入札公告の掲載期間についての解説です。一般競争入札を実施するときは、最初に入札公告を公開します。公告期間が長いほど、競争参加者が増えます。予決令では原則として10日以上、地方自治体はそれぞれの規則で入札公告期間を定めています。
入札公告は、公開(掲載)期間が重要
官公庁が実施する一般競争入札では、WEBサイトや掲示板、官報等で入札公告を公開し、広く競争参加者を募ります。価格競争を十分に行うためには、多くの参加者が望ましく、入札公告の公開期間を長くする方が効果があります。そのため予算決算及び会計令(予決令)では、入札公告の期間を定めています。
予算決算及び会計令
第七十四条 契約担当官等は、入札の方法により一般競争に付そうとするときは、その入札期日の前日から起算して少なくとも十日前に官報、新聞紙、掲示その他の方法により公告しなければならない。ただし、急を要する場合においては、その期間を五日までに短縮することができる。
地方自治体は、それぞれの規則で定めています。参考として東京都と大阪府の例です。
東京都契約事務規則
第七条 「契約担当者等」は、一般競争入札により契約を締結しようとする場合においては、(略)その入札期日(略)の前日から起算して十日前までに、東京都公報、入札情報サービス、掲示その他の方法により公告しなければならない。ただし、急を要する場合においては、法令に特別の規定がある場合を除くほか、その入札期日の前日から起算して五日前までとすることができる。
大阪府は公告期間が短いです。
大阪府財務規則
第五十五条 一般競争入札の公告は、入札の日前五日(緊急の必要がある場合においては、入札の日前一日)までに、府公報、インターネット、新聞紙、掲示その他の方法により、次に掲げる事項についてしなければならない。
入札公告は、インターネット上のWEBサイトへの掲載が一般的になってきました。インターネットが普及する2000年以前は、職場の掲示板へ入札公告を貼付していました。入札公告を新聞へ掲載するケースは、今も昔も少ないです。新聞広告は掲載料金が高いので、よほど金額の大きい契約でない限り掲載しません。政府調達に関する協定が適用される国際入札は、官報へ入札公告を掲載することが義務付けられています。
一般競争入札の目的は、広く競争参加者を集めることです。多くの参加者による価格競争が望ましいのです。ライバルが多いほど競争性が発揮されます。そのため、入札公告の公開は、たくさんの人が訪れる場所で、長い間見ることができる方が良いわけです。
上記の予決令第七十四条(国の場合)は、入札公告期間の最短期間を定めています。掲示している期間が長ければ、それだけ入札に参加する者が増える可能性があります。なるべく長い期間、入札公告を掲示してください、という趣旨です。通常の入札公告掲載期間は、2週間から3週間が多いです。
入札期日の前日から起算して少なくとも十日前
予決令第七十四条の「入札期日」とは、開札日あるいは書類提出期限、入札説明会開催日など、入札へ参加することのできる最終期限の日です。名称に関係なく、入札参加の条件を設定した日です。一般的には、書類提出期限または入札説明会の開催日です。参考に一般競争入札の流れです。
入札公告掲載(WEB上への公開日)
↓
入札説明会開催(省略することもあります。)
↓
入札書や提案書の提出期限
↓
開札
上記の場合、「入札期日」は、入札説明会開催日あるいは入札書や提案書の提出期限のどちらか早い日になります。いずれも対応しないと入札への参加が認められなくなるからです。
入札公告の中で、入札への参加条件として義務付けている場合には、その義務付けている期限の前日から起算します。なるべく長く掲示する、という趣旨を理解しましょう。
特に間違えやすいのは、入札説明会(現場説明会)です。実際に現場を見ないと、適正な契約金額を積算できない場合です。入札の条件として参加を義務付けているときは、この入札説明会などが「入札期日」と同じ意味になります。この日の「前日から起算」して10日以上前に公告します。(地方自治体は、それぞれで期間を定めています。)
公告期間「10日」のカウントは、土日や休日を含んだ暦日数で計算します。営業日という考え方はありませんが、長く掲載するという趣旨からすれば、営業日と考えてカウントした方が、より競争性を確保した掲載方法になります。
注意したいのは、多くの人が休暇を取得するお盆の時期や年末年始、GW前に入札公告を掲載する場合です。通常、慣習として多くの会社が休暇になる日は除外して10日以上掲載します。多くの会社が休みで入札公告を見る機会が失われていると、法律違反ではありませんが、適正な手続きとは言えないです。競争参加者を増やすという法律の趣旨を逸脱してます。意図的に多数の参加者を排除しているように見えてしまいます。
また開札日の数日前に、入札書や提案書、参加資格の証明書などの提出期限を設定している場合があります。これらの場合にも、書類提出期限の「前日から起算」して10日以上前に入札公告を掲載します。
入札公告を見た会社が、入札へ参加するかどうか検討する期間、提出書類の作成が可能な期間、会社側が総合的に検討し判断できる期間などを十分に確保しなければなりません。10日は、最少限の掲載期間です。
例 10日間の掲示(最短期間)
開札日 6月11日(入札説明会、書類提出期限など)
入札公告 6月 1日(掲示やインターネットなど誰もが見ることが可能な場所に掲載)
繰り返しになりますが、入札公告期間は長い方が望ましいです。実務上は最低でも2週間以上確保します。
急を要する場合とは
上記の予決令第七十四条の、ただし書きを確認しましょう。
急を要する場合においては、その期間を五日までに短縮することができる。
この、「急を要する場合」の解釈です。注意しなければならないのは、事務手続きの遅れは、理由にならないことです。
急を要する場合とは、災害などの非常時を想定しています。人の命や財産が危険に晒されている場合です。台風や地震などで大きな被害を受け、すぐに支援物資を調達するケースなどが該当します。また開札しても落札者がなく、当初の条件を変えずに再度公告して入札するときです。最初の入札ですでに情報が公開されているので、短期間の入札公告でも対応可能という判断から、5日間の短縮を認めています。
1 社入札など競争参加者が少ない場合には、入札公告の方法に問題がある、と指摘されることがあります。入札公告掲載期間が短いと、見る人が少なくて競争性が確保されなかったという理由からです。誰もが見ることが可能な方法(WEB上の入札公告サイトなど)で、長期間(可能なら1ヶ月以上)掲載し、その画面コピーなどを保存しておくことが大切です。システムによっては、入札終了後には入札公告が表示されなくなってしまうので、必ず、印刷しておきましょう。せっかく苦労して、入札公告を掲載したのに、その公告を証明する資料を保存し忘れると悲惨です。
WEB上の入札公告は、必ず、画面コピーしておきます。
また、職場の案内版や掲示板に貼付したものは、画鋲の穴のあいたもの、セロテープの跡があるもの、日焼けしたものなど、実際の掲示に使用した入札公告を契約関係書類として保存することが重要です。
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