随意契約で競争を許さない場合とは、競争性の判断と実例

イギリスのロンドン
イギリスのロンドン

競争性のない随意契約

予算決算及び会計令

第百二条の四  各省各庁の長は、契約担当官等が指名競争に付し又は随意契約によろうとする場合においては、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

三  契約の性質若しくは目的が競争を許さない場合又は緊急の必要により競争に付することができない場合において、随意契約によろうとするとき。

契約方式の原則は、公告により入札を実施する一般競争契約です。

この規定は、一般競争契約によらず、指名競争契約や随意契約を行う場合には、財務大臣の協議が必要と定められています。

そして、ただし書きとして列挙されている条件に該当すれば、財務大臣協議は必要なくなります。

条文だけを読むと、財務大臣協議が必要かどうかの判断を行なう内容ですが、指名競争契約あるいは随意契約を締結する際の根拠法令となります。

各省庁などの官公庁が、契約実務を処理する際に、財務大臣協議を行なうのは、とてもハードルが高く、協議のために準備する書類も多く、実際に協議するとなれば数ヶ月(3ヶ月とか)の期間を必要とします。また、前例もなく内容が複雑なら1年かかることさえありますので、実質的に財務大臣協議に該当するような案件であれば断念せざるを得ず、むしろ、契約内容を見直した方が効率的です。



随意契約の判断に必要な解釈

上述の予決令102-4-3を抜粋します。

契約の性質若しくは目的が競争を許さない場合において、随意契約によろうとするとき

「契約の性質若しくは目的」
性質と目的は、分けて考える必要はなく、契約の内容全体を捉えて考えます。

「競争を許さない場合」この部分が重要ですので、詳しく解説します。

「競争ができない場合」という表現ではなく「競争を許さない場合」と表現されていることに注意してください。

国語の授業的な基本的な言葉の解釈ですが、「できる、できない」という言葉は、自分の意思により行おうとしますが、その結果として、「できる、できない」ということになります。

つまり、競争を行いたいが、できない、というニュアンスです。

一方、「許さない場合」とは、行おうとしたけどできないという、結果的に仕方がない、という状況ではなく、意図的に「しない、させない」という強い否定の意志が内在しています。

官公庁側の契約実務担当者が、契約の基本原則である競争手続きを、最初から否定するという意思が加わっているのです。

簡単に言うと、「競争を許さない場合」とは、最初から競争性を確保した入札手続きを行なわないで、契約の相手方1社のみと(恣意的とも感じられる)契約手続きを行うものです。

競争性を最初から排除していますので、この102-4-3を適用する場合には、対外的に説明が可能な合理的理由が必要になります。

そのため、選定理由書(機種選定理由書、業者選定理由書)の保存が義務付けられます。



競争性のない随意契約の例

では、「競争を許さない場合」の具体例を示しましょう。

製品の製造などで、独占的に実施することが可能な特許権に基づく場合です。

発明により特許が認められれば20年などの長期間、市場での独占が特許法という法律で認められています。特許の専用実施権を有している企業が、他の代理店経由などを認めず、その企業から当該製品を購入するのが典型例です。

この場合には、特許に関する資料を提出してもらい、選定理由書を作成してから、随意契約を締結します。

販売店による随意契約

次に、判断に迷う事例として、特許は取得していないが、特殊な製品で、日本で製造販売している企業が1社しかない場合です。

30年ほど前までは、インターネットもなく、流通機構も発達していなかったので、実際に1社のみで販売している事例が多数ありました。

昔は、随意契約理由書として、当該製品の販売は、代理店を経由することなく製造業者が直接販売することを理由として、随意契約していた事例が多かったです。

しかし、近年は、インターネットの発達によって、市場の流通機構も飛躍的に発達し、ネット販売、ネットを通じての業者間の取引も活発に行われています。

メーカーであれば、自社の製品を多数の代理店を経由して販売したいと思うのは当然ですから、現在は、メーカーが1社という理由だけで、販売会社(代理店)が他にない、という理由は、合理性に欠けてしまいます。

販売会社が存在するかどうかは、インターネットなどを用いた公告手続きによって入札を実施し、その結果、1社であることが客観的に証明できることであって、最初から競争性を排除すべきではありません。

応札者が1社の可能性があるとしても、少額随意契約(売買なら160万円以下の契約)に該当しなければ、一般競争入札を実施するのが、現在の正当な契約手続きとなります。

予決令102-4-3は、ほとんどの契約で適用しない取扱い(160万を超えれば全て入札)が安全です。