恥ずかしい「下見積」って?「参考見積書」と「下見積書」の違い

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基礎知識
2014年 奈良
基礎知識

最近(2020年7月)、「下見積書」という言葉を、ネットで見かけるようになりました。官公庁の入札手続きなどで、提出書類になっています。しかし聞きなれない言葉です。「見積書」や「参考見積書」との違いについて、わかりやすく解説します。

 

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「下見積書」それとも「参考見積書」?

 

官公庁の入札公告などを見ると、「下見積書」は、「参考見積書」と同じ意味で使われているようです。

 

下調べ、下見、下資料などの言葉は、いずれも「正式でない」という意味で「下」という文字を使っています。事前準備や、本番前という意味で使われます。官公庁側としては、正式な金額の「前段階の概算金額」という意味で使っているようです。

 

しかし注意したい点があります。そもそも「公正」であるはずの契約手続きの中で、正式でない資料を使うのは、いかがなものかという点です。

 

本来、金額を見積もるために行う積算は、すべてが正式なものでないと困ります。でたらめな数字が入ることは避けたいのです。金額を積算するときに、最初から「概算の積算」はしないはずです。正式な見積金額を算出しようとするはずです。むしろ、「正式でない金額で提出してくれ」と言われれば、意味不明で混乱してしまいます。

 

特に入札を実施するときに、入札金額よりも高い金額で「下見積書」を提出するような指示が見受けられます。金額を指示して提出させることにも、問題があります。おそらく落札率を下げるために、このように記載しているのだと思いますが、官製談合に近い行為です。

 

「下見積書」という言葉は、正式でない金額なので、適切ではありません。「参考見積書」を使うべきです。「下見積書」は、あまりに怪しすぎる言葉です。

 

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「下見積書」と「参考見積書」の違い

 

そもそも見積書は、民法で定めている「契約の申し込み」という法的な役割があります。(入札書も同じです。)

民法
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

 

販売する会社としては、「この金額なら売ることができます」という意思表示です。見積書を提出することが「契約の申込み」です。見積書を受け取った側は、金額や内容を確認して、正式発注したいと判断すれば、「この見積書でお願いします」と承諾し、契約が成立するわけです。提出された見積書に対して、正式発注したことになります。この「契約の申込み」が見積書の役割です。

 

「参考見積書」は、契約を前提とせずに、通常の取引金額を示す正式な書類です。契約締結を前提としないので、思い切った値引きをしません。正式契約を期待せずに提出する書類です。一般的な値引率(通常の取引価格)で見積もった金額になります。入札を実施する際に、事前に「参考見積書」の提出を求めることがあります。これは「直近の取引価格」を調べるため、通常の取引価格を記載し提出してもらいます。契約を前提としていないだけで、正式な書類です。見積金額は正式なもので、概算ではありません。

 

ここで注意が必要なのは、「参考見積書」も正式な書類ということです。ただ契約の締結を前提としていないだけです。

 

つまり「参考見積書」は、民法上の「契約の申込み」という法的役割を持たない書類です。見積金額自体は、正式な金額です。架空の金額や、概算で計算するような金額ではありません。「参考見積書」は、正式な取引金額を知るためのものです。

 

一方、「下見積書」は、「正式でない」という意味が含まれています。「下調べ」という言葉に代表されるように、「おおまかな、ざっくりとした金額」という意味です。通常の取引価格とは言えない金額なわけです。つまり「下見積書」は、正式な金額ではなく、公的な手続きで利用するには、疑問符のつく書類です。

 

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「下見積書」は官製談合に間違われる?

 

実際の入札公告などを見てみましょう、下記はインターネットで実際に公開されていた入札公告などの抜粋です。

A省 「入札公告」の抜粋

入札者に求められる義務等

入札に参加を希望する者は、次の書類を平成15年3月12日(水)12時までに、〇〇〇に提出すること。

(2)下見積書
入札金額は下見積書の金額を超えないこと。

 

B省 「下見積書・見積書提出依頼書」の抜粋

6 下見積書提出の締切
平成26年12月12日(金曜日)17時まで(郵送またはFAXでの提出も可)
7 見積書提出の締切
平成26年12月18日(木曜日)12時まで(下記9にある入札箱に投函)
なお、郵送の場合は締切期日必着

下記の下見積書及び見積書は無効とします。

提出した下見積書の金額を超えた金額の見積書

 

A省の入札公告では、「入札金額は下見積書の金額を超えないこと」と条件が付されています。つまり事前に提出した下見積書の金額を見れば、入札金額の上限価格を知ることができます。

 

次に B 省の下見積書です。B 省は、入札書ではなく見積書を提出してもらう契約です。つまり競争契約(入札)ではなく随意契約です。そしてA省と同じく、「提出した下見積書の金額を超えた金額の見積書」は無効という条件を付しています。つまり事前に見積書の上限額を把握できてしまいます。

 

官公庁側が、開札前に金額を指示するのは好ましくありません。なぜこのように官製談合まがいの「金額指示」をするのでしょうか。これでは、官公庁側に都合のよい書類を作るために、金額を指示しているように思えます。

 

入札手続きの中で、開札前に、金額を指示するような行為は、不信を招くので慎むべきです。不正を疑われかねない行為です。

 

また、すでに解説しましたが、「下見積書」の金額は、正式なものではありません。そのような金額を何に使うのでしょうか。おそらく予定価格の参考資料でしょうが、正式でない金額を使っても意味がないです。予定価格自体の信憑性が低くなるだけです。

 

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「下見積書」ではなく「参考見積書」を使おう

 

「下見積書」は、正式な見積書ではなく、概算金額の見積書です。予定価格を作成するための参考資料として使うには無理があります。正式な金額ではないのです。

 

そもそも予定価格は、予決令で定めているように「取引の実例価格」に基づいて算出するものです。実際の取引価格ではない「概算の金額」で作成すべきものではありません。

予算決算及び会計令

第八十条
2 予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。

 

また、「概算の見積書」というのも、変なものです。見積書を作成するときには「実際にいくらで売れるか」を想定して算出します。「下見積書」とか「概算見積書」という概念自体が、意味がない、あるいは変なものです。

本来、官公庁が扱う見積書は、架空の金額であってはなりません。不当な利益まで含んだ金額もいけません。思い切った値引きまで含めない、通常の取引金額という意味で使うのであれば、「参考見積書」が正しい表現です。参考見積書は、正式契約を前提としていませんが、見積金額は正式です。

 

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「見積書」、「参考見積書」、「下見積書」の違い

 

簡単にまとめると、次のとおりです。

 

見積書

契約の申込み書類です。民法で定められている「契約締結の前提」になる書類です。

参考見積書

契約の締結を前提としない書類です。正式な見積金額(通常の取引価格)を把握するための書類です。

下見積書

正式な書類ではありません。金額も概算です。契約手続きで使うには信頼性の低い、リスクのある書類です。


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