しかし現実には、契約手続きを進めていくうちに仕様書の記載漏れや誤記等が判明することがあります。特に新しい契約では、契約を進めているときに予期しないことが起こり、仕様書の修正が必要になることが多いのです。

 

では仕様書の記載漏れや誤記載が判明した場合、どのように対応するのでしょうか?

 

仕様書の記載漏れなどがわかったときは、次のように対応することになります。契約の相手方が決定した後と、価格競争する前の段階では、取り扱いが変わってきます。

 

すでに契約の相手方が決定した後の仕様書の変更

 

入札を終えた後や、見積もり合わせを終えた後に、契約の相手方が決定している段階で仕様書の記載漏れなどがわかったときは、次のように対応します。いずれも契約の相手方が無理なく対応できる場合に限られます。

 

契約の相手方へ、記載漏れなどの内容を丁寧に説明し、契約金額を変更することなく対応可能か確認します。もし契約の相手方が、契約金額を変更することなく対応可能ということであれば、変更契約書を締結します。あるいは覚書などで、仕様書の変更箇所をお互いに確認しておきます。

 

仕様書の記載漏れなどによって、契約金額が変更になる場合は、慎重に検討します。契約金額が減額されるのであれば、単に変更契約を締結するだけで問題ありません。しかし、契約金額が増額になる場合は、次の点を検討しなければなりません。

 

見積もり合わせで随意契約している場合は、仕様書を変更することで契約金額が増額し、入札対象になるなら変更契約できません。増額部分だけを一般競争入札することになります。増額部分の一般競争入札を実施しないと、「入札逃れ」を目的に見積もり合わせを行ったと疑われてしまうからです。 「入札逃れではない」という意思表示を明確にするため、金額が低くても、あえて一般競争入札せざるを得ないのです。そのため一般的には、金額が低い増額の変更契約は行わずに、翌年度などで別契約として対応することが多いです。

 

一方、一般競争入札によって契約の相手方を決定している場合は、仕様書を変更することで契約金額が増額しても問題ありません。ただ変更理由は、当初の入札時には予期し得なかったなどの、止むを得ない理由に限られます。契約金額を増額できるのは、官公庁側が追加で要求した場合だけです。

 

価格競争を行う前に仕様書の記載漏れなどが判明したとき

 

入札期日や、見積書の提出期限までに 1 週間以上余裕があれば、参加している各社へ変更内容を通知して対応できます。仕様書の変更内容を伝えるときは、修正前と修正後の文章を並べて、変更部分が明確にわかるようにします。変更内容の通知は、メールやFAXなど記録に残るように行います。メールで送信したときは、受信確認の返信メールをもらうか、電話で相手方へ確認します。仕様を変更した内容で各社が金額を積算できるのであれば、何も問題ありません。

 

しかし、もし参加している 1 社から、金額の積算が間に合わない、という相談があれば、提出期限を延長することになります。参加している会社全員へ、入札書や見積書の提出期限を延長することを通知することになります。

 

各社への通知は、なるべく同じ時間帯に行います。日付が変わることで不公平になってしまうこともあるからです。また通知した内容は、後日書面で確認できるよう、メールを用いるのが安全です。

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仕様書に記載していないことを履行する義務があるか

 

契約金額は、仕様書に基づいて積算します。そして契約の相手方に決定した時は、仕様書に基づいて契約を履行することになります。もし、仕様書に記載してあることを履行しなければ契約違反になります。契約違反によって、契約が解除され、損害賠償を受けるリスクもあるわけです。

 

では、仕様書に明記していなかったことを履行する義務があるのでしょうか。

 

結論から言えば、仕様書に明記していないことを履行する義務はありません。

 

もし仕様書に明記していないことまで契約の相手方へ義務付けてしまうと、適正な契約ができなくなってしまうからです。例えば仕様書の中に抽象的な表現で、「性能の高いものであること」、「標準的なものであること」などの記載があった場合、具体的に履行する際に選択肢が複数あると、最低限の内容でしか積算できません。具体的に明記していない内容は、最低限の内容、あるいは不明なので履行しないことになってしまうのです。

 

仕様書の中で抽象的な表現が許されるのは、誰が考えても同じ結果になる、誰もがわかることだけです。しかも守らなくても影響のない内容になります。

 

例えば仕様書の中で「明るい色とする」という記載があれば、ふつう黒色を選ぶ人はいないでしょう。しかし、もし黒色を選んだとしても契約違反にはなりません。仕様書が曖昧なだけで契約違反ではないのです。黒色だったらセンスが悪くて残念な結果になるだけです。もし「明るい色」と表現するなら赤、白、など具合的にいつくかの色を例示すべきです。

 

官公庁が提示する仕様書は、受注する民間企業にとって、わかりやすい内容でなければなりません。誰が読んでも同じように理解できる、誰もが容易にイメージできる内容でなければならないのです。そしてもし不明な部分の記載があれば、相手が理解できるまで説明する義務が官公庁側にあります。

 

国民の税金を使う契約手続きでは、契約の相手方が適正に契約内容を履行できるよう、十分に説明する義務があります。官公庁側には、税金を適正に使うための説明責任が常に存在しているのです。誰に対しても、十分に説明できないような仕様なら、そもそも契約すべきではありません。

 

十分な説明ができない仕様書は、特定の業者との癒着も疑われます。特定の会社しか対応できないよう抽象的に作成してある仕様書は、官製談合も疑われてしまうのです。

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仕様書に記載していないことを依頼する方法

 

仕様書に記載していないことを新しく依頼する場合は、官公庁側が頭を下げて、契約の相手方へお願いすることになります。これは「仕様書への記載漏れ」という官公庁側のミスになるので、仕方のないことです。契約の相手方としては、無理のない範囲でのみ対応することになります。対応できないと言われれば、官公庁側は断念するしかありません。

 

また当然のことながら、仕様書に明記していなかったことを依頼するときに、新たな経費負担が発生するのであれば、追加で契約代金を支払うことになります。当初の契約と変わってしまうので仕方ありません。

 

官公庁側の契約担当者としては、このようなことのないよう、十分に検討して仕様書を作成しなければなりません。通常、官公庁側の契約担当者が、仕様書の内容を十分に理解していれば問題は起こりません。契約担当者が、仕様書の内容を容易にイメージして十分に説明できることが重要になるのです。税金を適正に使う官公庁の責務といえます。

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