消費税改正についての解説です。消費税が改正されると官公庁の会計実務は直接影響を受けます。2019年10月1日以後の取り引きは、税率が 10 %に改正されます。ただし経過措置や軽減税率制度があるので注意が必要です。消費税改正の簡単な解説です。
消費税改正の概要、2019年10月1日
2019(令和元)年10月1日から、消費税及び地方消費税の税率が 8 %から 10 %へ引き上げられます。そして軽減税率制度が実施されます。
原則として、2019(令和元)年10月1日以後に行われる資産の譲渡等、課税仕入れ、保税地域からの引き取りに適用されます。
取り引きの際は、帳簿等へ税率を明記します。特に軽減税率も、同じ8%ですが内訳の税率が異なるので明記が必要です。参考に、現在(2019年9月時点)の 8 %の消費税の内訳は、国の消費税率が 6.3 %、地方消費税率が 1.7 %です。
今回の消費税改正で複雑な取り扱いになるのが、軽減税率制度です。飲食料品と新聞が対象なので、官公庁の契約実務としては、それほど影響ないです。
消費税法の改正内容・・主なもの
原則として、2019(令和元)年10月1日以後に物品等の取り引きを行うものから税率( 10 %)が適用されます。税率の判断は、売上を計上する側が行います。官公庁との取り引きでは、民間企業側が判断することになります。
2019(令和元)年4月1日以後に締結した契約で、納品日などの引渡し時期が10月1日以後であれば、消費税率は改正後の 10 %になります。
旧税率の 8 %が適用される経過措置
2019(令和元)年10月1日以後も、旧税率の 8 %が適用される主な経過措置です。国税庁の消費税法改正のお知らせ 平成28年11月改訂から抜粋しました。
製造・請負契約
契約締結年月日が、2019(令和元)年3月31日以前の契約は、10月1日以後に課税資産を譲渡しても旧税率 8 %が適用されます。
経過措置が適用される契約は、測量、地質調査、ソフト開発、修繕、運送、保管、印刷、広告などがあります。また、報告書の提出により業務が完了する受託研究契約や共同研究契約も対象です。ただし政府系の受託研究契約は委託元の判断によります。
経過措置が適用されない主な契約は次のとおりです。
清掃契約、警備契約、保守契約、派遣契約
契約の履行が、月ごとに支払うなど、部分的に行われるため対象外になっています。業務の完成に長期間要するものが経過措置の対象です。
予約販売の書籍
契約締結年月日が、2019(令和元)年3月31日以前の契約で、9月30日以前に支払いを終えているもの。
旅費関係
2019(令和元)年9月30日までに、支払いを終えているものは、10月1日以後も旧税率 8 %が適用されます。旅行会社への支払いが9月30日までに終えていれば、旧税率 8 %が適用されます。
電気・ガス・水道・電話
継続して契約しているものは、10月中に検針を終えたものが、旧税率 8 %適用です。
特定新聞
発行者が指定する発売日が、2019(令和元)年10月1日前であるもののうち、その譲渡が2019(令和元)年10月1日以後に行われるもの
消費税改正に伴う禁止行為とは
過去の消費税改正のときも注意喚起の案内がありました。増税分を値引きなどで買い叩きすることを禁止しています。消費税転嫁対策特別措置法は、今回も適用されます。
ジョークのつもりで、取引の多い営業担当者へ、税率分負けてよ、と言ってはいけません。
受託・共同研究の収入契約
国立大学などでは、産学連携を目的にして、民間会社から研究費を受け入れて受託研究や共同研究を実施しています。研究費を受け入れるときは、収入として扱います。今回(令和元年10月1日)の消費税改正については、次のとおり考えます。
資産の譲渡の時期は、研究成果を引き渡す日を基準日とします。つまり、研究期間の終了日が基準日です。原則として研究期間の終了日が2019(令和元)年10月1日以後であれば、税率 10 %が適用されます。
ただし研究成果の引渡しが一括で行われるため、経過措置が適用されます。契約締結年月日が、2019(令和元)年3月31日以前の契約は、研究期間終了日が10月1日以後でも旧税率 8 %が適用されます。直接経費、間接経費ともに同じ考え方です。
なお政府系の受託研究や科研費は、資金配分元の通知により処理することになります。
書類に消費税が記載されてないとき
見積書、納品書、請求書などに、消費税の記載がないときや、内容が不明なときは可能な限り電話で確認しましょう。
書類を再発行してもらう必要はありませんが、内容を確認して追記しておきましょう。余白など欄外へボールペンで記入しておくと良いです。後日、税務調査が実施されたときに説明できるような対応が必要です。
8 %、10 %、それぞれの税率、軽減税率、経過措置適用の場合は、その旨の表示が必要です。
消費税の不課税と非課税とは
消費税は、事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供が課税の対象です。しかし、そもそも課税の対象でない不課税のものと、政策的に非課税としているものがあります。
消費税が不課税の例
次のものは、課税の対象ではなく不課税です。
給与・賃金・・・・雇用契約に基づく労働の対価
寄附金、補助金等・・・・一般的に対価として支払われるものではないからです。科学研究費補助金が該当します。
国税庁の参考ページ
No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
消費税が非課税の例
本来は課税の対象ですが、政策的な配慮から非課税扱いとしているものがあります。
授業料、入学検定料、入学金など
銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡
郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡
商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
法令に基づいて行う一定の事務手数料(登記、登録、特許、免許など)
国税庁の参考ページ
No.6201 非課税となる取引
消費税率の推移
過去の消費税率一覧です。契約実績を調べるときなどには税抜金額を算出します。
参考 過去の消費税率一覧
1989年(平成元年)4月1日 3%
1997年(平成9年)4月1日 5%
2004年(平成16年)税込みの金額表示が原則
2014年(平成26年)4月1日 8%
2019年(令和元年)10月1日 10%
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